日本共産党の小池晃政策委員長・参院議員は7日、NHK番組「日曜討論」に出席し、政府・各党代表と討論しました。司会は影山日出夫NHK解説委員。
予算案
暮らしと経済の危機打開できぬ問題点――必要な提案を今後も
番組は、衆議院を通過した2010年度予算が執行されれば景気は上向くのかという問題提起から始まりました。
菅直人副総理・財務相は「じわじわと効果が出つつある」と述べました。自民党の与謝野馨経済政策調査会長は「子ども手当、高校の無償化は哲学のない理念のない政策なんで支持できない」、公明党の斉藤鉄夫政調会長は「借金と埋蔵金の取り崩しで禍根を残す」と発言。みんなの党の浅尾慶一郎政調会長は「財源をつくらずやっている」と述べました。小池氏は次のように語りました。
小池 今の深刻な暮らしと経済の危機を打開するものにはなっていません。率直に言って、後期高齢者医療制度の廃止を先送りすることにみられるように、国民の願いに背を向けているという問題点もあります。私たちは予算委員会の中で問題点を指摘するとともに、必要な提言もやってきました。
ひとつは、社会保障を本気で削減から拡充の方向に向けていくこと。二つ目は雇用と中小企業の危機を救うために、力を持っている大企業にその力にふさわしい社会的責任を発揮してもらうことです。三つ目は財源の問題で、軍事費や大企業・大資産家減税にメスを入れるという姿勢を持つべきで、聖域にしてはいけない。私たちは、こういう提言をやってきたし、参議院での審議でも、引き続き必要な修正も求めて議論していきたいと思います。
公共事業の個所付け
予算審議の中で議論が必要――利益誘導防ぐルール確立を
公共事業の個所付け(具体的な予算配分)が民主党だけに知らされ、それを地方自治体に内示していた問題で司会の影山氏は、小池氏に自民党時代から民主党政権になって利益誘導のやり方が変わったと思うかと質問しました。
小池 このままではやり方は変わっていないということになります。自民党時代に、政治家の名前をつけて何々道路、何々橋と、実力を誇示して企業献金を集める材料にもしてきました。それを変えるのが新しい政治のはずです。1月末には民主党に内示していたというのですから、その時点で個所付けというのはできていたということになります。本来これは予算審議の中で議論すべきです。今までそれをやってなかったのがおかしい。
1月の末に出せるのであれば、国会の場でこれからは、実際に具体的な個所付けも含めて予算審議の中で議論していく。そうすれば、政治家の私物化とか利益誘導を防ぐこともできるわけですから。「新しい政治」というんだったら、こういうやり方に変えるということをルールとして確立すべきだと思うんです。
これに対して斉藤氏は「確かにいま小池さんがおっしゃったようにできるだけ早く国会に提示してみんなで議論するというのが筋だと思う」と発言。菅氏も「今後のあり方としてはする方向でやりたい」と述べ、社民党の近藤正道参院議員も「個所付けとセットにして出すルールを確立すればいい形になる」と述べました。
これに関して民主党が幹事長室に陳情を一元化していることについても議論となり、菅氏は「何らかの有利な形にしようということに使ったところも一部あったかもしれない」などと述べました。小池氏は次のように発言しました。
国民の請願権の制限は時代逆行
小池 民主主義という点から問題だと思います。まるで「民主党が国家である」かのようなやり方です。個所付けの問題も国会軽視です。きちんと国会の場に情報も提供して議論していく。陳情も今までどこにだってできたわけで、国民には請願権というのがあるわけだから、それを制限するやり方は時代の流れに反すると思います。
菅氏が「(従来の政権では)族議員が一緒に連れて行って予算をつけるというようなことがあった」と言い訳したのに対して小池氏は、「族議員の支配をやめさせるためには各党が参加する国会の審議が一番大事なんです」と指摘。菅氏は「賛成です」と答えました。
財源問題
財政出動には税金を生かす政治の知恵が必要
次に財源問題がテーマになり菅氏は「(来年度の予算編成に向けて)議論をする場を整理した。税調の専門家委員会もつくった」とする一方、「政権交代の直前にリーマン・ショックがあった。日本が一番影響が強く残っている。ある程度財政出動が必要だということでやってきた」と弁明。斉藤氏は「マニフェストはできませんと撤回宣言すべきだ」と発言。与謝野氏は「財源は無駄の排除でできるといっていたわけでやってもらわないと」と批判しましたが、菅氏から「大きな財政出動が必要だといっていたのは麻生政権ではないか」と指摘される場面もありました。小池氏は次のように語りました。
小池 国民の暮らしを支える財政出動は必要だし、子育てへの現金給付も増やすべきだと思います。ただ、財政出動をする場合、知恵が必要で、5兆3000億円を現金給付に全部使ってしまっていいのか。例えば保育所の建設で言えば、10万人分の建設費は1700億円。これをやれば雇用が増え、建設の仕事も増えます。税金を2倍3倍生かすということに政治の知恵を出さなきゃいけない。
しかも、(扶養控除廃止による)増税と引き換えだから結局、それほど給付は増えない、あるいはこのままだと減ってしまう人も出てくるわけで、こういうやり方を見直すべきです。
いまの財政を考えるのであれば、一番大穴を開けてきたのは、大企業・大資産家減税です。法人税の税収見通しは来年6兆円でしょう。(税収全体では)1985年の税収に戻ってしまうのですが、(当時は)法人税は12兆円あったわけで、消費税はなかった。そのときと同じ税収になってしまった。大穴を開けてきた原因はここにあるのだから、この大穴を防ぐことを真剣にやるべきだ。それをしないで消費税の増税だという議論は間違いだと思います。
消費税
増税は絶対に認められない 軍事費、大企業減税にメスを
消費税をめぐって菅氏は、「専門家に(議論を)お願いしている」と発言。各党代表も「重たい問題を与党に押し付けて何もすすまないよりは各党がテーブルについて話し合うべきだ」(自民・与謝野氏)「税制の抜本改革は政権が代わっても変えてはいけない」(公明・斉藤氏)「引き上げは絶対ダメという立場ではない」(社民・近藤氏)「議論を聖域とはしない」(みんなの党・浅尾氏)とのべました。小池氏は次のように述べました。
小池 生活保護の受給者が180万人を超え、1956年以来の数になりました。こういう方たちに消費税というのは一番重くのしかかるわけです。年金財源というけれど無年金、低年金の人に一番つらい税金になる。母子家庭の人も避けて通れないわけで、貧困と格差が問題になっているときに消費税の増税は絶対だめだと思います。
もちろん、財政がどうなってもいいというわけじゃない。一般会計にだって聖域があって、来年度予算でいうと防衛省の予算、軍事費は自民党政権時代より増えたわけです。米軍再編経費と思いやり予算を合わせて3370億円。ヘリ空母の3隻目が1157億円です。政党助成金だって聖域になっている。こういったところにメスを入れないといけないと思います。
そして、財政に大穴を開けたのは、この間ずっと繰り返しやってきた大企業減税ですから、ここにしっかりふたをするという議論をまず徹底的にやるべきだと思っています。
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