本文へジャンプ
日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

164通常国会 参議院厚生労働委員会「医療法『改正』案、健康保険法『改正』案の質疑」

  • 改悪医療法/生きているときは負担増/死後は埋葬料減額/政府、国会で説明できず(関連記事
  • 医療改悪法案を強行/自公、参院委で可決/小池議員反対討論 制度の根幹揺るがす(関連記事
  • 医療費伸び率水増し/小池議員 法案の前提崩れた(関連記事
  • 医療改悪法案に対する小池議員の反対討論(要旨)(関連記事
2006年6月13日(火)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 審議やればやるほど問題点が明らかになってきております。今日も新たな問題が幾つか浮かび上がってきていると思うんですが、私は、そもそもの発端である医療費の将来推計の問題を改めて取り上げたい。

 これは、今年三月の予算委員会の締め総でも私質問をいたしました。そのときの論点というのは、一人当たりの医療費の伸び率の設定が最新の数字ではなくて、五年以上前の数字を使っているじゃないかということで、そのことによって二〇二五年の医療費が過大推計になっているんではないかということを指摘したんですが、今日、今お配りしている資料の一枚目が、そのとき私が予算委員会で配付した資料、厚労省からもらった資料です。

 ところが、この資料の七十歳未満の一人当たり医療費の伸び率が、数字が間違っていたということを最近言い出しております。どういうことなのか、なぜ間違ったのか、説明してください。

政府参考人(水田邦雄君)

 ただいま委員が引用された資料でございますけれども、これは三月に厚生労働省が議員に対しお示しした資料でございます。これは、議員からのお求めにできるだけ回答すべく、毎年度の数値、平成十二度以降も毎年度の数値を提出させていただいたところでございます。

 これらの数値は、昨年四月の経済財政諮問会議におきまして、いわゆる医療費の自然増が必ずしも経済成長と連動するわけではないということをお示しするためにこの医療費の伸びを分解した資料を提出しておりまして、この資料を作成する過程で、医療費の伸びを様々な形で要因分析する必要が生じまして、それに応じて一定の前提で計算した結果が既に手元にあったということでありますので、お求めに応じてまとめて御提出をしたわけであります。

 しかし、この数値を用いた計算の手法ということにつきましては、これは繰り返し申し上げていますように、平成十二年度以降、介護保険制度の創設、あるいは平成十四年に健保の三割負担の導入と、医療費に大きな影響を与える制度改正が毎年のようにあったということから、医療費の自然体の伸び率を見るためにはこれらの精度が落ちるなどの問題があるということで、医療費の将来見通しの前提には使わなかったということでございまして、誤りということではございません。それぞれ目的に応じて制度が違うものを用いたということで、ただ、手元にあったものは、議員のお求めに応じて提出したということでございます。

小池晃君

 今の説明、全く意味不明ですよね。本当に一人当たり伸び率というのがいろんな数字を持っているということになるじゃないですか。その都度、都合のいい数字を使っているということになるわけですよ。

 じゃ、その将来推計に使ったものは何かということで出てきたのが二枚目のこの表なわけです。

 これは、一人当たり医療費の伸び率というのは、私は純粋にその年の一人当たりの医療費の伸び率を使っているのかと思ったらそうじゃなかったんですね。実はいろんな細工がしてあった。要するに、各種の補正をやっているわけです。補正は二つあって、一つは制度改定による補正で、もう一つは高齢化の影響による補正だというわけです。それを示しているのがこの二枚目の資料なんです。この結果、七十歳未満の一般の医療費の伸び率は二・一%であり、七十歳以上の高齢者の伸び率が三・二%になったというわけなんですが、ちょっとこれ細かく中身を見ていきたい。もう一枚めくっていただいて、制度改正の効果がどう出たのかということをこういうふうに厚労省、説明しているわけです。

 これは、九七年と九八年と制度改定の影響が出ていると言うんですが、それは後で議論をするとして、九七年。これ九七年の制度改定の計算の仕方が、平成九年の四月からが直後の期間とされているんですが、これ九七年の制度改定というのは九月にやっているんですね。何で九月に制度改定したのに四月からが直後の期間で、そういう補正を行うんでしょうか。

政府参考人(水田邦雄君)

 平成九年度、一九九七年度の制度改正におきまして、健保の二割負担の導入あるいは老人の一部負担の引上げなどが実施されたわけでございますけれども、確かに、委員御指摘のとおり、制度改正の施行は九月でございます。一般的には九月からその影響が出るものと考えられますが、法案提出時点におきましては平成九年五月施行を予定しておりまして、また、五月の施行を前提に制度改正の内容が早くから報道されていたことから、毎月の医療費の伸びの実績を観察していましたところ、明らかにこの四月以降、伸び率が低下しているわけであります。アナウンスメント効果ではないかと私ども言っておりますけれども、こういった効果が出た、それが実績上明らかになったということでございますので、平成九年度の制度改正につきまして、四月から制度改正の影響が出ていたために、この四月からの一年間の伸び率というものを基礎にして考えたということでございます。

小池晃君

 もうこれ本当奇妙な話だと思うんですね。アナウンス効果というのは、アナウンス効果があって、その前は普通は増えるんですよ。それがその制度改定の前から減っているんだと。

 これは本当に、私、恣意的な数字のマジックといいますか、普通だったら、九月の改定だから、九月から影響があったとして補正するのが筋なんです。これちゃんと九月から補正すれば、伸び率〇・三%低下するんです。すなわち、〇・三%水増しになっているんです。これは極めて恣意的だと私は思う。

 しかも、九八年にも、先ほどの二枚目の表にあるように、制度改定による影響って補正しているんですね。九八年、何の制度改定もないじゃないですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 先ほど御指摘がありましたとおり、平成九年度の制度改正、九月に実施されているわけでありまして、一般に、制度改正が実施された月からおおむね一年間その影響が出て、その後、従来の伸び率に戻るということは経験的に確認されているわけでありまして、そういう意味では、平成九年度の制度改正、九月実施でございますので、平成十年までこの改正の効果が、影響が及んでいるということで計算をしたものでございます。

小池晃君

 それもおかしいじゃないですか。だって、四月から影響出ているんだったら、一年だったら四月で終わりでしょう。何でそれが九八年まで行くんですか。これ論理がここでもまたすり替わっているわけですね。

 しかも、さらに、九九年の制度改定の影響は、それを見ますと、これは直後の期間は九九年の七月になっているんです。しかも、これはどうも入院外の医療費に限って補正したようなんですね。これ九七年の補正と全く手法が違いますが、これはなぜですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 平成十一年度、一九九九年度の制度改正におきましては、七月から高齢者の薬剤負担を国庫で肩代わりするという措置を実施したわけでございますけれども、これは外来、入院外医療費にしか影響がないことから、入院外医療費につきまして、直後の期間、平成十一年七月から平成十二年三月までの期間をいたしまして、その期間の対前年同月の伸び率は六・〇%。それから、参照期間は平成十年九月から平成十一年六月までの期間でございまして、その間伸びが四・一ということでございます。その差は一・九でございますけれども、外来、入院外の医療費は約半分でございますので、それに二分の一を掛ける。それから、七月施行による影響といたしまして、十二分の九というものを掛けまして〇・七%と、こういった影響率を算定したところでございます。

小池晃君

 私、本当にこれいい加減だと思います。補正するというんであれば、一定の原則に基づいて客観的な基準でやらなければ、ちょっと影響が出たかもしれないっていうんで適当に補正、それぞれによって全然補正の取り方が違うなんというのでは、私はこれは客観的な数字にならないというふうに申し上げたい。

 しかも、その上、四枚目を見ていただきたいんですが、高齢化の効果についてもこれは補正、これ控除って書いてあるんですね。要するに、高齢化による影響というのは、これはきちっと人口構成の推移から計算すると〇・六%になるわけです。それが〇・五%になっているんですね。これはなぜですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 医療費の将来見通しに用いる一人当たり医療費の伸び率の算定に当たりましては、実績率から、実績値から制度改正効果のほかに、年齢構成の高齢化による効果、いわゆる高齢化効果を補正しているところでございます。これは、将来に向けては将来推計人口を用いるために、いったん高齢化の影響を除くということが必要であるために、この控除の措置を取っているわけでございます。

 医療費の将来見通しで用いました平成七年から平成十一年度の一般の高齢化効果の具体的な計算につきましては、これは、平成六年度の国民医療費の年齢階級別の一人当たり診療費に平成六年度の年齢階級別の人口を乗じまして診療費の総額を算出しまして、さらに全体の人口で割りますと、一人当たり医療費十四・四三万円になるわけであります。この、同じく平成六年の国民医療費の年齢階級別一人当たり診療費に平成十一年度の年齢階級別の人口を乗じたところでございますが、これは結局、高齢化の影響がこの人口構成の変化に表れるわけであります。これを全体の人口で除しまして一人当たり医療費を算出すると、十四・八九万円になるわけであります。この結果、この五年間における年齢階級別の一人当たり診療費を固定した場合の一人当たり医療費の年当たり伸び率は〇・六%でございます。

 最後に、この国民医療費には老人保健制度に含まれる障害認定者の医療費が含まれておりまして、これにより数値が大きくなる影響があるために、〇・一%を控除して〇・五%としたところでございます。

小池晃君

 だから、本当にこれ補正に次ぐ補正、もう数字を本当にいじくっているんですね、厚労省は。私は、一人当たりの伸び率を伸ばしましたという説明を聞いて、それはもう単純な実際の数字を伸ばしているのかと思っていたらば、高齢化の補正というのもかなりいい加減な、もうその都度その都度違う仕組みであるし、制度改正の、それから高齢化の補正についても、今言った〇・一%というのを更に補正している。こんなことをやっているから結局厚労省自身も訳分かんなくなっているんじゃないですか、今。私、そういうふうにしか思えないんですよ、これ。

 大臣にお聞きしたいんですが、この一人当たり医療費の伸び率のこの補正のやり方、大臣、これ普通の人が聞いたら、余りにも恣意的だというふうに感じるんじゃないでしょうか。こういう前提に基づく医療費の将来推計というのが法案の根拠になっているとすれば、これは正当性がないということになるんじゃないですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 将来見通しについては、衆議院におきましても、参議院におきましてもいろんな議論をいただいておりますし、私どもも、二〇二五年の数字については正直言って目安。過去のいろんな予測も必ずしも当たっていないと、こういう御批判もいただいているところでございます。したがって、これは私どもは機械的に算出をさせていただきましたと、過去の一定期間の実績を取りながらやらせていただいた。一方で、若干の補正はいたしております。これは今局長がるる委員の御質問に答えて、御答弁を申し上げたとおりでございます。

 そういった意味では、私ども、将来、後期高齢者の数が今千二百万人から二千万人に増えていく。そういう時代を迎える中、大体このぐらいの見通しになるだろうということをお示しをさせていただいたところでございます。

小池晃君

 いや、私が言っているのは、機械的じゃないじゃないかと言っているんですよ。機械的だったらまだいいんですよ、きちっと一定のルールで自動的にやるようなものだったら。これ正に恣意的じゃないですか。九月の改定の影響が四月から出ていました、だから補正しました。これ機械的じゃないですよ、極めて恣意的ですよ。

 こういうやり方では、正に法案の正当性の根拠、崩れているじゃないかと、そう言っているんです。どうですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 まず、法案の正当性につきましては、先ほどから申し上げているとおり、将来見通しについては様々な御意見がございます。しかし、私どもは、こうした算式、数式によって出させていただきましたということを明確にいたしております。また一方で、後期高齢者の数が増える中でやはり医療費というものがある程度大きなものにならざるを得ない。これは国民の皆さん方にもよく御理解をいただいているところだろうと思っております。

 二番目の問題で、恣意的かと言われれば、るる御説明申し上げたように、若干の補正すべきものは補正させていただいておると、このように考えております。

小池晃君

 もう答えられないんだと思うんですが、これ、目安だ目安だというふうに、医療費伸びるんだって、そんな大ざっぱな議論されたら困るんですよ。これ二〇二五年の医療費というのは十兆も二十兆もこれ変わってくるわけですよ。しかも、目安だ目安だとおっしゃるけれども、与党の皆さんはこれを根拠にしているんですね。

 例えば四月十二日の公明新聞にはこうあるんです。改革の背景には、高齢化の急速な進行で増加の一途をたどる医療費の伸びをどう抑制するかという、先送りが許されない課題がある。厚生労働省の推計によると、現在三十一兆五千億円の国民医療費が、二〇二五年には六十五兆円にまで膨らむことが見込まれる。将来の変化を織り込んだ改革を実現することは、正に政治に課せられた責任であると。

 正に与党が、この六十五兆円という数字を正ににしきの御旗にして、これでは大変だろう、だから制度改定なんだと、だから痛みはしようがないんだと、そう宣伝しているじゃないですか。目安なんてものじゃないですよ、これは。あなた方が根拠にしていた数字なんじゃないですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 ですから、さんざん申し上げているとおり、様々な御議論をされている中でございますけど、私どもは、基本的にはこういうスタンスにおいて計算をさせていただきましたと、一部の補正は加えておりますと、こういう御説明をさせていただいております。

小池晃君

 全然説明になってないです。一部の補正じゃないです。極めて恣意的な、将来の医療費を大きく見せ掛けて、私は国民に負担増を強いるやり方は許されないということを申し上げます。

 続いて、出産手当金や傷病手当金の改定もあるので、そのことを聞きたい。

 これは、政管健保、健保組合のみならず、国公共済、地方共済、私学共済、併せて改正されるわけですが、この手当金が作られたのはいつか。その理由を簡単に説明してください。

政府参考人(水田邦雄君)

 出産手当金及び傷病手当金についてのお尋ねでございますけれども、大正十一年の健康保険法の制定当初から法定給付とされてございます。ただ、給付につきましては、療養の給付と同様に昭和二年一月から開始をされているものでございます。

 まず、このうち出産手当金につきましては、被保険者が出産の前後における一定期間内において労務に服さなかったことによる所得の喪失又は減少を補い、生活の保障を行うことを目的としているものでございます。

 また、傷病手当金につきましては、被保険者が疾病又は負傷の療養のため労務に服さなかったことによる所得の喪失又は減少を補い、生活の保障を行うことを目的としているものでございます。

小池晃君

 これ八十年ぶりの改定になるわけです。任意継続被保険者に手当金を支給しないということになる。今までは任意継続の被保険者と強制保険の被保険者は区別していませんでした。この理由はどういうことでしょう。

政府参考人(水田邦雄君)

 区別してなかった理由というのは明らかでございませんけれども、同じ被保険者であるということから支給していたものだと思います。

 ただ、内容を見てみますと、まず労務に服しなかったことによる所得の損失を補てんするという観点から今回見直しを行いまして、こういった任意継続被保険者に対しましては廃止をする等の措置をとったところでございます。

小池晃君

 その区別していなかった理由も分からないと。そういうときに今回の改定で任意継続分は廃止するというのは、私はこれは極めて無責任ではないかと思うんですね。なぜ給付を見直すのか、今説明ありましたけれども、私はそれは理由になってないというふうに思います。

 加えて、埋葬料のことについても聞きますが、これも一九二二年ですね、作られたのは。これ、なぜ報酬比例にしてきたのか、説明してください。

政府参考人(水田邦雄君)

 埋葬料につきましても、大正十一年の健康保険法の制定当初から法定給付とされているところでございます。

 この埋葬料、被保険者が死亡した場合にその埋葬に要する費用を保障いたしまして、遺族の救済ないし弔意を図ることを目的として創設されたものと承知してございます。

 その支給額につきましては、創設当時は必ずしも保険医療機関の整備が十分でない中で保険料負担はお願いするわけでありますので、こういった負担への理解が得られるよう、報酬比例の負担に対して埋葬料の額も報酬比例の支給としたものと考えられます。

 それから、あえて、先ほどちょっと傷病手当金、出産手当金のところで答弁漏れましたけれども、今回の全体の措置といたしましては、賞与を含めた水準とするために、賃金の六割相当額から三分の二に改善するということが一方でございます中で、合理的に説明が付く部分につきましては合理化をしたということでございます。

小池晃君

 任意継続の人には何の合理的な説明にも私ならないというふうに思います。

 今御説明ありましたが、八十年前の話じゃなくて、ずっと最近まで報酬比例で来たのを、これ標準報酬の一か月分を支払われていた埋葬料を今回定額の五万円にする、その理由はなぜですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 現金給付の見直し、今回行ったわけでございますけれども、これにつきましては、少子化対策の観点も踏まえました充実を図る一方で、給付の重点化を図るということがこの理由でございます。

 埋葬料につきましては、先ほど申し上げましたとおり、制度創設当初からの状況と異なりまして、保険医療機関の整備も進みまして保険料負担への理解も得られてきた一方で、埋葬に要する費用自体は必ずしも報酬に比例するものではないわけでございますので、これと連動させる必然性に乏しいことから定額化を図ることとしたものでございます。

 また、その金額につきましては、国民健康保険における葬祭料、葬祭費の平均額が約五万円である、そういったこと等を踏まえまして五万円とすることとしているわけでございます。

小池晃君

 国保とは運営主体も違えば保険料も違うわけで、全く五万円にする説明にはならないと思います。

 定額の五万円にした場合の財政効果、平成十五年度決算の支給実績は幾らで、五万円にするとどうなるんでしょうか。

政府参考人(水田邦雄君)

 平成十五年度、二〇〇三年度の被用者保険制度において支給された埋葬料等は、約二十二万件、四百三十億円でございます。

 この支給件数を基に、仮に埋葬料等一件当たり一律五万円の支給とした場合の総支給額を計算いたしますと約百九億円ということになります。

小池晃君

 だから、三百二十一億円も削減されるということになるんですね。これ、結構大きい問題だと私は思う。出産一時金増やしますよと大宣伝していますけれども、増額は結局手当金とか埋葬料の削減と引替えになっているわけです。

 これ、説明ペーパー一枚もないんですよ。私、まともにこういう問題説明もなしに、健保、共済含めて大改正、八十年ぶり。大臣、今のこういうやり方で説明責任果たしているというふうに言えるんですか。被保険者からの理解を得られるとお思いですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 是非御理解を賜りたいと思います。厳しい医療保険財政の下で、一方で、少子化に対応する給付ということで今回の取りまとめを行わさせていただきました。

 改めて申し上げますと、出産育児一時金について三十万円から三十五万円に引上げ、傷病手当金及び出産手当金について賞与を含めた水準とするため、賃金の六割相当額から三分の二相当額に引上げる。傷病手当金及び出産手当金について、傷病等により労務に服すことのできなくなった者に対する所得保障という性格を踏まえ、任意継続被保険者等に対する支給については廃止、埋葬料については、国保が今五万円でございましたので全体的にも定額五万円という形にさせていただいて、出産一時金、出産手当金等少子化の方向へこの保険料の使い道をこういう形にさせていただいたと。時代の一つの方向性でございますので、是非御理解を賜りたいと思います。

小池晃君

 医療費適正化の名で、葬儀やあるいは病気など暮らしの基本、一番深刻なときに係る給付も切り捨てる、安心料さえむしり取るというやり方は私は容認できないということを申し上げたいと思います。

 さらに、今回、医療費適正化が高齢者医療確保法の法の目的に盛り込まれる。医療費適正化基本方針を定め、メタボリックシンドローム対策など様々な事項、在院日数の短縮などを定めた医療費適正化計画ということを定めると。医療計画の中では、疾病別の年間総入院期間の短縮、在宅みとり率の向上、地域連携クリティカルパスの普及、こういった目標を新たに掲げると。数値目標を定めて、達成状況を都道府県にチェックさせて診療報酬にも反映する。余り問題があれば、厚生労働大臣が都道府県ごとの特例というペナルティーを課してまで入院日数を減らすという仕組みであります。

 大臣、この医療内容を充実させて、結果として在院日数が減少していく、医療費も減少する、これは歓迎すべきことだと私は思うんです。在院日数を減らすことは悪だと思いません。しかし手法として、例えば厚労省の医療課長がどんな発言しているかというと、ある医療団体との懇談で、これは家で死ねということだと、病院に連れてくるなと、とにかく病院には来ないでと思っているんだと、こういう発言もしている。

 私、この入院削減の、在院日数削減の数値目標を決め、在宅みとり率の向上も目標として掲げる、こういうやり方すれば、結局患者の追い出し競争ということになってくるし、そうしたやり方が国民の命や健康に私は重大な悪影響を与えるのは必至ではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 今回の医療制度改革の中で、諸外国と比べて極めて長い我が国の平均在院日数を短縮する、大きな目標であることは事実でございます。限られた医療資源を有効に活用し、効率的で質の高い医療を実現するためには、各医療機関が適切に役割を分担し、医療機関同士が連携して疾病の状況に応じた適切な医療を提供していく必要がある。

 このため、今般の改革においては、医療費適正化計画に基づき、生活習慣病対策や長期入院の是正などに取り組むと同時に、医療計画制度を見直し、脳卒中、がん、小児救急医療など事業ごとに地域における医療連携体制を構築し、それを医療計画に具体的に位置付けることといたしております。これにより、急性期から回復を経て在宅に戻るまで、治療が途中で中断することなく、切れ目のない医療提供体制を実現し、転院、退院後も考慮した適切な医療の確保が図られるように対応してまいりたいと考えております。

小池晃君

 いや、だからそうならないでしょうと言っているんですよ、こういうやり方したらば。機械的な数値目標を押し付けるというやり方をしたらば。そういうことを指摘しているんであります。

 続いて、基本健診、特定健診の問題、ちょっと聞きたいんですが、今回老健法に基づいて地方自治体が行ってきた基本健診が廃止されて特定健診ということになっていくというわけであります。これは、保険者に対して保険料を財源とする特定健診の実施を義務付ける。これは、保険というのは保険事故に対する給付というのは保険原理だと思うんですが、私はこれ保険原理を超えることになるんじゃないかと思うんですが、その点いかがですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 これは我が国の医療保険制度におきまして、従来から保健事業の推進によりまして疾病又は負傷の発生率が減少する、ひいては保険給付を適切なものにすることにつながるということで、保険者の財政の安定化も図られるということに基づきまして、健診等の保健事業を保険料を財源とする事業と位置付けて既に実施をしてきているわけでございます。

 今回の改正におきましては、保険者が行います保健事業のうち、生活習慣病に着目した健診、保健指導につきましては、加入者の健康増進に資するとともに医療費の適正化効果が期待されるということでございますので、取組を確実なものとするために努力義務から義務へと改めるところでございますけれども、医療保険におきまして、保健事業を行う基本的な考え方そのものは従来と何ら変わるところがございません。そういう意味で、社会保険の考え方にこれはのっとったものであると考えております。

小池晃君

 今のは説明になっていないと思いますね。この部分が保険原理を超えないという説明にはなっていないというふうに思います。

 加えて、加入者全員の健診の記録を長期間にわたって管理すると。これ、個人情報保護という観点からも極めて問題があるんじゃないかというふうに思うんですが、これ、全国レベルで健診情報を集中管理するようなことも考えているんでしょうか。

政府参考人(水田邦雄君)

 今回の改正におきまして、保険者に対しましてはデータの保存ということを義務付けることとしてございます。これは、保健指導のときに過去の健診データの推移を活用する、あるいは保健指導後の健診データの改善状況から見まして、保健指導を行う事業者の評価あるいは選定に活用すると、こういうことが考えられるわけでございます。

 一方、国におきましては、統計的な処理を行うためのデータの収集あるいは分析ということはあり得ると考えておりますけれども、個人を特定した記録の管理等を行うことは、これは考えてございません。

小池晃君

 といっても、私、非常にこれは危険なことになると思うんですね。統計のためだけだと言うけれども、情報としては行くわけですから。健康情報の国家管理は、私は国民は望んでいないというふうに思います。これも問題点だと思います。

 加えて、医療保険の加入者の特定健診の受診達成状況が悪い場合に、後期高齢者の医療費に充てられる特定保険料を高くすると。この理由は一体何ですか。両者の間にどのような因果関係があるんですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 委員御指摘のとおり、各保険者における特定健診等達成状況を踏まえまして、後期高齢者支援金の加算、減算の措置を講ずることとしてございますけれども、その理由は、保険者が糖尿病等の生活習慣病対策を講じますと、糖尿病や高血圧症、高脂血症等の発症が減少する。さらに、これによって脳卒中や心筋梗塞等の重症な疾患の発症も減少するということでございますけれども、こうした重症な疾患は後期高齢者において発症することが多く、後期高齢者の医療費の適正化につながることを踏まえまして、こうした保険者の努力を評価し、特定健診や特定保健指導の実施に向けたインセンティブとするためにこういった加減算の措置を設けているわけでございます。

小池晃君

 健診の達成状況を高めるということは大事なことだと思いますが、その結果が後期高齢者の時代に発症するというのはエビデンスがないというふうに思います。極めていい加減な話だというふうに思います。

 さらに、被用者保険に比べれば、市町村国保というのは健診率の引上げはなかなか困難ではないかというふうに思うんです。市町村国保の財政をこれは圧迫することになるんじゃないですか。

政府参考人(水田邦雄君)

 市町村国保が実施する健診につきましては、従来市町村が実施していた老人保健事業では国と都道府県が三分の一ずつ負担していたということでございますので、引き続き同様にこういった負担を行うことを考えているところでございます。

小池晃君

 いや、違うんです。

 私が聞いているのは、市町村国保と被用者保険を比べれば、健診、なかなか市町村国保はいろいろと困難な状況はあるだろうと。そういう中で、これが特定保険料の問題に跳ね返ってくれば国保財政を悪化させるんじゃないですかと聞いているんです。

政府参考人(水田邦雄君)

 その点は、正に健診費用を掛けることによって高齢者医療の負担を下げるという努力をしたところとしないところで差を付けるというのは、ある意味でそれはインセンティブという面でも理由があることだと考えております。その結果として、それはもちろん市町村国保の財政に影響はあるわけでございますけれども、その点は制度設計とも関連いたしますので、実施までに関係者の御意見も伺いながら具体的な設定については考えていきたいと、このように考えております。

小池晃君

 こういう重大な問題を考えていないということ自体が大問題ですよ。

 それから、健診の問題で日本経団連がこんなことを言っている。今年の四月十四日に、生活習慣病予防に係る特定健康診査・特定保健指導のアウトソースの推進に向けてという要望書です。これは、アウトソース先の能力・信頼性等に関する評価基準を早急に整備し公表すべき、施設や有資格者に関する基準が過重になるのはアウトソース先の自主性・多様性の阻害につながり望ましくないと、こう言っている。この記者会見で日本経団連の高橋秀夫産業本部長はこう言っているんですね。フィットネスクラブなどに健診機器を設置した上で医師がアドバイザーになるか立ち会うなどすれば、恐らく民間でもできるだろう。日本経団連の会員でもある電機メーカーなどが計測機器を開発すれば、医師がすべてを計測しなくても、保健師であってもよいのではないか、こんなことを言っているんですね。

 老健事業の基本健診というのは、これは医療機関かそれに準ずる施設で行われております。それは正に医師が、健診というのはこれは診断を伴う行為だからだというふうに思うんです。日本経団連言っているように、医者はアドバイザーとか立会い者でいいんだと、こういうことを検討しているんですか。

政府参考人(中島正治君)

 今回、医療保険者に義務付けられます特定健康診査の具体的な健診項目につきましては、現在、有識者や医療保険者にも御参加をいただいた検討会において検討をしていただいているところでございます。糖尿病のほか、高血圧症、高脂血症、さらに重症化した結果としての脳血管疾患や、あるいは心疾患等をスクリーニングできるような内容ということを予定しておりまして、現在の老人保健事業の基本健康診査におおむね該当する内容と考えております。

 医療保険者によります特定健康診査につきましては、従来の老人保健事業の基本健康診査と同様、採血などの医行為が含まれる内容となる予定でありまして、こうした特定健康診査の実施方法としましては、集団健診として市町村保健センターや職場の診療所等で実施する方法、あるいは医療機関に個別委託する方法などが考えられます。したがって、診療所のないフィットネスクラブにおいてこうした特定健康診査を実施するといったことは考えてはおらない状況でございます。

小池晃君

 さらに、この特定健診規制緩和、外注化で本当に営利企業のマーケットにするなんということは絶対に許されないことだということを申し上げておきたいというふうに思います。

 それから、昨日の公聴会でも大問題になりました介護療養病床の廃止と医療療養病床の大幅削減問題、これ、与党推薦の公述人からも懸念が表明されました。

 今回の診療報酬、七月から改定されるものですが、これは医療療養病床から介護施設などへの移行を強力に誘導する性格のものであります。一方で、介護保険の参酌標準の上限、ここに今現実としては病床数張り付いている。参酌標準変えない限り、老健施設への転換が事実上不可能な県が数多く存在している。これ大変な混乱になっていると思います。今回の法改正やあるいは診療報酬の改定、これを前にして廃業を決意すると、そういう病院も出てきている。

 老健局長、私、これは第三期の参酌標準、直ちに見直す、あるいは柔軟な運用を認める、手だてがなければこれは大変な混乱が生まれると思いますが、いかがですか。

政府参考人(磯部文雄君)

 第三期は十八年度から二十年度の三か年でございまして、介護保険事業につきましては各市町村がこの間のサービス見込み量や保険給付などを明らかにした計画を策定しまして、それに基づいて保険料を設定し終えたというところでございます。その中で各市町村は医療療養病床が介護施設等に転換する分の費用を見込んで介護保険料を設定しているわけでもございませんし、仮に現行計画の見込み量以上の転換を認めた場合には保険料が不足するということになりますので、私どもといたしましては第三期の途中で参酌標準を見直すことは考えておりません。

小池晃君

 私、今のは非常に無責任だと思うんですよ。だったらこんな法案出すなって言いたいですよ。だって、第三期の計画立てた、それがあるから変えられませんと。その計画立てた後でこんな法案出してくるからこういう混乱が生まれるんじゃないですか。こういう診療報酬改定やるから大混乱になるんじゃないですか。余りにも無責任だし、三期の計画があるから変えられません、これは余りに私は無謀、無理な議論であるというふうに言わざるを得ないというふうに思うんです。

 大臣、昨日の公聴会でもこの問題、本当にリアルな実態が出されて、特に北海道、根室、釧路の地域は、療養病床なくなるだけじゃなくて、それに伴ってやっぱり急性期医療にも大きな影響を与えてくるということがこれは報告をされました。地域医療が崩壊するんだと、そういう声まで上がっているわけです。これ、七月からなんですよ、もう診療報酬の改定は。これは、医療療養病床に入院している、医療区分一とされると、これは明らかに追い出すことを目的とした診療報酬になっている。一方で、こんな診療報酬で追い立てる仕組みだけはつくりながら、参酌標準がありますからそっちは変えられません、受皿はつくれませんと。これはあんまりじゃないですか。

 私、こういうやり方は本当に理不尽だし、この問題は与党推薦の公述人からも危惧が表明されている。私、参酌標準見直せないというのであれば、これは七月からの療養病床に係る診療報酬改定、これを見送る、見直すということがなければ、私は行政としても余りにも無責任な姿勢だと言われても仕方ないと思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 今回の診療報酬改定におきましては、平成十五年三月に閣議決定されました基本方針に沿って、医療療養病床について患者の医療の必要性等に応じた評価を導入することとし、具体的には、医療の必要性の高い患者に係る医療については評価を引き上げるとともに、医療の必要性の低い患者に係る医療については評価を引き下げたところでございます。

 こうした診療報酬体系の施行に当たっては、通常四月実施ということでございますけれども、医療機関への周知期間等を勘案して七月施行といたしたところでございます。

 なお、医療区分一の患者について医療療養病床で対応する場合にあっても、医療の必要性が低い患者が多く入院する病棟については、平成二十四年三月までの経過措置として、医師、看護職員の配置を薄くする場合でも診療報酬上の評価を下げずに算定できる介護保険移行準備病棟を認める予定であり、医療機関がコストを引き下げて入院医療を継続する選択肢を設けることとしたほか、さらに、このような措置を講じてもなお一時的な資金の不足が生じた場合には独立行政法人福祉医療機構の融資を受けることができることとするとの措置を講じることといたしております。

 いずれにせよ、六年掛かって療養病床の転換を図るわけでございますけれども、その経過期間の中でしっかり状況をウオッチしながらやってまいりたいと考えております。

小池晃君

 最初のときの答弁と全く同じで、一歩も進んでないんですよ、これだけ危惧が表明されていながら。

 大臣、六年掛かってというけれども、六年じゃないんですよ。この七月から改定になるんですよ。もうすぐに患者さんの側は追い出しが、そして病院の側は経営困難がということになる構造がもう七月にはできるんですよ。にもかかわらず六年あるからいいんだと、こういう議論じゃないでしょう。

 私、これだけ問題がいろいろ出されているのに、最初に言った答弁を一歩も変えない、このまま通してくださいよ、これ余りにも硬直した姿勢じゃないですか。こんなやり方で法案通してくれなんていうのは余りにも、私、国民に対して無責任過ぎるというふうに思いますが、大臣、いかがですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 これは衆議院でも御答弁させていただき、参議院でも御答弁させていただいてまいりました。また、一方で、先ほど申し上げたように、介護保険移行準備病棟という一つの制度も設けながらやってまいりたいと思っておりますので、あとは一つ一つの事例を我々丹念に見ながら対応してまいりたいと思っております。

小池晃君

 事例ができて追い出されてからでは遅いんですよ。この法律ができればそういう人が出てくるんですよ。その一人一人にとってみれば、それは人生の問題であり、命の問題になるんですよ。そういう無責任な発言は私許されないと思う。追い込む手だてだけはつくりながら、それを救う手だてすら取ろうとしない。いろいろとおっしゃったことでは救いにならないんですよ。これは余りにも私、無責任過ぎるということを指摘しておきます。こういうやり方で法案を通すなんということは断じて許されないというふうに思いますね。

 がん対策の問題を最後に取り上げます。

 がん対策が言われております。これは非常に大事なことだと思うんですが、これはがん検診の助成が九八年に地方の裁量を広げるということで一般交付金になった。これ以降、検診の受診率低下しているんです。東京では、二十三区中十四区、三十市町村中二十二、六八%の自治体ががん検診を有料化しています。それ以外も含めて大多数が有料化を検討している。有料化されると受診率下がるというのはどこでも出ています。がん検診の受診率は、この間全体としては非常に伸びていない実態がある。だとすれば、私、この一般財源化ということを見直す必要があるのではないかと思うんですね。

 総務省にがん検診の交付金の交付額を聞きますと、九八年以来ずっと六百四十億円と、変わらないんです。これでは私、検診率を向上させようといったって無理があるというふうに思うんです。こういうときに自治体の責任だということだけで済ませていいのかということが問われているんじゃないですか。老健局長、このがん検診の問題について、一般財源化について見直す必要があるんじゃないですか。

政府参考人(磯部文雄君)

 費用負担のお話がございましたけれども、元々自治体の大部分は一般財源化の前から自己負担を徴収していたと承知しております。そして、十年のときのがん検診の一般財源化を見直せというお話でございますが、当時は地方分権推進法などが施行されるなど、地方分権の大きな流れの中で、この事業を平成十年時点において、既に市町村の事業として同化定着していたということを踏まえまして一般財源化されたところでございます。現在も引き続きこうしたやり方で進めていくということとしております。

小池晃君

 千葉県の船橋市は、二〇〇二年からがん検診が有料化されて一検査当たり五百円掛かるようになったそうです。年金暮らしの女性は、今まで無料だったので気軽に受けられたが、肺がん、大腸がん、子宮がん二種、マンモグラフィー、五つで二千五百円掛かる、毎回検診のたびにどうしようかと迷ってしまうというふうにおっしゃっています。

 日本総合研究所の「サステイナブルな医療制度の構築に向けて」という医療費の試算では、各都道府県のがん検診の受診率が上位五県平均レベルにまで上昇すれば、老人医療費を一一%抑制できるという試算もあるんですね。これはもう言うまでもなく、病状が深刻になってからでなくて、早期治療する方が財政的に見ても少なくて済む。これは当然の話だと思うんです。

 地方分権だ何だというふうにおっしゃるけれども、私、がん対策だということをこれだけ言い、国の国家的事業なんだ、大臣、何度も言っていますよね、これ、がん対策重要なんだと。だとすれば、国家的課題とまで言うのであれば、やはりこの検診の受診率を引き上げるためにも補助の在り方を見直す必要があるんじゃないですか。少なくとも私は一般財源化によって有料化が広がっているという実態についてこれ調査をする。先ほど局長が前から有料でやっているところ多かったと言うけれども、実態調査なんかやられていないんですよ。だから、この一般財源化でどういう事態が起こっているのかちゃんと調査する。大臣、このぐらいのことやるべきじゃないですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 まず、様々な政策、極めて重要な政策を進めていくときであっても、すべてそれを国が予算でやっていくという時代では私はないと思います。やはり地方を信用しながらやっていかなければならない。国、県、市町村が重層的に役割を担いながらやっていくと。そういう意味では、私は一般財源化はいいことであったと思います。そして、先ほど委員が示されたように、がんの検診をすることによって早く治療ができ、そして結果として医療費が適正化されるということをやはり都道府県、市町村に御理解いただくように我々も一層努力をしてまいりたいと思っております。

 一方で、がん対策基本法が、今日の本会議で衆議院を通過いたしました。与野党で御議論をいただいて、そして全会一致、委員長提案で衆議院を通過いたしたところでございます。参議院でも御議論をいただいて、どうぞ成立をお願い申し上げたいと思います。

 その中におきましても、やはり検診の重要性というものを改めて取り上げられておりますので、それに基づきながら、私どもは来年、がん対策基本法に基づいた新たな計画というものを書いていくことになっております。その中においてがん検診というものをどういう位置付けにしていくか、もう一度しっかり議論をしながら積み上げてまいりたいと、このように思っております。その中で都道府県や市町村がどういう理解をされているか、委員の御指摘の問題についてもしっかり議論をし、調べて次の対応を書いてまいりたいと、このように思います。

小池晃君

 一般財源化は正しいというのは私は驚きであります。これ検診が増えれば増えるほど国の補助金も増えるという仕組みと、幾ら、受診者が増えれば自治体の持ち出しが増えるという仕組みは、自治体にとってみれば天と地ほども違いますよ。だからこそこれだけ有料化が広がっているんです。がん対策が必要だと言いながらこういう制度を見直そうとはしないというのは、私はこれでは政府の言うがん対策も絵にかいたもちになりかねないということを指摘しておきたいというふうに思います。

 まだまだ法案には多数の問題点があるということが今日の質問でも出てきているというふうに思いますので、引き続き徹底審議を求めます。

 以上で質問を終わります。

【反対討論】
小池晃君

 私は、日本共産党を代表して、健康保険法及び医療法の一部改正案に対し、反対の討論を行います。

 委員会の運営というのは全体の合意で行うべきものであり、それは議会制民主主義の最低限のルールであるというふうに思います。多数をもって押し切るというやり方は、議会の自殺行為であるというふうに言わざるを得ません。

 今日の審議でも問題点は次々と出されました。理事会では、与党の理事からも欠点のある法案だという発言もありました。そういう中で多数で強行するということは本当に許し難いことで、怒りを込めて私、抗議をしたいというふうに思います。

 先ほど与党の議員は、世界一の医療だというふうに誇られましたが、その医療をつくったのは自民党でも公明党でもありません。それをつくったのは患者さんであり、医療従事者であり、国民であります。正にその努力をぶち壊そうとしているのがこの法案であり、このままでは子や孫にぼろぼろになった医療制度、ぼろぼろになった医療保険制度を引き継ぐことになってしまうのではないでしょうか。

 本法案は、具体的には高齢者や重症患者に情け容赦ない負担を強いる、そして後期高齢者医療制度という差別医療の仕組み、療養病床の大幅削減など、二十一世紀の日本の医療を大きくゆがめるものであります。さらに、混合診療の拡大によって、保険証一枚あればだれでもどんな病気でも診てもらえる日本の医療制度の根幹を揺るがす法案であると言わざるを得ません。

 多くの問題点が指摘されたにもかかわらず、いまだに、一度たりとも政府から納得の得られる説明はされていないと思います。与党の議員の質問に対してもまともな答弁はなかった。最後まで納得のいく説明はなかったというふうに言わざるを得ません。このような段階で審議を打ち切り、採決を行うことは、繰り返しますが、国会の責任放棄以外の何物でもないということを申し上げたいと思います。

 本法案に反対する第一の理由は、患者、高齢者の負担増の深刻さです。

 今年度の患者負担増は、平年度ベースで千七百億円であり、今回の改悪法案に盛り込まれた負担増がすべて実現される、実施される〇八年度には二千九百億円に上ります。七十歳から七十四歳までの患者負担の一割から二割への引上げ分だけで年間千二百億円、一人当たり年間二万円もの負担増です。

 療養病床の居住費、食費の徴収、高額療養費の自己負担額の引上げも、入院患者、重症患者に重くのし掛かるもので到底容認できません。

 医療費の負担増は、受診抑制を招き、深刻な健康被害をもたらします。しかし、川崎厚生労働大臣は、必要な医療は妨げられないと繰り返すだけで、その根拠は全く示されませんでした。

 反対する第二の理由は、七十五歳以上の高齢者を対象とした後期高齢者医療制度の創設が、保険料負担増とともに、高齢者への差別医療をもたらすものであるからです。

 新制度では、七十五歳以上のすべての高齢者から保険料を徴収し、滞納者から保険証を取り上げることまで法定化しています。現役世代の保険料を現役向けと高齢者向けに明示的に区分することと相まって、介護保険と同様の給付抑制につながるものです。

 しかも、後期高齢者の心身の特性等にふさわしい医療が提供できるよう、新たな診療報酬体系を構築するとしています。この点について、川崎大臣が差別医療となる可能性を否定しなかったことも重大です。

 後期高齢者医療制度の創設は、六十五歳以上の透析患者などの障害者、あるいは高齢者への医療給付費を抑制し、憲法違反の差別医療をもたらすものであり、断じて認めることはできません。

 反対の第三の理由は、療養病床を六年間で二十三万床も削減することが地域の医療と介護に深刻な打撃となることです。

 先ほど切れ目なく医療を提供するとおっしゃいましたが、正に切れ目だらけ、ばらばらに地域の医療が切断されてしまうのではないでしょうか。

 先取りとして七月からの診療報酬の改定で、療養病床の入院患者の半数を医療の必要性が低いと決め付けて、点数を大幅に引き下げ、文字どおり病院から追い出そうとしており、事態は切迫しております。

 厚労省は、療養病床に入院している人の半分以上に医療の必要性がないと言いますが、審議を通じてその根拠に合理性がないことも明らかになりました。これは与党の議員も指摘をしています。

 療養病床の削減について、昨日の北海道での地方公聴会で、与党推薦の公述人からも、病床が更に少なくなるのは大変な苦しみだ、病床が廃止されても在宅に戻れない人が多いのが現実だ、まず受皿づくりだと懸念の声が出されました。こうした声を直接聞いておきながら法案を通してしまう、これこそ正に無責任なのではないでしょうか。

 反対の第四の理由は、混合診療の本格的導入によって保険の利かない医療が拡大し、所得の格差が治療の格差、命の格差となる危険を一層拡大させるからです。

 保険の利く診療と保険の利かない診療を併用する混合診療は、必要な医療はすべて保険で行うという公的保険の大原則を崩すものです。

 しかも、この背景には、自分たちの保険料負担を軽減させたいという日本の大企業、財界と、日本の医療を新たなもうけ口にしようとねらっているアメリカの保険会社、医療業界の強い要求があることは、大臣も審議の中で米国からいろいろ言ってきたことは事実と認めたとおりであります。なぜ日米の保険会社や医療産業のもうけのために国民の命や健康、国民皆保険制度が犠牲にならなければならないのか、余りにも理不尽であります。

 反対理由の第五は、健診の在り方を大きく変質させるからです。

 現在は老人保健制度に基づき、市町村が住民の健診に責任を持っていますが、この制度をなくし、健保組合など各保険者に健診が義務付けられます。健診を積極的に行うこと自体は必要ですが、市町村の責任をなくすことは公衆衛生の観点から見て問題です。

 健診の実施率や効果に応じて七十五歳以上の後期高齢者制度に出す負担金の額に格差を付ける、健診率の低いところはペナルティーとして増額する、これは全く筋違いの話であり、行く行くは、健診を受けなければ病気になったのは自己責任だと言われ、保険で見ないということにもつながりかねません。

 さらに、政管健保については、保険料を引き上げる仕組みを盛り込んだ上、強制保険である政管健保を、公法人と称する民間に運営をゆだねることは、国の責任の後退にほかなりません。このようなやり方は、社会保険庁の改革とは無縁であり、容認できないということも申し上げておきたいと思います。

 法案の前提となる医療費の将来推計についても、医療費の伸び率に極めて恣意的な補正が行われており、伸び率の期間の取り方も併せて過大な推計であると言わざるを得ません。法案の前提が完全に崩れていると申し上げたいと思います。

 最後に、すべての国民は貧富にかかわりなく医療を受ける権利を持っており、国はその権利を保障する義務を負うべきです。そのためにも、窓口負担の引上げをやめ、引き下げる。保険診療が可能な医療を狭めるのではなく、充実させる。削減されてきた国庫負担を計画的に元に戻す。この立場に立って、日本の医療を立て直すことこそ今強く求められているということを指摘をして、私の反対討論を終わります。

ページトップへ
リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。 © 2001-2010 Japanese Communist Party, Akira Koike, all rights reserved.