今日は朝から「中国外交部」へ。中国の「外務省」です。ここでは、10 日に駐日大使として着任予定の王毅氏と会談しました。これまた流ちょうな日本語を話す王毅氏は、その話題のほとんどが 6 カ国協議についてでした。
王毅氏は言います。「6 カ国協議は、今は困難な状況だが、困難に直面するのはいつものことです。しかし、対話を通じて解決できると思っています。問題解決の基本的な条件は整えたからです。
北朝鮮はアメリカからほしいものを手に入れました。すなわち北を敵視しないこと、侵略しないこと、現政権を変えないこと。そしていずれ国交正常化することです。
一方で、アメリカも北朝鮮からほしいものを手に入れました。核放棄、その第一歩としての凍結です。
このように今は道も敷いて門も開けた状態であり、問題はこの門にはいるかどうか。それは政治判断なのです。しかしアメリカは大統領選挙のため、政治判断ができません。具体論にはいると、妥協できなくなるから、選挙前には具体論に入れないのです。北朝鮮も、門の中には入りたくないから『待ちましょう』という態度です。しかし私は悲観的ではありません。もちろんたやすい仕事ではないのですが。
日本は隣国であり、米韓との関係も強い国です。日朝国交正常化も絡んでいます。日本ももっと積極的な役割を果たしてほしい。
第一歩は核問題。これしか方法はありません。そして停戦協定を平和協定に変えること。そして朝鮮半島の平和から北東アジアの平和へすすんでいきたいのです」。
アジアの平和への固い決意と自信に満ちた王毅氏の態度が、非常に印象的でした。会談後にあいさつを交わしたときには、王氏が「日本共産党の役割には期待していますよ」と語りかけてきました。
その後、中日友好協会本部で、大学や党機関の日本問題の若手研究者らと懇談しました。
ここでも最近の日中政府間の関係悪化が話題となり、中国側からは小泉首相の靖国参拝や歴史教科書問題への懸念などが次から次へと語られました。日本から参加した与党議員にとっては耳の痛い話で、話題をそらそうとするのに必死の様子でした。
私は「日本共産党は、アジアへの侵略という歴史的事実をふまえ、その厳しい反省を日中関係の原点にすえるべきだと主張してきました」と発言。与党の発言にはあまり反応のなかった中国側がしきりにうなずいて聞いてくれます。
そして「小泉首相が靖国参拝をくり返す姿勢は、アジアの交流と平和の流れの土台をこわすもので、厳しく批判している。今後も日本国内でたたかっていきたい。教科書問題の指摘もあったが、日本の若い世代には、そもそも侵略戦争という事実を教育すること自体も十分におこなわれていない。
しかしこれは、今後政治的にも経済的にもアジアと関係を深めていかなければ、生きていくことのできない日本にとって、いつまでも通用する態度ではない。こうした政治姿勢はいずれ行きづまらざるを得ないだろうと思っている」と結びました。
中国側参加者からは「あなたの歴史認識に完全に賛同する」とのコメントが返ってきました。日本共産党が、アジアでの平和と交流の対話を進めることができる政党であることを実感した一幕でした。
北京大学経済研究センターにて |
北京の日程の最後は北京大学です。ここの経済研究センターの林毅夫(ぎふ)教授と懇談しました。このセンターは中国の経済政策の中心をになっているシンクタンクです。朱鎔基前首相などは毎週このセンターに来て、若手研究者と意見交換をしていたそうです。
林教授は語ります。「当センターには、文革時代は下放政策で中国農村の最底辺に身を置き、その後大学に入学した世代が集まっています。中国の改革のプロセスを身をもって体験した人たちです。そして 80 年代にアメリカなど海外留学した後に集まって、94 年にセンターを設立しました」。
林氏は「これから 20 年間、中国が毎年 9 %の成長を続けることは間違いない」と語ります。数々の指標を上げて日本の 60 年代の水準と比較し、理路整然と説明する姿が印象的でした。同時に林氏は、今後の中国にとって最大のテーマのひとつが「社会保障制度」と強調します。高齢化の急速な進行や国営企業改革の結果、社会保障制度の整備が緊急課題となっているとのことで、その中心は年金制度だといいます。
その後、北京から鄭州に向かう中国南方航空の飛行機の中で配られた英字紙(『CHINA DAILY』)でも、一面全部を使って中国の社会保障制度について最近発表された「白書」の特集をしていました。巨大な国家である中国が、社会保障制度をどのようにつくり上げようとしているのかは実に興味深いテーマです。注目していきたいと思います。