「どうする 日本の年金」小池晃 著
保険のしくみと問題点、こんごの展望までを語るハンドブック。介護サービスの低下など、介護保険の深刻な矛盾が吹き出すなか、追い打ちをかけて医療保険も改悪。医師であり、国会議員である著者が高齢者をはじめ広範な国民に高負担を押しつける、二つの保険について分かりやすく解説します。
1,000 円(本体 952 円)単行本 - 116 p (2004/05)
新日本出版社 ; ISBN: 4406030875 ; サイズ(cm): 19 x 13
書評:公文昭夫「採決の強行で終わらない闘争宣言」
「皆年金」とは名ばかりの「欠陥車」を、乗ってる人や歩道を歩いてる人の安全もかえりみず、事故が起きるまで走らせつづけた「ツケ」はあまりにも大きい。この結果、一千百万人をこえる人が保険料を払えない、払わない(政治・年金不信)という深刻な制度空洞化が生まれ、八百万人をこえる月五万円以下の低年金者が野放しのまま、という事態になっている。
欠陥車のリコール抜きで、野党の質問を封殺するという前代未聞の採決が強行された。
そんなことがゆるされてよいのか、という多くの国民の正義感の発露が、小池さんの『どうする 日本の年金』に凝縮されている。この本の前半では、自・公連立政権の改悪法のポイントがキメ細かく解説され、中段では「年金の財源を口実にした消費税大増税」への不当性とあわせて、政府が主張する「年金財政悪化」の欺まんを明快に解きあかしてくれる。
後半は、いわばこの本の「結語」とも言える部分で、政策提言の責任者ならではの迫力にみちた内容となっている。「これで年金は、本当に国民のものになる」というテーマで、日本共産党の提唱する「最低保障年金制度」が、懇切丁寧に解説されている。しかも、この部分は、日本の年金のこれからの在り方について「最低保障年金制度」が制度論としても必然性をもっていること。同時に、その目標にむかって、まず現実的な水準から出発する柔軟な対応と政治姿勢を「財源確保」策とあわせて提言している。
国会での「百年の安心」の欺まんの追及と同じで、まったく胸のすく江戸っ子の「タンカ」。国民生活の改善を主軸にした年金改革のたたかいは無謀な強行採決でピリオドがうたれたわけではない。参院選、そして次期国会へむけてひきつがれる課題だ。本書は、そのための日常的政策課題として活用されていくべき闘争宣言である。
|