2010年174通常国会:速記録

予算委員会 2010年年度予算案に対する基本的質疑


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2010年3月4日(木)

委員長(簗瀬進君)

 次に、小池晃君の質疑を行います。小池晃君。

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 政府は相対的貧困率の数字を、これは初めて発表いたしました。九七年以降、最悪であることが明らかになったわけです。雇用破壊による非正規労働者の低賃金、これが配分の問題、これに加えて所得の再配分、すなわち税や社会保障の問題、そういった再配分の機能を果たしていないということが明らかになってきています。(資料提示)

 これはOECDが発表した数字をグラフにしたものでありますけれども、これを見ますと、そもそも税や社会保障を入れない、いわゆる市場価格での市場賃金、市場所得での貧困率は日本はそんなに高くないんです。ところが、税や社会保障の負担を加味すると高くなってしまうと。言い換えると、まさに、本来は税や社会保障というのは貧富の格差をなくす、貧困率を減らす役割があるにもかかわらず、その役割が発揮をされていないと。

 総理にお聞きしたいんですが、これはまさに長年の自民党、公明党の政治の下で社会保障の負担増、これがやはりこういう事態を生み出した。だったら、根本的なやっぱり転換が求められていると思いますが、総理、いかがですか。

内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)

 小池委員にお答えいたします。

 今拝見させていただいて、確かに、税や社会保障、保険料、こういったものが所得再配分機能をうまく果たしていないなと。むしろ、そのことによって、世界的に貧困率を比較的に高い状況にしてしまっているということは、これは事実として認めなければならないことだと思っております。それが、旧政権にすべての責任というものを見出すというのもいかがなものかと思ってはおりますが、この問題の解決に向けて努力をする必要がある、すなわち所得再配分機能というものをもっとうまく働かせていくようなシステムを構築をする必要があると、そのように考えます。

小池晃君

 そうだとすると、この重い負担をどう考えていくのかということが問われる。今日は最も重い負担の典型として国民健康保険の保険料の問題を取り上げたいんですが、収納状況を御説明ください。

国務大臣(長妻昭君)

 国民健康保険料、国保の収納状況は、平成二十年度の保険料の収納率というのは全国平均で八八・三五%となりまして、前年度比二・一四ポイント低下しております。

小池晃君

 これは国民皆保険制度となって以来最低、ついに八割台になりました。その根本が高過ぎる保険料にあるわけで、今パネルでお示ししておりますが、例えば所得三百万円の夫婦子供二人世帯、四人世帯で、札幌市で四十一万三千円、さいたま市で三十七万二百円、京都市で四十四万五百円、大阪市で四十二万八千七百円、福岡市で四十四万八千五百円。

 総理、この保険料のこの数字御覧になって、率直にもう所感で結構ですから、これ払える水準の保険料だと思います。

内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)

 所得三百万の方が、その一割以上の保険料を払わなければ、国保を払わなきゃならないというのは、やはりこれは率直に申し上げて相当高いなという実感はございます。

小池晃君

 そのとおり、本当に払える能力を超えている保険料になっている。問題は、この原因は一体どこにあるのかということなわけです。最大の原因は、やっぱり国保会計に対する国庫負担を引き下げてきたことにあるのではないか。

 今グラフをお示しをしておりますが、一九八四年には約五割、五〇%だった国庫負担率が、ついに二五%にまで下がりました。これは国保会計全体に占める国庫負担の比率です。その間、一人当たりの保険料が約四万円から八万円に、これ二倍になっているわけですね。

 来年度予算についてお聞きしたいんですが、この保険料を引き下げるための手だては新たに何か盛り込まれていますか。

国務大臣(長妻昭君)

 そこのグラフでは二五%ということで、国保の財政全体の中の国庫負担だと思いますけれども、基本的に国保の保険料とほぼ同じ額の国庫あるいは公費負担がなされているということで、平成二十二年度予算では、根っこからいいますと三兆円以上の国庫負担の予算を付けさせていただいて、それに加えて、これまでも暫定措置が切れる市町村に対する低所得者の人数に応じて支援する制度を継続をするというようなことも盛り込んで、そして一つの目玉というかポイントといたしましては、自発的な離職者じゃない方、つまりこれは、解雇をされた、あるいは雇い止めになった方というのは保険料が前年の所得で計算されますので、無職になってもかなり高い保険料を払わなきゃいけないと、こういうようなことがございまして、それに関して優遇措置を設けようということで、前の年の所得の七割を引いた額、つまり前の所得の三割に保険料の算定をするということで、実質的に保険料が多くの方が半額程度になると、こういうような措置も盛り込ませていただいているところです。

小池晃君

 いろいろ並べられたんですけれども、かなりの部分は自公政権時代の継続なんですね。新しくやるものは失業者の今の保険料軽減なんですけど、これは国費としては幾ら投入するんですか。

国務大臣(長妻昭君)

 これは国費としては四十億円で、そこに地方財政措置をいたしますので、トータルでは二百八十億円投じますけれども、これは私どもが選挙の前にも申し上げていたことでございまして、期せずして失業された方の国保の保険料につきまして軽減をする、おおむね半分になるという措置であります。

小池晃君

 四十億円ですからね、これはもうほとんどスズメの涙の話なわけです。今まで低く保険料を抑えてきた自治体の中にも、この春から引上げの動きが今ありまして、例えば、全国調査をやったんですが、新潟市は先ほど示したケースで三十六万八千九百円が三十九万七千八百円、東京二十三区も平均で七・二%の引上げということになっている。しかも、この高い保険料を払った上、病院にかかると三割負担。こんな国は世界にないわけですよね。

 厚労省の国保収納率向上アドバイザーを務めている小金丸良さんという方は、国保新聞の紙上でこう言っているんです。国保は社会的弱者が多いという最ももろい体なのに、最も重い負担になっているという矛盾が最初からあったと。そもそも、担当者がこれほどにも収納率の維持向上に血道を上げざるを得ないこと自体が、社会福祉の制度としてはどこかに欠陥があることを物語っていると。そして、これは派遣労働の規制緩和など、緩和緩和の二十年という国策がもたらした結果でもあるのだから、国策すなわち公費によって国保を少しでも福祉の基本としてのあるべき姿に近づける努力をすべきではなかろうか、私ももう本当にそのとおりだというふうに思うんですよ。

 総理、この国庫負担率こう下げてきたと、ここにやっぱり原因あるわけだから、命を守る政治をやると言うのであれば、やっぱりここを引き上げていくと、そして保険料を下げていくと、こういう姿勢を示すべきじゃないですか。総理、いかがですか。

国務大臣(長妻昭君)

 私も、医療崩壊を防ぐ、そして急激な保険料の上昇を防ぐということも必要だということで、医療崩壊については十年ぶりに診療報酬ネットプラス実現し、極力、特に国保、財政力が弱いということで、今申し上げたような財政措置やこれまでの優遇政策を継続をするということが大前提であります。

 そして、あのグラフでは、全体の国保財政の中に占める国の負担ということで、かなり減っている、比率が減っているということになっておりますけれども、実額としては、国庫負担の実額を減らしているわけではありませんで、非常に国保財政が厳しいので、健保連とかあるいは共済とか、そういうところの御支援もいただいて全体の比率がそういうふうになっているわけでありますけれども、いずれにしましても、医療の適正ということにも努めながら、これらの問題についても医療の質を上げると同時に取り組むべき課題だと思っております。

内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)

 命を守るという立場から申し上げれば、特に所得の低い方々にとって相当厳しい保険料になっているなというのは実感として私も伺ったところでございます。

 ただ、財政の厳しい状況の中という問題があります。その中でどのように工面をするかということでございまして、国庫の負担率がここまで下がっているからもっと上げるべきではないかというお話も、それはある意味で、上げることができればそのとおりではないかというふうにも考えているわけでございますが、今、長妻大臣が申したとおり、大変財政的な額の厳しさということを考えた中で、それほど簡単な話ではないと思っておりますが、まずは特に低所得者の方々の保険料というものに対して何らかの更なる知恵というものを編み出すことが必要ではないか、そのように考えます。

小池晃君

 おととしの国会で後期高齢者医療制度廃止法案を出したときには、民主党の提出者である鈴木寛議員は市町村国保について、一番ダムの危ないところは国民健康保険だ、制度上は手当てされているけれども、本来そこに真水が投入されなければいけないのに断水がされている、九千億円弱の予算措置を我が党が政権を取った暁にはさせていただくと、こうおっしゃっていた。

 ところが、実際に政権に着いて最初の予算で後期高齢者医療制度の廃止も先送りになっている。そして、国保料、この財政措置もわずか四十億円という制度が入れられただけだということであります。

 例えば、四千億円の国庫負担を投入すれば国保料を一人一万円下げることができる、私どもはこういう提案をしていますが、いきなり全部すぐにも今年戻すという、それはできません。できないとしても、やっぱり私はこの国庫負担を、これがやはりその国保料を引き上げてきた原因なんだから、政治の意思としてこれをやっぱり上げていくという方向、これを示していただきたいと思うんですが、その政治の意思、ございますか、どうですか。あるのかないのか、はっきり総理にお答えいただきたいと思います。総理でいいですよ。

国務大臣(長妻昭君)

 一点だけ申し上げますと、今年の四月からまた新たな保険料について、年収の高い方については最高保険料の額を上げようということで、今まではどんなに年収が高くても年間の保険料の上限は五十九万円でございましたけれども、それを年収が一定以上の方は年間保険料の上限を六十三万円にするということで、そういうところからも御協力をいただいて、何とかこの国保について負担の軽減ということにも取り組んでいるところであります。

小池晃君

 聞いていないことに答えないでくださいよ。長妻さん、野党のときだったら絶対そう言っていますよ、聞いていないことに答えるなって。もう官僚があきれるほどの官僚答弁だと私は思います。

 総理、私は政治の意思を総理に聞いているんです。引き上げようという方向をやはり示すべきじゃないですか。いかがでしょう。

内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)

 御案内のとおり、財政状況が大変厳しいという現実はございます。しかし、このような中で、今、小池委員からお話がありました。この問題は看過できない部分だと、そのように考えておりまして、財源の確保に努力をしてまいりたいと、そのように思います。

小池晃君

 来年度、来年度というか四月から、国保だけじゃなくて、これは政管健保、いわゆる今は協会けんぽですが、中小企業の保険料の引上げも平均で四万三千円もの大幅なものです。労働者だけじゃなくて、これは中小企業事業主にも重い負担増になるわけで、こういう負担増はもってのほかであるということも併せて申し上げたいし、やはりこの問題を解決する方向をしっかり示して進んでいただきたい。

 それから、高過ぎる保険料を払えない方から保険証の取上げも続いて、深刻な事態が今生まれているわけです。

 全日本民主医療機関連合会が保険証の取上げなどの無保険状態の死亡者についての全国調査をやっております。札幌市で大工を営んでいたEさん、一年半前からおなかの痛みを感じていたけれども、日給月給の仕事で国保料が払えない。保険証を取り上げられて資格証明書になった。資格証だと十割払わなければいけないから病院には行けない。痛みは強まり、食事ものどを通らなくなって六十二キロの体重が四十八キロになったが、お金がないので受診できない。知人の紹介で北海道勤医協の病院で無料低額診療をやっていることを知って受診したけれども、既に膵臓がんは進行していて全身転移で間もなく亡くなられた。こういうケースが四十件以上寄せられております。

 それから、保険料を払えずに、その保険料の厳しい督促、保険証の取上げで自殺に追い込まれた方もいらっしゃいます。東京板橋区の二十九歳の男性は、食べるのがやっとで国保料も国民年金保険料も払えなかった。滞納していて、毎月のように督促状が届いていたと。区役所に行って分納する約束もしたんだけれども、結局支払うことができなかった。差押えもあり得るという厳しい督促状が送られ、保険証の代わりに資格証が送られ、その一か月後に自ら命を絶っています。男性の部屋にはこの督促状の束が置かれていた。総理、見てください。これがその督促状の束です。破り捨てられた督促状もお部屋には残されていたそうです。

 総理、保険料を払えなければ医療保険の保険証まで取り上げられ、まともに病院もかかれずに命を落としてしまう、あるいは保険証を取り上げられて、厳しい督促で自殺に追い込まれる、私はこんな国であってはいけないと思うんですよ。国民健康保険法は改悪されて、保険証の取上げが市町村の義務になる、これは九七年、自社さ政権のときです。総理も、この法案には旧民主党におられて賛成をしております。

 総理、こういう事態が全国に広がったということについて胸の痛みを感じませんか。いかがですか。総理、お答えください。胸の痛みは総理しか分からないでしょうから。

委員長(簗瀬進君)

 長妻昭厚生労働大臣、まず御答弁いただきます。

国務大臣(長妻昭君)

 まず現状を。

 本当に今おっしゃられるように、そういう措置で自殺に追い込まれるということは、これは、こういうことはもうあってはならないというふうに考えております。

 今現在とっている措置としては、これは野党時代、私どもも与党の皆さんとも協力して、まずは中学生までについては保険証を取り上げるということはしないと、こういうことになりました。それでも不十分だということで、今年の七月からは、高校生までの方については保険証はもう取り上げないということにいたしました。そして、政権交代後、私が通知を出させたのは、後期高齢者、七十五歳以上の方についても実質的に保険証を取り上げることはやめましょうというような措置の通知を出しまして、今一件もまだそういう取り上げられた七十五歳以上の方は出ておりませんで、そういうものもした上で、それ以外の方に関しては、払えるのに払わないということが本当に証明できた場合以外は慎重に取り扱っていただきたいということをお願いをしているところであります。

内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)

 胸の痛みは、当然人間ならば感じると思います。

 ただ、今お話がありましたように、徐々に広げていっているということでございまして、これを取り上げる制度をすべて廃止をしてしまうということになると、だれが保険料を払うかという話になりかねないわけでございまして、やはり保険料を払っていただかなければならない制度でございますので、その制度自身を残すために何らかの措置は必要だということで広げているところでありますが、根幹の部分をなくすということはまだ今の段階ではできないのではないかと。

 そして、今、長妻大臣からお話ありましたように、本当に払えないんだということが証明をされるかどうかということが一つの観点としてあるのではないかと思います。

小池晃君

 胸の痛み、一般的に聞いたんじゃないんです。この法案を作った、法律を作ったわけですよ、義務化すると。悪質だと言うけど、三十四万世帯ですよ。日本の三十四万世帯がそんなに悪質な人ばかりなんですか。私は、日本というのはそんな国じゃないと思います。かなり機械的に出されている自治体あるんですよ。子供に出さなくなった、それは前進です、我々も要求してきた。それが一歩一歩進んでいる。

 しかし、私は、やはりこういうやり方はやめるべきではないか。見てください。だって、国保証の発行がどんどん増えているけれども、その増え方に対して収納率下がっているわけですから。これは、滞納対策としてだってこれ破綻しているんですよ、こんなやり方は。

 実際私、さいたま市の国保の担当者に聞きました。医療保険継続するのが優先なんだと。保険料の滞納があれば窓口に来ていただくんだと。支払能力ある方にはきちんと措置をとると。払いたくても払えない人には事情をお聞きして、分納するなど相談に乗ると。いずれにしても、とにかく滞納者に会うと。これが大事なんだと。滞納者に会えば、これ解決するから、だから資格証は必要ないんだと。そう言って、さいたま市では今、資格証の発行ゼロなんですよ。

 私は、こういう自治体の努力を後押しすることこそ求められているというふうに思うんです。友愛の政治だ、命を守ると言うんだったら、もうこういうのはやめていこうじゃないですか。どうですか。総理、お答えいただきたい、最後に。

内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)

 埼玉県の状況などもよく勉強させていただきたいと思っています。

小池晃君

 是非、こういう本当に命を守るべき医療保険の負担が重過ぎて病院にかかれずに命を落とす、あるいはそのことを苦にして自ら命を絶つ、こんな国じゃいけませんよ。これを正すのがやっぱり新しい政権の責任じゃないですか。そのことをきちっとやっていただきたいということを求めて、質問を終わります。

委員長(簗瀬進君)

 以上で小池晃君の質疑は終了いたしました。(拍手)

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