初めて国会で位置づけ
4年前の5月、耳原総合病院(大阪府堺市)の小児科医師だった武内一(はじめ)さんのもとを1人のお母さんが訪ねてきました。「細菌性髄膜炎はワクチンで防げるという新聞記事をみて衝撃を受けた」と。
子ども守れ
自分の3歳の子どもが細菌性髄膜炎に感染し、水頭症やてんかん発作、発達の遅れなど後遺症が残ってしまったと悔しそうでした。
「ワクチンのこと知ってたら、髄膜炎にならへんかもしれへんかった。同じ思いを、ほかのお母さんにさせたくない。ワクチンが日本で使えるように運動したいんです」
子どもの命と健康を救い守るために頑張るのが、小児科医。武内さんも黙ってはいられません。最初は2人で始め、2006年10月、子どもが髄膜炎にかかった家族や医療従事者などによる「細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会」を発足させます。子どもを守るワクチンを公費負担で定期接種できるようにすることが目的です。
07年4月には、ワクチンの早期承認と定期接種化を求め、約6万人の署名を厚生労働相に届けました。武内さんは「この3月末までに、4回の要請行動を行い、国会への請願署名を含めて20万人を超える署名を届けました」といいます。
小池さんは07年7月、細菌性髄膜炎の予防のため「インフルエンザ菌b型(ヒブ)ワクチン接種及び肺炎球菌ワクチンの早期承認に関する質問主意書」を提出します。
政府答弁書は「ヒブによる重症感染症の発生を十分勘案しつつも、ワクチンの有効性、安全性等をわが国でも検討した上で判断する」とありました。武内さんは「細菌性髄膜炎を予防するワクチンの問題が、国会の場で初めて位置づけられた質問でした」と話します。
定期接種に
ヒブワクチン導入へ動きだした国に対し、小池さんは08年11月、参院厚生労働委員会で公費負担による定期接種にすべきと質問し、舛添要一厚労相(当時)は年内発売(12月)のワクチンの安全性が確認されれば「委員がおっしゃった方向で努力したい」と表明。ヒブワクチン導入を決定づける答弁を引きだしました。
09年度に、国として公費負担による定期接種を行えという地方自治体の意見書は465件になっています。小池さんはこの声にもこたえ、この4月13日には、重ねて「守れる命が守れていない。政治の責任が問われている」(参院厚労委)と、一日も早い定期接種化を求めました。
細菌性髄膜炎の最初の症状は、かぜの胃腸炎とほぼ同じ。早期発見がとても難しいこともわかっています。武内さんは「あっという間に亡くなって心の整理がつかないお母さんもいます。夜間診療などの救急医療において小児科医の大きな負担となってきました」と話します。
社会的弱者の目線から社会福祉を研究する武内さん。「小池さんは一貫して、国民のための医療はどうあるべきかという視点で国会質問をしています。私たちの開く国会内勉強会にも参加してくれます。この熱心さは、私たちの運動の力強い後押しになっています」
細菌性髄膜炎
脳や脊髄(せきずい)を覆う髄膜の内側に細菌が入り込んで起きる感染症。日本では毎年、1000人を超える5歳未満の子どもが感染していると推定されています。うち約6割がヒブ(インフルエンザ菌b型)、約3割が肺炎球菌によるもの。WHO(世界保健機関)は1998年に乳幼児へのヒブワクチン無料接種を求める勧告を出しています。日本では、ヒブワクチンは08年12月、肺炎球菌ワクチンは2010年2月に発売。ヒブワクチン接種は150市区町村以上で公費助成。
(2010年04月30日・しんぶん赤旗)