「いつでも元気 2009.5 No.211」より |
介護保険の「要介護認定制度」が4月から大きく変えられます。
介護度が軽くなるしくみに
要介護認定では、認定調査員が介護を受ける人の状態を調査票に記入し、それをコンピューターの判定にかけます。これが一次判定です。
さらに専門家による審査会で二次判定をし、軽い順に「介護の必要なし」、要支援1と2、要介護1~5までに分類するしくみです。
そのランクによって、受けることができる介護サービスの内容が決まりますし、施設に入る報酬の額、介護労働者の賃金も変わります。介護保険の根幹を握っている制度です。
この調査の項目自体が4月から大幅に削減され、コンピューターの認定ソフトも変更されます。
要介護認定を受ける人について、いままでの方法と新しい方法で、判定結果がどう変わるのかを比較した結果を厚労省が明らかにしました。その結果、一番軽い要支援1をのぞくすべてで、要介護度が軽くなる人の方が多くなってしまうのです。
必要な介護が受けられない
認定される人の状態はいままでと変わらないのに、要介護度が下がってしまったら、必要なサービスが受けられなくなってしまいます。
しかも4月から、要介護認定調査をおこなう際に調査員が使うテキストも新しくなります。
たとえば、「移動の機会がない重度の寝たきりの人」はいままでは当然のことながら「全介助」でした。ところが新しいテキストでは、なんと「介護の必要がないから」という理由で「自立」とされます。
これだけではありません。
点滴だけで、口から食べていない人も、いままでは「全介助」だったのに、「自立」。髪の毛のない人の整髪は、いままでは「能力を総合的に判断」としていたのに、「自立」。
「ひどすぎる」という批判を浴び、厚労省は実施直前に「自立」という言葉を「介護されていない」に変えました。しかし呼び名を変えただけで、軽く認定されるしくみはそのまま。実施直前にドタバタと変更するのは、後期高齢者医療のときと同じです。
機械的な利用制限やめてこそ
要介護認定方式変更の見切り発車は許されない。いったん凍結して検証しなおすべきです。そもそも、問題だらけのコンピューター判定など、もうやめるべきではないでしょうか。
介護保険制度の発足とともにケアマネジャーという資格がつくられ、いまでは10万人をこえる方が現場で働いています。介護を受ける方のことも、家族のことも、よく知っている専門家です。
コンピューターによる機械的な利用制限のしくみはやめて、ケアマネジャーが、その人に必要なサービス計画をつくる。それを審査会で認定していく。そういうしくみにした方がよほど理にかなっているのではないでしょうか。
必要な介護をすべての人に。介護を受ける権利をうばう「要介護認定制度」は廃止させましょう。