2010年174通常国会:速記録

厚生労働委員会


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2010年4月13日(火)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 改正法の検討規定、附則六条のことについて最初にお聞きをしますけれども、これ一項と二項に分かれております。二項は五年以内となっているんですが、一項は特に期限の定めがありません。

 一項の検討事項というのは、先ほどからも議論になっているHibワクチンなども含めた予防接種の抜本的見直し、これも急がれると思うんですね。二項の五年以内ということに対して、一項は期限の定めすらないということについてのちょっと趣旨を聞きたいんですが、これは五年以上掛かるということなのか、それとも、これは二項よりも早急に対応するという、そういう趣旨なのか、だとすれば、いつごろまでに結論を出すのか、お答えください。

大臣政務官(足立信也君)

 これは、抜本改正抜本改正という言葉で象徴されておりますように、それももちろん含んだ中で、これはとても五年という期間を要するものでもないと、もっと早くやるという決意の表れと取っていただいていいと思います。

小池晃君

 そういうことであればもう安心だし、これはもう急いでやっぱりやっていただきたいというふうに思うんですが。

 その抜本見直しの中身で、今日も議論になっているHibワクチンのことをお聞きをしたいんです。

 これ、細菌性髄膜炎の日本での患者数は毎年約一千人を上回る推定です。六割強がHib、約三割が肺炎球菌です。五%は死に至って、重い障害を残す後遺症も二〇%と。これはワクチンで予防するのが最も有効ですけれども、日本はこれは全くの後進国になっています。多くの先進国ではワクチン接種によって予防しておりまして、WHOでは九八年に世界中のすべての国に対して乳幼児へのHibワクチン無料接種を求める勧告を出しています。肺炎球菌七価ワクチンはアメリカ、オーストラリア等で定期接種されて、これらの国々では髄膜炎の発症率は激減をしています。

 最初に厚労省にお聞きしますが、Hib髄膜炎の発生頻度について、欧米でのワクチン普及前の数字と日本での数字をお示しください。

政府参考人(上田博三君)

 細菌性髄膜炎につきましては、感染症法に基づき流行状況を把握することを目的として、全国四百五十七か所の基幹定点医療機関に対し週単位で定点報告を求めておるところでございます。

 一方、我が国におけるHibによる髄膜炎の発生頻度につきましては、平成二十年度に行われました厚生労働科学研究によりますと平成十九年一月から二十年十二月までの二年間に、北海道で発症した細菌髄膜炎についての調査がございまして、その結果、五歳未満人口の十万人当たり五・五人との報告がございます。また、平成六年に研究者によって行われました全国のHib髄膜炎発生状況に関するアンケート調査の結果によりますと、五歳未満人口十万当たり四・〇人から九・八人との推定報告がございます。

 また、海外ですがCDC、これ米国疾病管理予防センターでございますが、毎週発行しているMMWRによりますと、米国では侵襲Hib感染症、これ重症のHib感染症と考えてもらったらいいと思いますが、これについてのサーベイランスが行われておりまして、それによりますとHibワクチンが導入された一九八七年の発生率は五歳未満人口十万当たり四十一人でございましたが、一九九五年には一・六人まで減少したと報告されております。

小池晃君

 この数字を見ると、欧米では全数調査ですけれども、日本は定点調査ということで実態がやはりきちんと把握されてないのではないかという印象を受けるんですね。

 やはり日本でも全数把握可能なシステム、もっと本当はこの今の数字より実態は多いんではないかという気もいたしますので、やはり全数把握が可能なシステムの整備、それから起炎菌の把握なども行っていくべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

政府参考人(上田博三君)

 今御指摘のございました点につきましては、感染症法に基づき感染症発生動向調査を定点観測で行っていることは申し上げたとおりでございます。さらに、週単位で届出を求めている中で、細菌性髄膜炎の起因菌が判明した場合にも併せて報告を求めておりますが、これ何分全国に広げますと現在四百五十七の医療機関でやっておりますけれども、これを広げることについてはなかなか医療機関側の負担もございますので、今後の検討課題とさせていただきたいと考えております。

小池晃君

 検討課題というんじゃなくて、やはりきちっと把握できるシステムをつくっていただきたいというふうに思います。

 それから、市販されているんですが、希望者が増えている一方でワクチンが足りないという声がたくさん寄せられております。大臣、これ国としてはどうやって必要数を確保しようとしているのか、御説明をお願いします。

国務大臣(長妻昭君)

 今おっしゃられたように、このHibワクチンは非常にこの供給が追い付いていないということでございまして、まずはその供給不足を解消するべく今メーカーにも働きかけを行っておりまして、昨年は大体毎月七、八万本が出荷でございましたが、今年一月からは毎月約十万本の供給体制を取っていこうと、今年六月からは毎月約十八万本の供給予定にしていこう、九月からは毎月二十七万本の供給予定にしていこうということで暫時増強をしているところでありまして、今後とも海外における製造ラインの生産能力拡大等の対応をしてほしいというようなお願いもさせていただいておりまして、不足に陥らないよう取組を続けていくということであります。

  〔委員長退席、理事小林正夫君着席〕

小池晃君

 次に、足立政務官でしょうか、これ安全調査、副反応の調査、これはどうなっているのか、重篤な健康被害などが生じているのかどうか、御紹介ください。

大臣政務官(足立信也君)

 このHibワクチンの市販後の安全性の調査については、二つといいますか、大きく分けて二つございます。

 もちろん製薬会社による市販後調査というのは現在も続いておりまして、この間の推定接種者数二十五万五千人に対して重篤な副反応は十七症例、二十二件収集されております。

 それから、厚生労働省としては、科研費で再興感染症研究事業というもので、二十一年四月から全国七百五十か所の医療機関を対象に健康状況と副反応の調査をやっております。そこで、千七百六十八例の解析で、全身反応、発熱とかせきの全身反応が四百九十九例、二八・二%、それから局所反応ですが、これは五百七十六例、三二・六%でございます。この二つの種類があると。

小池晃君

 今の副反応の数字というのは、大体DPTの数字とほぼ同じというふうに、調査結果になっていると思うんですが、その辺についてはどうですか。

大臣政務官(足立信也君)

 同じ同程度というふうに聞いております。正確なパーセンテージはちょっと今手元にありませんが。

小池晃君

 厚生科学研究でもDPTの全身反応とほぼ同程度という結果になってきているということだと思うんですが。

 髄膜炎というのは、ベテランの小児科医でも早期発見、これなかなか大変な病気です。やはり小児救急外来においては、髄膜炎かどうかということを鑑別することが救急医にとっても一番大事な仕事の一つになっているのではないかというふうに思うんですね。

 お母さんたちが守る会をつくった兵庫県立柏原病院のコンビニ受診をやめようというそのチャートの中でも、やっぱり髄膜炎が一番心配だということが強調されている。

 やはりHibや肺炎球菌の予防接種ということをきちっとやっていくことによって、これはやはり髄膜炎を救急外来で除外していくことが可能になっていくということは、私は小児救急外来、小児救急医療の現場の問題の解決にもこの定期接種というのは貢献する性格を持っているというふうに考えるんですが、そういうメリットがあるということを、足立さん、お認めになりますか。

大臣政務官(足立信也君)

 同感でございます。

小池晃君

 厚生労働省にちょっと数字をまた聞きたいんですが、Hibワクチン、肺炎球菌ワクチンの定期接種化公費助成について、国に寄せられた意見書は何件あるのか。

 それから、先ほどもちょっと質問あったようですが、多くの自治体で費用助成しているんですけれども、実際に費用助成している自治体は幾つあるのか、お答えください。

政府参考人(上田博三君)

 平成二十一年度にHibワクチン及び肺炎球菌ワクチンの定期接種公費助成に関する意見書として地方自治体から厚生労働省へ提出されました件数は、合計四百六十五件でございます。

 また、費用助成を行っている自治体の数でございますが、財団法人予防接種リサーチセンターが全国の市町村を対象として行い、平成二十二年三月三十一日に公表した調査結果でございます。これは、このリサーチセンターのホームページにも掲載されておりますが、Hibワクチンにつきましては九十六市町村、小児肺炎球菌ワクチンについては三市町村となっているところでございます。

小池晃君

 今、全国の自治体で費用助成が広がっていて、鹿児島県の伊佐市、北海道の豊浦町など、四自治体で全額補助をしています。

 さきの百七十三国会では、参議院のこの厚生労働委員会、当委員会では、細菌性髄膜炎ワクチンの公費による定期接種化の早期実現に関する請願、これも採択をされています。

 いずれもこれは常在菌でありまして、乳幼児期に感染のリスクが高い。ワクチンの接種は、やっぱり長期間にわたって待つわけにはいかないと思うんですね。

 私、大臣にこの問題についてやっぱりお聞きをしたいんですが、今は任意接種なわけです。そうすると、高い接種費用が掛かってくる。お金のあるなしで命が左右されることになりかねないんですね。私どもお母さん方から陳情を受けたときは、子供は社会の宝なんだから、政治家はそういうことを言ってほしいんだというお話を聞きました。

 大臣も、三月二十三日に細菌性髄膜炎から子どもを守る会の皆さんから要望書を受けて、実際に昨年の十二月に次男をHib感染による髄膜炎で亡くされたお母さんの声をお聞きになっていると思うんです。この方は、長男のときは大丈夫だったし、まさかこんな大変な病気があるとは思わなかったんだというふうにおっしゃっていて、それが予防接種で防げるということも知らなかったんだと、無念の気持ちを大臣にも語られたというふうに聞いています。

 欧米先進国に既に二十年前後遅れていますし、更にここからやっぱり一日遅れるだけでも更に救える命が救えないということにこれはなっていくと思うんですね。この問題はもう党派を超えてこの委員会でも声が出されていて、部会の検討を踏まえて判断だということに答弁なっているんですが、まとまるまでは政府としては見守るだけという姿勢では私はいけないのではないか、やはり政治のイニシアチブで部会での審議も加速をしていくということをしっかりやっていくと。政治としてのイニシアチブを果たして、一日も早くこれは定期接種化をすべきではないかというふうに考えますが、大臣、どうですか。

国務大臣(長妻昭君)

 この部会にただ我々もお願いしてその後何もしないということではございませんで、もちろん今の小池委員の御指摘も部会に伝えてまいりますし、国会で御議論いただいた中身も部会にお伝えする。そして、私どもといたしましても、先ほど来申し上げておりますこの三つのワクチンというのは優先順位は高いというふうに考えておりますので、それについても法定接種の問題、そして公費助成の問題についても御議論を急いでやっていただこうというふうに考えておりますが、ただ、もちろん総合的に考える安全性の問題もございますので、それについては適切な結論をいただくような時間も一定程度は必要だというのも御理解いただきたいと思います。

小池晃君

 副反応の問題での厚生科学研究の数字も今日初めて私もお聞きしましたし、そういう点でいうと、いろんな問題、クリアされる問題はクリアしてきているんじゃないか、何よりも世界ではもう定期接種の流れが常識になっているようなそういう予防接種ですから、やはりこれは一刻も早く実現をすべきだということを重ねて申し上げたいと思います。

 それから、一点お聞きしたいのは子宮頸がんの問題ですが、これも二十歳代の女性では乳がんを抜いて発症率が一番高いがんになっていて、年間一万五千人以上が発症して三千五百人が命を落としています。これも百か国以上でワクチンが使われている。先進三十か国で公費助成が行われています。独自に助成を行っている自治体もありますし、日本産婦人科学会、日本小児科学会も、十一歳から十四歳の女子に公費負担を、接種するように求めています。それから、民主党のインデックス二〇〇九、医療政策、ここにも子宮頸がんワクチンの任意接種に対する助成制度を創設しますというふうにかなり明確に書かれているわけで、先ほど三つのワクチン優先だとおっしゃったんですが、大臣、重ねて、やっぱりこの子宮頸がんについてもこれは公費助成を検討するべきではないかと思いますが、いかがですか。

国務大臣(長妻昭君)

 これについても、予防接種法に位置付けるか否かについて、これは予防接種部会で御議論をお願いしているところでございます。いろいろな観点から御議論があると思いますけれども、この子宮頸がんのワクチンについては、これに効くウイルスというのが欧米では子宮頸がんの原因に占める割合が八割から九割でありますけれども日本では五〇から七〇パーと限定的であるなどの報告もございますが、いずれにしても、これは予防接種部会で先ほどの三種、優先順位の高い部類として御議論をしていただいているところであります。

小池晃君

 五割から七割というのも十分高い数字なんですよね。これはやっぱり守れる命はしっかり守るというのは政治の責任ですから、しかもマニフェストで言っていたことですから、これはきちっとやっていただきたいと。そこでこそ政治主導という役割を果たしていただきたいとお願いしたいというふうに思います。

  〔理事小林正夫君退席、委員長着席〕

 それから、感染症説もある病気についてちょっと今日最後にお聞きしたいんですが、慢性疲労症候群という病気です。

 これは、日常生活に重大な支障を来す強い疲労が六か月以上持続する、微熱、頭痛、睡眠障害などと言われていますが、本当に症状はもっともっと深刻な患者さんがたくさんいらっしゃいまして、今日傍聴にも来ていただいています。大臣の後ろに車いすで来ておられる女性です。

 先日四月六日には、国会の議員会館内で、大臣にも昨日お届けするようにお渡ししましたけれども、アメリカのドキュメンタリー映画、アイ・リメンバー・ミーという映画を上映をして当事者の訴えもお聞きをしました。

 今日傍聴に来ていただいている女性も、今寝たきりの状態で、これは二十数年前にアメリカ留学中に発症して、留学を継続できなくなって帰国をされています。今は介助がなければ食事を取れない、車いすは背を倒して横になると、そういう状態で乗っておられるという病状がずっと続いているんですね。本当に、私もお会いして、本当に深刻な状態なんだなということを実際初めて見て実感をいたしました。

 これ、仕事を辞めざるを得なかったり、引きこもりになったりという患者さんも大変多いというふうに言われていて、文部科学省の研究班が二〇〇四年に大阪府内に住む一万人を対象に実施した調査、これでは、この症候群の基準に合致する人は全体の〇・二六%ということで、国内就労人口に当てはめると約二十四万人がこの病気の患者であるという試算も行われています。

 潜在的な患者さんも非常に多いと、病状が深刻化すると本当にもう車いす、寝たきりのような状態になる大変な病気なんですが、政府としての対策についてどのようなことを行っているか、お答えください。

大臣政務官(足立信也君)

 厚生労働省では、平成三年から全部数えると七つぐらい、ずっとこの件に関して実態調査や病気の原因、あるいは特徴について研究を進めているんです。しかし、明らかな原因というのは分かっていないということで、かつその診断、現在の診断基準が一般的な症状になっているものですから、これでは明確にならないということで、平成二十一年度より三年計画で、例えば客観的に、血液データなどの検査データを用いた客観的な診断基準が作れないのかというような研究を今行っているところでございます。

小池晃君

 研究班を立ち上げていることは評価できるんですけれども、この間、政府の研究も何度も中断をしているんですね。やっぱり非常に不十分ではないかというふうに率直に言わざるを得ません。今回の研究班も現場の医師が一生懸命訴えて努力で認められたわけで、国が、今までの政権がこの病気に積極的に取り組んだとは私は言えないというふうに思うんです。

 先ほど紹介した女性の場合も、これは寝たきりになったために車いすを申請したんだけれども、市の窓口に寝たきりという診断書を出しても、慢性疲労症候群で寝たきりになるというのは信じてもらえなかったと。何度もやり取りした結果、二年掛かってようやく車いすを出してもらったと。見た目は普通の人と変わらないので、ハローワークで相談しても理解してもらえずに怠けているんじゃないかと言われている、そういう患者さんの訴えもたくさん寄せられています。

 今日お配りしたのは、アメリカのCDCがホームページで紹介しているパンフレットなんですけれども、このパンフレットにも、アメリカでは百万人以上の患者さんがいるんではないかという紹介もされていて、六百万ドルの資金を投入して、テレビ、ラジオのCM、ホームページ、パンフレット、こういう啓蒙活動をやっているんですね。

 日本でも、やはりこういった例に倣ってしっかりした戦略が必要なのではないか。難病指定に向けて取り組む、あるいは障害者施策の対象になる深刻な症状を持つ病気だということをやはり周知、広報啓発活動を行っていく。大臣、こういう取組をやはりやっていくべきではないかというふうに考えるんですが、大臣、いかがですか。大臣答えてください。

国務大臣(長妻昭君)

 先ほども御答弁いたしましたように、平成二十三年度までの研究で、この客観的な診断基準を作成するために関西福祉科学大学の先生を中心に研究をお願いをしているということであります。

 そして、今おっしゃられた、こういう慢性疲労症候群ということが広く国民の皆さんがまだ御存じない方が多いということで、先ほどの役所の対応などもございまして、我々としても、今おっしゃられた患者さんの人数のお話もございまして、数十万人になる可能性があるんではないかということで、その数の正確な今把握もできておりませんので、それについても、我々、今後、実態把握をすべく取り組むと同時に、広報についても、ホームページ等々も活用しながら更に広報を強化をしていきたいというふうに考えております。

小池晃君

 是非、例えばイギリスでも保健省がホームページで慢性疲労症候群の紹介をしている、必要な情報を提供する、そういったこともやられております。今、何十万人もいる可能性があるという答弁もありましたし、これはやはり大事な病気であるという認識を厚生労働省としてもお持ちだという答弁だったというふうに受け止めますので、まずはしっかりこういう広報活動、啓発活動などを諸外国の例なども踏まえてやっていただきたい。それから、深刻なやっぱり実態が広がっていますから、実態把握を進めていただきたい。この研究班についてもしっかり国としても支援を進めて、この問題に対する取組を強めていただきたいということを最後に重ねて訴えまして、私の質問を終わります。

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