- 小池晃君
日本共産党の小池晃です。
子ども手当創設、今年については、これは十五歳以下の扶養控除廃止されますが、来年度中は負担増になる国民はほとんどおりませんので、その限りにおいて、来年度の範囲で私ども賛成しておりますが、これは問題は二〇一一年以降です。配偶者控除や成年扶養控除について見直すということが税制改正大綱でも明言されているわけですが、配偶者控除、扶養控除の廃止というのは、これは低所得者にとっても、総理、重い負担になると思いますので、やはりこれは行うべきではないと思いますが、総理、いかがですか。
- 内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)
私どもは、年少者に対する扶養控除というものに関しては、これは控除から手当へという方向で決めたところでございます。
この成年扶養控除あるいは配偶者控除に関しては、見直すということには取り組むことにいたしておりますが、まだこれは国民の世論などもしっかりと受け止めてまいらなければならないことだとも思っておりますし、今お話がありましたような事情、特に低所得者の方々に大変厳しい、結果としての増税という効果になる可能性もあるわけでございますので、ここは十分に議論を深めて取り組んでまいらなければならないことだと、そのように基本的に考えております。
- 小池晃君
総理はそういう認識示されたんですけれども、菅財務大臣が衆議院の本会議で我が党議員の質問に対して、各種控除の拡充によって所得再配分機能が低下をしているんだという答弁をされておりまして、これは要するに控除の拡充で課税最低限の引上げが行われて所得再配分機能が低下していると。控除の拡充が所得再配分機能を低下させるというのは、私、全く理解できないですね。
総理もこういう、所得控除というのは高額所得者、まあ今の答弁だとちょっと違う感じなんですが、菅大臣のちょっと認識と違うようなんですが、いかがですか。総理の認識をお伺いします。
- 内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)
この菅大臣の発言でありますが、各種控除の拡充によって課税最低限の引上げが行われてきていると、その結果、所得再配分機能が低下しているということが述べられているわけでございます。
課税最低限が引き上げられてしまうということによって所得再配分機能が低下しているという実態はこれは事実としてあるのではないかと思っておりますが、むしろ所得控除というものは、基本的には控除額が同じ額の場合には高所得者ほど税負担軽減額が大きくなるという点はあると。したがって、そういう意味でその拡充が所得再配分機能に影響を与えてきた面もあると思っています。
ただ、私が小池委員に申し上げたいのは、私どもは、やはりただ単に控除というものを廃止をするということだけではなくて、控除から手当へという、これをセットにするべきだと基本的には私はそのように考えておりまして、そのことによって所得再配分機能というものを回復させるということができると認識をしております。
- 小池晃君
私も所得控除を手当と比較したらば、それは高額所得者に所得控除の方が有利であるというのは、それは当然そうだと思うんですよ。そういうことを議論しているわけじゃなくて、菅大臣の答弁というのは、所得控除自体が高額所得者優遇というふうに考えておられるような、そういう答弁だったものですからただしているわけであります。
今、額として高額所得者ほど控除による減税は大きくなるというのは事実、それは事実です。しかし問題は、増税というのは絶対額もありますけれども、増税の率ということが負担感としてはあるわけです。例えば、配偶者控除が廃止されれば、夫婦のみの世帯で年収三百万円の所得税、住民税の増税額は五万四千五百円、これ収入に占める割合は一・八%ですが、これに対して年収一億円の場合は十八万五千円で、額は大きいですが、所得に対する比率で言うと〇・一八五%にすぎない、十倍も違うわけです。ですから、配偶者控除の廃止による増税というのは、私は決して高所得者ほど重いというそういう増税ではないというふうに思うんですが、総理、認識いかがですか。
- 内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)
まさに、額においては高額所得者の方が大きいと思いますが、率からすれば低所得者の方が率が高くなるということは事実として存在すると思います。したがいまして、この議論はただ単に、あるいは税収を高めるという思いの中での控除というものを見直すという方向だけではなくて、控除から手当へというワンセットの中でしっかりと議論することが求められているのではないかと重ねて申し上げておきます。
- 小池晃君
だから、それは分かるんです、セットであればと。だから、配偶者手当を出すために配偶者控除を廃止するわけじゃないわけで、これ全く手当違うわけですから、これはその分野においては私は議論は成り立たないと。
ということでいうと、やっぱり配偶者控除の廃止というのは、これはやはり問題であるというふうに思いますし、私はやはり高額所得者優遇の仕組みを見直すというのであれば筋が違うと。そうであれば、この間もう累次にわたって行われてきた高額所得者に対する最高税率の引下げ、ここをやっぱりきちっと見直していくということによって財源を生み出すべきであって、やはり子育てを終えた世帯あるいはお子さんのいない世帯に負担を押し付ける、こういう形で財源をつくるというのは間違いであると。だから、私はやっぱり子育て支援の財源というのは、本来の税の在り方、この間やられてきた大企業減税あるいは大資産家減税の見直し、あるいは歳出の面でも、この間メス入っていません軍事費の問題、こういったことにメスを入れて財源つくるべきだと思うんですが、大臣、いかがですか。
- 内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)
軍事費の話になると多少意見を異にするところがありますが、それまでの議論はなかなか私は傾聴に値すると理解をしております。すなわち、やはり配偶者控除というものを、ただ単にそれを廃止して済むという議論は、なかなかこれは慎重にされなければならない議論だと、私もそのように考えているところも付け加えさせていただきます。
ただ、見直すという場合に、私も確かに大資産家に対する優遇税制とか、いわゆる株などの配当の優遇税制などというふうなものとか、あるいは所得税における最高税率の見直しという議論は、これから大いに税制調査会などを中心に行うべきだと思っております。
ただ、軍事費ということになれば、私はこれはかなりぎりぎりの予算、〇・三%増額、今回なったということでありますが、これは子ども手当が中に含まれているので、実質は軍事費というか防衛費も減少しているというのが実態だと思っておりまして、なかなか専守防衛の中で私どもがこれ以上の防衛費というものを今削減するという状況ではないと理解をしております。
- 小池晃君
最後の問題はちょっとやっぱり私も意見を異にするんですが、今年の防衛費、軍事費の中で一番増えているのは米軍再編経費ですから。米軍再編経費が四百八十億円増えていますから。これは、グアム協定のときに野党時代民主党は反対しているわけですから、やっぱり私はこの問題でも間違っているというふうに言っておきたいと思います。
それから、控除の問題は、ほかの料金、例えば難病の医療費やあるいは保育料などに波及する、これは政権でも検討するとおっしゃっているんで、こういう波及はしっかり抑えるということはきちんとやっていただきたいと思います。
それから、ちょっと一点、予算委員会で私質問通告して時間切れでできなかった問題があるんですけど、シベリア抑留者の特別措置法ですね。これは私、総理と一緒に毎年の慰霊祭にも御一緒に参加をしてきて取り組んできた経過があって、私はやっぱりこれは本当に一刻を争う問題だというふうに思うんです。本来であれば、前の国会で提出されて成立をしてしかるべきだったはず。
私は、旧ソ連による国際法違反の強制抑留によって極寒の地で苦しめられた人々に対するこの法案の成立、是非今国会で一秒一刻を争って実現をさせたいと思うんですが、総理のこの問題に関する御決意も伺いたいと思います。
- 委員長(柳田稔君)
時間ですので、お答えは簡潔にお願いします。鳩山内閣総理大臣。
- 内閣総理大臣(鳩山由紀夫君)
この話になると長くなりそうなんで簡潔にという委員長の御指摘でありますので、簡単に申し上げます。
祖父がある意味でシベリアの最後の抑留されている方々を日本に復帰を申し上げることができたと。しかし、その方々の御労苦に対してまだ完全に報いていないという思いは私も共感しているところでございまして、もうこれが最後のチャンスだと、皆さんお年を大変召されているということもあって急務だと理解をしている中で、政府として、これは長妻大臣も大変関心を持って行動してくれておりますが、我々としてもできる限りこの政権の中でしっかりとした解決を示してまいりたいと、そのように思っております。
--以下締めくくり質疑
- 小池晃君
日本共産党の小池晃です。
ちょっと冒頭、保育所の入所待機児童数、昨年十月の数字が本日発表されまして、四万六千五十八人ということで、昨年同月よりも五千人以上増えておりますが、この数字についての大臣の御所見と、やはりこの委員会でも繰り返し議論になってきたように、この問題の解消というのは子育て支援の中で待ったなしの課題になってきていると思いますが、いかがでしょうか。
- 国務大臣(長妻昭君)
これ毎年、厚生労働省、保育所の待機児童数を四月と十月の数字を発表させていただいているということでございまして、今言われたのはこの十月の分の、昨年十月でございますが、数字が四万六千五十八人ということでございまして、前年よりも、おっしゃられるように六千人弱増えているというような現実がございます。
これは、少子化の流れの中で、働く親御さんが増えたというのが一つ大きな原因だというふうに考えておりまして、我々は、ここの委員会でも御指摘いただきましたように、現金のみならず現物給付で計画を立てておりますけれども、さらに分園とか空き教室、公民館あるいは公営住宅などなど、あるいは小池委員からも御指摘いただいた遊休地の問題なども財務省と協議をしておりまして、そういう、全力で保育サービスの充実というのも図っていきたいということであります。
- 小池晃君
認可保育所の設置を基本に解消を図っていくということで進めていただきたいと思います。
それから、子ども手当の創設に伴って学童クラブの財源がどうなるのかが心配されていたわけですが、来年度は今年と同様に児童手当勘定で実施されることになりまして、この委員会の質疑の中でも大臣は、放課後児童クラブを始めとする児童育成事業は非常に重要だと、もちろん継続していくんだという答弁もされています。
学童保育は本当に重要で、小一の壁という言葉もあるように、保育から学童保育に移った途端に時間や規模やあるいはその内容が後退してしまうということが問題になっておりまして、これは質の問題では、これまで最低基準がなかったわけです。二〇〇七年には、放課後児童クラブガイドラインを国は作りまして、子ども・子育てビジョンでも、これを踏まえて向上というふうになっているんですが、これ、法的拘束力がないわけです。ガイドラインで定められた基準が守られない、そういう事態が発生をしておりまして、例えばこのガイドラインでは規模の上限七十人というふうにしているけれども、七十一人を超えている施設が一割を超えておりまして、詰め込み学童保育、過密保育の問題は深刻です。
大規模学童解消のために、国はいったん七十一人以上の大規模学童に対する補助金を出さない方針出したんだけれども、こういう方針出ても、例えば立川市、多摩市、横浜市など、幾つかの自治体では全面解消の方針を持っていない。何でかというと、これ、最低基準がないというのが一つあるわけです。それから、補助金もらっても余りにそれが少ないので、補助金をもらうために分割をするよりも詰め込んだ方が財政負担が少ないという、こういうことになってしまっているわけですね。こういう中で、やはり学童保育の基準を地方の自主性だけに任せていては質の向上を図ることはなかなか困難ではないか。
私、大臣に、この学童保育の問題について、国としてやはり何らかの拘束力を持っている基準を定めることを検討すべきではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
- 国務大臣(長妻昭君)
今言われた小一の壁というのが解消される必要があると。保育所から小学校一年生になると、夕方の預かりというのが手薄になってしまうんではないかという問題でありますけれども、これは新システム検討会議、子ども・子育ての、その会議が設置をされまして、その中で幼保一体化とともに私は議論されるべき点は今おっしゃられた放課後児童クラブと。文部科学省も、これは学習の一環で放課後延長的な教育をやっているという部分もありますので、それも一体的にやはり文部科学省と厚生労働省のいろいろ重なる部分について見直しをしていく必要があるというふうに考えております。
その際、その基準についても一つの論点として議論が行われる必要があるというふうに考えておりまして、今はおっしゃられるように放課後児童クラブのガイドラインで、児童一人当たり一・六五平方メートル以上が望ましいというスペースもあるんですけれども、ガイドラインということでありますので、その検討会議の中で文科省と厚生労働省にまたがる問題の一つとして検討していきたいと思います。
- 小池晃君
是非こういう拘束力のある基準を作るという方向で検討を進めていただきたいと思います。
実は私の、うちの子も今年小学校に入学するんですよね。保育だと延長で七時半までなんですけれども、学童になると六時というふうになるわけで、これ、帰るときも、お父さん、お母さんで分担して、私もちょっと分担をして帰る手伝いをするとか、やっぱりこの小一の壁というのは実感もしていますので、是非やっぱりこういう点にしっかり光を当てていただきたいなというふうに思っております。
それから、保育の問題で、明日の安心と成長のための緊急経済対策で、直接契約制度、保育に欠ける要件の見直し、利用者補助制度への転換という方向が打ち出されておりますが、この利用者補助方式ということについては、これは、昨日の参考人でも話題になりましたいわゆるバウチャー方式、つまり現金を給付して、保育サービスの利用は利用者の自由に任せると。こういう制度を含むものとして厚生労働省としては考えておられるのか、それとも、それは検討には含めないということなのか、お尋ねします。
- 国務大臣(長妻昭君)
バウチャーということについて、これは衆議院の厚生労働委員会でも質疑がございまして、それも検討事項の一つであるというふうに答えさせていただいているわけでありますけれども。
ただ、バウチャーといったときにいろんなこれ概念がありますので、例えば一番自由なバウチャーという概念であれば、例えばそのバウチャーを子育て世代にお渡しして、それは民間の学習塾でも使えるし、全く民間の子ども関係のスイミングスクールでも使えるとか、幅広いバウチャーという考え方と、もう一つ、かなり限定的なバウチャーという考え方は、公的な認可保育所などでそのバウチャー的な券を保育所に出せば、その保育所に対する運営費の補助が上がっていく。つまり、園児に人気のある保育所ほど補助が潤沢に付いてくると。こういうある意味では、お母様、親御さんの非常に行きたい保育所ほど補助が厚くなって、そこが充実していくと。こういう考え方から、いろいろ考え方があると思いますので、一つの検討課題として検討するというふうに考えております。
- 小池晃君
私ども、このバウチャー制度の導入というのは、結局市場原理に任せていくということになりかねない危険性を持っておると思っておりまして、子どもの貧困が問題になっている中で、やはり格差広げるようなことについては、これは我々はやるべきでないというふうに思っております。
今もお話ありましたが、直接契約ということが検討になっているんですが、これ、昨日参考人でも出されましたけれども、今本当に大都市圏では保育所に入れずに、お母さん、お父さんが駆けずり回って、就活ならぬ保活というような状況になって、今日の数字でも待機児童の数もこれだけ増えているわけです。
直接申込み、直接契約制度というのは利用者本位だというふうに言うけれども、結局、大都市圏で起こっているような親が駆けずり回るような実態は、むしろこういうことにすれば深刻化をしてしまうのではないかというふうに思うんですが、その点はいかがですか。
- 国務大臣(長妻昭君)
先ほど申し上げたのは基本的な検討課題でありますけれども、やはり親御さんからも評価される保育所に補助が多く付いて、そこでいろいろ施設が改修されて定員も増えてくるというようなことも一つの考え方ではないのかというふうに思いますが、ただ、そういうような措置が保育所を探すのに逆に、善かれと思った措置で保育所を探すことがより困難になるということはあってはならないというふうに思いますので、そういうことも勘案して新システム検討会議で議論をしていくということであります。
- 小池晃君
保育所が充足していればそういう質の問題ということにもなってくるかと思うんですが、圧倒的に足りない中で直接契約制度というようなことになれば、私はむしろ現状のお父さん、お母さんたちの苦労を、困難を、特に大都市部では深刻にするだけだというふうに思います。
それから、直接契約の導入ということになると、これは貧困層やあるいはDV被害者など、子育てで困難抱えている公的支援の必要性の高い世帯を直撃しかねないと思うんですね。少子化特別部会でもそういういわゆる困難層については特別な配慮を行うということが検討をされていることは承知をしているんですが、お聞きしたいのは、保育料を支払うことができずに滞納した場合について、現在は、これは市町村の保育実施義務を定めた児童福祉法二十四条があるために、保育料を滞納しても退所させることができないという通知が出ているわけであります。いろんな事情の方がいらっしゃると思うんで私は今の制度は必要だと思っているんですが、こういった形での直接契約制度ということの中で、滞納があった場合に契約の解除ということを考えていらっしゃるんですか。
- 国務大臣(長妻昭君)
まず、今仮定の仮定の御質問だと思うんです。直接契約方式にまだするしないという、これが決まったわけではございません。基本的な考え方としては、やはりもうサービスが十分行き届いているものについては一定の制約という考え方があるかもしれませんけれども、事保育の分野に限ってはまだこれサービスが不十分でありますので、基本的には今の考え方よりも、それを更にサービスを低下をさせるということについては非常に慎重に考えなければならないと思いますので、そういうことも含めてこの検討会議で議論をされるということになります。
- 小池晃君
この間、例えば介護保険制度にしても障害者にしても、契約制度的なもの、あるいは契約制度を導入してきた。その中で、やっぱり基盤整備が遅れているときにこんなことをやれば利用者にとっては本当に大変な事態になるんだということは、これは民主党の皆さんも指摘をされてきたことではないかなというふうに思っていまして、やっぱり保育の分野、特にやっぱりこういう基盤が立ち遅れている中でこういう直接契約制度ということになった場合に、やっぱり弱い者に大変な犠牲が行くことになりかねない。現に契約制度に移っている障害児の入所施設では、滞納があった場合には事業所は契約を解除することが可能だと考えるという、そういう趣旨の通知が出ていて、これ私この委員会でも問題にしたことがあるんですが、やはり利用者本位の仕組みといいながら、保育料が払えない困難な家庭から保育所の利用を取り上げるというような方向での改革というのは、これは絶対にやらないでいただきたいというふうに思っております。
以上で質問を終わります。