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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

第170回国会 厚生労働委員会 第6号

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  • 大臣告示超す残業正せ/小池氏に厚労相 「調査し措置取る」/自動車大手(関連記事)
  • 論戦ハイライト/非正規切り 違法明白/小池議員 「厳正な対応を」/厚労相「法の精神に基づいて指導する」(関連記事)
  • 長時間労働抑制できず/共産党反対 労基法改定案可決/参院委(関連記事)
  • いすゞは労働契約法違反/期間・派遣切り撤回を/厚労相「調査し改善策とる」/参院委 小池議員追及(関連記事)
2008年12月2日(火)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 厚生労働省の調査で、十月から来年三月までの派遣切りなどの非正規雇用の解雇、雇い止めが全国で三万人を超えるということが明らかになりました。しかし、この調査は、これ半年間で、東京で派遣の雇い止めが三人、大阪でゼロ、これは明らかに不十分だと思います。これで全体図を把握したと言えるのか。実際にはもっと大量の解雇が行われているんではないでしょうか。

政府参考人(太田俊明君)

 御指摘のように、東京、大阪等につきまして相対的に少ない数字になっているものは、製造業における大規模事例が比較的少なかったことによるのではないかと考えております。多いところは愛知、岐阜とか栃木、広島、大分という自動車等の製造業の集積地という状況でございます。

 今回は、委員等の御指摘も踏まえて、十月調査よりもかなり定量的かつ網羅的に調査を行ったものでございますけれども、規模の小さなものにつきましては把握のできなかったものもあるのではないかと考えておるところでございますけれども、かなり一定の規模のものについては相当数把握できたのではないかと考えております。

 いずれにいたしましても、引き続き都道府県の労働局やハローワークを通じまして、状況の把握に努めてまいりたいと考えております。

小池晃君

 愛知は多いといったって、愛知だって実際に報道されているトヨタの派遣切り、期間工切りより少ない数字しか出ていないんですよ。これ、実態はもっと多いですね。はっきり言って、率直に言ってくださいよ。実態はもっと多いというのは間違いないじゃないですか。どうですか。

政府参考人(太田俊明君)

 先ほど申し上げたとおり、かなり定量的かつ網羅的に調査を行ったものでございますけれども、全部を含んでいるという全数調査ではございませんので、実態はこれよりも多いということはあり得ることだと考えております。

小池晃君

 幾らあれだって、東京で三人とか大阪で半年でゼロって、こんなことはあるわけないんですよ。これはまだまだ不十分だと思います。

 大企業は、この調査でも明らかなように、派遣社員や期間社員をまるで景気の調整弁のように、物のように使い捨てにしている。これは本当に許せないことだと私は思うんです。

 ここでお聞きしたいんですが、労働契約法の十七条の一項、先ほども議論ありましたが、やむを得ない理由がある場合でなければ有期契約労働者を解雇できないと規定をしております。この理由と、ここで言うやむを得ない理由、この考え方も併せて御説明ください。

政府参考人(金子順一君)

 労働契約法の制定以前におきましては、民法の規定におきまして、有期労働契約について、両当事者が契約期間の途中であってもやむを得ない事由があるときには直ちに解除ができるという規定があったわけでございます。労働契約法におきましては、使用者が解約、つまり解雇につきましては、やむを得ない事由がある場合でなければ解雇することができないということを明示をしたわけでございます。

 それで、問題になりますのは、このやむを得ない事由というのがどういうことなのかということになるわけでございますが、私ども、これは有期の契約期間ということになりますと、両方の当事者が互いにその前提で合意をしたものでございますから、いわゆる無期契約の場合よりもやむを得ない事由というのが限定的に解釈されるべきものだというふうに考えております。また、今回の労働契約法によりまして、これは民法の規定と異なりまして、使用者の方がやむを得ない事由があるという評価を基礎付ける事実について、主張立証責任、これは使用者が負うということが明らかになっていると、こういうふうに理解をしているところでございます。

小池晃君

 その狭いというのは、解雇権濫用法理におけるような条件よりも狭いということですね。

政府参考人(金子順一君)

 無期契約の場合の解雇権濫用法理の場合に比べて狭くなるのではないかということでございます。

小池晃君

 つまり、中途解除については、正社員における解雇権濫用法理より厳しい要件が課されている。要するに、そうした要件を満たしていなければこれは法違反になる可能性があるということですね。

政府参考人(金子順一君)

 これは個々の実態に即しての判断ということになりますが、委員御指摘のようなことも当然あり得ると思います。

小池晃君

 大臣、この労働契約法というのは、正社員の場合よりも期間社員の中途契約解除にはより厳しい、今説明あったとおりです、条件を課している。それから派遣の場合も、これ、労働者が契約期間中の雇用保障を期待していたことに変わりはないわけですから、これ、派遣先からの契約解除というのは中途解除とこれは同じようになるはずだし、私は期間社員の場合と同様に許さないという態度で臨むべきではないかというふうに思うんですが、大臣、今全国でこういう契約期間の中途で解除する、解約するということがもう大量に起こっているわけですよ。労働契約法からいってもこれは許されない違法なものなんだということを、私は、大企業や経済団体にもはっきり伝えるべきだし、そういう立場で現場でも厳しく対応していくべきだというふうに考えますが、大臣、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 今の労働契約法十七条にあるように、やむを得ない事由がない限りは中途解除ができないわけですから、これは法の精神に基づいてきちんと周知徹底し、指導していきたいと思います。

小池晃君

 具体的にちょっと聞きたいと思うんです。

 大手自動車工業のいすゞで、この間、私も当委員会で何回か取り上げてきましたが、今回、千四百名の期間社員、派遣社員を今年の末で解雇しようとしている。今、資料を配りました。この紙切れ一枚が期間工の方に送られているんですね。これで、この人、ほとんどの人は三月末まで雇用契約あったんですが、十二月二十六日付けで解雇だと、こういうことをやっているんですよ。

 私たち、いすゞの本社にも行きました。対応した役員は、ほとんどの社員は今回、来年三月までの雇用契約になっていると。年末に契約満了となる社員というのは数十名いるかいないか。私たちに寄せられたいすゞの労働者からのメールでも、いすゞでいろいろ短期契約をして五年以上働かせてもらいました、最後は紙切れ一枚でこんなことをされて悲しいです、死人が出ないと分かってくれないんでしょうかと。

 大臣、一千名を超える千四百名近くの労働者の雇用契約を破り捨てて年の暮れにほうり出すと。大臣、先ほど人は宝だとおっしゃったけれども、これ、率直に大臣の思いを、政治家としてこういう事態は私は許されないというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 この法の精神に基づいてやむを得ない事由がない限り中途解除は駄目だということでありますので、派遣元、特に派遣先、その企業がやむを得ない事情があるということで中途解除するならば、きちんと関連企業で再就職先を見付けると、そういうことをきちんとやるべきでありますので、そういうことについて各都道府県の労働局に指示を出したところでありますので、これはしっかりと対応したいと思います。

小池晃君

 いや、派遣のこともそうですが、期間工、これ何の手当てもしないで、もう十二月二十六日、これ送っているんですよ。こういうやり方が許されるかと、三月までの賃金も払わずに。こんなこと許されますか。大臣、率直に言ってください。

国務大臣(舛添要一君)

 個々の企業の個別の事例についてコメントするのは差し控えたいと思いますけれども、こういうことも含めて、法の精神に基づいて対応しないといけない。

 そういう意味で、厚生労働省の中に緊急雇用対策本部を設けましたので、職を失う、そういう労働者に対して全面的な支援もまた行っていきたいと思っております。

小池晃君

 このいすゞというのはそもそもどうだったかというと、最初偽装請負だったんですよ、これ。これ偽装請負が是正される過程で期間工になったわけです。私も国会で質問しました、正社員にすべきじゃないのかと。いすゞの方は、順次正社員に登用していくと、今年の三月に私どもに回答していたんです。ところが、今回、年末で一斉に打切りと、こういう経過でやってきているんですね。だから、ひどいと。

 しかも、いすゞ側は私たちに何て言っているかというと、労基署にも職安にも全部これ相談してやっていますと、しかし役所からは何も言われていませんと。大臣、こんなこと、このまま言わせていいんですか。いすゞに対して直ちに抗議すべきじゃないですか。どうですか。

国務大臣(舛添要一君)

 個々の企業と私どもの労働基準監督署、例えばそういう出先機関とどういうふうに具体的な交渉をやっているか。これは一々つまびらかにはいたしませんが、どういう状況であるかは、それは調査をし、必要な改善策があればきちんと取りたいと思っております。

小池晃君

 これだけ大問題になっているんですから、これきっちり調査をしていただきたい。

 いすゞの会長は一体今何と言っているかというと、十一月の社内報でこう言っているんです。私たちいすゞ自動車は、再建以降の五年間、増収増益で毎年過去最高実績を更新するという好調な状態を続けてきましたと。いすゞは、減益といっても来年三月期の経常利益予想は六百億円なんです。今期十七億円配当を増やしているんです。私、労働者の首切りながら株主への配当を増やす、これで、先ほど言っていたような厳しい、やむを得ない理由があると言えるのだろうかと。

 私、この事案については、厚労省として、これやめろというふうに大臣、きっぱり物を言うべきだと思いますが、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 様々な個々のケースがあると思いますが、先般、昨日、首相官邸において、経済界の代表に来ていただきまして、こういう問題も含めてきちんと対応するように申し入れたところでありますので、経済団体全体がこういうことについて法の精神に基づいて的確な対応をするように今後とも要請してまいりたいと思います。

小池晃君

 そういう一般論じゃなくて、一般論で幾ら言ったって、大企業なんて聞く耳持たないでやっているんですよ。やっぱり個別企業に対してしっかり直接物を言うということをやらなければ、私は労働行政としての責任果たせないと思いますが、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 個々の企業と労働行政を担う我々の出先機関が具体的にどういう議論をし、どういう指導を行っているかということは、これは公の席ではつまびらかにできませんけれども、そういうことの調査も含めて必要な指示はきちんと与えたいと思っております。

小池晃君

 これはきちっとやっていただきたい。

 やはり、大量解雇を中止をせよ、雇用を守る社会的責任果たせと、経済団体通じてだけじゃなくて個々の企業にもしっかり言っていただきたい。

 再就職のあっせん、再就職が決まるまでの住居や生活の保障、最低限のことですよ。これやらせるべきじゃないですか。大臣、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 これは、再就職のあっせんをきちんとやるようにというのは、昨日も経済団体に対して申し上げました。

 そしてまた、この住居をどうするか。これは今政府全体で議論を開始し、検討をスタートしたところでございます。

小池晃君

 これ本当に今深刻な大問題ですから、一般論じゃなくて、やっぱりこれは本当に全力で取り組んでもらわないといけないというふうに思うんです。

 実は、こういう派遣切りの一方で長時間労働がまかり通っているわけですよ。大臣告示では、時間外労働は年間三百六十時間以内という目安になっていると。三六協定では、特別の事情ある場合は限度を超えた協約結んでいいと。結局青天井になっている。

 厚生労働省に聞きますが、仮に三六協定の特別条項を結んでいたとしても、三百六十時間超える労働者が一部にいるというんじゃなくて、全社員の平均が常に三百六十時間を超えている、こういう場合はどうなるのか。それは到底、私、特別な事情などとは言えなくなると思うんですが、いかがですか。

政府参考人(金子順一君)

 限度時間を超えました特別条項付きの時間外労働協定につきましては、三六協定が監督署に提出されました折に、この特別な事情というのは臨時的なものであるということを徹底するという趣旨から、その適用が一年のうち半分を超えないような指導を行っているところでございます。

 また、実際に時間外労働が恒常的にかなり行われているというような情報を把握した場合には、私ども、労働基準関係法令に照らして問題があるというふうに考えられますので、こうした事業場に対して重点的な監督指導を実施し、労働条件の確保に努めているところでございます。

小池晃君

 資料を見てください。具体的にこれ聞きますが、これはトヨタ系列のダイハツの社内の資料です。ここが三百六十時間はるかに超える六百時間という特別協定を結んでいます。下の参考五というグラフを見ていただきたいんですが、これ見ますと、〇七年、ダイハツの年間の時間外労働は三百八十五・六時間になっています。これ業界ワーストワンだと自ら認めているんですね。ダイハツだけじゃなくて、スズキ、日野自動車、いすゞ、今問題の。これは自動車業界の半分近くが大臣告示、三百六十時間を超えた働き方をさせているということが分かります。超えていなくても、ほとんど皆、三百六十時間前後に張り付いています。

 大臣にお聞きしますが、自動車業界では、片方では大臣告示を超えるような長時間労働を強いて大変な利益を上げてきたわけですよ。一方では派遣や期間社員を簡単に切り捨てると。そうしたら、正社員にはまた長時間労働が押し付けられる。私、こういう在り方というのは、いわゆるディーセントワークという点から見てもワーク・ライフ・バランスという点から見ても、これは放置できない状態だと思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 仕事と生活の調和を図るワーク・ライフ・バランスということをやろうということで今回の労働基準法の改正もあるわけでありますので、それで、法定割増し賃金、六十時間以上は五〇%ということにいたしました。今後、ワークシェアリングという手法、これは坂本委員が先ほど御指摘になりましたけれども、そういうことも含めて、やはりディーセントワークということはきちんとやらぬとということを今後とも徹底してまいりたいと思います。

小池晃君

 いや、さっき局長の方からは、そういう恒常的に超えているような場合はこれはやっぱりきちっと指導するんだと。大臣、これ企業側が認めているんですよ。こういう実態あるわけですから、やっぱりこういう恒常的に限度時間を超えているような企業に是正指導するということをやるべきじゃないですか。調査していただきたい。

国務大臣(舛添要一君)

 実態をきちんと調査した上で、所管の労働基準監督署において必要な措置をとりたいと思います。

小池晃君

 全社員が年間三百六十時間超す働き方というのは、到底特別の場合とは言えないわけですよ。それなのに、こういう大企業で異常な働き方まかり通っているわけです。私は、特別条項を廃止するということが求められていると、このことを強く求めたいと思います。

 今回の法案では、中小企業については当分の間適用外としているわけですが、刑罰規定のあるような条項をダブルスタンダードにする、このこと自体大変問題があると思います。百歩譲って、中小企業に対して経過措置とるということはあり得ると思うんです。大臣は先ほど暫定的な移行期間だというふうにおっしゃった。しかし、この法律は経過措置じゃないんですね。これは当分の間となっている。何で経過措置にしなかったんですか。

政府参考人(金子順一君)

 今回この規定が設けられました趣旨というのは、中小企業につきましては、経営体力が必ずしも強くないということで、この法定割増し賃金率引上げにつきまして当面の対応が難しいということで当分の間その適用を猶予するということとしているわけでございます。

 あわせまして、見直し検討規定におきまして、法の施行状況あるいは時間外労働の動向を勘案いたしまして改めて検討を行いまして、適用する場合には法律改正をもって行うという道筋で進めていくことが適当ではないかという判断の下に、こうした形の構成とさせていただいているところでございます。

小池晃君

 だから、大臣、さっき言っていたような暫定的な移行期間じゃないんですよ。改めてゼロから出発しなきゃいけないんですよ。何でこんなことにしたのかと。私は、それはすぐにやったら大変だと、それは分からないではないです。だったら経過措置にすればいいんですよ。そうしないで、三年たったらまたゼロから議論します。これじゃいつまでたったってこういう状態解決しないじゃないですか。私、これこの法案の大問題だと思うんです。

 それから、一九八八年の労基法の改正のときの議論で、週四十時間制施行するときに経営側からこんな議論ありました。通常の人件費を安くすれば実際の負担は増えないんだと。要するに、時短しても所定内労働賃金、本給引き下げれば総額は抑えられるという議論なんですね。これでは改正の趣旨は生かされないと思うんですが、厚労省にお伺いします。今回時間外割増しを改正したとしても、それと交換に所定内賃金引き下げるようなことをさせない担保はあるんでしょうか。

政府参考人(金子順一君)

 労働基準法の第一条第二項には、この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させることはないことはもとより、その向上を図るよう努めなければならないという訓示的な規定でございますが、こうした規定が用意をされておるわけでございます。

 今回の法改正を契機として、労働条件の改定につきまして、法律の範囲内で労使の自主的な話合いにゆだねているものでございますけれども、今回の法定割増し賃金率の引上げを理由として基本給を引き下げることはこの労働基準法第一条第二項の趣旨に抵触し、認められないものと考えております。この旨はよく周知をしてまいりたいと思います。

小池晃君

 分かりました。

 それから、この法案のもう一つの問題として、労使協定を結べば、割増し分となる二五%を賃金で支払う代わりに有給休暇付与すれば支払免除できると。労働者の健康、過労死防止ということでいえば、忙しい月に集中して働いたら次の月に休みすればいいというのは、これは議論は通用しないわけです。

 労基法制定の中心的役割を担った松岡三郎さんの編集による普及版労働基準法ではこういう振替について何と言っているか。あくまで例外とすべきだと。こういう例え言っているんですね。突如として明日六度の食事をさせるのだから今日は食事しなくても平均して一日三回食事をしたものとみなすということと同じだと。私、そうだと思うんですね。こういうことはあくまでも例外、例外だと。

 変形労働制のときもこれは例外だという議論だったはずですけれども、大臣、修正案の提出者も、六十時間以上というのは不十分だと言わざるを得ない。そういうところに更にこういう言わば抜け道をつくってしまうということでいいのか。例外を拡大していくということになれば、これは労働者の健康を保持するということと私は逆行するんではないかという強い懸念を持つんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(舛添要一君)

 変形労働制というのは、暇か忙しいか、あらかじめそういう期間を考えてつくったものでありますから、今回はとにかく六十時間以内にもう時間外労働を抑制しようということが大きな目的でありますんで、委員のおっしゃったような懸念はこの法の精神からはないと思います。しかし、現実にそういうことがないように、更に審議会などの場を通じてきちんとそれへの対応を考えていきたいと考えております。

小池晃君

 今は長時間労働の是正こそ必要なときだというふうに思います。そういうときに新たな例外的制度を持ち込むべきではないというふうに私どもは考えます。

 最後に、雇用・能力開発機構の問題について一言お聞きをしたいというふうに思います。

 この雇用・能力開発機構の問題、職業能力開発の問題ですが、超氷河期世代と言われている現在三十五歳を超えている人たちを始め、国の規制緩和の下で正社員への道を閉ざされた。多くの若者がまともな職業訓練を受ける機会もなく非正規雇用で働くことを今余儀なくされている。まさに国の雇用政策の犠牲者だと思うんですね。こういう中で、私たちは今、職業訓練制度を抜本的に充実させると。ワーキングプアとかフリーターの職業訓練、重視して、有給の訓練制度や貸付制度を創設して訓練期間中の生活援助を行う、こういうことこそ必要なんではないかと思っているんですよ。

 そういうときに、行政減量・効率化有識者会議が雇用・能力開発機構の廃止を提言している。私は、しかし、今言ったような趣旨からいえば、むしろ逆行で、もっともっと国の責任での雇用・能力開発というのは拡張、拡大すべきだと、強化すべきだし、必要性はむしろ高まっているというふうに私は考えるんですね。

 もちろん、事業の中の無駄遣い、徹底的に正していくということはやらなきゃいけない。しかし、今出てきているような議論のように、機構を廃止してしまうというようなやり方というのは、今の雇用情勢から見ても私は逆行ではないかというふうに考えるんですが、大臣の見解を伺います。

国務大臣(舛添要一君)

 スパウザ小田原という施設があったり、今回、私のしごと館につきましては国の関与をなくすという方向での決着を見ましたけれども、こういう非常に目立つ施設があるということが、これは実は管轄していたのは雇用・能力開発機構でありますから、この機構が行っているすべての仕事が問題だというように短絡的に考えられている嫌いもあると思います。

 私もたくさん現場を見てまいりました。ポリテクセンターにしろいろんな職業訓練施設にしろ、地域によって全部特性が違います。例えば、地方にゆだねていいものもあれば、民間にゆだねていい職業訓練もあると思います。

 しかしながら、今非常に雇用が厳しい。特に、中央と地方の格差が広がっている。そういう中で、雇用・能力開発機構が行っている、国が責任を持って行っている職業訓練、これが地域の中小企業の最後のとりでである。とりわけ、新しい技術を今働いている従業員に習得させる、とてもじゃないけれども自前のお金はない、民間のスクールに通わせるわけにいかない、それで国がきちんとやってくれるということがまさに最後のとりでになり、地域の産業を守るのに非常に役に立っているという、そういう陳情もたくさんそういう地域の首長さんからもいただいております。

 したがいまして、そういうことをきちんと踏まえた上で、何もかも国の関与をなくせばいいというような暴論に対しては私はくみをしないので、基本的に必要なものは必要であるということを正面から主張しながら、関係省庁と調整をしながら年末に向けて大きな方向付けをしたいと考えております。

小池晃君

 是非そういう方向で、雇用・能力開発機構は雇用促進住宅などの大事な仕事もあるわけです。そこで住んでいる方たちの住居を保障するという問題もあります。しっかり国としての責任を果たしていただきたいというふうに思います。

 終わります。

【反対討論】
小池晃君

 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました労働基準法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論します。

 反対理由の第一は、割増し賃金率の引上げについて中小企業には当分の間適用しないとしている点です。

 労働基準法という労働条件の最低基準を刑事罰をもって守らせる法律に大企業と中小企業の労働者で異なる基準を持ち込むことは許されず、せめて経過措置とすべきです。このままでは大企業からのしわ寄せで下請中小企業の労働者の時間外労働がますます長くなる事態すら生じかねません。

 反対理由の第二は、時間外労働が月六十時間を超える労働者に、引上げ分の割増し賃金の支払の代わりに年休ではない有給の休暇を与えることを可能としている点です。

 これは、一種の変形労働制と言うべきもので、一日の時間外労働を抑制することにはなりません。しかも、年休の取得率が低下し続けている下で、長時間残業をしている労働者が翌月に代替休暇を与えられても確実に休める保障はなく、時間外労働抑制の実効性には疑問があります。

 そもそも、今回の法案は、時間外労働が月六十時間以上でないと賃金の割増し率が五〇%になりません。衆院での修正により対象が拡大したとはいえ、時間外労働の上限を法定化せず、青天井で残業ができる仕組みを残したままでは、過労死を生むような長時間労働はなくせません。

 今、自動車や電機などの大企業が輸出の落ち込みや景気の後退を口実に大量解雇を進めており、大きな社会問題になっています。その多くは、正社員と同じように働かされてきた身分不安定な派遣労働者や期間労働者です。こうした非正規労働者をまるで調整弁のように大量解雇し、残された正社員には大臣告示すら上回る長時間労働を押し付ける、こうした事態を放置したままでは日本経済の安定的発展もあり得ません。

 割増し賃金については、すべての時間外労働に対する割増し率を人員増の費用に見合った均衡割増し賃金率に相当する五〇%とすべきです。時間外労働時間の上限を法律で規制し、日々の長時間労働を規制するため、EUと同様に一日のうち連続休息時間を十一時間確保すべきです。そうした法改正こそ求められており、本改正案には一部前進面はあるものの、全体としては不十分なものだと言わざるを得ません。

 以上の理由から本改正案に反対することを表明し、討論といたします。

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