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介護保険

介護保険制度見直しにむけたアンケート結果
2010年6月9日 日本共産党国会議員団


2010年6月9日(水)「しんぶん赤旗」より転載

1、調査の目的
 介護保険制度が施行されて10年が経過した。「介護を社会的に支える」ことを目的に発足した制度であるが、重い介護保険料や利用者負担、42万人にのぼる特別養護老人ホームの待機者など、「保険あって介護なし」ともいうべき様々な問題が表面化している。介護事業所・施設も深刻な人材不足と経営危機に陥り、制度の維持・存続さえ問われる危機的な事態に直面している。こうしたもとで、日本共産党として介護保険制度の検証をおこない、国民が安心できる介護保険制度の抜本的見直しの方向を明らかにする。

2、調査対象と回収状況
▽介護事業所
 全国の介護事業所のうち、訪問介護、通所介護、居宅介護支援、認知症高齢者グループホーム、特別養護老人ホーム、老人保健施設を中心に、無作為で抽出した介護事業所3000事業所にアンケート用紙を郵送。回答は652事業所。回収率21.7%。介護実態の個別事例が約300件寄せられた。

▽地方自治体
 全都道府県および政令指定都市・中核市・県庁所在都市・東京23特別区の合計140自治体にアンケート用紙を郵送。回答は45都道府県、83区市の合計128自治体。回収率91.4%。      

▽利用者・家族など一般の方々
 日本共産党のホームページにアンケート用紙を掲載し、一般の方々から意見を募った。応募数は167通。

(3)調査実施期間
 2010年4月15日から5月20日(一般の方々からの意見は5月31日まで)

【1】介護事業所アンケートの結果と特徴

 事業所からの回答数:全国47都道府県から総数652ヶ所。事業種別内訳は、訪問介護29.4%、通所介護16.7%、居宅介護支援17.2%、認知症グループホーム6.3%、特別養護老人ホーム22.8%、老人保健施設1.1%、その他4.8%、不明1.7%。

1、利用者負担について
  「サービス利用を抑制している人がいる」が7割超す
 原則1割の利用料や05年10月から導入された食費・居住費の全額自己負担化が、低所得者の高齢者・家族に深刻な影響をあたえている実態があらためて浮き彫りになった。
 訪問介護、通所介護、居宅介護支援の3事業所についてみると、「重い負担を理由にサービスを抑制している人がいる」との回答が7割を超えている。「夫婦で年70万円の収入の人がおり、デイケアの利用が金額の面でどうしてもできない。利用料月額1万8200円(1割負担850円+食事代550円)×13日は重い」(東北地方・訪問介護)などとの声が多数寄せられた。
 09年の介護報酬引き上げによって利用者負担が増加し、このためサービスを抑制せざるをえなくなった高齢者がいるとの指摘も多く寄せられた。高齢者に、利用したサービス費の1割を「応益負担」として課す介護保険制度の矛盾を浮き彫りにしている。

  「重い負担を理由にサービスの回数や時間を減らしている人がいる」 76.2%
「サービスを抑制している人はいない」 19.4%
「分からない」 4.4%

2、要介護認定について
  「問題点がまだある」が8割
昨年、厚生労働省は国民の批判を浴びて要介護認定制度の見直しをおこない、「軽度に判定される問題点はほぼ解消した」としている。しかし、事業所からの回答は、「実態を反映しない問題点はまだある」が8割を超えた。多くの事業所から要介護認定制度の抜本的改善、廃止を望む声が寄せられている。

  「実態を反映しない問題点はまだでている」 83.6%
「問題点は解消された」  6.9%
「分らない」  9.4%

3、居宅介護サービスの充足状況について
「サービス足りず我慢強いられている人がいる」が6割近く
 居宅介護サービスの充足状況について聞いたところ、「保険給付では足りず、我慢をしいられている人がいる」との回答が6割近くあった。「足りている」はわずか6%程度。支給限度額が要介護高齢者の実態に合っていないことをしめしている。低所得者の高齢者は全額自費負担を必要とする保険外サービスを利用することもできず、重い利用者負担とともに、この面からも公的介護制度から排除されるという厳しい現実を浮き彫りにしている。

  「保険給付では足りず、かといって民間の保険外サービスを利用する経済的余裕もなく、我慢をしいられている人がいる」 57.2%
「保険給付では足りず、全額自己負担で民間のサービスを利用している人がいる」 30.8%
「現行の支給限度額で十分に足りている」 5.7%
「分からない」 6.3%

4、介護現場の改善について
(1) 訪問介護事業所 7割が「人材不足」
 介護職員の人材不足は依然深刻な状況にある。「不足している」は全事業所平均で56.2%にのぼり、訪問介護事業所についてみると73.4%と危機的な状況にある。「求人広告を出しているが、問い合わせもほとんどない。サービスの依頼を断らざるをえない」(東京・訪問介護)などと厳しい実態が各地の事業所から寄せられた。人材不足について、「どちらともいえない」と回答した事業所が訪問介護を含めて20~30%近くある。しかし、その実情は、事業所からの回答でも、「若い世代の介護職員が不足している」「土、日、夜間の要望にこたえられない」などというもので、不安定で将来展望がなく、実質的な「人材不足」の状況にあるといえる。
「不足している」との回答は、訪問介護事業所73.4%、通所介護52.4%、居宅介護支援44.7%、グループホーム47.5%、特別養護老人ホーム44.2%、老人保健施設42.9%。

(2) 介護報酬3%引き上げ 「ほとんど効果ない」が7割近く
 政府は昨年度、介護報酬を3%引き上げたが、経営悪化や職員の待遇改善への効果を聞いたところ、「ほとんど効果ない」が67.3%にのぼった。「介護職員処遇改善交付金」は、目標とされていた「月1.5万円の賃上げ」が実現できた事業所は13.0%にとどまっている。この間の2度にわたる介護報酬の切下げがもたらした深刻な実態を改善するには程遠く、抜本的な対策が不可欠であることをしめしている。介護報酬は加算ではなく基本部分の底上げを、「介護職員処遇改善交付金」は対象をすべての職種とし、期間限定をなくしてほしいなどの要望が多く寄せられた。

 ▽介護報酬3%引き上げの評価
「大幅に改善」 1.5%
「やや改善」 31.3%
「ほとんど効果はない」 67.3%

▽「介護職員処遇改善交付金」による改善状況
「月1.5万円の引き上げが実現できた」 13.0%
「1.5万円未満~1万円の引き上げ」 24.3%
「1万円未満~5000円の引き上げ」 30.9%
「5000円未満 」 20.3%
「申請していない」 11.5%

5、安心・安全の介護体制を
(1) グループホームの防火対策を国の責任で
札幌市の認知症高齢者グループホームでおきた火災事故の教訓をふまえ、再発防止策をたずねたところ、国の財政支援による防火体制の確立を望む声が多く寄せられた。

  「スプリンクラー設置などへの国・自治体の財政支援」 74.7%
「職員配置基準を改正し、夜間複数体制を」 68.4%
「防火設備の設置状況について行政の監督・指導を強化」 33.8%
「地域住民との協力体制の確立をはかる」  39.5%
「その他」 4.3%

(2) 職員配置基準を「2対1」に 8割近くが要望
 施設利用者の重度化が進んでいるが、介護保険制度における職員配置基準はこの10年、全く改善がない。厳しい実態を反映して、現行職員配置基準の「3対1」を「2対1」に改善するべきだとの回答が76.4%にのぼった。「現行どおりでよい」は10.0%。「その他」が13.5%あったが、「2対1は必要だと思うが、人材不足のなかで実現は無理だと思う」などと、国への不信感からくる回答が多くみうけられた。「2対1でも不十分です。1.5対1くらいにしてほしい。現実には1.5対1の体制をとっている」(九州地方・特別養護老人ホーム)と大幅改善を望む声も多くの施設から寄せられている。

6、特養ホームの待機者解消策について
  建設費補助復活、整備目標引き上げをつよく要求
全国で42万人にのぼる特別養護老人ホームの待機者について、深刻な施設不足に危機感をつのらせ、一日も早い有効な打開策を求める声がつよく寄せられた。回答では、「施設建設への国庫補助制度の復活」をはじめ、国の責任による抜本策を講じるべきとの意見が多く寄せられた。

  「介護施設の整備目標を引き上げる」 53.2%
「施設建設にたいする国庫補助制度を復活する」 54.8%
「都市部での用地取得費への助成制度を設ける」 28.9%
「介護型療養病床の廃止計画の中止」 46.8%
「基盤整備をすすめても保険料引き上げにつながらない対策」 48.3%
「その他」 10.2%

7、介護保険財政について
  「国庫負担増額を」の声がトップ 7割に
介護保険制度の財源問題で、今、最も重視すべき対策を聞いたところ、国庫負担の増額を求める声が最多で7割にのぼった。厚生労働省が検討課題としている利用料値上げなど国民負担増による財政対策を要求する回答は少数だった。
 国庫負担の財源として、ムダの排除、軍事費削減、大企業・大資産家にたいする優遇税制の是正などを望む声とともに、「消費税の増税を」などとの声や「介護宝くじの創設はどうか」などとの提案を行ってきた事業所もある。

  「国民の介護保険料・利用料負担は限界。国庫負担をふやす」  70.6%
「利用料の定率1割負担を2割、3割に引き上げる」 6.0%
「介護保険料の支払い年齢を20歳程度に引き下げる」 11.2%
「なんともいえない」 7.5%
「その他」 4.7%

8、国への要望
 介護保険制度について、「このままでは10年位で制度自体が崩壊する」(大阪・特別養護老人ホーム)との声にみられるように、深刻な現状に危機感をつのらせ、国にたいして抜本的な制度見直しを求める声が多数寄せられた。
 厳しい家族介護の現実、これに対応できていない介護保険制度の矛盾と欠陥、深刻な介護職場の実情を訴え、低所得者の介護保険料・利用料負担の軽減、応能負担原則の確立、食費・居住費の全額自己負担化の見直し、利用限度額の見直し・撤廃、要介護認定制度の見直し・廃止、介護報酬の底上げと職員の待遇改善への抜本策、介護保険料の値上げにつながらない基盤整備の強化、国庫負担の大幅増額など、多様で切実な要望、意見が数多く寄せられた。
 「これだけの高齢者が現在、日本にいて、介護保険がなければ家庭崩壊になってしまうケースが多く見られます。サービスを利用していても介護苦から自殺してしまったキーパースンも数例みてきました。これ以上の介護の犠牲者は出したくありません」(東北地方・通所介護)。
 「家族の負担を軽くするという名目で始まった介護保険ですが、どんどん家族の負担が大きくなってきていて、同居していると高齢者が我慢するしかない状況が出てきています。憲法にある、だれもがゆたかな生活を送る権利はどこにいってしまったのでしょうか」(東京・訪問介護)と、憲法25条の生存権理念に立ち返って、介護保険制度の抜本的見直しを求める声が多数寄せられた。

【2】自治体アンケートの結果と特徴

 自治体からの回答数:総数128 都道府県45、政令指定都市17、中核市・県庁所在都市44、東京特別区22。

1、利用料、保険料の自治体独自軽減策の状況
  独自軽減策実施の区市 利用料で4割、保険料で9割近
 利用料、介護保険料について、保険者である多くの自治体から、低所得者を対象にした独自軽減策にとりくんでいるとの回答が寄せられた。国の対策がきわめて不十分であることの反証でもある。「国の責任において、低所得者に対する保険料・利用料の軽減制度を講じてほしい」との要望が多くの自治体から重要課題として寄せられている。

(1)利用料の独自軽減策の有無
 区市で、独自の軽減策が「ある」ところは43.4%、「ない」は 56.6%だった。独自軽減策の内容は、住民税非課税世帯などを対象に利用料を一定程度軽減するものが多い。
 都道府県では、回答のあったなかで独自に利用料助成をおこなっているのは東京都だけだった。
(2)介護保険料の独自軽減策の有無
 区市で、介護保険料の独自の軽減策をもっているところは86.7%と多くにのぼった。
 軽減策の内容は、保険料の第3、第2段階などの人について、一定の所得基準を設けて(年収150万円など)、基準以下の所得の人について保険料を軽減する自治体が多い。
 都道府県では、回答のあったなかで保険料助成を実施している自治体はなかった

2、自治体独自の介護支援策の有無
  「生活援助」、デイサービスなど区市7割が実施
 利用限度額への上乗せや「自立」と判定された高齢者などにたいする施策等、介護保険制度の枠外の自治体独自施策について聞いたところ、区市では、独自施策がある自治体は69.9%と多くにのぼった。
 独自施策の内容はホームヘルパーによる生活援助やデイサービスの実施、住宅改善費助成など様々である。施設利用の低所得者にたいして食費・居住費補助を実施しているところや在宅サービスの限度額を超えた自己負担分1/2を助成しているなどの自治体もあった。

3、介護現場の改善について
  国の介護職員待遇改善策 「不十分だ」が6割超す
(1)国の介護職員待遇改善策についての評価
 国が実施した、09年度の介護報酬3%引き上げ、「介護職員処遇改善交付金」制度発足について、自治体の評価を聞いたところ、「十分な対策だ」はわずか1自治体のみ。「不十分だ」が6割を超えた。介護報酬のさらなる引き上げ、全職員を対象にした「処遇改善交付金」への改善など多くの要望が寄せられた。「今後の介護報酬の増が利用者及び被保険者の負担増とならないよう抑制策を講じること」、「都市部の家賃・地代、人件費などの実情に対応した介護報酬の地域係数の改善」(東京の区)などの要望も寄せられている。

  「現状を改善するにはまだ不十分であり、いっそうの改善が必要だ」 63.7%
「十分な対策だ」 0.8%
「なんともいえない」 35.5%

 (2)介護人材確保のための自治体施策の有無
 介護の人材確保のための独自施策がある自治体は42.5%、独自施策がないところは57.5%だった。独自施策の内容は、研修支援策が多く、ホームヘルパー2級資格取得の研修費助成を実施している自治体もあった。

4、安心・安全の介護体制確立へむけて
  防火設備など国の財政支援を求める
 認知症高齢者グループホームでの相次ぐ火災事故をうけ、再発防止策を聞いたところ、国による防火体制の財政支援策の強化を求める声が多くあがった。とくに、スプリンクラーの補助について、設置義務のない275?未満のグループホームを対象とするべきだとの意見が多くだされている。

  「スプリンクラーや通報装置など防火設備に国・自治体が財政支援をおこなう」 32.2%
「認知症グループホームの職員配置基準について、夜勤は複数体制にする」 16.8%
「防火設備の設置状況について行政の監督・指導を強化する」 19.6%
「地域住民との協力体制を確立 」 25.2%
「その他」 6.3%

5、特別養護老人ホームの待機者解消策につい
  待機者 都市部で定員の1・5~2倍以上にも
「解消の見通しない」 2県20区市が回答
 〔待機者の現状と今後の見通し〕
 特別養護老人ホームの待機者数が、自治体における特養老人ホームの総定員より上回っている自治体が少なくなかった。首都圏など都市部はもちろん東北地方をはじめ地方都市でも多くみうけられ、全国的に深刻な施設不足に直面している実態が浮き彫りになった。
 東京、千葉など都市部は特に深刻で、東京23区の場合、待機者数と定員数との比で1・5倍以上が少なくなく、2倍を超す自治体もある。今後、都市部で高齢化が急速に進むことから、対応策は一刻も猶予を許さない課題であることをしめしている。
 深刻な施設不足のなかで、待機者解消の見通し年数を明確にしめしたのは3自治体にとどまった。「見通しがたたない」と回答した自治体が全体の2割近く、2県20区市あり、うち6自治体が東京の特別区だった。「なんともいえない」は80.7%にのぼり、多くの自治体が先行きに不安を抱えている状況をうかがわせている。

〔国への要望〕
「保険料に連動しない財政支援を」の要望がトップ
 待機者解消策についての国への要望では、「施設整備をすすめても介護保険料の値上げにならない対策を」との回答が最多で半数を超す自治体からあった。介護保険制度では、特別養護老人ホームなどの基盤整備をすすめると給付費が増加し、これが被保険者の介護保険料アップにつながるという仕組みになっている。自治体がこの矛盾に苦慮している実情が反映された形となっている。
 「その他」が3割近くあるが、その内容として、「施設とあわせ、在宅サービスの整備も重視して待機者解消を」との意見を付記した自治体が多かった。「ユニット型との併設を認めるなど、従来型多床室の整備も認めてほしい」との声も少なくなかった。

  「介護施設の整備目標をひきあげる」 15.6%
「施設整備にたいする国庫補助制度を復活する」 22.7%
「都市部での用地取得費にたいする国の助成制度を設ける」 17.0%
「介護型療養病床の廃止計画を中止する」 5.7%
「基盤整備をすすめても介護保険料の値上げにならない対策を講じる」 53.2%
「その他」 28.4%

6、介護保険財政の課題について
 「国庫負担の増額を」 の要望が最多
 介護保険制度の見直しにむけて、財政対策として今、国が講じるべき最も重要な対策は何か聞いたところ、「国庫負担をふやす」が最多で半数近くあった。厚生労働省などが検討課題としている、利用料引き上げなど国民の負担強化を求める回答は一つもなかった。
 なお、「その他」の回答が約3割と多かったが、その内容をみると、「国庫負担割合をふやすべき」、「国庫負担金は介護給付費25%を確実に交付し、調整交付金5%は別枠とすること」などと国の財政負担強化を求めているものが多い。都道府県の回答では、「負担と給付のあり方を再検討すべきだ」などとの意見が少なくなかった。

  「国民の介護保険料・利用料負担は限界。国庫負担をふやす」 45.4%
「利用料の定率1割負担を2割、3割に引き上げる」 0%
「介護保険料の支払い年齢を20歳程度に引き下げる」 0%
「なんともいえない」 24.4%
「その他」  30.3%

7、国への要望
 介護保険制度の見直しにあたり、国として講じるべき対策として、保険料・利用料負担の軽減策、要介護認定の見直し、在宅サービス・施設整備の拡充、介護職員の待遇改善、事務負担軽減と簡素化、国庫負担の増額など様々な要望が寄せられた。
 特に、多くだされているのは、低所得者に対する保険料・利用料の負担軽減制度を国の責任で確立するべきだとの要望である。九州地方のある市は次のように回答してきた。「現在の介護保険料・利用料負担は、既に限界を超えている。また人口や高齢化率等により保険料の地域格差が大きくありすぎる。特に国民年金だけの受給者等は、限界を超えるだけでなく、その生命維持を行うための生活を脅かすような状況である。このような被保険者に対しては、国庫で負担を行い、最低限の社会保障を行うべきである」。
介護保険制度の見直しは、「国民や自治体の意見を十分に聞いて行うよう」求める意見が数多くの自治体から寄せられている。

個別事例

〔介護事業所から〕
●息子と二人暮らしの男性。息子は早朝から夜遅くまで働くものの収入は少なく不安定。そのため、ほとんどはその男性の年金で生活費と介護サービス利用料金を支払っていた。週2回の通所リハと連日のヘルパーによる家事支援、ベッドレンタルを使っていたが、利用料金の滞納からサービスが徐々に減っていき、通所はストップ。ヘルパーの回数を減らして最低限のサービスだけとなってしまったが、90歳と高齢で、結局はサービスを減らして数ヶ月で、ヘルパー訪問時に亡くなっていた。(山形・通所介護)

●要介護1、80代の男性。週2回デイサービスを利用していたが、食費(450円×2×4)の実費負担になってから、週1回の利用となった。生活をきりつめるために、冬の灯油代を節約することで、室内10度前後、日中はストーブをつけない生活をしている。(北海道・通所介護)

●月4万円程度の国民年金で1人暮らしの女性。家事困難で月~土のヘルパー利用だが、利用料を気にし、1日は減らそうかと相談がある。栄養が足りず、体調をこわしたり、転倒の危険もふえている。交流ができず、毎日1人で過ごすため、通所サービスの利用が望ましいが、我慢している。(鹿児島・居宅介護支援)

●60代の女性。夫と二人暮らし。要介護5。夫は建設業で朝早く出て夜帰宅。本人は寝たきりで週2回のデイケアと週1回の訪問入浴を利用。これまで昼と夕方の1日2回のホームヘルプサービスを利用していたが、介護報酬改定で身体介護の単価が上がり、また事業所加算も取得したので、これまで通りだと限度額を超えてしまう。そのためサービスを削減せざるをえず、1日1回のヘルパー利用となる。本人はできるだけ水分をとらないようにされている。(千葉・訪問介護)

●93歳、女性。身寄りはなく、近所とも疎遠な「孤老」。古いアパートの一室は陽も風も入らず薄暗く、都市ガスは止められている。「命綱」は生活保護と介護サービス。通所リハビリとヘルパーによる生活支援が彼女の心身と暮らしを支えている。認知症であるが、持ち前のがんばりで独居を維持しているが、この頑張りが、要介護認定では「自立度」が高いとみなされ、介護度は低くなってしまう。必要なサービス(というよりサポート)が受けられない介護保険の壁がある。(大阪・通所介護)

●認知症の女性。長男と二人暮らし。大腿骨骨折で独歩が不可能。一人になると不安になり、長男をさがし、移動しようとする。24時間誰かがそばにいる必要があり、長男も外出を控えている。費用は介護保険の限度額では足りず、自費でのヘルパー派遣、医療費とあわせ月々の負担は15万円前後。毎月蓄えを取り崩しての生活。(東京・居宅介護支援)

●80代の夫婦。夫は要介護4の右麻痺。妻は要介護2で重度の認知症。二人ともサービスを限度額いっぱい使ってきたが、毎食後の内服管理や排泄に介護が必要な夫に、毎回サービスを入れることができず、妻も夫の介護ができなくなり、体調も悪化。ショートステイを二人で長期に利用しているが、妻は限度額では足りず、貯金を取り崩し、自費分を支払っている。(山梨・居宅介護支援)

●97歳で介護2の父と65歳の息子の二人暮らし。介護していた65歳の息子が脳出血で倒れ、重度の障害を負った。別世帯のもう一人の息子さんが急遽97歳の父の介護に泊まりこみであたっている。65歳の息子さんは老健に入所中。それも21ヶ所問い合わせて入所の可能性があったのは2ヶ所のみ。そのうちの1ヶ所に入所した。97歳のお父さんのサービス利用もなるべく削り、ヘルパーはいっさい使わず、訪問入浴も週1回のみ。父、息子の利用料負担が大変。(神奈川・訪問介護)

●85歳で介護2のアルツハイマーの男性。妻と二人暮らし。妻はうつ病で、一人にできないので2年前から特別養護老人ホームの入所申し込みをしているが、待機者は300番台。息子さんが仕事を休み、介護にあたり、特別養護老人ホームはあきらめる。とりあえずグループホームに入ることにしたが、それも市内のグループホーム10数ヶ所にあたり、やっと1ヶ所空きがあり、入所できた。(神奈川・訪問介護)

●当特別養護老人ホームは、4月現在、定員40人に対して申し込み者は10倍の400人を超えている。申し込んだ家族からは、待機者の多さに「2回死んでも入れないなあ」という声があがっている。(石川・特別養護老人ホーム)

〔利用者・一般の方から〕
●父(死亡)、母、義母を介護。父母の年金が低く、平均3万円程度であり、年金で足りるような介護費用にしてほしい。子ども二人も会社の倒産、リストラにあい、大変な状況にある。要介護認定も認知症は低いと思う。(千葉、男性、61歳)

●夫が認知症で4度です。約5年ほど前より特別養護老人ホームへ入所しております。利用料が高くて、生活が苦しい状態です。それ故、まだ働いております。もう私もきつくなってきました。(長崎、女性、75歳)

●92歳、要介護5の母を、私(娘)一人で介護して6年です。同居なので家事援助サービスは受けられません。1年365日、24時間の介護を一人で担っていますが、6年もたつとへトヘトで不調です。「同居の人の家事援助サービス」の復活、見守りのヘルパーの派遣をできるように制度の見直しをお願いします。(神奈川、女性、60歳)

●父親を介護。訪問介護の時間と回数が限られている。介護職員の定着が悪い。私はシングル介護ですが、在宅勤務に切り替えたら年収が半分になった。(東京、男性、46歳)

●私はケアマネージャーをしています。ある利用者は、6万8千円の年金で、家の借地代2万円を支払い、保険料を払い、4万円で生活しています。計算しながら病院に行き、デイサービス、訪問介護を利用しています。若いときは一生懸命働き、働けなくなると、じゃま者扱いされると思うと将来不安でなりません。(大阪、女性、63歳)

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