「いつでも元気 2011.3 No.233」より |
三月から四月にかけて、みなさんのまちの首長や議員を選ぶ"全国いっせい地方選挙"がおこなわれます。明日のくらしを左右する、大事な選挙です。
自治体本来の仕事は
地方自治法第一条には「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」とあります。「住民の福祉の増進」が基本的な仕事です。
ところが現実には、多くの自治体が住民に高すぎる国保料(税)を押しつけ、保険証の取り上げで命まで奪っています。特別養護老人ホームの整備もすすまず、待機者は介護保険制度開始前の約一〇万人(一九九九年)から四倍以上にふくれあがりました。
おおもとには、国の政治があります。国は自公政権時代に「地方分権」「地方行革」といって、地方自治を尊重するように装いながら、福祉切り捨てや市町村合併を押しつけ、自治体に対する国の交付金・補助金を削減しました。特別養護老人ホーム建設補助金などは、ゼロになってしまったのです。
変わらぬ福祉切り捨て
一昨年の政権交代は、こうした政治に対する「地方の反乱」でもありました。しかしその後、事態は改善に向かったでしょうか。
民主党政権になって「地域主権」と名前は変わりましたが、やっている中身は自公政権と変わりません。あいも変わらず、福祉切り捨てと大型開発優先の政治です。
くらしや福祉にかかわる自治体独自の仕事を切り捨て、社会保障や教育などの分野でも人権や安全を守るための国の最低基準さえ取り払って、「住民福祉の機関」としての自治体の役割をさらに弱めようとしています。「官から民へ」のかけ声で、自治体業務の民営化や民間委託もすすめ、公的責任を次つぎと投げ捨てています。
また、"大企業が来れば、すべてうまくいく"とばかりに、大企業を呼び込むために巨額の税金を投入し、財界にいわれるまま「道州制導入」など自治体の大規模化をねらっているところも、自公政権と同じです。
こうした政治をすすめやすくするため、地方議会の議員定数削減も推進しています。地方議会を形骸化して、住民の声が議会や自治体にとどかないようにしているのです。
多くの自治体は、こんな国の言いなりです。本来は住民の立場で行政をチェックすべき地方議会は、日本共産党を除く「オール与党」で、なんでも賛成。住民無視の政治に対する怒りを背景に"改革ポーズ"のみんなの党や「地域新党」も出てきていますが、実際の議会では「オール与党」の一員として、古い政治の片棒を担いでいます。
国といっしょになって住民に悪政を押しつけ、いくら要求があっても自治体独自の福祉の仕事には取り組まない。これでは自治体が存在する意味がありません。
沢内村の経験に学んで
日本で初めて老人医療費無料化を実現した岩手県沢内村(当時)の深澤晟雄村長は、国から「国民健康保険法に違反する」と妨害されそうになったとき、「国保法に違反するかもしれないが、日本国憲法には違反しない」とはねのけました。これぞ自治体のあるべき姿です。老人医療費無料化はその後、全国に広がりました。
こんどの選挙では、みんなで力を合わせて、住民の福祉の守り手、国の悪政からの防波堤としての自治体を、この国のすみずみからつくり上げていきましょう。