やめるといっていたものをすぐにやめようとしない一方で、自民党政権も手をつけなかった問題に踏み込もうとしているーー。日本共産党の小池晃政策委員長は、後期高齢者医療制度の廃止先送りと保育所の最低基準引き下げという新政権の二つの大問題を、9日の参院予算委員会で正面からただしました。
後期医療 「すぐ廃止」こそ国民の願い
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高齢者が待ち望んでいた後期高齢者医療制度廃止。長妻昭厚生労働相から返ってきたのは、厚労省の受け売りや旧政権とうり二つの主張でした。
小池氏は「まさか長妻さんの口からそんなセリフが出るとは思っていなかった」と、ただちに廃止するよう求めました。
1年半前の参議院。野党時代の民主党は4野党(民主・共産・社民・国民新)共同の「廃止法案」の成立に目の色を変え、答弁席に立って自公議員の質問を払いのけていました。賛成多数で可決した同法案は、今年の4月から後期高齢者医療制度を廃止して元の老人保健制度に戻すものでした。
それが、新政権に座るや廃止先送りの方針に転換したのです。
「時間かかる」は厚労省の言い分
小池氏 自公政権が退場し、後期高齢者医療制度も退場かと国民は思っていた。なぜ態度を変えたのか。
長妻厚労相 (システム改修などの問題で)老人保健制度に戻すだけでも2年かかることがわかった。
「廃止には時間がかかる」というのは、廃止法案の成立を食い止めるために厚労省が必死に繰り返した説明です。小池氏が「長妻大臣は役人に『2年かかります』と言われて、簡単に引き下がってきたのか」と迫ると、議場がどよめきました。
小池氏は、「何よりも大事にしなければならないのは、一刻も早く廃止してくれという国民の願いだ」と力説しました。
小池氏は新政権の弁解に、民主党自身のかつての言明も引いて反論しました。
一年半前、「新しい制度を提案しなければ無責任だ」と野党の廃止法案を批判した自公両党に対して、民主党議員が「(後期高齢者医療制度という)火事を消そうと思っている最中に新たな家の設計図をもってこないと無責任だという議論は成り立たない」と反論していました。
小池氏 まさに正論だった。いま政府がやろうとしているのは、火事が起こっているときに消そうとするのではなく、新しい家の設計図をまず作り始めようという話だ。
「まず火を消す」原点に返れ
まず火を消すという立場に立ち戻るべきだ。
厚労相 新しい制度の話は白紙からではない。6原則を設けている。
新制度への移行にこだわる長妻氏...。
第二の理由は、「老人保健制度にも問題がある」というものです。
小池氏は、老人保健制度は高齢者が現役世代と同じ保険に加入したまま窓口での負担を軽減する仕組みであり、年齢による差別の仕組みとは根本的に違うと主張。日本共産党は、老人保健制度に戻した上で、国庫負担を増やし窓口負担を無料にすることや、高すぎる保険料を引き下げることを提案しているとのべました。
保険料 際限ない値上げ
「放置すればどういう被害が広がるか」。小池氏は、後期高齢者医療制度の保険料が高齢者の人口増や医療費の増加に応じて2年ごとに際限なく上がると指摘し、東京都広域連合の試算を示しました。新政権が示している「軽減措置」を講じたとしても、来年4月には平均的な厚生年金(211万円)を受け取る単身世帯で少なくとも年に約1万円、夫婦世帯で1万2000円を超える値上げになるのです。
小池氏 新政権が「国民が第一」の政治を実現しようというなら、なぜ冷たい政治の象徴のようなこの制度をすぐに廃止しないのか。やりましょう。
鳩山首相 ですから廃止します。75歳で区別するのは信じられない発想だ。
しかし首相は、新制度ができるまで廃止を先送りにする考えを繰り返しました。
保育所 子守る最低基準廃止するな
昨年は全国でわずか16カ所 増設こそ
「チルドレンファースト(子ども第一)」を掲げ、子育て支援の夢を振りまいて誕生した鳩山政権。小池氏は、全国共通に国が定めてきた保育所面積の最低基準を、東京など待機児の多い都市部では一時的に下回ることも認める新政権の方針の撤回を迫りました。
寝返りも打てないような保育所のお昼寝風景の写真を示し、「これが一般的な保育所の実態だ」と述べると、閣僚や委員がいっせいに見入りました。
現行の面積基準は1948年の制定以来、改善はなし。「食事も昼寝も遊ぶのも同じ場所で」となっており、基準は引き上げこそ必要です。小池氏の求めに応じ、長妻厚労相が読み上げた同省の委託研究報告書(3月)でも「現行の最低基準以上のものとなるよう取り組みを進めることが重要である」としていました。
小池氏は「新政権になり、いよいよ60年ぶりの基準引き上げかと思ったら、逆の話だ」と痛烈に批判。「地方分権の名で子どもにかかわるナショナルミニマム(全国一律の最低基準)を壊してはいけない。子どもに犠牲を押し付けていいのか」と迫りました。
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厚労相 待機児解消に全力で取り組まなければならない。理解していただきたい。
小池 最低基準は絶対に壊してはいけない最低、最後の基準だ。待機児は詰め込みではなく、保育所を増やして解消すべきだ。
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70年代には年間1千カ所近い認可保育所をつくったこともあるのに、昨年、全国で増えた保育所の数はたったの16。小池氏は、国有地の提供や土地取得への支援など国が保育所整備に本気で乗り出すことや、自治体から「保育予算を確保しにくくなった」との指摘がある公立保育所の施設整備費・運営費の一般財源化を見直すことなどを要求。「子ども手当の財源5・3兆円の一部を回してでも、待機児解消の緊急事業をやるべきだ」と主張しました。
小池氏が最低基準の緩和方針の撤回について首相に答弁を求めると、福島瑞穂少子化担当相が答弁にー。
福島担当相 保育所の質はきちっと守る。(緩和は)3年間で待機児を解消できない東京などの一部について、どうかということだ。
小池 福島さんも6月、参院厚労委員会で「東京であっても児童にとって必要な基準については安易な緩和は問題だ」と述べていた。無責任だ。
首相も「保育所をすぐに増やせればいいが、簡単ではない」「ナショナルミニマムをできるだけ守りたい」などと基準の緩和を容認。小池氏は「ナショナルミニマムを守ることも、待機児をなくすことも、『できるだけ』ではなく断固としてやらなくてはだめだ」と強く求めました。
小池さん、すばらしい ■ 民主は公約守れ
党本部に反響
参院予算委員会で9日、日本共産党の小池晃政策委員長が行った質問に対し賛同の声が党本部に寄せられました。
「私もとうとう後期高齢者になりましたが、制度の廃止をと、ずばり追及した小池さんの質問は大変すばらしかった」と電話をしてきた新潟県の女性(75)。「民主党は、廃止を公約したんだから、すぐに廃止すべきです」と述べました。
脳こうそくで入退院を繰り返し、今日退院したばかりという大阪府の男性(75)は、廃止するのに2年かかるという政府の言い分について「2年間も年金から天引きされるのはたまりません。差別したらあきません」と語りました。
「しんぶん赤旗」読者からは、「今の小池さんの質問に拍手! 『新居の設計図ができてないからと火事になっているのに消そうとしない態度だ』との例えは、その通り。鳩山政権は、かつては火事だとみていたが、今は『火事だ』とは見ていないのでしょう。残念です」とのメールが寄せられました。