「いつでも元気 2009.6 No.212」より |
先月に続いて、介護保険の「要介護認定制度」見直しの問題を。
4月からの認定制度の変更により、身体の状態は今までと変わりがなくても、「要介護度」が低く判定される人が増えます。ランクが下がれば、受けられる介護サービスも制限されてしまいます。これでは「派遣切り」ならぬ「介護切り」ではないかと、全国に怒りの声が広がりました。
内部文書を入手し追及
そもそも政府は、どうしてこんなことをするのでしょうか。
舛添要一厚生労働大臣は、国会で「要介護認定を軽くすることで、国が負担を逃れようなどということはまったく考えていない」という答弁をくりかえしていました。
しかし、私はそれを完全にくつがえす厚労省の内部文書を入手し、4月2日の参議院厚生労働委員会で暴露して、舛添大臣を追及しました。
この内部文書では、今の要介護認定では「不適切な重度変更がされている」とし、その原因は「介護認定審査会委員が判定基準を拡大解釈している」ことだとしています。つまり、現場の専門家が実情にあわせて要介護度を判定していることを敵視し、制限しようというのです。
縮減額まで計算した内部文書の一部 |
人間の心を切り捨てて
具体的にはどうするか。コンピューターによる判定を拡大し「審査会委員の関与を減らす」としています。つまり人間の心を切り捨てて、容赦なく軽度判定しようというのです。
さらに、さまざまな施策による「介護給付費の縮減効果額」まで計算。「要介護認定の適正化」による縮減効果は284億~384億円。これだけ国は「節約」できるというのです。
そのほかにも、利用者負担を今の1割を2割に引き上げる、要介護度別に受けることのできる介護サービスの上限を2割引き下げるなど、驚くべき改悪メニューが並び、それぞれの財政効果が計算されています。
2週間で「異例の見直し」
舛添大臣は「初めて見る資料なので調査したい」と答弁。10日後には、実際に厚労省内で検討したときの資料であると認め、「省あげて反省しなければならない」と述べました。
そして、新認定で要介護度が変わった場合、希望すれば従来の要介護度を継続できるという「経過措置」を発表。マスコミも「異例の事態」(「日経」)、「異例の運用見直し」(「東京」)と報じました。政府が新しい要介護認定制度を導入して二週間もたたないうちに、このような「対策」を表明せざるをえなくなったのは、新制度の欠陥を認めたようなものです。
しかしこれは、今まで認定を受けた方だけが対象。これから初めて介護を受ける人には新方式での認定結果が押しつけられます。
欠陥を認めるのならば、中途はんぱな見直しでなく、白紙撤回するべきです。現場の声を聞かずに強行するからこんなドタバタになるのです。厚労省には、反省だけでなく、政策転換を求めたいと思います。