日本共産党の小池晃政策委員長(参院議員)は17日、党東京都委員会が主催したシンポジウム「東京から食と農を考える」でパネリストとして発言し、都市農業振興の方向を多面的に語りました。発言の要旨を紹介します。
農家から"悲鳴"
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都内の農家や農協を回り懇談しましたが、多面的な農業が展開されていると改めて思いました。しかし、農業が続けられない、と悲鳴にも似た声があがっています。
都市の農業は、広大な消費者が近くにいるし、消費者は食の安全・安心に関心が高いのです。都民のモニター調査では85%の方が「農地を残してほしい」といいます。今の農政は住民の願いとかけ離れています。正すのは政治の責任です。
都市地域の農業はこれまで開発優先政策の中にありました。広大な農地が都市計画の線引きで囲い込まれ、他用途に転用されました。地価高騰のため、宅地並みにされた市街化区域内農地の固定資産税、相続税がぼう大になり、農業をつづける重大な障害となっています。
日本共産党は、農地の宅地並み課税に反対するとともに、農地並みになる生産緑地制度の修正にとりくみました。国会論戦でも追加申請を認めさせ、生産緑地を広げる取り組みもしてきました。
国の動きに変化
昨年ぐらいから、国の政策の方向も変わり始めてきました。都市農地の保全ということが、農業サイドだけでなく、国土交通省の社会資本整備審議会の報告などで指摘されました。しかし、新政権になってから議論が中断しています。私たちはこうした方向で都市農業政策を転換する必要があると思っています。
都市農業には発展の可能性、希望があります。安全でおいしいものを地元でつくることは住民の強い願いだからです。直売所では生産者の顔が見える関係があります。学校給食への利用や体験農業は食教育の上からも大事です。遠くから運ぶことをやめ地球環境を守ることやトレーサビリティー(生産・流通履歴)に関心が広がっていますが、都市農業での生産物がいちばん効果的です。
本当に広げるためには行政の役割は決定的です。都市農業の特徴である少量多品種の生産に、国の価格保障・所得補償を広げてしっかり支えることが必要です。対象外にされてきた市街化区域内農地の整備事業、地域の実態にあわせた担い手育成策、体験農園、農業ボランティア、市民農園のとりくみを応援することが大事です。
農あるまちづくりを都市のあり方としてもめざすことです。地震時の避難場所、ヒートアイランドのことを考えても都市農業・農地は大事です。応援するために法整備をしていきたいと思っています。
農地税制見直せ
なによりも、農地をつぶして宅地化というやり方を大転換するためには、税制の抜本見直しが避けられません。一つは農地の固定資産税の大幅な軽減です。宅地課税となっている作業場などを農地並みにすることが必要です。相続税も、農業投資価格にあわせ抜本的に引き下げていくことが求められています。JAの方と懇談したときに、「会社で代替わりのときに税金をはらいますか? なぜ農業は税金を払わなければいけないのか」といわれましたが、本当にそのとおりです。
生ごみ利用のたい肥化による循環型農業も大事です。消費者と結んだ取り組みが都市農業の可能性をさらに広げると思います。「安全なものをつくるには、こんなに手間ひまかかるのか」と交流し、再生産可能な価格への理解が広がると思います。
農業予算増やす
農業つぶしをしてきた傷が深いので、長期にわたり農業予算を増やす必要があります。国の一般歳出に占める農林水産予算は4・6%にすぎません。10年前は7・1%でした。その水準に戻すだけでも1兆円の積み増しができます。財源はいろいろありますが、たとえば防衛省の予算は5兆円です。国を守る、国民の安全を守るというなら、1兆円を削り農業に投入する方に国民の皆さんは「そうだ」といってくれると思います。