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日本共産党の小池晃議員は9日の参院厚生労働委員会で、本人の同意なしに臓器提供を可能とする臓器移植法改正案(A案)について質問しました。
小池氏は、A案提出者が参院本会議の趣旨説明で、脳死判定された人からの臓器摘出時に「筋弛緩(しかん)剤を投与することはあるが、痛みをとるための麻酔とは異なる」と述べたことについて、「麻酔薬の投与例が報告されている」と指摘。「国民に対し、臓器摘出では鎮痛薬、麻酔薬を使うこともあると事実は事実として伝えないと、共通の正しい理解にはならない。趣旨説明は訂正すべきだ」と求めました。提出者の福島豊衆院議員(公明党)は、「趣旨説明を訂正したい」と答えました。
小池氏は、「『脳死は人の死』とする議論があたかも国際的な趨勢(すうせい)であると議論されているが、本当にそうなのか」と提起。米大統領府の生命倫理評議会の報告が「脳死は人の死」としてきた根拠に「疑問が呈されている」としていることや、「脳死=人の死」が通説だったドイツでも連邦議会などで異論の声が広がっていることを紹介しました。
その上で、「国際的な議論の中身を子細に検討しなければ、世界の流れと異なるものになるのではないか。科学的な解明を含めて国会として責任ある結論を出すべきだ」と強調しました。
また小池氏は、提出者の一人として「子どもの脳死臨調設置法案」(E案)について答弁に立ちました。民主党の議員から、E案は「現行法による脳死臓器移植をどう評価しているのか」と問われ、ドナー(提供者)本人の同意を前提にした現行法を維持しつつ、脳死判定や臓器移植のあり方を検証するとしていると説明。「正しい情報を国民が共有することで今後の臓器移植のあり方についての合意をつくっていくものだ」と答弁しました。
議論再び混乱
質疑の最後に修正A案が提出され、自由質疑が行われました。A案は、一律に「脳死は人の死」としたことで、本人同意なしに臓器提供ができるとしていました。修正案は、臓器提供時に限り「脳死は人の死」とする現行法条文を復活させたものです。このため修正案提出者は逆に、本人同意なしに臓器移植できる根拠が示せなくなり、混乱ぶりが明らかになりました。
他の議員から「修正ではなく、対案ではないか」との声があがるなかで小池氏は、「このまま質疑を終えていいのか。これでは国会として責任を果たしたことにならない。議論をさらに深め、委員会として責任を果たすべきだ」と発言。与党議員からも「賛成だ」という声が上がりました。