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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

164通常国会 参議院厚生労働委員会「医療法『改正』案、健康保険法『改正』案の質疑」

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2006年6月8日(木)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 後期高齢者医療制度について最初に聞きたいんですが、今回、老人保健制度から後期高齢者医療制度になると。なぜ、どこが変わるのかということについて、基本的にはこの間の答弁で、一つは負担と給付の関係が明確になるんだということと、それからもう一つは医療の給付と保険料徴収の主体が一つになるんだと、大体端的に言ってそれが理由であり、それが違いだというふうに理解していいと思うんですが。

 ちょっと今日お聞きしたいのは、じゃその負担と給付の関係を明確にするということはなぜやるのか、どういう目的で負担と給付の関係を明確にするのか、お答えください。

政府参考人(水田邦雄君)

 これは、端的に申し上げまして、老人保健制度における老人医療拠出金でございますけれども、これはこの拠出金、公費と老人保健拠出金によって老人医療費は賄われているわけでありますけれども、拠出金の中で現役世代の保険料と高齢者の保険料は区分されておらないわけであります。したがいまして、現役世代と高齢世代の費用負担関係は不明確でもあると申し上げましたのは、一体、現役世代、例えば健保組合なり被用者保険の被保険者の方々、そういった拠出金で多額の支出をされているわけでありますけれども、それが一体高齢者を支えるために使われているのか、制度的にいいますと、自営業の制度のために使われているのか、それが必ずしも明確でない。したがって、その世代間の連帯ということをはっきりさせるためには、やはり高齢者の医療費につきましては、まず高齢者の払った保険料はそれに充てられて、その残り部分についてはこれは国民全体で支えましょうということで、お金の流れといいますか、使途が極めてこれ明確になるという点で今までの不満にこたえることになっているわけでございます。

小池晃君

 今のは仕組みの御説明であって、それは分かってるんですよ。

 要するに、負担と給付の明確ということでいえば、高齢者は正に自分たちの保険を支える保険料を出すと、後期高齢者については。それから、現役世代については、一般保険料と、基本保険料と特定保険料という形で、自分たちの保険のための保険料とそれから前期も含めた高齢者のための保険料というのは目に見える形で、まあ言わば給与明細を見れば分かるようになる。

 要は、何でそれをやるのかと。知らせることによって、そういう負担関係を知らせることによってどういう効果を期待しているのかということなんですよ。

政府参考人(水田邦雄君)

 そういう高齢者を支える部分と自分たちの部分が分かれることによって、一言で言えば、そういった若年者の方々の理解を得るためにこういった費用負担関係を明確にするということでございます。

小池晃君

 いや、知らせるために知らせるって、理解を得るために知らせるって、それは説明になってないんです。知らせるからには、何らかの目的があって明確化するというわけだから、それは一体どういう効果を期待して、要するに今言われたのは、現役世代の方に高齢者のための保険料が幾らかを示すんだと、理解を得るんだと。なぜそれを示すのかと私は聞いているんです。現役世代の方に高齢者の分はこうですよと明確化することによってどういう効果を期待をしているのかということなんです。

政府参考人(水田邦雄君)

 ですから、冒頭申し上げましたとおり、こういった特定保険料という形で区分された部分については、これは明確に高齢者の医療費に充てられるものであると。その部分が幾らかということははっきり分かるという点で理解が得られる、得やすいというふうに申し上げているわけです。

小池晃君

 だから、私が聞いているのは、それはもう何度もお答えになっている。なぜそのことをあえて浮き彫りにして明確にして知らせる必要があるんですかと聞いているんです。答えてください。

政府参考人(水田邦雄君)

 ですから、それはその点が不明確であるという指摘がなされてきたからでありますし、それから、これは一番最初に申し上げましたように、例えば国民健康保険におきましてももう高齢者の方々のウエートが大変高まってきているわけであります。保険料は御負担いただいているわけであります。

 その保険料が一体どういうふうに使われているのか、それが一体高齢者御本人のために使われているのか、あるいは国保制度全体を支えるために使われているのか、それも見えないじゃないかと、こういったいろんな御指摘がありまして、そこはやはり制度間を通じて社会連帯の制度として維持するためには、やはりその使途が、後期高齢者なら後期高齢者のためだけに使われているものであることを財政的にもはっきりさせる、そうしたことを通じて被保険者の理解を得ようということでございます。

小池晃君

 私は、現行老健制度がすばらしい制度だとは申しません。いろんな問題あると思いますが、世代間連帯になりませんよ、そんなことやったって。世代間対立をあおるだけですよ、それは。

 私は、結局お答えにならないんだけれども、なぜこの負担関係明確化にするかというと、これだと高齢者の側取ってみれば、もうストレートに分かるわけです。自分たちの給付が増えれば自分の保険料に跳ね返る。同時に、現役世代にしてみれば、高齢者の医療が増えれば増えるほどストレートに自分の保険料が目に見える形で負担がかぶさってくるということになる。そうすると、給付を抑制するのか、それとも保険料の負担増を受け入れるのかという選択を直接的な形で迫られるようになる。それが正に給付と負担の明確化であるというふうに思うんです。

 介護保険では、そういう仕組みの下で何が起こったかというと、保険料が高いのは高齢者がサービスを使い過ぎたからだということで、昨年、給付抑制というそういう法改正をやっているわけですね。後期高齢者医療制度でも恐らくこれは、この問題というのは、正にそのとおりだというふうに多分認めると思うんだけれども、これは、同様に給付を抑制する力が強く働くことになるだろうというふうに思うんです。

 そこで問題になってくるのが、法案の後期高齢者の心身の特性等にふさわしい医療が提供できるよう新たな診療報酬体系を構築するということ。こういう高齢者の負担関係が明確になった上で新たな診療報酬体系を構築すると、こういう仕組みを見れば、大臣、私こういう全体像を見れば、正に、ここは七十五歳以上のお年寄りを集めてそこはできるだけ抑制していく、積極的な治療をやめて医療給付費をできるだけ抑えようとする、まるでうば捨て山のようになるんではないかということが何度もこの委員会で指摘をされましたけれども、正にそういう批判の声が上がるのは当然の仕組みになっていると思いますが、大臣、いかがですか、この点は。

国務大臣(川崎二郎君)

 衆議院でも参議院の議論でも、また私どもがこれからやります歳入歳出一体計画におきましても、やはり給付すなわちサービスと負担をだれが担うのかと、これは常に明確にしながらやっていかなければならない。そこは、若者も将来自分は年寄りになるわけですから、そうした全体の流れを見ながら若者は若者なりの判断をしていくということが、当然これは正に行われていって、そしてそういうものを最終的には選挙というもので審判が下るというのが政治じゃないでしょうか。政治というものは、なるべくそういうプロセスを明確にしながら国民判断を求めていくということが私は大事だと思いますので、そういう意味では、負担と給付というものを明確にしていくというのは政治手法として当たり前のことではなかろうかなと、まず第一に思います。

 一方で、必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保するという国民皆保険制度の理念を前提といたしております。終末期医療の在り方について国民的な合意形成の下に、患者の尊厳を大切にした医療が提供されるよう適切に評価するほか、地域の主治医による在宅の患者に対する日常的な医学管理からみとりまでの常時一貫した対応を評価することとしております。必要かつ適切な医療は基本的に保険診療で確保するという前提の中で、後期高齢者に対する医療が不十分になってしまうのではないかと、こうした御懸念が生じないようにしっかりやってまいりたいと考えております。

小池晃君

 御懸念が生じないようにと言うけど、この全体像の仕組みからすれば、正にそういう懸念があるわけですよ、これは。

 私、適切な医療ということで言い逃れすることできないと。適切な手抜き医療ではいけないわけですよ。適切な水準を保障するのが診療報酬であって、こういう仕組みで新たな診療報酬体系をつくれば、それが低く抑えられたり、あるいは高齢者に対する制限が行われるのではないか。必要で適切な医療と言うけど、十分な医療と言わないじゃないですか。十分な医療を行えるのかどうか、こういう心配があるわけですよ。

 私、明確に答えていただきたいと思うけども、こういう仕組みにすれば、これは抑制という方向にどうしても力が働いてくる。そのときに、大臣、後期高齢者に対する差別医療は行わない、医療の質を低めることはしないと断言できるんですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 後期高齢者にふさわしい医療を提供していくということで、しっかりやってまいりたいと思っております。

小池晃君

 断言できないわけですよ。後期高齢者にふさわしい手抜き医療に、みとりの医療になっていく危険性があるわけですよ、これは。笑っていらっしゃるけど、これは本当に今度の法案の重大問題だと私思う。

 しかも、七十五歳以上だけじゃないと。前期高齢者も、身障一級から三級までは後期高齢者医療制度になっていく。腎臓病の人工透析患者はここに含まれるわけです。透析患者の平均年齢は六十三歳超えていますから、かなりの方がこの後期高齢者医療制度に入ってくる。現行制度では、透析患者に対する診療報酬は、年齢にかかわらずこれは同一のものであります。しかし、今議論した新たな診療報酬体系を構築するということになってくれば、これは透析医療の内容が大きくゆがめられるのではないかということになるかと思うんですが、これ局長、いかがですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 新たな診療報酬体系どうするか、これにつきましては、先ほど大臣が申された考え方に沿ってこれから検討するわけでございます。人工透析に係る診療報酬につきましても、後期高齢者の心身の特性等を踏まえて、報酬体系の移動はともかくとして、それぞれ適切な評価を行うべきものと考えてございます。

 特に、若年者の透析を評価する場合には、例えば勤労でありますとか育児と、それから治療との両立を可能とするような、こういった要請がある一方で、高齢者の透析を評価する場合には、認知症でありますとか寝たきり等の難治性患者の医療への要請と、こういった観点を踏まえて、先ほど申しましたようにそれぞれ適切な評価を行うべきものと考えております。

小池晃君

 私は現場で透析医療にも携わっていて、やっぱり高齢者の透析というのは大変難しいんです、技術的にもね。コンプライアンスが非常に悪いし、合併症多いし、やっぱり若年者に対する透析より一層の配慮をしなければ、血圧のコントロールなんかしなくちゃいけないという非常に難しい技術が要る。私はむしろこれは高く評価すべき技術ではないかと思っているんですが、大丈夫だ大丈夫だとおっしゃるけれども、これ心配になってくる。

 こういう発言もあるんですよ。自民党の丹羽雄哉衆議院議員ですが、昨年六月にこう言っている。タブーとされてきた終末期医療の在り方、一人の人間に保険料を集中的に活用するような、例えば人工透析といった問題について、年末には思い切った政策を打ち出したい。ちょっと前になりますが、九八年四月の行政改革国民会議で同じく丹羽氏がこう言っている。私の友人には医者がたくさんいる。皆さん糖尿病の患者を探してくれと言うんです。糖尿病は人工透析で今大体四十万円から五十万円掛かると言うんですね。ある人はベンツに乗って糖尿の人工透析を受けに行く。それで、その費用が四十万円から五十万円掛かっても自己負担たった一万円と、こういうことが果たして許されるのか。この辺のところを率直に申し上げないと、これからの時代を乗り切っていけないのではないかと。

 私はベンツに乗っている医者は見たことありますが、ベンツに乗って透析に来るような患者さんなんて本当に私は見たことないし、本当に極端なとんでもない例を持ち出していると思うんですよ。

 先ほど、若年者の透析患者は就労がある、学校がある、生活があるとおっしゃったけど、六十五歳以上の透析患者だって働いている人一杯いますよ。生活一杯みんな抱えているんですよ。そういう中で、様々な形で社会に貢献したいという思いを持っていらっしゃる方たくさんいらっしゃいます。私も実際にお話をお聞きしている。

 私、透析医療というのは、これは社会復帰、社会参加の医療であって、決してみとりの医療、終末期医療ではないと思うんですが、その点はいかがですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 人工透析そのものをみとりの医療と思う方は余りおられないんじゃないかと思いますけれども。

小池晃君

 だから、その患者さんの大半が全体としてはみとり、終末期ということを色濃く打ち出した後期高齢者医療という体系の中に入っていくということがそもそも矛盾なんじゃないですか、だとすれば、私はそう思う。

 透析患者、透析医療というのは高齢者であろうと若者であろうと、これは六十五歳というところで切り分けるような合理性は全くないんです。二〇〇四年に透析導入された患者さんを見ますと、導入時の平均年齢が六十五歳超えているんですね。六十五歳以上の透析患者がもし、局長はそういうことはないと言ったけれども、みとりの医療ということになれば、必要な透析が受けられないということにもなってきかねない。

 例えば、イギリスの問題がよく出されます。最近国際的な批判もあって、一律な年齢による打切りというのはしないようになってきているというふうにも、緩和されつつあるというふうにも聞いておりますが、しかし、大原則として、高齢者には透析導入しないということが大前提になっているというふうに聞いている。

 大臣、私、透析患者の皆さん、本当に心配しているわけです。日本でも、後期高齢者医療制度になってきて、導入をしないであるとか、あるいはもう打ち切るとか、透析患者の命にかかわるようなことが起こるんじゃないだろうかと。こういうことは絶対ないと言えますか。

国務大臣(川崎二郎君)

 今週の決算委員会でしたか、私、障害者の雇用という側面で質問がありまして、人工透析を受けておられる方の雇用問題について御質問いただいて、実は私も一日置きに車の運転をしていただくということで働いていただいたことがございますと。一日の透析を受けられた翌日、正に我々と同じように仕事をしてくれた。ただし、余り長時間無理言ったらいかぬけれども、五時間とか六時間ということになるといい仕事をしてくれたと、こう思っていますと、こういう話を申し上げました。

 そういう意味では、人工透析を受けられる方もいろいろな方々がいらっしゃいますし、また年齢的に六十五ぐらいの方だったら社会の中で働いてもらえるという方々もたくさんいらっしゃると思いますので、そういった思いを自分はいたしておりますから、人工透析をされるから、それに対してどうだという考え方は全く持っておりませんし、またしっかり世の中に参加してほしいという気持ちの方が強うございます。

 したがって、これから後期高齢者の医療制度、また診療報酬についてはこれから定めることになりますけど、よく意見を聞きながら定めてまいりたいと思います。

小池晃君

 患者さんの団体などもありますので、しっかり意見を聞いてやっていただきたいというふうに思いますが。

 続いて、後期高齢者医療制度の広域連合の問題をちょっとお聞きしたい。これは市町村ではなく都道府県単位の広域連合にした理由を端的に御説明ください。

政府参考人(水田邦雄君)

 高齢化の進展に伴って老人医療費増大することが見込まれておりますので、後期高齢者医療制度の運営に当たりましては、財政の安定化を図る観点から広域化を図る必要があるということが最大のポイントでございます。

 一方で、保険料徴収でありますとか各種申請の受付、こういった窓口業務につきましては、これは住民に身近な行政主体として、住民情報を保有して日ごろから地域住民に接している市町村が担うということが適当であると考えておりまして、これらの事情あるいは関係者との協議を踏まえまして、保険料徴収等の事務は市町村が行うこととした上で、都道府県単位で全市町村が加入する広域連合を設立して、この広域連合を運営主体とすることによって財政運営の広域化及び安定化を図ることとしたものでございます。

小池晃君

 問題はその広域連合の議会です。ここで保険料条例、徴収減免規定に関する条例の制定など、非常に重要な役割を果たすわけです。この広域連合の議会の議員の選出方法、選出基準、簡単に御説明ください。

政府参考人(水田邦雄君)

 この後期高齢者医療制度の運営主体となる広域連合でございますけれども、これは地方自治法に基づく特別地方公共団体でございまして、この広域連合の議会の議員につきましては、広域連合を設立する際に定める規約に基づくことになるわけであります。

 二つのパターンがありまして、一つは、広域連合を組織する市町村の議会の議員及びその長の選挙権を有する方が選挙人となって行う投票、これは直接投票になるわけであります。又はこの広域連合を組織する市町村の議会における選挙、これは間接選挙になるわけでありまして、このいずれかにより選挙することになるわけでございます。

 議員の被選挙権につきましては、各広域連合の規約において定められるということになるわけでございます。

小池晃君

 これ、実態としては間接選挙のところが多いと思うんですが、今回の広域連合というのは、これは事実上七十五歳以上の高齢者のみに対する事務を処理するための自治体ということになるわけです。独立保険をつくる眼目というのは、先ほどから言うように負担と給付の明確化ということであれば、私はこの後期高齢者医療制度の広域連合の決定に当事者たる被保険者、つまり七十五歳以上の住民が選ばれなければいけないはずだというふうに思うんです。七十五歳以上の住民がこの広域連合の中に議員として一体どれだけ選ばれる仕組みになっているんでしょう。

政府参考人(水田邦雄君)

 私どもといたしましても、この後期高齢者医療制度の運営に当たって、被保険者であります後期高齢者の納得と理解を得ながら進めていくということが必要であるということは考えてございます。

 ただ、この広域連合の議会の構成員につきましては、被選挙権を含めまして、地域の実情も踏まえて規約において定めるべきものでございます。したがって、最終的にはやはり地方自治、正に自治体がお決めになることでございますので、幾つぐらい入ることになるのかといった具体的な、そもそもまだ広域連合をつくっていないわけでございますのでお答えできないわけでありますけれども、繰り返しになりますけど、この七十五歳以上の方の意見も踏まえながら運営に当たっていただきたいと、このように考えております。

小池晃君

 私は当事者が運営に加わることが担保されていないのは重大な欠陥だというふうに思います。

 続いて、広域連合による保険料賦課、保険給付の問題ですが、これは保険料を賦課されたり給付するわけですから、広域連合の住民は本来直接その議員を選出する権利を持っているというふうに思うんです。しかし、現存する広域連合はそうなっていません。

 例えば、厚生労働省が課長会議で詳細に紹介している福岡の介護広域連合でも間接選挙です。住民との関係は薄くなっています。しかも、被選挙人には首長、議員だけではなくて、住民が全く選出に関与できない助役、収入役も含まれております。今回の広域連合というのは、これは日本じゅうで義務化されるわけですから、もっともっと深刻だというふうに思います。しかも、今お話あったように、七十五歳以上の住民代表選出は保障されていない。こんな広域連合議会が、七十五歳以上の住民の正に切実な利害である後期高齢者医療制度の保険料条例や減免規定を決めていく。私は民主的議会だけが義務を正当化できるというのが民主主義の原則だと思いますが、この大原則から見て問題ではありませんか。

政府参考人(水田邦雄君)

 この広域連合、地方自治法に基づく特別地方公共団体でございますので、地方自治法の規定するところによってその議会が構成されるという点においては、これは規約で定めるということになっているわけでございますので、これはそれ以上、その決め方自体につきましてはやはりそれぞれの団体でお決めになることだと思っております。

 ただ、七十五歳以上の方々の御意見を踏まえて運営すべきということは、これはおっしゃるとおりでございますので、何らかの形でそうした努力をしていただきたいと、このように思っているところでございます。

小池晃君

 意見を反映するのは当然であって、そういう仕組みが担保されているかどうかなんですよ。それが法律になければ、それは欠陥になるわけです。広域連合は原則都道府県で一本の保険料率になっていますが、法の百四条二項の規定では、離島その他の医療の確保が著しく困難である地域であって厚生労働大臣が定める基準に該当するものに住所を有する被保険者の保険料の特例を設ける規定があります。これは、離島など極めて限定的な場合を想定しているのか、それとも医療費の地域的な偏りも考慮されるのか。

政府参考人(水田邦雄君)

 ただいま委員御指摘のとおり、後期高齢者医療制度の保険料につきましては、原則として広域連合の区域内は均一の保険料率とすることとしてございますけれども、離島その他の医療の確保が著しく困難な地域については、広域連合の判断によりまして広域連合の条例で異なる保険料率を定めることも可能としてございます。この異なる保険料率を定めることのできる地域についてでございますけれども、離島も含めまして、無医地区のように近くに医療機関がなくて、かつ医療機関へのアクセスが困難である地域と、こういったことで考えて検討を進めたいと考えております。

小池晃君

 現在、市町村が住民の健康保持に第一義的な責任を持って地域の実情に応じた高齢者施策をやっています。かつては岩手県沢内村の医療費無料化などの取組もありました。現在も老人保健制度で市町村独自施策は多数存在します。こういった施策は広域連合ではどうなるんでしょうか。

政府参考人(水田邦雄君)

 後期高齢者の医療制度に基づく給付についての、どこまで広域連合は独自に対応できるのかという御質問かと思いますけれども、まず、後期高齢者に対する医療給付につきましては、高齢者医療確保法におきまして、療養給付など法律で給付が義務付けられている給付を、法定給付のほかに、広域連合の条例で定めるところによりまして、傷病手当金の支給その他の医療給付を行うことができると、このように規定しているところでございます。

 まず、この療養の給付についてでございますけれども、後期高齢者医療制度では現役世代よりも低い一割負担が原則でございますので、これを更に減額するためにいわゆる上乗せ給付を行うということは、現役世代との負担の公平性を失することから、私ども想定はしていないわけでございます。

 他方、傷病手当金の支給等の給付につきましては、これは広域連合の御判断によりまして、財源的にはこれ高齢者の方々の保険料が財源になるわけでございますので、任意給付を行うことは、これは可能であると考えております。

小池晃君

 独自性と言いながら制限を掛けるのは私は趣旨に反するというふうに思いますが、独自財源が事実上ない広域連合に独自施策やることはかなり現実には難しいのではないか。やはり、そういう意味では、いろんな地域による実情の違いがある。山間地、沿岸部、都市部、農村部、地域ごとで生活習慣も違えば産業構造も違う、健康の課題ももう千差万別なわけで、だからこそ今まで市町村単位でいろんな施策に取り組んできたという経過があると思いますが、大臣、こういう広域連合がやはり自治体独自の高齢者の施策を後退させることにつながらないのか、その点はどうなんでしょう。

国務大臣(川崎二郎君)

 保険ですから、確かに地域の事情を一番よく知っているのは市町村であり、そして小さな村ほど村長さんが全員の実情をよく分かっている、これは間違いないだろうと思います。しかし一方、保険財政の安定ということになりますと、ある程度規模を大きくしていかなければもたないという中で、今回、県の中で広域連合を組むという選択をさせていただいた、両方の要請からきて今日の決断をさせていただいたと考えております。

小池晃君

 私は、この制度が市町村独自の様々な施策を阻害することになるということを非常に懸念をするものです。

 続いて、歯科医療の問題についてちょっと取り上げたいと思います。

 今年四月に診療報酬の改定がありました。いろんな問題があるんですが、一番私どもの方に意見として寄せられている問題として、患者さんへの文書提供項目が急に増えたと、五つが二十二になったということなんですね。情報提供自体はこれは大いに進めなければいけないことだと思うんですが、一律な義務付け、診療報酬上の義務として押し付けるということが非常に現場で混乱を生んでいると思います。

 神奈川県保険医協会の開業歯科医師のアンケート結果を見ましたが、もう本当に強い意見が並んでいます。政府が行っていることは開業医のリストラである、今までも十分患者に説明してきた、その上、文書の義務化が多過ぎる、診療より文書を書いている時間が長い、もうくたくただ、こんな意見。あるいは、保険診療をやめるか転職するかしかない、毎日まるで学生実習のようだ、こんな意見もある。文書提供などの膨大な事務量の増加が患者さんとの十分なコミュニケーションを阻害したり歯科医療の質を低下させるということがあったとしたら、私、大問題だと思うんです。

 この問題は参議院の行革特でも大臣に質問があったと思うんですが、大臣はそのときに、保険医療機関の事務負担をしっかり把握するというふうに答弁されていますが、把握されたんでしょうか。実態あるいはこの批判の声をどういうふうに大臣として受け止めていらっしゃるか、お聞かせください。

国務大臣(川崎二郎君)

 ちょうど四月末から五月の段階の話だったと思っています。保険医療機関の事務負担を軽減し、歯科診療における患者の情報提供が効率的に行われるよう、カルテや診療報酬請求書の記載について運用面での簡素化の通知を出しました。たしか四月の末と五月の初めごろだったんではなかろうかなと思います。

 その後、私もいろいろな方々の御意見を聞いておりますけれども、そうした対応の中で、今、歯科医師会の皆さん方ともお話合いをさせていただいておりますけれども、四月当時のようなお声は今はないんではなかろうかなと思っております。ただ、新しい制度でございますので、その後の検証はしっかりしていきたいと思っております。

小池晃君

 いや、ちょっと甘いと思いますね。その通知出た後も問題続いていますよ。ほとんど、若干ぐらいの緩和にしかなっていないというふうに私は聞いています。

 しかも、重大なのは、今年四月四日付けの日本歯科新聞という業界紙に、匿名ですが現職の歯科指導医療官の発言が出ているんです。何と言っているか。この文書提供の問題についてこう言っているんですね。今回の改定は多少の厳しさを伴うにせよ、個々の歯科医院が患者からの信頼感を回復し、高めるチャンスだと認識すべきだ。もし、信頼関係が医患、医者と患者の間に生まれれば、自費診療の比率も上がっていくだろう。現在、混合診療解禁に向けた動きが併せて進んでおり、歯科医院のコミュニケーション能力の高まりが歯科医院の収入を高める大きな要素となるものと期待される。今回の改定は夜明け前の改定と呼んでもよいのではないか。

 局長、今回の文書提供の義務付けというのは、これは混合診療解禁に向けた夜明け前の改定だったんですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 これは正に個人的見解でございまして、厚生労働省の見解とは異なるものでございます。

小池晃君

 個人的見解ったって、業界の第一の新聞に堂々と出ているんですよ。こういうことがあっていいんですか。

 これ、私、もし厚労省の方針に反するというのであれば、手だて打つべきだと思います。人物特定して、何らかのこれは手当てをするべきじゃないですか。その点はいかがですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 この記事、委員も御指摘のとおり、これ匿名で書かれたものでございまして、まあそういったものに私どもあえてコメント、どのようにしたらいいのかよく分かりませんけれども、私どものこの混合診、いわゆる混合診の問題につきましては、これはもう何回も繰り返し申し上げてきたとおりでありまして、この匿名のこの記事にまあ一々個別に反応するべきものかどうか、よく分かりません。

小池晃君

 いや、こういうのを放置しちゃいけない、いけないと思いますよ、行政としては。大臣はうなずいていらっしゃるけれども。これは重大な問題だと思いますよ。こんなことを平気でしゃべっているとしたら。

 ちょっと歯科医療の中身そのものについても聞きたいんですが、そもそも歯科医療を充実させて歯の健康を保つというのは極めて大事なことだと思います。八十歳で二十本の歯を有する八〇二〇というのは、これは健康日本21の指標にもなっている。

 これ、最近東北大学の渡邉誠教授らが、保有している歯の数が多いほど医科の医療費が低いという研究結果を発表しています。これは以前からいろいろあって、兵庫県歯科医師会とか香川県とかいろいろあるんです。

 大臣に私、基本的な認識をお伺いしたいんですが、高齢者の歯の健康状態を保持するというのは全身の健康にも大きな役割を果たすし、それが結果として医療費を低く抑える効果ももたらす、まあ一石二鳥、三鳥じゃないかと思うんですが、大臣いかがですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 先日発表しました平成十七年歯科疾患実態調査の結果において、八〇二〇達成者の割合は健康日本21の目標値である二〇%を達成し、高齢者の歯の健康状態の改善に成果が上がっていると認識しております。

 御指摘の調査については、一定の前提の下、残存歯が少ない者の方が多い者に比べ医科の医療費が高い傾向が見られるという報告書でございます。こういった報告は、広く国民が歯の健康に関心を持つ啓発の一つになるものと認識しております。

 今度の医療制度改革においては、医療費の適正化を推進する観点から、疾病予防を重視した保健医療体系への転換が柱の一つとされており、歯科保健医療の分野においても八〇二〇運動を始めとする疾病予防、健康増進を目指した歯科保健医療の充実が重要であると考えております。

小池晃君

 重要だというんだったら、メタボリックシンドロームばっかり一辺倒でやるんじゃなくて、がんの問題とかこういう歯科の問題とか、きちっと指標に据えてやるべきじゃないですか。もう胴回りのことばっかり話題にして健康指標にするというのは、私は非常に偏っているというふうに思います。別に自分のことに照らして言っているわけじゃありませんが。

 私、そういう意味じゃ、本当に余りにも歯科分野は軽視され過ぎているということは申し上げたいと思うんです。問題なのは、歯科医療分野での保険外負担が拡大続けているんですよ、そういう中で。そもそもの歯科の医療分野では、新しい治療法がなかなか保険適用されない。

 局長、最近新たに保険適用された技術というのはどれだけあるんですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 平成十二年度から今回までの過去四回の診療報酬改定におきまして、歯科医療の分野において新しく導入された技術といたしましては、睡眠時無呼吸症候群の治療法としての口腔内装置を始めとした三つの技術でございます。なお、この歯科診療報酬改定に際しましては、日本歯科医学会に属する専門学会から要望を聞きながら、中医協の専門家による組織におきまして有効性、安全性等の観点から科学的評価を行った上で、保険導入しているものでございます。

小池晃君

 平成十二年、十四年、十六年、十八年、四回改定あったのに、三つしか入っていないということなんですね。一方で、前回議論したように、医科分野では今年の改定だけで新たに五十、新技術が入っているんだから、非常に少ないんです。

 で、厚労省の調査によれば、歯科医療に対する国民の要望の第一位、夜間や休日でも診療が受けられるように、第二位は、保険の範囲を広げてほしいなんです。国民の願いは保険で最善の歯科医療を受けられることだと。

 ところが、実際には歯科分野では新しい技術がなかなか保険適用されないし、保険診療への制限が、日数制限とか条件とか、いろんな形で制限が加わっている。医科の先取り的にどんどんどんどん制限している。これが実態です。結果として保険外の負担が拡大しているわけであります。だから、国民は保険適用ということを真っ先に言うんだと思うんですね。医科ではこういう声は上がってきませんよ。

 私、大臣にお聞きしたいんですが、非常に大事だということはおっしゃった。であればですよ、やはり今のように保険外診療を広げていくようなやり方というのは、これは改めるべきじゃないか。こういうやり方は歯科医療の在り方をゆがめ、歯の健康を壊し、ひいては厚労省が目指す健康づくりにも逆行するということになるんじゃないですか。この点、いかがでしょうか。

国務大臣(川崎二郎君)

 第一に、歯科の問題についていろいろ私も勉強したいなと思って少し始めているところでございます。問題を、意識を持ちながらやってまいりたいと思います。

 一方で、歯科診療におきまして、保険外診療の割合が増えておるという御発言でございますけれども、私どものデータでございますと、平成七年、保険外診療一三・一%、十一年が一二・七、十五年が一二・〇、十七年が一二・五でございますから、そういった意味では増えているという御指摘は当たらないと思っております。

 ただ、歯科の問題について、先ほど八〇二〇運動の問題、また新たな保険も含めた健康増進のための歯科の役割というものは十分勉強していきたいと、このように思っております。

小池晃君

 一三%、一二%で推移しているということ自体が重大問題だという認識を持っていただかないといけないというふうに思います。

 私は、先ほどの指導医療官の発言なども含めて、歯科医療の現場を混合診療の実験場にするようなことは絶対に許してはならないということを申し上げておきたいというふうに思います。

 続いて、政管健保の都道府県単位を軸とする再編の問題についてお伺いをしたいと思います。

 これは、政管健保を都道府県単位に再編統合し、国から切り離した全国単位の公法人を保険者として設立をする、都道府県単位の財政運営を基本にするということなんですが、これ、保険料については現行は八・二%というのを今回、健保組合と同様に三%から上限一〇%に改めるということになるわけですが、これはなぜですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 まず、健保組合の保険料率のところから議論としてはスタートするわけでございますけれども、現在、上限が九五パーミル、下限が三〇パーミルとしているところでございます。

 ただ、平成二十年度から特定健診、それから特定保健指導を医療保険者に義務付けるということも踏まえまして、保険料率の上限を一〇〇パーミルまで引き上げることとしてございます。

 一方、政管健保につきましては、現在、上限九一パーミル、下限六六パーミルとしているところでございますけれども、平成二十年十月の公法人化によりまして自主自立の運営を確保すると、それから都道府県ごとの保険料率に移行するということを踏まえまして、健保組合と同様、上限を一〇〇パーミル、下限を三〇パーミルとすることとしたものでございます。

小池晃君

 これは健保組合、現行の上限は九・五%、九五パーミルで、九一パーミルの政管健保より高いわけですよね。健保組合が上限を一〇%、一〇〇パーミルにするからといって、なぜそれより低い政管健保も一緒に一〇〇パーミルにする必要があるんですか。組合健保に合わせる必要ないんじゃないでしょうか。

政府参考人(水田邦雄君)

 これは判断の問題でございまして、政管健保を全国健康保険協会、公法人に改めるということで、言わば民間の健保組合と同様の仕組み、その点では民間の法人になるわけでございますので、この健保組合と合わせることにしたという判断をしたというようなことでございます。

小池晃君

 それはその一〇%にそんな理由で引き上げる理由にはならないと思います。

 社会保険庁にお聞きしますが、二〇〇四年度が一番直近のようですが、政管健保の平均保険料は三十一万五千二百三十七円です。これが最大一〇%になった場合の保険料を示してください。

政府参考人(小林和弘君)

 今御指摘の平成十六年度決算におきます平均保険料額は、御指摘のとおりの三十一万五千二百三十七円ということでございます。

 仮に、これに保険料率を一〇〇パーミルとした場合を機械的な計算をさせていただきますれば、平成十六年におきまして三十八万四千四百三十五円という数字が出てまいります。

小池晃君

 要するに、約七万円もの値上げが可能になる仕組みが入っているということになると思うんですね。地域の医療費を反映した保険料率設定できるというけれども、これは新たな負担増に道を開くということになるのじゃないか。

 その負担増の一つの要因についてお聞きしたいんですが、公法人の人件費であります。今、社会保険庁の職員というのは国家公務員ですから人件費は国庫負担であります。これ、新たに公法人、それから社会保険庁で政管健保の徴収、適用に当たる人の人件費は、これはどこから出ることになるのでしょうか。

政府参考人(水田邦雄君)

 この全国健康保険協会の人件費を含めました事務費につきましては、保険料及び国庫負担で賄うということになります。国庫負担の取扱いにつきましては、自主自立の運営の確保という公法人化の趣旨あるいは健保組合の取扱い、これらを踏まえて、今後、財政当局とよく協議をしていきたいと考えてございます。

 一方で、その適用、徴収の業務につきましては、これは従来どおり国、また将来的にはねんきん事業機構で厚生年金の事務と一体的に行うこととしてございますが、今後、年金事務費の取扱い等も踏まえながら、これも財政当局とよく協議をしていきたいと、このように考えています。

小池晃君

 協議をするといっても、今までは国庫負担だったものが保険料が入ってくることになる。

 今、社会保険庁にお聞きしますが、社会保険庁職員で政管健保と厚生年金にかかわっている総人件費と職員数を示してください。

政府参考人(小林和弘君)

 政管健保と厚生年金保険、業務的に一体的に行っております。これに従事しております職員数、平成十八年度予算というもので申し上げますれば、約一万一千人でございます。この一万一千に係る人件費九百十億円というところでございます。

小池晃君

 新しくできる公法人の体制は常勤だけで二千人というふうに聞いております。そうすると、単純計算で全部保険料から出すとすると、百六十五億円の人件費が保険料から出てくると。このほかに非常勤千五百人分の人件費もある。国庫負担もあるんだというふうに言っていますが、そこは何の担保もない。

 大臣、この公法人の人件費が新たな保険料負担となって加入者にかぶるということについて、加入者の理解が得られるとお考えですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 お答え申し上げましたように、まず政管健保は国から切り離した公法人になりますから、当然、自主自立の運営を確保することになる。その一方で、予算の範囲内で国庫負担を行うと。そういった意味では、人件費の一部については国の方から応援をしていくということになるだろうと思います。そういったところで御理解を賜っていきたいと思います。

小池晃君

 いや、私が聞いていることに答えてないですよ。国庫負担が入るから理解されるというけれども、全く今までは保険料から出てなかった分が新たに出ていくわけですよ。そういうことが加入者の理解を得られるというふうにお考えですかというふうに聞いているんです。私はこれは、こんなこと知ったら皆さん怒るんじゃないかと思いますが、どうですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 知ったらというんでなくて、明確にしながらやっていきます。当然、こういう形でやらしていただきますということです。

小池晃君

 この点でもこれ新たな負担の押し付けじゃないですか。私、これ重大だというふうに思うんです。

 それと、仕組み自体について聞きたいんですが、今回、保険料の徴収と給付がどうなるかというと、ちょっと現在の老人保健制度の問題点を先ほど一番最初に議論しましたが、この問題点については厚生労働省は何と言っているかというと、保険料の徴収は各保険者でやっている、給付は運営主体の市町村がやっている、これでは市町村は保険料を取る痛みが分からないから一体化するんだと、だから後期高齢者医療制度をつくるんだと、こういう御説明ですよね。これ、ちょっと確認ですけど、これでよろしいですね。

政府参考人(水田邦雄君)

 給付する主体と保険料を賦課する主体は、これは一体であるべきだということでございます。必ずしも徴収ということに限らず、保険料を決めて賦課するということは、これは保険制度のポイントだと思っております。

小池晃君

 しかし、今回のその政管健保の方どうかというと、政管健保の運営主体は公法人になる。しかし、ここは保険料徴収やらないわけでしょう。だから、保険料徴収は社会保険庁に残るわけです。ねんきん事業機構というふうになっていくということを今提案されている。

 だとすると、これは政府の論理に照らしても、現行老健制度と同じように保険料を集める痛みが分からない組織ということになるんじゃないですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 先ほども申し上げましたとおり、保険料を賦課するのは、これはあくまでもこの場合には全国保険協会になるわけでありますし、それから現実の問題として考えていただきたいわけでございますけれども、政管健保の適用、徴収というのは、これは正に厚生年金と適用事業所は重なっているわけでございます。したがって、厚生年金の適用、徴収と併せて行うことが、事務の効率化を確保して、事業所の負担の軽減を図る上でもメリットがあるということがございます。特に強制徴収をしなきゃいけないというときに、こういった年金徴収組織でこの徴収そのものはしていただくというのは、それなりの合理性があろうかと思っております。

小池晃君

 私、そんなこと言っているんじゃないんですよ。論理が矛盾しているじゃないかと、支離滅裂じゃないかと言っているんです。賦課と徴収違うなんて、そんなの理解できませんよ。

 だから、今まではそう違ったから、理解得られなかったから後期高齢者制度を一緒にすると言いながら、政管健保でわざわざ分けるということが、これは説明付かないじゃないかと私聞いているんですけど、いかがですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 保険料を賦課して、かつその保険料がどういうものであるかということを説明する責任は、これは広域連合にあるわけでありますし、この場合ですと全国健康保険協会にあるわけでありますから、そういった被保険者に相対峙して説明責任を負っているという意味で正に保険料の賦課を行うわけでありますので、それと給付が一体であるというのは、それは一つ、一貫したものであると思っております。

小池晃君

 いや、これは納得できません。

 こんな制度になれば保険料の設定、徴収、保険給付が組織ごとにどうなるかというと、国保は運営主体の市町村がこれは一体としてやっているわけです。新しくつくる高齢者医療制度でも、運営主体の広域連合が一体的にやっていくと。健保組合の保険料率の設定、これは大臣許可ですけれども、徴収、給付は自主運営になっていくと。政管健保だけが適用と徴収が社会保険庁で、給付が公法人という。

 これ、非常に複雑な仕組みになると思うんですが、納得のいく説明を求めたいと思います。

政府参考人(水田邦雄君)

 済みません、ちょっと今別な話をしてたものですから。

 この全国保険協会で保険料率も決定いたしますし、賦課もいたすわけでありますから、その点では広域連合と変わっていないと思いますが。徴収事務だけ、これはねんきん事業機構なり社会保険庁でやってもらおうということでございます。ですから、広域連合において保険料率の決定、賦課は広域連合が行って、徴収事務は市町村でやってもらうという構造と、そんな意味では類似しているわけでございます。

小池晃君

 いや、それは違うと思いますね。

 しかも、公法人化で、この公法人というのは一体何なのかということですね。これ、予算、事業計画、財務諸表は大臣が許可する。しかし、公法人の職員は民間人だと。組織は国でもない、公益法人でもない、民間でもない、公法人だというあいまいな組織で、一方で理事長を大臣が任命するというのはこれ特殊法人と同じようですが、訳分からない組織じゃないですか。結局私はこれ、今まで行ってきた国の事業を下請するようなものであって、自主性強調するけれども、国の責任後退することになる。

 何よりも、政管健保というのはこれ強制保険なわけですよね。こういう強制保険である政管健保から国が手を引く、それで何だか訳の分からない公法人というのにゆだねるということが果たして許されるんですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 基本的な仕組みとして、社会保険庁から切り離して政管健保だけを扱う、より明確化にしていこうということで今回お諮りをさしていただいております。そうした中で、民間を主体としながらしっかりとした運営をしていかなければならないと、このように思っております。

小池晃君

 いや、私の言っていることに答えておられない。これ、重大なやっぱり国の責任の後退になるし、こういう訳の分からない組織に強制保険の運営を任していいのかということ、ここ根本問題じゃないですか。

 しかも、これ理事長を大臣が任命するというんですが、都道府県ごとに設ける支部の支部長は理事長が任命するんです。これ今、公益法人への天下り、後を絶ちません。二〇〇五年四月現在、全国社会保険協会の関係団体だけでも百人近く天下りがある。結局、こんな公法人が四十七都道府県に全部一つずつ、公法人、公法人、公法人、公法人ってできてくる。天下りの受皿が四十七個増えるだけじゃないですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 ですから、今申し上げたように、もちろん理事長も民間から来ていただきたいと思っておりますし、また各支部の責任者もできるだけ民間から登用できるようにしていきたいと、このように思っております。

小池晃君

 できるだけ民間からと言うけれども、実態としてはこれ天下りの受皿になる可能性が極めて大だというふうに思います。

 何の改革でもないということを申し上げて、質問を終わります。

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