Dr.小池の世直し奮戦記
世界の流れは「原発ゼロ」!
「いつでも元気 2011.9 No.239」より

Dr. 小池の世直し奮戦記/世界の流れは「原発ゼロ」!

 福島第一原子力発電所の事故は五カ月過ぎても収束せず、被害は拡大しています。このような深刻な事態に至ったのは、電力会社だけでなく、危険性をかえりみず原発を推進してきた政治の責任も大きい。原発をめぐる政治家の発言をふり返ってみます。

「原子炉を冷却できる対策が講じられているものと承知している」

(小泉純一郎、敬称略。以下同)

 二〇〇五年一一月に日本共産党の吉井英勝衆議院議員が提出した質問書への答弁です。吉井議員は「巨大津波が発生しても炉心冷却はうまくいくのか」と問いただしたのですが、当時の小泉首相の答弁書は「冷却できる」。ところが事実はどうだったか、いまさら述べるまでもないでしょう。
 三月一一日の東日本大震災と同時に原発事故が発生しました。原子炉建屋(原子炉が入った建物)が水素爆発してから、今度は民主党政権がこんなセリフを繰り返しました。

「ただちに健康に影響を及ぼすものではございません」 

(枝野幸男)

  ただちに影響が出たら大変です。官房長官の説明は、国民の不安にまったくこたえていません。
 放射線による障害には、ただちに影響が出るものと、一定の時間がたってから、がんなどを発症するものとあります。ただちに影響が出るような強い放射線を浴びることは絶対にあってはなりませんが、浴びた放射線量が少なくても、将来、健康被害が現れる危険性はあります。だからこそ多くの方がたが心配しているのです。
 食べ物などによる内部被ばくの影響も心配です。とくに、小さなお子さんや妊娠中のお母さんを抱えたご家族が、不安になるのは当然です。
 できるだけ放射線を浴びないように、多くの方々が必死の努力をしています。しかし、放射線は目に見えません。見えない放射線を見えるようにし、とりのぞくのが行政、政治の役割のはず。しかし国の対策は何から何まで後手後手で、まったく不十分です。
 たとえば、放射性物質がどのように拡散するのかを予測するシステムであるSPEEDI(スピーディ)。政府はSPEEDIのデータを持っていたのに、発表したのは一〇日以上も後。細野首相補佐官(当時)は理由を問われてこう答えたのです。

「国民がパニックになることを懸念した」

(細野豪志)

 "パニック"に陥っていたのは、政府の方ではないでしょうか。放射性物質が原発の北西方向に流れていたことがわかっていたのに、浪江町などの住民は「北西に逃げろ」と言われ、わざわざ放射線量の高い地域に向かったのです。政府の罪は、重いものがあります。

「将来は原発のない社会を実現する」

(菅直人)

 首相のこの発言に期待された方も少なくなかったと思います。ところがこの記者会見のわずか二日後に"個人的な見解だ"と言い出しました。
 こんなだらしない政治を変えるのは、国民の世論と運動です。国民が動けば政治は変わります。ドイツでもスイスでもイタリアでも、世界で原発撤退の流れが起こっています。日本もこの流れに合流しましょう。

◆トピックス◆

「卒原発」共同アピール
滋賀・山形両県知事

 山形県の吉村美栄子知事、滋賀県の嘉田由紀子知事は、7月12、13日に開かれた全国知事会議で原発から再生可能エネルギーへの転換を政府に求める共同アピールを連名で提出した。
 アピールは原発への「依存度を徐々に少なくし卒業できるような『卒原発』が望ましい」とし、「再生可能エネルギー導入を加速させるため、法律上の規制の緩和と財政的な支援策を講じる」ことを求めている。
相対的貧困率
過去最悪の16%に

 厚生労働省は7 月12日、「2010年国民生活基礎調査(概況)」を発表。09年の相対的貧困率が全人口の16・0%で、数字を公表してきた85年以降最悪の水準に。
 「相対的貧困率」とは、年間所得の高い人から低い人までをならべて、真ん中になった人の年間所得(中央値。09年は1 人当たり224万円)の半分に満たない人が全体に占める割合。18歳未満の「子どもの貧困率」も15・7%で過去最悪。
児童虐待相談件数
前年度比1万件増

 全国の児童相談所が2010年度に対応した児童虐待の相談件数は5万5152件に達した。7月20日、厚生労働省発表。前年度比で1万941件増。
 宮城、福島両県は震災の影響で集計が間に合わなかったが、それでも1990年の調査開始以来20年連続で過去最多を更新した。
医療計画に精神病追加
厚労省社会保障審議会

 厚生労働省の社会保障審議会医療部会は7月6日、国が医療計画上に定め重視してきた、「4疾患5事業」(4疾患...がん・脳卒中・急性心筋梗塞・糖尿病、5事業...小児救急医療・周産期医療・救急医療・災害医療・へき地医療)に精神病を追加し「5疾患5事業」とする方針をまとめた。日本の精神医療の遅れを打開するため、精神病を医療政策の中心の一つに位置づけ、医療体制の充実・改善などを求めてきた患者や家族、精神医療従事者の運動が一部実現したものだ。

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