認定改悪のねらい挫折
「あれが出て、介護関係者はみんな『やっぱり』と思った。重大な内部文書でした」
小豆沢(あずさわ)病院(東京都板橋区)の医師、石川徹さんは話します。
「あれ」とは、昨年4月2日の参院厚生労働委員会で、小池晃議員が明らかにした厚生労働省の内部文書のこと。そこには、国庫負担が求められる介護給付費を減らすために、介護保険利用者の認定制度をつくり変える狙いが書かれていました。関係者に衝撃を与え、自公政権の介護政策を揺るがした国会質問でした。
介護保険の認定制度とは、在宅や施設での介護サービスを利用する前に、高齢者がどのくらいの介護を必要とするか、ランク付けを行う仕組みです。
介助なしへ
当時の自公政権は、4月に認定制度の改悪を強行しました。その内容は、利用者の状態を聞き取り調査する際に、寝たきりの人の「移動」は「全介助」から「介助なし」へと基準を変えるなど、要介護度を実態より低く認定する恐れの強いものでした。「必要な介護を受けられなくなる」と批判が広がっていました。
「給付費抑制の意図はない」と言いつくろって改悪を進めた政府。その言い分を根底からひっくり返したのが、小池さんが暴いた内部文書でした。文書には「認定の適正化」などによって介護給付を284億~384億円縮減する見積もりや、軽度の認定を増やす方法が記されていました。
「政府は4月1日から新制度を『見切り発車』させ、そのまま突き進もうとしていた。その思惑を挫折させたのが、翌日の小池さんの質問でした」と石川さんは指摘します。
小池さんの質問から2週間足らずで、内部文書作成を認めた政府は新制度の見直しを表明せざるをえなくなりました。舛添要一厚労相(当時)は「省をあげて反省する」と述べました。マスコミも「異例の事態」(「日経」)と報じました。
すごいの声
同年5月の与野党議員の政策討論会では、国民新党の議員が「あれ(内部文書)を出してくる共産党はすごいと感心した」と発言。小池さんが要介護認定の廃止を提案すると主催者代表が討論を促し、野党各党が賛同する一幕もありました。
「認定制度は、適切な認定のためというより、サービス抑制のためのものだとはっきりした。介護認定という制度はやめて、現場の専門家の判断で適切な介護を提供する仕組みにしようという共産党の提案は共感を呼んだ」と石川さんは言います。
板橋区の介護認定審査会で委員を務める石川さんは、実態に合わない認定制度の矛盾を痛感しています。
東北大学の医学部卒業後に小池さんが医師として働き始めたのが小豆沢病院でした。そこで研修医だった小池さんを指導する立場だった石川さんは言います。
「小池さんは患者一人ひとりの声に耳を傾ける姿勢が徹底していました。今も国民に寄り添い、まさしく『国の病気を治す医師』として働いてくれている。そう感じています」
(2010年05月08日・しんぶん赤旗)