「いつでも元気 2010.2 No.220」より |
■どうなってるの!? 新政権
国民の期待を担って誕生した民主党政権。前進面もありながら、なぜ? と思うことばかり。小池晃参議院議員に聞きました。
宮武真希(全日本民医連事務局)
保育の基準を下げるなんてびっくり。どうなってるんですか?
宮武真希さん
命まもる政治へ 国民が動かし続けなくては
小池晃さん
宮武 政治が変わるってこういうことかなと思ったことがありました。市に保育の充実を求める請願を出したら全会一致で可決。こんなの初めてです。
小池
国民の声に耳も貸さなかった自公政治を何としても終わらせたいという国民の一票が、新政権を生み出したわけですからね。国民の声には耳を傾けざるをえなく
なった。だから新政権も、生活保護の母子加算を復活させたり、大型開発による税金のムダ遣い、特殊法人などのムダ遣いにもメスを入れ始めています。
保育所つくれば税金が生きる
宮武 でも民主党が保育園の最低基準を引き下げるといったのには驚きました。
小池 これはひどいですよね。日本の最低基準は六〇年前にできたものなので、そろそろ引き上げようと自公政権も検討していたのです。それを逆に、もっと子どもを詰め込んでいいと。待機児童が多いからだというのだけれど、大問題です。
厚労省に保育園での事故の統計を出させたのですが、やはり認可保育所より無認可の方が事故は多い。認可保育所も、園児の詰め込みが始まった二〇〇一年か
ら事故が増えているんです。その基準をさらに下げるなんて許せない。鳩山首相は「地方分権の実験」といいましたが、子どもを実験台にしていいのか。安全も
含めて保育の質を確保しなくては。
子ども手当に五兆三〇〇〇億円使うというなら、その一部を緊急に使って保育園をつくればいいのです。一〇万人分の保育園をつくるのに必要な建設費用は、
国の見積りでも一七〇〇億円ですむ。保育園をつくれば地域の建設業者などに仕事がいき、保育士さんの給与も地域経済にまわる。お父さんやお母さんが仕事に
就ければ、そこでまた経済効果も増す。税金が二倍、三倍に生きてくるんですよ。
「米軍はもう出て行って」と
宮武 沖縄の普天間基地の移設問題で揺れているのはひどい公約違反ですよね。
小池
最悪ですね。普天間基地の移設は、鳩山さんは明らかに国外、県外といっていたのに、アメリカから一発脅されたら、ぐらぐら揺れてしまう。国民が第一になっ
ていないんですね。根っこにあるのは、沖縄の海兵隊が必要だという考え方。鳩山さんは「抑止力だ」といいますが、これが間違いのもとです。海兵隊は日本を
守る軍隊ではないし、アメリカを守る軍隊でもない。アメリカが海外を侵略するとき、真っ先に乗り込んでいく「殴り込み部隊」です。ベトナム戦争でも、アフ
ガン、イラクでもそうでしたね。
「米軍はもう出て行って。引っ越し先は自分で探し、費用も自分でもって」と。いよいよ、そういう時期だと思います。
増額となった防衛省予算
宮武 事業仕分けは連日大騒ぎでした。
小池 密室でなく公開したことだけはよかったけど、やっている中身、評価の基準が問題です。科学研究や芸術などすぐには結果が出ないが長い目で見て絶対に必要な問題がある。それを短期間の効率だけで判断してしまうと国にとって大事なものを切り捨てることになります。
その一方で、メスを入れるべきところに入れていない。
軍事費をみると、事業仕分けでは一二〇〇億円の蕫ヘリ空母﨟をはじめミサイルや新型戦車も手つかずでした。その結果、来年度予算では防衛省予算は増額となり、とくに米軍再編のための費用は昨年より五〇〇億円も増えてしまったのです。これはおかしいでしょ。
消費税増税の雰囲気づくり?
宮武 政党助成金も対象外でしたし。
小池 政党助成金こそ、各政党の代表を並べて、いったい何に使ったんだと、きびしく追及してほしかったですね。
心配なのは、まるでショーのようにした狙いです。これだけムダを削ったけど財源が生み出せない、消費税でやるしかないですねという、雰囲気づくりなのではないか。そこは本当に警戒しなくては。
財源として手をつけようとしないのが大金持ちや大企業に減税してきたところです。たとえば株で儲けた収入に対する税金は一〇%です。銀行の利子は二
〇%。住民税・所得税の最高税率だって五〇%です。しかし株で数百億円儲けても一〇%。おかしいでしょう。これでだいたい一兆円分ぐらい減税されているの
です。
鳩山さんは、これを引き上げないのは経済危機だからだという。しかし同じ経済危機のアメリカもフランスも二五%だし、アメリカはさらに三〇%に引き上げ
ようとしています。やはり力のあるお金持ちや、莫大な利益をあげている企業に、応分の負担をしてもらうのが本筋です。
自民と民主が入れ替わって
宮武 郵政法案の採決は強引でしたね。
小池 国会の進め方はすごく危険な状況です。民主党は、数の力であまり審議もせずに強行採決、自民党は機械的に審議ボイコット。かつての自民党と民主党が入れ替わっただけのような対応です。
恐いのは、民主党がマニフェストで衆議院の比例代表定数を八〇削るといっていること。ほとんど小選挙区だけにして、国会には民主党と自民党しかいないよ
うにしようとしているわけです。少数意見の切り捨てというけれど、憲法九条を守れだって消費税増税反対だって、世論調査では多数です。そういう多数の声を
代弁する政党が、国会で足場をなくしてしまう。こういうことすら狙っています。
もともと民主党は、小泉さんと「構造改革」のスピードを競い合うといっていた党です。それが変わってきたのは、国民のたたかいの中でなのです。この国民の願いを無視したら選挙で勝てないと、民主党自身が政策に取り入れた。国民のたたかいが民主党を変えてきたのです。
だから自公政治が終わったからもう大丈夫と、国民が安心しちゃったら、元に戻ってしまう。もっと前へ、もっと前へと政治を動かし続けないと。
いま政治をよりよくするには
宮武 今年は参議院選挙の年ですが。
小池 国民の願いに応える政治が実現するかどうかは、次の参議院選挙がカギになると思います。総選挙前とまったく構図が変わりました。民主党中心の与党と、退場の審判が下った自民党と公明党、そして建設的野党を掲げる共産党。
総選挙では、自公政治を変えようと思う国民の多くが野党で一番大きい民主党に期待したわけです。民主党が与党になったいま、政治をよりよくしたいと思っ
たら、どこに託せばいいか。自民・公明では、いまより悪くなること間違いなし。国民は肌で知っています。そうすると、どの党を伸ばしたらいいか、国民の声
を代弁して、政治をよりいい方向に引っぱっていく役割を担っている政党はどこか、おのずと答えは見えてくると思います。
宮武 私たちのたたかい次第ですね。きょうはありがとうございました。