抗てんかん薬として販売している薬と同一成分のものを、別商品名でパーキンソン病の「新薬」として厚生労働省の承認を受けたところ、医療保険から支払われる薬価が100倍以上に跳ね上がりました。医療関係者から「開発経費を必要とする新薬ではなく、適応を拡大しただけなのに」と、異常な高薬価に批判の声があがっています。(堤 由紀子)
問題となっているのは、パーキンソン病新薬として大日本住友製薬が3月から発売している「トレリーフ」。抗てんかん剤「ゾニサミド」を有効成分とする薬で、薬価は1錠(25ミリグラム)1084・9円です。同社が抗てんかん薬として発売している、全く同じ成分の「エクセグラン」は1錠(100ミリグラム)38・5円。同じ量で薬価を比べると、その差は実に112・7倍にもなります。
薬価の算定は、厚生労働大臣の諮問機関「中央社会保険医療協議会」(中医協)が製薬会社の申請を審査し、大臣に答申します。これを受けて厚生労働大臣が定め、薬価基準に収載されます。
今回、中医協は「トレリーフ」と類似の薬の薬価に5%の「有用性加算」を加えて算定したといいます。
中医協委員からも今回の薬価を決める過程に異議が出ています。全国健康保険協会の小林剛理事長は、8月の中医協総会の場で「(薬価をきめた2月の総会では)抗てんかん薬として薬価収載されていると説明がなかった」と、資料の不備を指摘しました。
支払い側でもある国民健康保険中央会は「(100倍に薬価がはね上がるのは)被保険者が困る問題なので、11月の大会に向けて議論をすすめる予定。会としても中医協の場や、新しい政権のもとでの審議会などで訴えたい」と話しています。
批判が広がる中、18日に開かれた中医協薬価専門部会は、次回の同部会で「トレリーフのような高薬価が出た時にどうするか」議論することを決めました。
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薬価算定のしくみ問題
日本共産党の小池晃政策委員長の話 全く同じ成分でありながら、薬の名前を変えただけで100倍以上の値段になるなど、到底国民の理解を得られるものではありません。
薬価の低いジェネリック医薬品(後発医薬品)の使用も拡大する中で、製薬企業が利益を求めるために巻き返しをはかっているともいえます。
製薬業界の利益を優先させた今の薬価算定のしくみは問題です。類似薬より高くなるように薬価を決めるから、新薬にとって有利な高薬価となるわけで、本来であれば、実際にかかったコストに対して支払う原価計算方式にすべきです。
医療費に占める薬剤費の割合はやや下がったとはいえ、欧米に比べればまだ高い割合を占めています。ここにメスを入れれば、国民の負担を減らし、医療従事者の待遇改善をはかる財源にあてることができます。天下りや政治献金による政官財の癒着が背景にあり、これを断ち切ることが求められていると思います。
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