著書紹介「これからどうする! 介護と医療」
「これからどうする! 介護と医療」
1,500 円(税別)
単行本 - 197 p (2001/05/01)
新日本出版社 ; ISBN: 4406028145 ; サイズ(cm): 21 x 15
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保険のしくみと問題点、こんごの展望までを語るハンドブック。介護サービスの低下など、介護保険の深刻な矛盾が吹き出すなか、追い打ちをかけて医療保険も改悪。医師であり、国会議員である著者が高齢者をはじめ広範な国民に高負担を押しつける、二つの保険について分かりやすく解説します。
著者からのメッセージ
21 世紀の日本が、「維持可能な社会」として発展を続けられるかどうか。そのひとつのカギを握るのが社会保障、とりわけ高齢者介護と医療です。財政と環境を破壊する巨大開発優先から、社会保障を主人公とした政治の変革が求められています。
98 年に国政の場に送りだしていただいてから 3 年。介護、医療についての今までの仕事をまとめてご報告するとともに、21 世紀の日本のために「私ならこうする!」と提言します。
○医師の経験を生かした具体例と提言
日野秀逸氏(東北大学大学院経済学研究科教授)による書評
介護保険と高齢者の医療費一割負担は、介護と医療の面から高齢者を苦しめている。小池晃参議院議員の新著『介護と医療』は、極めて時宜にかなった出版である。著者は、第一章で、介護保険の仕組みを十問十答形式で分かりやすく解説し、また、実施後の次々と明らかになる問題点をえぐりだす。さらに、介護保険の「大失敗」の二つの原因を探り当てる。第一が政府・自民党の「財政負担削減」最優先策。第二が高齢者の介護と医療に対する国の責任を後退させて、営利企業の参入を進めたことである。この部分はきわめて説得的であり、複雑な介護保険にかかわる複雑な事態を、誤りなく見通す上で有益である。介護に関する章の最後に、具体的な改善案を提示している。評者としては介護保険を現物給付のシステムに変えよ、という提案が興味深かった。
第二章では、昨年成立した健康保険法改悪を中心に論じている。第一章とほぼ同様の構成で、まず具体的に問題点を示し、改善の方策を提示している。第三章では、消費税の増税を許さず、公共事業と社会保障の逆転を正すことを前提としながら、当面の改善の決め手を三つ提案する。第一は、介護保険給付費に対する国の負担を五〇%まで引き上げること。第二は、高齢者医療への国の負担を一〇%増やし、国保、政管健保への国庫負担を改悪以前の水準に戻すこと。第三は、基礎年金に対する国庫負担を五〇%まで引き上げること。いずれも、財源の裏付けが示されている。
以上の内容を著者は、実によく整理し、具体的な事例を豊富に用い、説得的に叙述している。予備知識のない方にも入門書として推薦できるが、一定の知識を持つ運動家にも、知識の再整理に最適なものとして一読を薦めたい。
日本共産党の国会議員には、津川武一、沓脱タケ子、浦井洋、辻第一といった先輩がいた。小池氏には、二十一世紀を担う医師出身の政治家として、大いに活躍を期待する。本書はこの期待を大きくさせるものである。
(しんぶん「赤旗」 2001 年 7 月 2 日付より転載)
○現場体験ふまえた成果が
二木立氏による書評
本書は、昨年開始された介護保険制度と昨年以降継続している医療(保険)改革の問題点と、「これからどうする」べきかを、明快かつ非常にわかりやすく書いた好著です。このテーマについての最良の入門書であるだけでなく、「制度が改悪される一方で、今後の展望がない」と悩んでいる医療・福祉関係者に勇気を与える本でもあります。
著者の小池晃さんは、医師出身の日本共産党参議院議員。東京の第一線病院で十数年地域医療に従事し、現在は全日本民主医療機関連合会(民医連)理事も務めています。三年前に参議院議員に三十八歳の若さで初当選して以後も、外来診療を続けていると聞いています。このような医療の現場体験に裏打ちされた鋭い質問で、首相や厚生労働大臣をたじたじとさせ、具体的な改善を約束させる手腕は有名です。
この本の最大の魅力は、そんな国会活動の成果が生き生きと書かれていることです。その中でも一番迫力があるのは、介護保険で一番希望の多いショートステイ(短期入所)の利用が厳しく制限されている」との理不尽さを指摘し、時の厚生大臣から「私も認識については同じ」という発言を引き出し、その後具体的改善をかちとった個所です。
本書の迫力の源泉はもう一つあります。それは、超多忙な国会活動の中で、専門雑誌に幅広く目を通し、一般には見逃されやすい官僚や医師会幹部などの本音、問題発言を探し出して厳しく批判していることです。他面、政府寄りといわれている研究者でも正当な発言はきちんと評価する公平さ、バランス感覚にも好感が持てます。
最後に注文を一つ書きます。本書の最後に書かれている、「社会保障改革の当面の決め手」と「将来の展望(抜本的な財源確保)」には私も賛成ですが、後者はまだ「骨格」のレベルにとどまっています。共産党や革新団体、研究者の英知を結集して、ぜひ「肉付け」してほしいと思います。(評者は日本福祉大教授)
(学生新聞 2001 年 9 月 8 日より転載)
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