質問第三号
出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
平成二十一年九月十七日
小池 晃
参議院議長 江田 五月 殿
出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度に関する質問主意書
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本年10月1日から、「出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度」が実施される。妊産婦が出産時に多額の現金を用意しなければならないという問題点を解決するというのがその趣旨ではあるが、産科医療機関及び助産所の側からは、「制度開始時に二ヶ月間分娩費用の支払いが遅れるため、資金繰りに支障をきたす。その結果閉院に追い込まれるところも出てくる」との懸念の声が上がっている。資金繰り対策として、独立行政法人福祉医療機構による「病院・診療所・助産所への運転資金融資」も用意されているが、問題点も指摘されている。「産科医療の危機」がさけばれている中だけに、十分な配慮が求められるべきだと考える。
そこで以下質問する。
- 一
- 今回の「出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度」の導入によって、産科医療体制の危機に拍車をかけるようなことはあってはならないのではないか。産科医療機関及び助産所に負担を強いることのないように万全の措置を講ずべきではないか。政府の基本的な認識を問う。
- 二
- 出産一時金相当額の入金が約二ヶ月遅れることによって産科医療機関及び助産所が陥る窮状を考えると出産育児一時金の支払いは、二カ月後ではなく、現状と同じように当月払いとすべきではないか。少なくとも翌月払いも含めてできる限り早急に支払いを行うよう変更すべきではないか。
- 三
- 資金繰りなど「出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度」導入のための準備が整わない医療機関について制度適用を延期するなど経過措置を検討すべきではないか。
- 四
- 独立行政法人福祉医療機構による運転資金融資は、申し込みから融資の実施までどれだけの日数を必要とするのか。相当の日数を要するのであれば、「運転資金融資」としての役割を果たし得ないと思うがどうか。
- 五
- 同融資は有利子である上に、不動産担保を求めているが、政府の政策変更によって資金繰りが悪化しているのであり、このような負担を産科医療機関及び助産所に強いるべきではなく、融資額にかかわらず無担保とすべきではないか。また、利子補給を行うなどして、利子負担を求めない制度とすべきではないか。
- 六
- 直接支払制度を希望する妊婦の「産科医療補償制度」保険料の支払いは、出産育児一時金の支払いとあわせて二ヶ月後でも可能とすべきではないか。
- 七
- 出産後に判明した保険証の資格喪失などで、一時金が支払われなくなるリスクも指摘されている。こうした場合でも、産科医療機関及び助産所に責がなければ、一時金を支払うようにすべきではないか。
- 八
- 現在の受取代理制度では国保保険料等を滞納している場合、一方的に国保滞納保険料の相殺払いを行っている例が見られる。直接支払制度においては国保滞納保険料の相殺払いを行うべきではないと考えるが如何か。
右質問する。
答弁書第三号
内閣参質一七二第三号
平成二十一年十月一日
内閣総理大臣 鳩山 由紀夫
参議院議長 江田 五月 殿
参議院議員小池晃君提出出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する
参議院議員小池晃君提出出産育児一時金等の医療機関等への直接支払制度に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の出産育児一時金等(出産育児一時金、家族出産育児一時金、出産費及び家族出産費をいう。以下同じ。)の医療機関等への直接支払制度(以下「直接支払制度」という。)の実施に当たっては、医療機関等に過度の負担を強いることのないようにすべきであると考えており、医療保険者から医療機関等に対して、出産育児一時金等が支払われるまでの間に、医療機関等の資金繰りに支障を来すことのないよう、独立行政法人福祉医療機構(以下「機構」という。)において低利融資を実施しているところである。また、診療報酬の場合には申請から支払までに二か月を要するところを、出産育児一時金等の場合には、異常分娩の場合を除き、一か月程度に短縮することとしている。
二について
お尋ねのように、出産育児一時金等の支払を当月払いとすることは、医療保険者及び支払機関(国民健康保険団体連合会及び社会保険診療報酬支払基金をいう。以下同じ。)における事務手続に要する時間を考慮すると困難であるが、一についてで述べたとおり、医療機関等の資金繰り等を勘案し、診療報酬の場合には申請から支払までに二か月を要するところを、出産育児一時金等の場合には、異常分娩の場合を除き、一か月程度に短縮することとしている。
三について
直接支払制度については、医療関係者、医療保険者、支払機関等の了解を得て、本年五月二十九日に実施要綱を定め、それぞれにおいて準備を進めてきたところであり、その実施を延期することは考えていないが、当面の準備が整わないなど、本年十月から直ちに直接支払制度に対応することが困難な医療機関等については、当該医療機関等において、その旨を窓口に掲示すること等の措置を講じた上で、六か月間、制度の適用を猶予することとしている。
四について
機構においては、借入れ申込みの受理からおおむね二十一営業日で資金の交付が行われており、御指摘のように「「運転資金融資」としての役割を果たし得ない」とは考えていない。
五について
医療機関等の資金面での負担の軽減については、引き続き検討してまいりたい。
六について
産科医療補償制度においては、直接支払制度の実施に当たり、加入する医療機関等の事情に応じ、掛金の徴収を一か月延期し、直接支払制度による出産育児一時金等の支払後に掛金を徴収する対応を行うこととされているところ、御指摘のような対応を行う必要はないものと考えている。
七について
直接支払制度においては、診療報酬の支払の場合と同様、出産後に被保険者等の資格の喪失が明らかとなった場合であっても、その事実を知らなかったことについて、医療機関等の責めに帰すべき事由がなければ、医療機関等から特段の申出がない限り、資格喪失前の医療保険者から当該医療機関等に対し、出産育児一時金等が支払われる取扱いとすることとしている。
八について
お尋ねについては、国民健康保険法施行規則(昭和三十三年厚生省令第五十三号)を改正し、直接支払制度における出産育児一時金について、保険料の滞納による支払の一時差止めは行わないこととしており、御指摘のように一時差止めに係る出産育児一時金と国保滞納保険料との相殺が行われることはない。