日本共産党の小池晃政策委員長は23日のNHK「日曜討論」で政府・各党出席者と討論しました。
口蹄疫―感染防止・補償は新規立法含め国の責任で
最初に口蹄(こうてい)疫対策が議論となり、民主党の大塚耕平内閣府金融担当副大臣は「感染拡大の防止と復興支援に万全を期したい」と述べ、無利子融資や利子補給についても検討する考えを示しました。小池氏は次のように述べました。
小池 一番大事なのは感染の抑えこみです。そのためには(家畜を)処分して埋めなければならないが、場所が足りない。人的体制も非常に遅れており、それを国の責任でやる必要があります。
もう一つ、補償といっても経営再建の補償が示されていません。牛でいえば3年間は収入が途絶えるわけです。実際には、多くの畜産農家のみなさんはすでに借金を抱えてやっているわけで、子ども世代のことを考えると絶望的になるという声があがっています。きちんと経営していけるだけの補償内容をきちんと示して、安心ですというメッセージを送ることが大切です。
そのためには、家畜伝染病予防法の範囲でできないことについて、新規立法を含めてやるべきです。
いま、農家ないがしろで対策がどんどん進んでいますが、こういうやり方では、わたしは逆に対策は遅れてしまうと思います。
社民党の阿部知子政審会長も「補償の問題は、小池さんがおっしゃったように、後の融資より、いまの回転資金にも困るわけだから、そこの補てんも含めてどうするかだ」と述べました。
景気対策―大企業に法人税減税、庶民に消費税増税では、成長に逆行する
経済対策について議論となり、大塚氏は「いい感じできているが、ギリシャ問題が景気の足を引っ張る可能性がある」と述べたのに対し、小池氏は次のように述べました。
小池 GDP(国内総生産)の数字が上向きになったといっても、全く景気が回復したという実感はありません。日銀の「金融システムリポート」も、「人件費削減が計画を上回るスピードで実施され、企業が利益を捻出(ねんしゅつ)できるようになった」と分析しているし、中小企業家同友会の景況調査をみても、「中小企業は停滞、寒の戻りの様相だ」と言っている。
なぜかといえば雇用者報酬が減り続け、あるいは中小企業の業績が伸びなかった。そこに最大の原因がある。成長が止まった国になってしまった最大の原因は、国民が貧しくなったというところにあるわけだから、そこを本格的に切り替える経済対策をやらなければ、いまの景気回復は望めないと考えています。
これに対し大塚氏も「雇用者報酬は8期ぶりにプラスになったが水準はまだ低い」と認め、「政府としても注視し、とるべき対応はとっていきたい」と発言。一方で、自民党の西村康稔政調副会長が「企業サイドの支援をしっかりしなければいけない」として法人税引き下げを提起したのに対し、大塚氏は「法人税率の引き下げは重要なポイントだ」と応じました。小池氏は次のように述べました。
小池 政権の成長戦略の先頭に法人税の減税がでてきたことに本当にびっくりしています。この間、国民の所得が減る一方で大企業の内部留保は増えている。その過剰な蓄積を雇用、中小企業や財政に回すべきなのに、法人税をさらに減税し、その財源は消費税だと言い出している。
日本経済の停滞の原因は家計の冷え込みにあるのに、過去最高の蓄積になっている大企業には法人税を減税し、庶民には消費税の増税をやっていくなどということをやったら、成長に逆行することになります。断固としてやるべきではない。
また、西村氏が「社会保障の安定財源」に超党派で取り組むことを提起したのに対し、大塚氏も「ご協力いただきたい」と投合。小池氏は「超党派で消費税増税なんてとんでもない」と厳しく批判しました。
子育て支援―現金給付だけでなくいろいろな方策と総合的に実施を
6月から支給が始まる子ども手当が議論となり、小池氏は「(全額支給)2万6000円、(予算規模)5兆5000億円という形にすべきではない」と強調。次のように述べました。
小池 現金給付の拡大は大事だが、限られた財源のなかで現物給付と総合的にやっていかないといけない。
現金給付だったら一回で終わるが、保育所整備だったら地域の業者に施設や設備の仕事も回るし、保育士さんの雇用も増える。お父さんお母さんも仕事に就けるようになります。2倍、3倍の経済効果が生まれます。あるいは子どもの医療費の無料化を国の制度として実現する。いろいろと子育て支援のための方策はあるわけで、そういった形でやるべきです。
しかも、5兆5000億円という規模になってくると、配偶者控除の廃止など増税とセットになってくる。右のポケットから左のポケットにというやり方だし、むしろポケットから取られるだけという人もでてくるし、ゆくゆくは消費税増税で右のポケットからも左のポケットからもとると。こういうやり方は認められません。
大塚氏も「小池さんもいったように、保育所を1回つくれば後の親ごさんたちも使える。残りの1万3000円の使い方はいろいろと工夫すべきだ」と述べました。
西村氏は「高所得者にまで子ども手当を配る結果、格差がかえって拡大する」などと批判。小池氏は次のように述べました。
小池 矛盾が起こってくるのは、子育て世代のなかで財源をつくり出そうとするから、結局増税だけになってしまう人もでてくるわけです。庶民の間で負担のツケを回すのではなく、応分の負担を求める、税の原則にもとづいてしっかり大資産家あるいは大企業のところに求めるべきです。
それを逆に法人税減税するというのはおかしい。税の原則に立って、負担能力に応じて集めるということで財源をつくれば、先ほど言ったような矛盾は起こらない。逆行するようなことはやるべきではありません。
郵政「改革」―公的な事業体として再生する方向で進むべきだ
郵政「改革」関連法案について、国民新党の下地幹郎政調会長代行は「ユニバーサルサービスを国民の手に取り戻す」とのべ、大塚氏も「金融機関の預貸率は50%ぐらいで貸せていないので融資をしていく」、社民党の阿部氏も「改革の断行」とのべました。小池氏は次のようにのべました。
小池 郵貯は、庶民の生活資金を安全・確実に守るということが目的です。国民の平均貯蓄額は320万円であり、2000万円にしてくれなんていう声は国民からは出ていない。ユニバーサルサービスをやるといいながら結局、株式会社形態にして、金もうけをしなければいけないとしたから、こういうわけのわからないことになっていくわけで、原則に立ち返って、資金運用も安全性と公共性を基本とする別のルールでやらないといけない。郵貯も簡保も郵便もユニバーサルサービスをきっちり守っていくというのであれば、公的な事業体として再生するという方向で進むべきです。
また、斉藤氏が「新しく40万人公務員を増やすような改革だ。公務員改革の基本にも反する」とのべたのに対し、小池氏は「日本郵政は非正規社員の64%が年収200万円以下という状態で、ひどいワーキングプアをつくっているわけですから、これを正社員にするというのは私は正しい方向だと思う」と指摘しました。