私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました労働基準法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論します。
反対理由の第一は、割増し賃金率の引上げについて中小企業には当分の間適用しないとしている点です。
労働基準法という労働条件の最低基準を刑事罰をもって守らせる法律に大企業と中小企業の労働者で異なる基準を持ち込むことは許されず、せめて経過措置とすべきです。このままでは大企業からのしわ寄せで下請中小企業の労働者の時間外労働がますます長くなる事態すら生じかねません。
反対理由の第二は、時間外労働が月六十時間を超える労働者に、引上げ分の割増し賃金の支払の代わりに年休ではない有給の休暇を与えることを可能としている点です。
これは、一種の変形労働制と言うべきもので、一日の時間外労働を抑制することにはなりません。しかも、年休の取得率が低下し続けている下で、長時間残業をしている労働者が翌月に代替休暇を与えられても確実に休める保障はなく、時間外労働抑制の実効性には疑問があります。
そもそも、今回の法案は、時間外労働が月六十時間以上でないと賃金の割増し率が五〇%になりません。衆院での修正により対象が拡大したとはいえ、時間外労働の上限を法定化せず、青天井で残業ができる仕組みを残したままでは、過労死を生むような長時間労働はなくせません。
今、自動車や電機などの大企業が輸出の落ち込みや景気の後退を口実に大量解雇を進めており、大きな社会問題になっています。その多くは、正社員と同じように働かされてきた身分不安定な派遣労働者や期間労働者です。こうした非正規労働者をまるで調整弁のように大量解雇し、残された正社員には大臣告示すら上回る長時間労働を押し付ける、こうした事態を放置したままでは日本経済の安定的発展もあり得ません。
割増し賃金については、すべての時間外労働に対する割増し率を人員増の費用に見合った均衡割増し賃金率に相当する五〇%とすべきです。時間外労働時間の上限を法律で規制し、日々の長時間労働を規制するため、EUと同様に一日のうち連続休息時間を十一時間確保すべきです。そうした法改正こそ求められており、本改正案には一部前進面はあるものの、全体としては不十分なものだと言わざるを得ません。
以上の理由から本改正案に反対することを表明し、討論といたします。