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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

166通常国会 厚生労働委員会 社会保険庁解体・民営化法案および年金時効特例法に関する質疑

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2007年6月5日(火)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 消えた年金の問題に国民の世論が沸騰をしています。昨日発表されたJNNの世論調査では、不安を感じている人が七九%、衆議院で強行採決された社会保険庁解体法案、年金時効撤廃法案について、この法案で国民の不安が解消されないと思っている人が八八%です。

 なぜこんなことが起こったか、責任は一体どこにあるのか。この問題ではっきりさせなければいけないのは、国民には一切の責任がない、正に責任はひとえに社会保険庁、厚生労働省、つまり政府が負っていると。したがって、その解決も政府の責任において行われるべきものだと思います。

 大臣に最初にお聞きしますが、この問題の責任というのはひとえに政府にあると、国民には何の責任もないと、この一番大事な根本問題をお認めになりますか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 現在、五千万件の未統合の記録の問題を始めとして、いろいろと社会保険庁の年金の番号については国民の皆さんに不安を与えているわけでございまして、この点については、この大事な年金の事業運営に責任を持っている役所として大変申し訳ないと、このように考えて国民の皆様におわびを申し上げる次第でございます。

 このような問題が起こった、随分長きにわたっていろいろと問題が起こっているわけでございますけれども、このような状況に立ち至っていることについては、やはり私ども年金の事業運営に当たっている政府と申しますか、厚生労働省、それから社会保険庁に責任があると、このように認識をいたしております。

小池晃君

 こういうもう本当にはっきり政府の責任である問題を、解体、分割、民営化という形で三年後に消えてなくなる、国の責任が消えてなくなるようなことをやはり絶対認めてはいけないというふうに改めて思うわけです。

 この消えた年金問題、基礎年金番号に統合できない記録が五千九十五万件、これが衝撃を呼んでいるわけです。この数字が明らかになったのは今年二月、それまで国民には一切それが知らされてきませんでした。

 社会保険庁にお伺いしますが、一体いつの時点でこういう事態になっていると把握したのか、お答えいただきたい。

政府参考人(青柳親房君)

 午前中の質疑でも同種のお尋ねがあったかと存じます。

 基礎年金番号を創設し、これを導入したのが平成九年でございますが、その時点で、基礎年金番号に未統合の番号がかなり発生するであろうということについてはそれなりの見通しというか、見通しがあったようでございますが、ただこれについては、先ほど申し上げましたように、具体的に個々の被保険者の方にお問い合わせをする、あるいは機械でこれを突き合わせをするということによって段階的に解消が図れるだろうという考えであったというふうに承知をしておりまして、したがいまして、十年たった今日に至っても五千万件の未統合の記録が存在するということは当時見通すこともできなかったようでございますし、私も、五千万件という数字につきましては、大変申し訳ないことではございますけれども、今年の二月に至るまで承知をしておりませんでした。

小池晃君

 今まで全く分からなかったかのように、初めてこういう数字に接したかのようにおっしゃるんですが、私、そんなはずないと思うんです。

 ここに「社会保険庁二十五年史」という本を持ってまいりました。これは一九八八年に刊行されたものなんです。この中に「業務処理方法の改善」というような章がありまして、この間、社会保険庁の中でどのような業務改善が行われてきたのかということをずっと書いてある部分があります。昭和六十二年三月の段階で、いわゆるオンライン化のかなり最終段階、そのときの記述としてこういうのがあるんです。「被保険者記録は、年金手帳の記号番号で管理しているが、適用事業所を異動した際被保険者の制度に対する認識の不足、また、年金手帳の亡失等により新たな記号番号による年金手帳等の交付を受ける結果、同一人の記録が複数で管理されることとなり、本人の職歴と合理的につながらないことが往々にして生じることとなる。これは、年金の支給に関し被保険者等に不利益をもたらす」と。これは正に、昭和六十二年、そういう段階でこういう事態があるんだと、オンラインのその作業をやっているさなかにそういう記述があるんですよ。

 私、こういう事態を知っていながらこうした状態のまま十年後に、九七年に基礎年金番号を導入したわけでしょう。こういう事態になることは当然想定されたはずなんです。大臣、基礎年金番号の導入時にこういう事態になることは当然予測できたと思いませんか、こういう把握をしていた以上。いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 今委員が御紹介くださいましたこの社会保険庁の年史におきましても、同一人で複数の番号、記録を持つというような事態が起こって、給付なぞの場合には非常にこれは問題であるということの指摘があったわけでございます。

 それとまた、青柳部長の方からも申したように、基礎年金番号を導入する際に、そういう同一人についての複数の年金番号、年金記録があるということは認識はあったわけでございますが、それをこの時間の経過、またいろいろな手だてを講ずることによってそれを解消することができるのではないかと、こういう見通しを持っていたと。それが、今日、十年後においてもこのような数の未統合の記録を持っているという、そういう状況に立ち至ったことから見ますと、その見通しというのは正直言って甘かったと言わざるを得ないということかと思います。

小池晃君

 見通しが甘いで済む話じゃないと思うんですよ。国民が保険料を納入したのにそれに見合う給付が消えてなくなる、これ詐欺ですよ、こういうことは。しかも、こういう事態になり得る、こういう複数の問題があって大変だということ自体、国民には全く知らされてなかった。昭和六十二年の時点で、こういう事態になっているなんて国民に知らせましたか。だれも知らないんですよ。内部だけではそういうことがちゃんと記述されているわけじゃないですか。ところが、そういうことを国民に知らせずに基礎年金番号の導入をしたわけでしょう。これからの対策で権利取り戻す人もいるかもしれませんが、既に亡くなった人もいるんです。そういう人は年金給付奪われたわけです。責任重大じゃないですか。

 私、改めてお聞きしますが、見通しが甘かったなどというそんなことでは済まされないでしょう。これ以前からこういう事態になることは十分想定されたような状況の中で基礎年金番号を導入したのだとすれば、一つは制度設計のその段階に一体どういう問題が、責任があったのか、それから導入をした後の手だての中でどういう責任があったのか、これしっかり述べていただきたい。大臣、いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 そのような、今委員は基礎年金番号を導入したのが問題ではないかという御指摘のようなニュアンスの御発言がありましたけれども……(発言する者あり)それはそうではないですね。それはもう委員とこうした事実上の合意ができるということは大変幸いでございますけれども、そういうときに、複数の番号の存在について、やっぱりもっと厳しい認識を持ってその統合のための努力をする、それから国民に対して呼び掛ける必要があるんだったらもっと呼び掛けていく、困った問題なんですということを訴えて御協力をいただいていくというような、そういうことが十分行われたかということだろうと思うんです。やっぱりそこには社会保険庁、冒頭申したように、社会保険庁の取組についてやっぱり反省すべき点があるし、こういう事態に至っていることについては、国民の皆さんにおわびをしなければならないと、このように考えておるわけです。

 そういう認識に立って、私どもとしては、非常に遅れて申し訳ないわけでございますけれども、これからもう全力を挙げて、できるだけ早期にこの問題の解決を図っていくと、そういう取組をさせていただくということによって私どもは責任を果たさせていただきたいというふうに考えております。

 そして、この経緯と、そこにどのような責任があったかということについては、今回、総務省にお願いして検証委員会を設けていただいて、これを逐一経過を追ってそういったことについて明らかにしていただきたいと、このように考えているところでございます。

小池晃君

 あのね、正面から答えていただきたいんですが、これは社会保険庁の責任というふうにおっしゃるけれども、この省令、導入時の手続についての省令は厚生労働省令、厚生省令です、当時。正に厚生省が決めたんじゃないですか。しかも、その制度設計を厚生省全体でこう取り組んだわけでしょう。

 そういう事態が予測される中で、極めて、その後十年たってもこれだけのものが残される、統合されない記録が残る。これは正に制度設計の段階あるいはその後の手続の中で、明らかに厚生省としては責任があるかなしか、はっきり答えてください。これはあるんじゃないですか、当然。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 実務に当たっておりますのが社会保険庁であるということから、私、今、社会保険庁という役所の名前を挙げて申し上げたわけですけれども、もとより社会保険庁は厚生労働省の内部にある、外局といえどもその傘下にある組織でございますので、このような不手際を招来しているのは厚生労働省全体の責任であると、このように考えます。

小池晃君

 私は、これは正にこの基礎年金番号導入をめぐる経過を含めて歴代厚生労働大臣の責任だというふうに申し上げたい。極めて重大だと思います。国の責任で直ちに解決のための真剣な対策を行うというのはこれは当たり前のことだと。

 そこで、問題はその対策が十分なものなのかということであります。五千万件の消えた年金という言い方をすると、先ほど青柳部長も消えてないと、こういうふうに答弁しました。確かにデータは、それはオンラインの中に残っているかもしれない。しかし青柳さん、二千八百八十万件の受給権者のものについて言えば、これはもう二千八百八十万件の受給権は正に現時点では受給権者から見れば奪われている、消えている。だって、受給してないんですから。はっきりそれは、受給権消えているんじゃないですか。

政府参考人(青柳親房君)

 まずは、受給権者に既に結び付いている三千万の方については、一度裁定のときに、不十分な点もあったかもしれませんが、加入履歴を確認させていただいて、権利の発生を言わば御本人も確認の上で発生させていただいているという点がございます。

 二千八百八十万件の中にどのくらいそれでは未統合の部分があるかということについては、私どももちろん承知をしておりませんし、これから正にそのための名寄せの作業をさせていただくことになるわけでございますが、最終的にこれそういうことで統合ができますれば、統合の後には時効の分も含めて受給権という形で実現をいたしますので、最終的には実現するものというふうに御理解を賜れればと思います。

 現時点では、実現していない部分、未統合であるということは事実でございます。

小池晃君

 現時点ではその人たちは権利を奪われているわけですよ。

 それから、今言ったけれども、名寄せして統合できれば元の持ち主に返ると言うけれども、これ名寄せできない部分があれば、それは消えることになるじゃありませんか。

 大臣、自民党のビラ、これ、御心配要りません、あなたの年金が消えたわけではありません、こういう宣伝が一番国民の不信をあおるんじゃないですか。だって、これは明らかに現在、年金を受けている人はもらっていないわけですから。これからだって全部返るとは限らないわけですから。消える可能性はあるんですよ、はっきり。私は、こういう言い方をするのは正に国民の年金不信をあおることになると思うし、消える可能性を率直に認めて国民に謝るのがあるべき態度だと思いますが、大臣、いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 私ども、この五千万件の突合にこれからは全力を挙げて取り組むわけでございまして、その目標とするところはそのような、最終的に本来の権利者に統合漏れになるというような事態を生じさせないということでございます。これが目標でございまして、今その作業の前に最終的に統合漏れになってしまうということを前提にした話をするというのはやはり私としては適切ではないと思いまして、とにかくこの状況というものを改善して、そしてもう目標としては、一人残らずの本来統合されるべき記録を真正な権利者に統合するということを目標として取り組ませていただきたいということでございます。

小池晃君

 そんなこと言ってないんですよ。これ消えていないんだというような宣伝すること自体が国民の不信をあおっているということ、まあ正面からもう答えられないんだと思う。こういう宣伝はすべきではない。

 それから、実際に、じゃ、それはもうなくす方向でいくと、それはいいですよ。それはもう当然のことですよ、権利なんですから。救済じゃないんです、これは。権利の回復なんですから。しかし、それは一年でできるのかということなんですよ。先ほど機械的にやるからできるんだみたいな、そういう話あった。しかし、ちょっとその中身についてはまた後で議論しますが、たとえ機械的にやったとしても、少なくとも点検はしなきゃいけないでしょう、人の目で。

 ある計算があるんですよ。インターネットのホームページで出ている。五千万件一年で処理すると、三百六十五日のうち営業日が二百六十日として、単純に言うと一日で十九万件だと。専門の職員千人置いたとしても、一日一人で百九十件処理しなきゃいけない。百九十件こなすのに、六時間として、一時間で三十件こなさなきゃいけない。そうすると一件二分だと。千人の専門職員がそれに付きっきりで一件につき二分以内で処理して何とか五千万件一年でこなせる、こういう計算もあるわけです。しかも、これはもう実績として十年掛かってもできなかったわけです。さらに、直近の実績でいって、特別強化体制の十か月で百四十六万件でしょう。このペースでいったら三十年掛かるわけですよ。

 ですから、大臣、それが突然一年でできますよといって信用できるかと。だって、先週、国会であなた方は、これはとても一年ではできないと、そう答弁されていた。五月三十日の衆議院の厚生労働委員会でも、年金受給者の分はできるけれども加入者の分できないと答弁しているんです。それが突然、何の体制も示さない、さっきの話では人手増やさないでやるんだと。どうしてこれで信用しろというのか。どだい、これは国民から見たって、できるわけないじゃないかと当然思われるんじゃないですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 今、小池委員が、多分、私の従前の委員会での答弁と思いますけれども、二千八百八十万の受給権者プラス生年の不詳なる方の記録の突合しかできないと私が言ったということではないんです。あの段階で申し上げたのは、それをやりたいと、それを先行させたいということを申し上げたということですので、委員はなかなかの弁論家でいらっしゃいますので、私が言わないことまで言っていただいたんで、やっぱり訂正すべきは訂正させていただいた次第です。

 さて、問題の一年以内ということは、私も、容易ならざる課題であるということでございますけれども、これから、まずプログラムの問題が一番大きな問題ですので、これについては練達の方々にお願いをして、できるだけ短期間でもってそのプログラムを開発していただいて、その後における時間を非常に困難ですが確保して、何とか、今申し上げているような、今後一年間で三条件の名寄せを実施するというところの状況を実現してまいりたいと、このように考えておるわけでございます。

小池晃君

 そうすると、今の話だと、プログラムできるところまでまた時間掛かるわけですから、そこから一年間。一年より短くなるわけですよ、実際の作業は。ますます私、困難だと思う。

 しかも、そもそも、じゃその五千万件の内容というのがどうなのか。先ほども議論ありました。年齢しか示されてないんです。

 五千万件の厚生年金、国民年金別の平均加入月数、これはどれだけか、それから納付記録にある保険料の総額はどれだけか、これがどれだけの年金給付に相当するのか、お答えいただきたい。

政府参考人(青柳親房君)

 先ほどもお答え申し上げましたとおり、これら五千万件の内訳について詳細のデータを持ち合わせておりませんので、現在お答えができません。

小池晃君

 私、これほど無責任な話はないと思うんですよ。だって、国民が支払った保険料なんですよ。それがどれだけ宙に浮くのか、どれだけ国民の年金が奪われる可能性があるのか、失う可能性があるのか、そんなことが示されないで何で議論ができるんですか。これはだって架空のものじゃないんです。社会保険庁に入ったお金が一体幾らなのかという問題ですよ。それが示されないで、どれだけその給付が減るのかも分からないで議論しろといったって、これ無理ですよ。

 これは、あさってめどを示すと言うけれども、この数字がなければこの議論はこれ以上進められないということははっきり申し上げておきたいというふうに思います。

 それから、言わないのであれば、いろんなやり方で、もう本当に中身示さないから、仮置き仮置きで私、言わざるを得ない。

 例えば、国民年金一千百万件、厚生年金で四千万件です。例えば、一月の保険料が平均で奪われたとする、そこに入っているとする。国民年金一月の保険料に当たる給付は年間、現在価格で千六百五十円です。厚生年金だと年間四千百二十三円です。これ平均寿命で換算すると、平均十七年受給するとする。そうすると、仮に一か月分の納付記録がもし宙に浮くというか、奪われるというか、失われるということになったとすると、これは総額で三兆一千百三十七億円という数字になる。もちろん、年齢分布とか様々ありますから、単純にそういうふうには言えないと思う。しかし、少なくとも今与えられている数字の範囲の中で計算すれば、一月以内ということはあり得ませんから、最低一月ですから、最低でも三兆千百三十七億円の年金給付が失われるということになる。これが仮に六か月、この消えた記録の平均加入月数が六か月だとすると、二十兆円近い年金給付が失われることになる。こういうことになるんじゃないですか、いかがですか。

政府参考人(青柳親房君)

 仮定の数字でございますので、その仮定の数字を云々するつもりはございませんが、ただいまの計算の前提になっておりますのが、五千万人の方の記録がすべて何らかの形で給付に結び付くという前提でお考えの場合に出てくる仮定の数字かと存じます。この五千万人の方の中には、亡くなられて元々年金に結び付かない、ないしは無年金ということで年金給付に結び付かないという方もいらっしゃいますので、その方の場合には、言わば払われた保険料の分は、言ってみれば、平たい言葉で言えば、掛け捨てにそもそもなるという制度設計になっているわけでございますので、全額をそういう形で生きた保険料負担ではないかというふうにお考えになるのはやや粗っぽいストーリーではないかというふうに存ずる次第でございます。

小池晃君

 あなたね、そういうこと言うもんじゃないよ。だって、あなた方がデータ示さないからこういう数字にしかならないんじゃないですか。最低加入年数に達していないのがどれだけいるのか、受給権がないのがこの中でどれだけいるのか、そういう最低限のことすら示さないで、粗っぽいって何ですか。あんた、天につばするってそういうことですよ。余りにも無責任だ。本当にこれ、今のような数字が私は否定できないと思いますよ。だって、示さないんですから、皆さんは。だとすれば、こういうことは成り立つんですよ。だとすれば、重大な問題じゃないですか。

 だから、それが言われるのが嫌ならば、ちゃんと示していただきたいんですよ。これがどれだけの年金給付に当たるのか、どれだけの保険料が今国民の手から奪われようとしているのか、はっきり示さずにその計算は粗っぽいなんて余りにも無責任だと思います。これは断じて今の答弁は認められない。必ず示していただきたい。それはもう審議の最低条件だと思います。

 それから、名寄せをしていくとおっしゃるわけですね。名寄せのやり方なんです、問題は。これ、名寄せのやり方で今言っているのは、氏名、性別、生年月日の三条件一致、これで名寄せするというわけですね。

 お聞きしますが、だとすると、名前が違って、例えば結婚で姓が変わる、あるいはそもそも紙台帳から転記の際に名前の読み方を間違えた、生年月日を間違えた。機械的にやるとおっしゃっていましたからね、機械的に正にやっていけば、そういうものは正に調査対象に入る時点で排除される、そういうことになるんじゃないですか。

政府参考人(青柳親房君)

 確かに、三情報でやりますときに、名前等についてはヒットしないというものが出てくるというのは御指摘のとおりかと存じます。しかしながら、言わば大量のものを処理していく上で最も効率的にこれをやる場合には、この三情報を活用するということが最も効率的ではないかと思いますので、私ども、そのようにさせていただきたいと考えております。

小池晃君

 ヒットしないどころじゃないですよ。三振王ですよ、こんなことやったら。国民は、五千万件、ああ、やってくれるんだ、一年でと、自分の記録見付けてくれるんだというふうにみんな思っていると思う。しかし、見付けてくれるのは、名前と生年月日と性別が一致しているものだけ見付けてくれる。それ以外の、名前の読み方間違った、名字が変わった、こんなの全部戻ってこないわけですよ、今のやり方では。

 しかも、そもそも基礎年金番号を導入したときに、加入者については名寄せ処理をやっているわけです。これ、九七年から〇六年まで九年間掛けてやった。その際にも、氏名、性別、生年月日の三条件でやっているじゃないですか。だとすれば、そのときにやった作業と今回やろうとする作業は一体どこが違うのか。

政府参考人(青柳親房君)

 まず、受給者については、まず今回が最初の、第一回目の作業になるということは委員も御承知の上でお尋ねだろうと思います。

 その上で、被保険者について、同じ作業をすることになるのではないかというお尋ねになるわけでございますが、被保険者につきましても、確かに同一の対象の方に同じような形の御案内が行くという可能性はあるだろうと思います。しかしながら、被保険者の方々は、これまでは年齢が比較的若いこともありまして、年金に対しての関心が必ずしも高くなかった方もいらっしゃると。それが、もう一度私どもの方でそういうことでお尋ねをすることによりまして、今回は、場合によってはお返事をいただける方もいらっしゃる可能性が高まってくるだろうと思います。

 いずれにしても、すべてのケースに対して徹底的にやるという考え方から、重複を恐れずやらせていただくということを御理解賜りたいと存じます。

小池晃君

 国民をばかにした話だと思いますよ、今のは。同じことやるんだと、結局、加入者に対しては、九七年から十年かけてやったことと。だから、一年でできるのかできぬのかって議論最初しましたけど、結局、一年でできるような、前やった同じことしかやらないということなんですよ、これ。しかも、前はみんな余り関心なかったから見逃していたけど、今度関心高いから答えてくるというんですか。余りにも国民をばかにした話だ。私、こんなやり方で、加入者に対してちゃんとそのチェックしたなんて到底言えない、実行済みの作業をもう一回やるだけだと。

 大臣に私、お聞きしますが、この名寄せ作業をやった結果五千万なんですよ。加入者に対してはそれは新たにやるのかもしれない、じゃない、受給者に対しては。しかし、加入者に対しては全く同じことをやる。結局、同じことをやったって、五千万減らすことには何の役にも立たないんじゃないか。大臣は徹底的なチェックなんだというふうにおっしゃるけれども、これがどうして徹底的なチェックなのか。これをやってどれほどの年金記録が五千万のうち統合できると大臣は考えているんですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 先ほど運営部長からの答弁に対して小池委員は非常に失礼だというふうにおっしゃいましたけれども、私どもは、この五千万の中には、従前から申し上げていることですけれども、死亡をされて年金に結び付かなかった方、あるいは受給要件を満たさないという形で年金に結び付かなかった方、そういう方々が含まれているということは定性的にはずっと申し上げていることでございます。今ここでそういうことを言うと、いかにも本当に申し訳ないことをしながら、なおまだそういうことを言うのかという意味で御批判をなさるということも我々甘んじて受けなければならないわけですけれども、定性的には前から言っていたことを今繰り返し申し上げたと、そういうことがございます。

 それからまた、私どもは、今回この問題に取り組むに当たっては、全く従来と同じことの繰り返しというようなことにならないように、今後いろいろとプログラミングの段階等で工夫をしていくというようなことで、本当に今回の作業がどうしたら実りのあるものになっていくかということもいろいろと考えていきたいと、こういうことでございます。

小池晃君

 私は、今のままでは本当に実りのない作業になる可能性が高いと思いますよ。

 しかも、このやり方、同一人物である可能性のある記録が見付かった場合、同一人物の記録が存在する旨を通知するというんですね。その記録は見せないというわけですよ。さっき青柳さんは、記憶を呼び起こしていただくと答弁した。何で記録見せないんですか。思い出してください、つまり、あなたの落とし物届いていますが、中身は言えません、いつ落としたかも言えません、あなた思い出してください、こういう話でしょう。こんなやり方がありますか。

政府参考人(青柳親房君)

 こういうやり方を取らせていただいております背景といたしましては、例えば同一生年月日同一氏名の方というのが現実には数多く存在されます。また、同一生年月日で同一事業所に勤務されていたという方も少なからずいらっしゃいます。そして、現に私どもの正に事務的なミスでそういった方々に他人の記録を言わば統合してしまったというミスもこれまでに発見されております。

 したがいまして、私どもは、万全を期するという観点からは、私ども、基礎年金番号で管理をしております記録をまずお届けをして、その言わば穴の空いている部分について御記憶を呼び起こしていただいて、その御記憶と私どもが機械で名寄せをした結果がぴったり合うようであれば、これは間違いなくその方の記録として統合することが適切であるという判断が初めてできるだろうと、このようなことを判断している次第でございます。

小池晃君

 私、これ余りに不親切。国民、被害者なんですよ。例えば、あなたに同一人物の記録と思われるものがありますって手紙来ますよ。思い出せない、びっくりする。それで出掛けていって、そして、いや、言えません、思い出してくださいって言うんですか。こんな不親切なやり方ない。

 当然、見付けたんであれば、それはもちろん全部示したら、まあそこは示し方、工夫の仕方あると思いますよ、私は、部分的にマスクするとか。しかし、全部の責任を、思い出させる努力を被害者にさせる、こんな不親切なひどいやり方ない。

 大臣、私ね、被害者は国民なんですから、しっかり中身を公開する、もちろん、繰り返して言うけれども、工夫はする必要ある。しかし、そういう原則でやらなきゃ、これ余りにもひどいやり方になるんじゃないんですか。いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 記憶を呼び起こしていただくよすがになることは、我々として提供すべく検討してまいりたいと思います。

小池晃君

 よすがになるじゃなくて、その記録というのはその人のものなんですから、所有は。ちゃんとそれは基本的に見せるということを原則にやるべきなんですよ。だから、そこは全部見せないと、そこは工夫だとさっきから言っているけれども、そういう考え方でやらなきゃ、何かヒントを出すみたいな、そんな話じゃないでしょう。私、本当にひどいと思いますよ、このやり方。

 それから、今回、年金受給権者三千万件について調査するというけれども、その中には既に死亡された方は含まれるんですか。

政府参考人(青柳親房君)

 死亡された方につきましては、御本人に当然のことながら御連絡はできませんので、まずは一義的に遺族年金の受給されている方に通知をすると。遺族年金の受給されている方は、遺族年金の計算の基になった老齢年金等の加入履歴がございますので、これを御送付するということを念頭に置いて作業したいと考えております。

小池晃君

 いや、私の言ったのは、その三千万件の中には死亡者というのは入っているんですかと聞いているんです。

政府参考人(青柳親房君)

 三千万というのは実は受給権者の人数の方の話でございますので、要するに五千万と突き合わせるときに遺族年金の分も突き合わせるという意味では含まれているというふうに御理解いただいてよろしいかと存じます。

小池晃君

 そうすると、遺族年金を通じて、そこについては統合をされていくということであると。これについてはちょっとよく検討したいというふうに思います。それですべての人が救われるのかどうか検討したいと思うんです。

 それから、文字どおり消えている年金の問題であります。証拠がないということで門前払いをしてきたわけですが、これは本当にひどい話で、証拠をなくしたのは国の側なんですね。だから、それを門前払いするというのは本当にひどい話だと思うんです。国民に何の落ち度もないのに、何十年も前の領収書持ってこいと、こんな話は絶対に許されない話であります。

 これは変えるんだというふうに言われていますが、だとすれば、私、大事なことがあると。衆議院の厚生労働委員会の審議で我が党の高橋衆議院議員も求めましたが、実際その本人が記録の誤りを申請したにもかかわらず却下された、証拠がないということで却下された人が、昨年八月から今年三月までのほぼ半年だけで二万六百三十五人おられるんですね。この人たちは正に直近の被害者ですよ。犠牲者ですよ。高橋議員は、この方たちに対して直ちに再調査すべきだというふうに言ったらば、大臣は再調査を否定された。これは本当に理不尽だと思うんです。

 私は、この直近、却下された二万人の方、なぜ却下されたのかを検証する、権利回復できる人は回復する、これは待ったなしの課題だというふうに思うんですよ。しかも、これは最近のケースですから調べることは可能だと思うんです。政府の姿勢が問われている問題だと思うんです。これ直ちに再調査して、権利の回復をすべきじゃないですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 ちょっと話の前提に誤解があるんではないかと、このように考えます。

 この二万件というのは、再チェックのために上がってきた上で記録がないということをこちらが申しているという案件でございます。先ほど来、青柳運営部長の方からお答え申し上げておりますとおり、私どもとしては三段階で今こうした申出に対しては取り組んでいるわけでございます。

 第一段階と申しますのは、要するに、おいでになられたときに、すぐにスコープでもってオンラインの記録をチェックすると、こういうのが第一段階。それから、それではないということになりますと、第二段階ということで、正式な照会申請をいただいて、そしてそれについては、オンラインはもとよりですけれども、さらに今度はオンラインの基になった社会保険庁の台帳とか、あるいは場合によってはマイクロフィルムだとか、さらには市町村に残っている名簿、こういうようなものにすべて当たった上で、それで、それでも記録がないということを申し上げた、これが第二段階です。

 それから、第三段階は、それでもなおやっぱり自分としては納得がいかないと、やっぱり本庁でもう一回、じゃこの今の調査を言わばチェックしていただきたいと、こういうような方の申出に対応するのが第三段階と、こういうように考えまして、そういう段階を踏んだ調査をさせていただいているということでございます。

 二万件というのは、この第二段階が終わった案件でありまして、再調査というのはもう既に行われているという案件でございます。したがって、この上に更にということになると、今までだったら本庁の調査ということになるんですが、今回、私どもはこの第三者の委員会によって、更に両者の言い分というか申出内容を検討していただくということになりますので、この二万件の方々も、そういうことでこれから私どもとしては対処させていただくという用意を我々としていたしているということでございます。

小池晃君

 対処させていただく用意というのは、具体的にはどういうことですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 したがって、そういうことをお申し出いただけば、それに対して第三者委員会が対応するという、そういう用意をさせていただくことになるということでございます。

小池晃君

 結局、申し出てくるのを待つという姿勢でしょう。今までのチェックが、じゃ正しくやられていたんだったら、それは保証があるんだったらそれは今の議論も成り立つかもしれませんよ。しかし、根本的に今までやってきたことを見直そうという議論をしているんでしょう、今。そこではねられた人でしょう、ごく直近。

 だったらば、今までのように第一段階、第二段階チェックしたから、そこまではもう、これはもう動かせないんですというんじゃなくて、もう一回、経過も含めて、この二万人という人はつい最近、門前払いされた人なんだから、そこのところぐらい、まず姿勢として、そこ再調査から始める。そういう人たちが申し出てくるまで待つというんじゃなくて、やろうじゃないかということを言っているんですよ。それもできないんですか。

政府参考人(青柳親房君)

 ただいま大臣の方からもお答え申し上げましたように、私どもが持っておる材料は、まずはオンライン上の記録ということでございますので、これは第一段階で見させていただきました。これについては、その二万人の方について今再調査をいたしましても変更がないということは十分に御理解いただけるだろうと思います。

 さらに、私ども持っている記録が、マイクロフィルムの厚生年金の記録なり国民年金の記録、さらには市町村にございます被保険者名簿ということでございますが、これについても、昨年の八月以降であればこれにも当たって、その結果、該当のものがある、ない、あるいはお申出のものと一部重なり合うものがあるということをお示しをしているわけでございます。

 したがいまして、私どもが現在まで持っておる記録、データ等によってはそれが確認できないという方が二万人でございますので、申し訳ないけれども、それ以外の言わば周辺に当たるような、いろんなその他の材料というものをお持ちいただけないか、ないしは、もちろん御相談いただけたことで、こんなことがないか、あんなことがないかということを御相談いただくということは今後もあろうかと存じますが。

 いずれにいたしましても、私どもが現在持っているデータ、記録以外のものを一生懸命探し出して、それによって言わば第三段階の、現在であれば本省の審査チーム、そして今後であれば第三者委員会にこれをお示しをして御判断を仰いでいくと、こういうステップが必要だということを申し上げた次第でございます。

小池晃君

 私は今のような話を聞くと、やっぱりこういう姿勢を変えて解決する方向で臨むのかというのは、甚だ疑問に感じざるを得ない。

 それから、その立証責任の問題で、文書による証拠、記録がなくても、これは国が責任を持って調査して、何らかの手掛かりがあれば支給する。例えば、先ほどありましたが、職場の同僚がその職場にいたことを証言する、このくらいでやっぱり支給対象にすべきだと私も思うんですが、ところが、さっき答弁としては、報酬が変わったり、職場内異動なんかもあるから詳しく調べなければいけないと。結局、これは、同僚の証言ではこれは解決しないということなんですか。

政府参考人(青柳親房君)

 大変に、そういう意味では難しい事柄であろうかと思いますので、様々な言わば材料というものを寄せ集めなければいけない。同僚の証言というものも、あるいは事業主の方の証言というものも有力な材料になるということを否定するものではございませんが、何か一つ、それだけですべてのことが解決するというたぐいのものではないので、そういったものをいろいろ集めさせていただくという趣旨で申し上げたつもりでございます。

小池晃君

 冒頭言ったように、国の責任で起こった事態で被害者には何の責任もないのに、被害者の側にだけあれこれあれこれ注文を付けて細かい証明をさせるというのは、私、根本的に間違っていると思うんですよ。やっぱり少しでも手掛かりがあればこれは基本的に解決する、そういう姿勢で臨まなければ国民納得しませんよ。大臣、どうですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 いずれにいたしましても、これから第三者委員会の方々に御判断いただくことでございますけれども、私どもといたしましては、国民の側に立ってということでお願いするつもりでございますので、したがって、そうしたことを十分参酌されて御判断がいただけるのではないかと、このように考えております。

小池晃君

 それから、数字の問題、引き続き。

 社保庁のコンピューター台帳といわゆる特殊台帳と言われる国民年金紙台帳との突き合わせの問題で、先ほども足立議員からありましたが、三千件のサンプル調査の結果、これ示すべきだと思うんですが、先ほどいろいろぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ言って、出せないと。

 しかし、全部照合しなくたっていいわけですよ。紙台帳にあるものがオンラインにあるかどうか、これでしょう、一番大事なのは。こんなのすぐ分かるじゃないですか。全部中身まで点検しなくたって、もちろんそれはオンラインに乗せるところまでしか紙台帳には情報ありませんからね、それは、そこのところを点検するというのは、それはやればいいけれども。しかし、問題は、紙台帳にだけあってオンラインにない、これが一体どれだけあるのか把握するのが一番大事なんじゃないですか。

 そんなのすぐ分かるじゃないですか、三千調べる。五千万件一年でできるという人が三千何でできないんですか。おかしいよ。

政府参考人(青柳親房君)

 オンライン上に記録がなく、言わばマイクロフィルムその他の紙台帳等に記録があるものについては、実は昨年八月から昨年十二月までの間の百万件の中で既に二十九件あるということを御報告しておりますので、私どもとしては、そういう形で、今申し上げたオンライン上になくて紙台帳等にある記録というものはそのぐらいの割合で発生するということは承知をしておるつもりでございます。

小池晃君

 違うこと言わないで。

 三千件のサンプル調査について、結果、さっきいろいろとあれこれ言って、出せないと言ったから、それ出すべきじゃないかと言っているんですよ。出しなさいよ、そのくらい。

政府参考人(青柳親房君)

 三千件については、先ほど申し上げましたように、現在、作業がまだ進捗過程にあるということ及び衆議院の厚生労働委員会で理事会の預かりになっているということから、私ども現在、その御判断をお待ちしておるという次第でございます。

小池晃君

 審議妨害ですよ。情報隠しですよ。こんなやり方で本当に審議続けられませんよ、この法案は。

 それから、過去六年間に再裁定で二十二万件の受給額が変わったということも言われている。この再裁定で増額された人は何人なのか。減額された人は何人なのか。その結果、受給額はどれだけ変化したのか。これ、社会保険庁がやった措置の結果ですからね。これ分からない、こういうことでは済まされない。お示しいただきたい。

政府参考人(青柳親房君)

 二十二万件の内訳についてはかねてからお尋ねがあるところでございますけれども、私ども、それについて、それぞれの年金給付額の増減をデータとしては保有しておりますが、それらを集計するシステムになってございません。

 したがいまして、これをやろうと思いますと、一件一件について当たっていくということになりますので、お時間がいただければ、もちろんその集計ができないものではございませんが、直ちにお答えができないということを衆議院の厚生労働委員会でもお答えをさせていただいた次第でございます。

小池晃君

 この数字も出していただかなければ審議は進みません。

 それから、これも衆議院で要求出ているもので、今回初めてではないですが、五十八歳通知の際に三十六万人の方が記録訂正要求をやっています。却下されたのは何人で変更されたのは何人か、これも示していただきたい。

政府参考人(青柳親房君)

 五十八歳通知の記録調査の申出に対します回答内容につきましては、現在その内訳を調査しているところでございます。ただ、この回答内容別の件数を確認するには御本人の申出書の内容と調査結果を一件一件確認する必要がございますので、これも衆議院の厚生労働委員会で、いや、その以前の予備的調査の段階から御回答しておりますけれども、およそ二年程度の期間をいただかなければこの調査は完了しないというふうに考えております。

小池晃君

 こういう最低限の数字、しっかり出していただかなければやっぱり私は議論できないというふうに思います。

 それから、時効の問題について最後お伺いしたいんですが、わざわざ今回、特例法ということになったわけですが、厚生労働省として運用で時効適用をしなかったという事例は過去どんなものがあるんでしょうか。

政府参考人(青柳親房君)

 先ほども時効の議論が出ましたように、年金の支払を受ける権利というのは、いわゆる会計法の三十条あるいは三十一条によりまして、権利の発生から五年を経過することによって消滅するということになっております。しかしながら、当初行いました裁定行為が社会保険庁の事務処理誤りに基づく、いわゆる瑕疵ある行政行為として行われましたときには、この当該裁定を取り消しまして改めて裁定請求に対する処分が行われることとなりまして、そうした場合には当初の処分が取り消されるということから時効が進行しなかったことになりまして、不足額について五年を超えて遡及して支払われるというケースもございます。

 一例を挙げますと、老齢年金の受給者の方が亡くなりまして、その遺族の方から遺族厚生年金の裁定請求がございました。その際に、老齢年金の年金額計算の基礎となっておりました被保険者期間の一部、これは実は旧の船員保険の期間であったということから、であったようでございますが、その一部を漏らしていたことが後日判明したために裁定変更を行ったと。そのことに伴いまして、約九年分の差額をお支払いしたというような事例があったと承知しております。

小池晃君

 ということは、要するにその裁定の申請は正しかったけれども、その裁定を間違えた、いろんなミスがあった、そういうケースで時効の適用をせずに支給した、そういうケース以外は時効の適用をしなかったケースはないということですか。

政府参考人(青柳親房君)

 先ほども申し上げましたように、瑕疵ある行政行為ということで、当初の処分が取り消されたというようなことで時効が進行しなかったことになって、結果的に五年を超えて遡及されたというようなケースを念頭に置いていただければと存じます。

小池晃君

 瑕疵あるというのは具体的にはどういうことですか。

政府参考人(青柳親房君)

 先ほど申し上げました事例の場合には、老齢年金の年金額計算の基礎となっていた被保険者期間の一部を裁定時に漏らしていたということを意味すると考えております。

小池晃君

 裁定時に、要するに社会保険庁が算定に組み込まなかった、社会保険庁のミスで支給されるべきものが支給されなかった、こういうケースに限って時効を適用しなかった、そういう説明ですね。

政府参考人(青柳親房君)

 時効の適用につきましては、かなり個別個別にケースを考えなければなりませんのでなかなか一般化はできませんけれども、ただいまのケースにつきましては委員のおっしゃったような事例というふうに御理解賜りたいと存じます。

小池晃君

 しかし、実際調べてみますと、今回、時効特例法が救済の対象とした、裁定時には情報が見付からなくて後からその納付記録が見付かって加入記録が訂正された、こういうのは今回の法律じゃないと救済できないと言うんだけれども、今までも行政の裁量の範囲内で時効を適用せず遡及して支払っている例はあるんです。

 これは一九九三年に裁定申請をした方のケースです。裁定時に社会保険事務所側が十分に調査しないで、船員保険の加入記録が見付からずに、三年余りの納付期間が年金額に反映されなかった。時効に掛かった三年についても、これは社会保険審査会で保険者の責めに帰すべきものだから時効の進行が中断しているということで、二〇〇五年二月に時効の進行が中断しているということで三年分の支給決定している。

 それから、そのほかにも、一九九九年にも、裁定時に発見できなかった通算十七年の加入記録が裁定してから二十四年後に発見されて、これ時効に掛かった十九年分含む二十四年間分、一千万円を超える一時金が支払われた事例もございます。これは社会保険審査会の裁定集の中に、ホームページにしっかり載っております。

 大臣、今までの説明、うそなんですよ。実際に運用でこの裁定申請は正しかったけれども、裁定が間違ったというケースだけしか今までは明らかにしてこなかった、さっきのようなケース。しかし、実際には時効特例法が救済の対象としたようなケースの場合でも、行政の判断で支払っているケースはあるんですよ。これ、でたらめじゃないですか、今までの説明。

政府参考人(青柳親房君)

 ただいま委員が御紹介いただきましたケース、いずれも社会保険審査会の結果といたしまして、その行政行為を取り消して、新たにそのような行為を決定したという内容でございます。したがいまして、これは私どもが行政的な裁量でそのような判断を取ったというのではなくて、あくまでもその不服申立ての結果として取られた、処分が取り消され、新たな決定が行われたものということでございますので、行政の裁量で行えるという御理解は若干いかがかというふうに存じます。

小池晃君

 いや、私が言ったのは、これは実際にそういうケースがあるということを、今まで何も言ってこなかったけれども、こういうケースがあるという事実を私は指摘をしているんです。

 やっぱり、この紹介した二例以外にも、社会保険審査会の裁決集を見ると、行政側に責めがある場合はこれ時効適用せず差額を支払っているわけですから、これはもうさも時効が絶対的なものであるかのようにこの間説明をしてきたけれども、結局、私は、これは行政側がこの時効というのを機械的に適用して年金を支払ってこなかったという対応を合理化するだけの話にすぎないというふうに思います。

 やはり、今回の消えた年金問題についていろんな角度から今日議論をさせていただいてまいりました。私、最後に言いたいのは、やっぱり今回の対策なるものは極めて問題だらけ。時効の撤廃はいいですよ、それは。しかし、そこまでたどり着けない人が一杯いる。しかも、時効自体は運用によってこれは、それこそ安倍総理が時効この問題については適用しませんというふうに言えば解決する問題のはずだし、問題はその時効以前の問題。そこにたどり着ける、その人の失われた記録を見付けてあげる、今のやり方では見付からないんです、これ、はっきり言って、三条件一致にしても。しかも、その説明の仕方も極めて、本人には情報を見せないというようなやり方でやろうとしている。

 しかも、今日そこまで議論には行きませんでしたが、五千万件については一年間でやるというふうに言っている、これはできるかどうかという問題はありますが。しかし、元々のオンライン情報が間違っていたかどうかの突合について言えば、これは正に何十年掛かるか分からないというわけでしょう。しかも、なくなった記録もあるかもしれない。そういう中で、私は社会保険庁を解体するというのは余りに無責任だというふうに思うんです。

 今、窓口は大混乱している。本当に長蛇の列ができて、みんな心配だから押し寄せているわけですね。しかし、そういうときに、いや、もう調査は全部終わるのは分かりませんと、五千万件のうち、まあ一致したものはある程度ありますが、それ以外の、記録そのものが間違っているのはそれは後回しですよ、いつ終わるか分かりません、しかし社会保険庁は三年たったらなくなりますと、業務は六分割です、年金部門だけでも四分割です、責任問おうにもなくなってしまうじゃないですか。そう言うと、いや、厚生労働大臣が監督責任持つからと言うけど、それは厚生労働省がやるということと、厚生労働省がねんきん事業機構という機構に対して監督責任を持つというのは責任の持ち方が全く違うんです。

 私、そういう中で、正に今回のやり方というのは、この問題に対する国の責任まで分割・民営化する。もう消えた年金のように、国の責任まで消えてなくそうということになるじゃないか。私は、こういう問題が出てきて、この議論というのは私はスタートに戻さなきゃいけないと思うんです。やっぱり、今この問題出てきて、このまま分割・民営化してしまっていいのかと、一度立ち止まって、私はまず徹底的にこの消えた年金どうするのか、それこそ与野党が知恵を絞って、これを解決するために何が必要なのかと、まずはそこを集中的に議論すべきですよ。それをやらずに、解体、分割・民営化、どんどん進める。こんなことをやれば、国民の怒りは正に火に油注ぐことになると思う。

 私は、この問題はそういう立場で臨む。大臣には、やっぱりここはいったん立ち止まって、分割・民営化の問題はこれはいったんストップさせて、まずはこの消えた年金問題解決しようじゃないかと。そうしなければ、本当に責任逃れというふうに言われても私は仕方ないと思いますよ。大臣、いかがですか。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 私どもが仮に、この問題について未解決の問題を非常に多く残しながら、この組織改編をするということを前提にしていろいろ御議論をいただきましたけれども、私どもとしては、この問題を解決するということをこの組織改編と同時並行的に行っていく、最後まで責任を回避するようなことは一切考えておりません。

 小池委員の方は組織のいろいろな御要求も背後にあるのかもしれませんけれども……(発言する者あり)何でかんでこの組織を温存したいという思いを基に御発言かもしれませんけれども、私どもとしては、この問題は本当に厚生労働省、労働大臣の責任において必ず解決をすると。しかし、こういうような問題を起こした組織それから職員の方々、もちろん熱心な方々も多いわけですけれども、そうでなかった人もいるということの中でこういった問題が生じたことを考えますと、やっぱり組織の改編もこれはもう不退転の気持ちで取り組まなければならない、このように考えておりまして、この問題をごちゃごちゃにするというようなことは私は適切を欠くと、このように考えるところでございます。

小池晃君

 組織の要求があるからという発言は撤回していただきたい。侮辱ですよ、それは。

 私は、年金というのは正に、今回の事態で明らかになったのは、国民の大切な財産を三十年、四十年預かる大事な大事な仕事なんだということが今回の事態で明らかになったんですよ。だとすれば、それは国の責任でしっかり、国がこういう問題起こったら最後まで責任持つ、一人たりともこの問題で不利益になるような人を出さない、そういう立場で臨むべきだと。だから今、解体、分割・民営化というのは最悪の責任逃れだと言っているんですよ。

 撤回していただきたい。その組織云々という発言、撤回してくださいよ。撤回するまで私は終わりませんよ、これは。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 いや、もう別段その組織の声を背景にするというようなくだりは私、撤回をするのにやぶさかでありませんけれども、しかし、そういうようなことで組織を温存するということは私どもは適切を欠くと判断しているということを申し上げたい。

 もちろん、国民の年金が大事だということは私どもも非常に重く受け止めておりまして、この国民の年金権のしっかりした確保、このことのためにいろんな問題にもう真剣に取り組もうとしているということでございます。

小池晃君

 取り消すんですね、じゃ、取り消すんですね。

国務大臣(柳澤伯夫君)

 撤回します。

小池晃君

 終わります。

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