2009年171通常国会:速記録

臓器移植法改正案、子ども臨調設置法案に関する参考人質疑・法案提案者に対する質疑


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2009年7月9日(木)

【以下臓器移植法改正案(A案)、子ども臨調設置法案(E案)に対する質疑】

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 A案提出者のこれまでの説明に私、いろいろ疑問があるんでちょっと今日はお伺いしたいと。

 提出者は、小児の長期脳死例について、これはおととい冨岡議員がお話しになりましたが、無呼吸テストや時間を置いての二回の検査が実施されているわけではございませんというふうに答弁をされたんですね。

 しかし、厚生科学研究の小児における脳死判定基準に関する研究班のこれ九九年報告ですが、ここでも、無呼吸テストを含む脳死判定を二回以上行って脳死と判定された二十例のうち七例は心停止が三十日以降に見られていますし、その中の四例では百日以降経過して心停止に至ったというふうに報告されていますんで、先日の答弁、これはやはり事実と異なるんじゃありませんか。

衆議院議員(福島豊君)

 先日の答弁につきましては、少し補足をさせていただきますと、現在、報道関係、様々なメディアで長期脳死例ということで伝えられているところがあります。そうしたことをどう考えるのかと。そのように考えておられる国民の方もたくさんおられると。こうした報道で報告されている長期脳死例というのは、二回の脳死判定というものを必ずしも受けたわけではないけれども長期脳死ということで報道されていることもあると。そういったことについて触れさせていただいたということだと思います。

 もちろん、委員が御指摘ありましたように、厚生労働省の研究班の報告書におきまして七例の長期脳死症例、これは二回の脳死判定ということが行われているわけでありまして、定義は非常に明確になっていると。そういうことがあることも事実であります。ただ一方で、その定義が余り明確でなくて長期脳死例ということで報道されている事例もあると。そういったことについて指摘をさせていただいたというふうに理解をいたしております。

小池晃君

 おとといの答弁では報道の例でという頭は付いていないんですよ。それは一般的にお答えになっているんで、それは事実と違うでしょうと。今はもう事実上認められました。

 要するに、無呼吸テストもきちっと行った上での小児の長期脳死例は存在するということでよろしいですね。確認しました。イエスかノーかでお答えください。

衆議院議員(福島豊君)

 余り、何といいますか、私の作った言葉ではなくて正確に申し上げると、同報告書では心停止まで三十日以上等のものを長期脳死症例としておりますけれども、この二十例のうち、判定時より心停止までの期間が三十日から九十九日までのものが三例、百日以上のものが四例あったというふうに承知をいたしております。

小池晃君

 きちっと提案者としては、やはりその正確な事実を伝えていただきたい。それがやっぱり共通の理解の前提になると思うんです。

 それから、これも一昨日議論になったことなんですが、法的脳死判定が終了した後に例えばその本人の拒否カードが発見される、そういうケースで、様々な事情で臓器提供に至らなくなるケースがあるわけです。この場合、既に法的脳死判定が行われていて、死亡宣告もされているわけですから、その後の医療はどうなのかというような議論になってまいりました。

 その後の医療について、一昨日の答弁では、遺族の心情等に配慮して、心停止に至るまで呼吸器を装着するなど医療の現場で適切に配慮されるべきだと思っておりますというふうに御答弁あったんですが、これはあくまで配慮されるべきということなわけで、こうした場合の治療を継続する法的根拠は一体何になるんでしょうか。

衆議院議員(福島豊君)

 ただいまの委員の御指摘も非常に重要な点でありまして、現行の臓器移植法の附則第十一条におきましてはこのように規定されております。「第六条第二項の脳死した者の身体への処置がされた場合には、当分の間、当該処置は当該医療給付関係各法の規定に基づく医療の給付としてされたものとみなす。」と。医療保険が適用されると、こういうことになっているわけであります。それに基づいて適切な医療が行われるということになると思います。

 A案は、家族の同意によって脳死判定、そしてまた臓器提供への道を開こうとするものでありますけれども、こうした附則第十一条の医療保険は引き続き適用すると。この条文については手を加えておりません。それはそのまま継続すべきであると思っております。

小池晃君

 それは治療の法的根拠なんでしょうか。医療保険を給付するということが書いてあるだけにすぎないわけで、それは結局、あくまで脳死判定後の治療というのはこれは医療機関の配慮、善意に頼り、その医療行為に対して保険を給付するということにすぎないのではありませんか。

衆議院議員(福島豊君)

 医療保険が給付されるということ自体が、単にその善意とか配慮ということではなくて、一つの権利性を持った上で給付をされるということだと私は思っております。

小池晃君

 ここはちょっと見解が違います。やはり、医療に対する法的根拠が、それは法的脳死判定が行われれば死体という扱いになるわけで、しかもA案というのは脳死は人の死だと明文化するわけですから、現行法に比べてもよりその点での法的根拠というのはなくなっていく危険性が私はあるというふうに思います。

 それから、障害者についての脳死判定についてお聞きをしたいんですが、最初に政府に。

 現行のガイドラインは知的障害者等に対する法的脳死判定を見合わせるというふうにしているんですが、これは要するに本人の同意が前提であるために知的障害者の意思表示の有効性についてはこれは検討事項となってきたという理解でよろしいですね。簡単にお答えください。

政府参考人(上田博三君)

 そのとおりでございます。

小池晃君

 ということになりますと、現行法は本人同意が原則だから知的障害者の有効性については検討事項となって、ガイドラインでは除外されてきたわけです。ところが、A案というのは、先日の答弁では、これは現行法と何ら変わらないし、障害者などの意思表示ができない方であることが判明した場合には法的脳死判定は行われないと答弁されているんですけど、しかしそのA案というのは本人の意思表示なくても脳死判定、臓器摘出ができるわけですから、現行法のように障害者に対しては除外するという根拠はこれはなくなるということになるんじゃないですか。

衆議院議員(福島豊君)

 委員が御指摘ありましたように、一律、脳死を人の死として、前提として脳死判定、臓器提供に行くと、いわゆるオプトアウトという考え方で構成されているというわけではありませんで、これはオプトインの、基本的にその意思表示、これは本人の意思表示か家族の同意かと、ここのところに差があるわけですけれども、そういうことを前提としているわけでありまして、ですから、今委員がおっしゃられたように、その本人の意思と関係なくやるのだから、それはここのところを見直してもいいのではないかということではないというふうに私は思っております。

 知的障害者の方々についてのお取扱いについてのガイドライン、これは今後も維持すべきだというふうに思っております。そして、なぜかといえば、その拒否の思いがあられるかもしれないと、しかしその拒否の思いそのものが適切に御本人が表示することができないかもしれないと。こういうことを考えると、私は、現在、知的障害者の方々等の取扱いについて慎重であるというガイドラインは引き続き重要だというふうに思っております。

小池晃君

 拒否の思いがあるかもしれないと、だから除外するということであれば、それは障害者だけに限られる話ではなくて、それは障害者でない人も含めてそういう考え方になるんじゃないですか。そうすると、今の説明だとA案の根拠がちょっと私は崩れるような気がするんですが、いかがでしょうか。

衆議院議員(福島豊君)

 A案の根拠は、私は崩れるとは思っておりませんで、A案にしましても、本人が拒否するという場合には当然これは対象にはならないわけであります。本人の意思を大事にするという考え方は前提であるわけであります。

 そして、知的障害者等の、知的障害のある方々についてどうするかと。家族の承諾によって脳死判定や臓器摘出を行うということについて、これは先ほどからも申し上げておりますけれども、当面見合わせるということをガイドラインに明記をすべきであるというふうに考えております。

小池晃君

 すべきであるという立法者の意思は分かるんですが、除外する根拠が、法的な根拠がA案だとこれはどこにあるんですかと聞いているんです。どこにあるんでしょうか。私は別に、A案支持しているわけでもないですし、除外を外せと言っているわけではないですよ。ただ、除外ということを続けるというのであれば、それが法律にはどこがそれが根拠になるんですかと聞いているんですが、説明ないように思うんですけど。

衆議院議員(福島豊君)

 委員は除外をせずに適用すべきであるという意見では恐らくないのだろうというふうに思っておりますけれども、先般の現行法ができたときの議論、そういうことを踏まえれば、私は今申し上げたように引き続き堅持し、そしてまた新たにガイドラインに家族の承諾によって脳死判定や臓器摘出を行うということは差し控えるべきだということを明示すべきだと考えておるわけであります。

 これは、論理的に整合性があるのかと、こういう御指摘なのかなとも思うわけでありますけれども、論理的な整合性も大事です。しかし、論理的な整合性と同時に、脳死判定また臓器移植ということについてどのように多くの方が受け止めておられるかということを、冷静にといいますか、現実をよくよく受け止めて判断をするということも大切だと思っております。

小池晃君

 こういった問題は、やっぱりきちっと論理的な根拠、法律的な根拠がないと、私は障害者の皆さんの人権を損なうということにつながる危険性を感じるんですよね。その点はちょっと指摘をしておきたいというふうに思います。今の説明ではちょっと説明になってないんではないかと。

 それから、資料をお配りいたしました。これは、脳死ドナー患者からの臓器摘出の症例報告、学会誌に出ているものでありますが、A案の提出者は、本会議の趣旨説明でも、ドナーからの臓器摘出時に筋弛緩剤を投与することがありますが、生きている方の痛みを取るための麻酔とは異なりますというふうに趣旨説明されたんですね。しかし、この症例報告では麻酔薬の投与が行われているわけであります。レミフェンタニルという薬剤ですが、これは発売されたときにも全身麻酔用鎮痛剤ということで発売をされております。

 見ていただくと、一ページ目の麻酔経過の上から六行目ぐらいに、手術刺激に伴う循環変動に対処するため、レミフェンタニル、麻酔薬を使用したということが書かれております。それから、二ページ目の麻酔経過を見ても、皮膚切開前にワンショットでレミフェンタニルを投与して、その後持続投与して、皮膚切開前にもう一回ワンショットで投与すると。それから、手術中に血圧の上昇が見られた後に更に増量しているという経過が見られます。

 誤解のないように言いますが、私はこの臨床経過について異議を差し挟んでいるとか、この治療内容に批判するというつもりは全くありません。これは冷厳な事実として受け止めるべきだと思うんです。ただ、これを見る限り、一応この症例報告の最後に、これは脊髄反射を抑制するための投与だってちゃんと断り書きがしてますから、それは私は理解しています。しかし、国民に対してやっぱり正確にこういうものは伝えないといけないと思うんですよ。筋弛緩剤を使っているけど、鎮痛薬、麻酔薬、麻酔やってませんと。

 私は、この問題を考えるに当たって、臓器摘出時には刺激で血圧の変動があるので麻酔薬を使用することもあるんですということをちゃんと国民に説明して、共通の理解の上でやっぱり臓器摘出ということを進めるのが当然であって、やっぱり提案者がドナーの臓器摘出時に使用しているのは筋弛緩剤だけで痛みを取るための麻酔とは異なるという、痛みを取るための麻酔ではないというふうに多分おっしゃるんだと思うんですね。しかし、麻酔薬、鎮痛薬を使っているという事実はあるわけですよ。

 こういったことはちゃんと私は事実としてきちっと伝えるべきで、この趣旨説明は私は訂正していただきたいというふうに思うんですが、いかがですか。

衆議院議員(福島豊君)

 委員御指摘のように、正確に事実を伝えるということは極めて重要だと思っておりますし、そしてまた、脳死判定、臓器移植に関して様々な意見があるということを考えれば、それはなおさら重要だと思います。

 その上で、若干追加して、せっかくの機会ですから御説明をさせていただきますと、なぜその鎮痛薬を使ったのかということについてちょっと説明させてください。

 レミフェンタニルは脊髄に存在するミュー受容体に作用して、有害な脊髄反射を抑制するものと考えられると。ですから、鎮痛薬という薬でありますけれども、どういった薬理作用を期待して使われたのかということは、その実際に使った方自身が中枢神経に働いて鎮痛効果をもたらすという目的ではないということを明確に言っているわけでありまして、そういう意味では、私は、委員がおっしゃられることは当たっているところもあるけれども少し違うところもあるかなと思います。

小池晃君

 いや、そんな当たっているところもあるとかないとかという話じゃなくて、私が言っているのは、その投与の妥当性とかその医学的根拠について言っているわけじゃないんです。国民に対してちゃんと脳死判定された後で臓器を取り出すときには鎮痛薬や麻酔薬を使うことはあるんですよということを言わなければ共通の理解にならないし、だからそういう点でいえば、趣旨説明では言われたんですよ、ドナーの臓器摘出時に使用しているのは筋弛緩剤であって麻酔じゃないんだと。こういう説明は、私は、これは撤回していただきたいということなんです。私が言っているのはその説明の問題なんです。どうですか。

衆議院議員(福島豊君)

 再度申し上げますと、麻酔の作用を期待して麻酔薬を使うということではないというふうにオーサー自身が書かれているわけですね。ですから、そこのところを踏まえると、先生の御指摘、正確さに欠けるのではないかという御指摘は重々踏まえつつも、麻酔の目的で麻酔薬を使っているわけではないということも考えると、私どもが指摘したことも十分に理のあることかなというふうには思いますけれども。

小池晃君

 いや、ちゃんと、じゃその説明するのであれば、答弁はこういうふうにすべきなんじゃないですか。筋弛緩剤も麻酔薬や鎮痛剤も投与することはありますが、それは生きている方の痛みを取るための麻酔とは異なりますと、こういうふうに言うのが必要なんじゃないですか。こういうふうに訂正していただく必要があるんじゃないですか。

衆議院議員(冨岡勉君)

 趣旨説明のときに、委員がそうおっしゃったように私が説明したのは事実でございまして、一般に薬というのは鎮痛あるいはいろいろな、消痛薬とかそういうものを使います。だけど、私が申しました趣旨というのは、あくまでも、ある一部の方たちから痛みを感じているからまだ脳死状態じゃないんじゃないかという、そういうやっぱり御指摘がよくあるもので、麻酔という大きな意味の言葉、その中には筋弛緩剤も使いますし、昇圧剤もいろいろ使います。だけど、あくまでも答弁の内容は、この筋弛緩剤は使いますけれども、そういった痛みを取るものでなくて、末梢のリフレ、反射的なものを消失させるために使うことはあると、そういう意味で説明させていただいたつもりであります。

小池晃君

 いや、そういう説明になっていないんですよ、趣旨説明も。だから、そこは、ちょっと福島委員、どうですか、これはやっぱり直さなきゃ駄目じゃないですか。私は、共通のやっぱり正しい理解がなきゃいけないと思いますよ。

衆議院議員(冨岡勉君)

 委員が御指摘のとおりだと私は思いますけれども、お分かりになっていただける医学的な知識を持たれている方は十分理解されて、一般の方に対する説明をしたつもりでございまして、麻酔剤という中にもいろいろな種類の薬があって、特に痛みだけを取るためにしたつもりはないということを強調したかったわけであります。

小池晃君

 私は今の答弁はおかしいと思います。

 一般の人だからこそ、きちっと正確な事実を伝える必要があるんですよ。一般の人だから、分からないから適当な説明、適当な説明と言うとちょっと語弊がありますけれども、そこを、何というか、誤解を与えないようにということで正確な情報を伝えないというのは、私は、本当にパターナリズムですよ、それじゃ、駄目ですよ、それは。

衆議院議員(福島豊君)

 今、冨岡提出者の方からも御説明ありましたけれども、委員の御指摘も踏まえ、提出者の意見ということも私はそのとおりだと思っておりますので、それを踏まえた上で、必要であれば修正をさせていただければと思います。

小池晃君

 これは修正していただきたい。

 こういう情報が本当に飛び交っているんですよ。国会の議事録に残っちゃいけないと思うんです。

 もうちょっと時間がないので、後はちょっと質問しようと思っていたんですが、私は、やはり脳死を人の死とするという議論があたかも国際的な趨勢であるかのように今議論がされているんですけれども、本当にそうなのかと。

 例えば、アメリカの大統領生命倫理評議会が死の決定をめぐる論争というのを、去年十二月に報告書を出しているんですけれども、ここでは、要するに、今まで脳死は人の死であるとしてきた二つの根拠が、これは疑問があると。一つは、脳死患者はもはや統合体ではないと、それからもう一つは、脳死患者は短時間で心停止に至ると。これに対して、近年、説得力を持った疑問が呈されているということが書かれているわけですね。それからドイツでも、連邦議会では、やっぱり脳死を人の死とする、今まで通説だったのにそうではないんじゃないかという、こういう議決が最近行われているわけですよ。

 だから、私は、全体として見れば、本当に脳死を人の死とした法改正を国際的な趨勢なんだということで果たして進めていいのか。もっともっと国際的な議論の中身を私は子細に検討して、日本は日本としてのきちんとした結論を出していく必要があると思いますし、今日の議論の中だけでも、これまでの説明でいろいろな問題があったということが明らかになったというふうに思いますし、私は、拙速な審議、今日で審議打切りというようなことはやめていただきたい。きちっと、もっともっと科学的な解明を含めてやっていただいて、国会として責任ある結論を出していただきたいと、このことを申し上げて、質問を終わります。

【以下梅村議員への答弁】

小池晃君

 今、梅村議員が指摘された点は大変大事な点だったというふうに思いますし、柳田邦男氏が追加資料を皆さんの下に届けたと思うんですが、やっぱりその中でもきちっと検証するんだということを強調されているので、やはり人の心の揺らぎ、ドナー家族のいろいろな思いも含めてきちっと検証していくということは今本当に大事だろうというふうに思います。

 その上で、今の御質問に対してですが、今回提出させていただいている法律案については、子供に係る脳死及び臓器の移植に関する検討について定めるとともに、適正な移植医療の確保のための検討及び検証について定めるものでありまして、医学的な見地も含めて現行の臓器の移植に関する法律の規定による臓器の移植を否定するものではございませんし、評価という点でいいますと、まさにその評価のためには検証が行われる必要があるというふうに思うんです。現在はこの検証が柳田邦男氏も指摘しているように十分に行われていませんし、検証会議の結果がきちっと国会の議論に反映されていないんではないかという御指摘もあったと思うんです。

 この法律案については、臓器の移植に関する法律の規定による臓器の移植に関する検証が適切に行われることとなるよう同法を改正してそのための規定を設けるということにしているわけでありまして、まさに医学的見地も含めてきちっとそれを検証して国民の合意をつくっていくと。

 さっきも質問で議論しましたように、正しい情報をやっぱり国民の皆さんも含めて共有することが本当に大事だと思いますし、それはやっぱり医学界の責任でも私はあるというふうに思うんですね。ところが、かなりデフォルメされたというか、部分的な情報がやっぱり流されているということが私はあると思いますので、こうした法律によってきちっと検証して共同の、国民と医学界と立法府などが共同の作業でやはり合意をつくっていくことこそが移植医療を含めた医学の発展に資するものになるというふうに私は考えます。

梅村聡君

 検証はいろんな角度で必要ではあるということですが、しかし一方で、その移植医療の必要性というものを否定されるものではないという御答弁でよろしいでしょうか。

 それでは次に、E案の提出者の方にもう一問お伺いしたいと思いますけれども、現行法の下での移植の判定手順、判定基準です。これについて、その現在の要件の是非、それから判定基準の是非についてもお考えをお伺いしたいと思います。

委員長(辻泰弘君)

 脳死の判定基準ですね。

梅村聡君

 脳死の判定基準。

小池晃君

 二つに分けてお答えしたいと思うんですが、現行の脳死判定手順、脳死判定基準についての評価でございます。

 現行の法律の規定による臓器の移植に関しましては、先ほども答弁しましたように、まずは移植医療の適正な実施を図るための検証が必要であるということで、同法を改正して検証のための規定として第十七条の三を設けるというふうにしておりまして、その第十七条の三で、臓器の移植に関し検証すべき項目として、第一に臓器を提供する意思表示の有効性、第二に脳死の判定の適正性、第三に脳死の判定に従う意思表示の有効性等、具体的に列挙しておりまして、同条に基づいてこれらについて遅滞なく検証が行われ、検証結果が公表されるものというふうに私どもは考えています。

 それから、二つ目の意思確認要件の是非についてですが、これ、現行制度は本人及び家族の同意を、意思確認を必要としているわけであります。この法律案については、この脳死判定を行う、できる要件については改正を行っておりません。

 現行の意思確認要件については、私どもはおおむね国民的に了解されているものというふうに考えております。しかし、これを更に脳死の判定要件について改正するということについて、現時点において国民的な合意が得られていないというふうに考えます。ですからこそ、まずはこの点については現行法を維持すべきだというふうに考えるというのがE案提出者の考え方でございます。

【以下 臓器移植法改正案(A案)、A案に対する修正案(A'案)、子ども臨調設置法案に対する自由質疑】

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 修正案提出者に二点お伺いをしたいと思うんですが、脳死を人の死とすることについては、国民的な合意がないからこの部分は現行法のとおりにするという御説明がありました。しかし、本人同意を必要としないということについては、これはA案のとおりになっているわけであります。脳死を人の死とすることに対しては国民的な合意はないけれども、では本人同意だけで脳死判定をし臓器摘出をすることについては、じゃ、国民的合意があるというふうにお考えなのか。だとすれば、脳死は人の死であるということについては国民的合意があるけれども、本人同意なしに臓器摘出ができる、脳死判定ができることについての国民的合意があるとする根拠は一体何なのか、御説明をいただきたいということが一点です。

 それから二点目は、虐待の防止についての具体的な方策を確立するということが附則にあるわけですが、虐待の防止のための具体的な方策は大事なことだと思うんですが、この法律の仕組みで、施行日までに、では被虐待児からの臓器摘出を防止するための具体的方策が確立されない場合はどう対応されるのか、施行日までにこれを確立する、そのための手だてというのは何らかなされているのか、その法的な担保というのはあるのかないのか、御説明をいただきたいと思います。

衛藤晟一君

 まず第一点は......。もう一回、ちょっと要点だけ、済みません。

小池晃君

 かなりゆっくり分かりやすく言ったつもりなんですが、要するにこの法律の構造、要するに六条二項はそのまま残すという理由は社会的合意がないからだとおっしゃるわけですよ、国民的合意がないからだと。脳死は人の死とすることについては国民的合意はありませんと言いながら、私自身は本人同意なく臓器摘出することも国民的合意ないんじゃないかと思っているんですが、それはさておき、この法律ではそこについては手を付けていないわけですから、そこは国民的合意があるというふうに判断されているんでしょうと。

 だから、片やこちらは国民的合意があると判断し、片やこちらは国民的合意がないと判断される根拠を示していただきたいというのが一点。

衛藤晟一君

 現在、提出者が言った国民的な合意があるということですが、脳死臨調の話をされておりますけど、先ほど梅村先生からお話があったと思いますね。現在において、臓器移植を前提として脳死を認めている、だから人の死とすることについても臓器移植がなければ認めないということになりますから、ごちゃごちゃになって今これが出ていると思うんですね。

 それで、最近の世論調査から見ますと、一般的に脳死を人の死と思うのかどうかという調査があるんですけれども、人の死と認めるべきだといったのが実は二八%なんですね。そして、臓器提供の意思を示している人に限るべきだといったのが五二%なんです。人の死として認めるべきではないというのが九%ですから、一般的に、臓器移植に関して認めるという方は五〇%であって、それから、一般的な人の死としても認めるという方は二八%までいるんですけれども、それをもってそれは認められていると、いわゆる世論的に認められているという具合にはいっていないという具合に思います。まだ疑問がある程度だという具合に思います。だから、それを前提にしてという考え方にはいささか同意できないということを言っているわけであります。

 それからさらに、家族が承諾すれば臓器提供を認めるべきだという意見については、既に賛成が六二%、反対が一九%と。十二年間の今までの臓器の移植法案の施行の中でそういうもののずっと理解が深まってきたという具合にこれは断ぜざるを得ないという具合に思います。

 さらに、法的にいえば、これは一度もう法的脳死判定をした時点で、もし本当に脳死であれば遺体となるわけですから、残された家族にとって、あるいは遺族にとって、それらを決める権限は法的にはあるんではないのかという具合に思います。

 以上です。

谷博之君

 今の児童虐待の関係のことでありますけれども、A案では、附則第五項を公布の日から一年を経過した日から施行するとしておりますけれども、これでは死亡した児童からの臓器の摘出が可能になると同時に検討を開始するということになって、被虐待児からの臓器摘出を防止するための具体的な方策が確立されないままに死亡した児童から臓器が摘出されるというおそれがあります。

 したがって、そこで、死亡した児童からの臓器の摘出が行われることが可能となる法改正の施行までの間に検討を行い、防止のための具体的方策に関して一定の結論を導いて、それらを踏まえた対応を速やかに行うためこの規定を公布の日から施行することとしているところであります。

(略)

小池晃君

 先ほどの河野委員の説明で新しい話がちょっとあったように思うんですけど、先ほどA案の説明をされたときに、ちょっと確認したいんですけど、脳死は人の死を前提として、脳死判定は死の確認行為というふうに考えられるというふうに話されたと思うんですけど、間違いありませんか。

衆議院議員(河野太郎君)

 法的脳死判定は、人が亡くなっているかどうかの確認行為であります。

小池晃君

 いや、私、そういう、今まで議事録でそういう言い方されたことはありました。ちょっとなかったように思うんですが、死の確認行為ということになるとこれは既に死んでいるということが前提になって、そこには、じゃ、本人の意思が第一だというこれまでの議論などすべて超えて、それからこの脳死というのは臓器移植の範囲だけのものなんだという説明をされてきたんだけれども、それを超える中身になるようなちょっと新しい今こと言われたように受け取ったんですけれども、そういうことになりませんか。

衆議院議員(河野太郎君)

 全くそんなことはありません。

小池晃君

 しかし、死の確認行為なわけですよね、脳死判定というのは。ということはもう、これは既に、本人の意思がどうあろうと、家族の意向がどうあろうと既にこれは死んでいるということを確認するということになるじゃありませんか。

衆議院議員(河野太郎君)

 脳死というのは、法的脳死判定が行われた時点で確認がされるわけでありますから、それはまあ確定というか確認というか、そこは分かりませんが、要するに法的脳死判定が行われなければ人は亡くなっていないわけであります。それは何度も繰り返して御説明をしております。

小池晃君

 ちょっと非常に微妙な問題なんで、私、これ議事録とか見て議論しないとちょっと。

 で、今日ちょっとこういう形で議論を進めていること自体に私は大変違和感というか疑問を持ちます。やはり、きちっと議事録で、非常に大事な問題を議論していて、やっぱり語句一つ一つが非常に大切な問題だと思うんですね。しかも、修正案だとおっしゃるけれども、私も柳田理事のおっしゃるようにこれは対案であると、考え方がだって違うわけですから、前提になる考え方が違うわけで、まるでこれで修正してAダッシュということになると木で竹を接ぐような話になっていくわけで、今まではE、Aということはちゃんと並べて、質問通告もやって議論してきたわけですから、そういう意味ではきちっとこのAダッシュなるものについても、今日の議論も踏まえて、議事録踏まえてきちっと公平に、逐条的意味も含めてやらなければ、私は国会としての責任を果たしたことにならないと。

 やはり、今日このままちょっと、審議を終局をして中間報告という話がありますけれども、私はこれはちょっと是非皆さんに考えていただきたいと。やっぱり、ここのところでちょっと一歩立ち止まって、改めて考えてこれは議論をしなければ、私はちょっと国民に対して本当に責任を取った議論にならないのではないかなというふうに思いますので、今朝、理事会では私は反対をいたしましたけれども、改めてちょっと議論を、別に私はゼロからやって延々とやるというつもりはございません、ただ今日のこの説明も受けて、日を改めてきちっと議論をすると、最低限それをやらなければ、やはり私は参議院厚生労働委員会として国民に対して責任を果たすことにならないのではないかということを非常に深く危惧をしますので、これはまさに党派を超えて是非皆さんにお考えいただきたいということを訴えたいというふうに思います。

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