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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

164通常国会 参議院厚生労働委員会(男女雇用機会均等法改正案質疑・裁決)

  • 均等法改正案を可決/「雇用区分」で差別温存/参院厚労委で小池議員指摘/厚労相「大きな課題」(関連記事
2006年4月27日(木)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 最初に、おとといの委員会で、社会保険診療報酬支払基金で行われている差別の問題取り上げまして、昇進の際の全国転勤要件というのを問題にしました。これは、募集、採用の際の全国転勤要件については労働政策審議会で議論されたが、昇進の際の全国転勤要件については審議会では議論されてないということが答弁で明らかになりました。

 そこでお聞きしますが、男女雇用機会均等政策研究会の報告書にもこの事項は盛り込まれておりません。研究会でも議論はやってないんでしょうか。

政府参考人(北井久美子君)

 男女雇用機会均等政策研究会におきましても、御指摘の昇進時の全国転勤要件については議論がなされておりません。

小池晃君

 前回、私お示ししましたように、支払基金では、実質的に男女格差を拡大することになる措置として、昇進における全国転勤要件を、これを係長まで逆に拡大しようとしております。この場合、もしも何らかの合理性があったとしても、より男女間の格差を生じないような基準にしていくというのが私は均等法の目的であるというふうに考えております。

 局長にお聞きしますが、支払基金で起こっているような事例のように、明らかに男女間格差を生じるということが予想されるにもかかわらずこのような基準が新たに導入される、こうしたことを漫然と許していいんでしょうか。

政府参考人(北井久美子君)

 先日もお答えを申し上げましたが、個別企業についてのコメントは、私ども詳細を承知しておりませんので差し控えさせていただきたいと思っております。

 なお、一般的に申し上げますと、昇進時に転勤要件を課すということについてはそれぞれのケースがあると思っておりまして、場合によっては合理的理由があるケースがあるわけでございます。すべての場合に許してはならないとか、望ましくないということではないと思っております。

小池晃君

 しかし、いずれにしても議論は全然されてない問題だったということだったんですが。

 大臣にお聞きをしたいんですけれども、この間接差別の三つの一つに募集、採用時の全国転勤要件は盛り込まれましたが、昇進における全国転勤要件は、これ入っていない。これは、労働政策審議会でも議論がなかったということでありました。同時に、答弁として、そのことは国会での議論も踏まえて労働政策審議会で改めて議論した上で省令を定めていくという答弁もございました。これからも企業側が、昇進における全国転勤要件というのは、これ三つに入ってないから、三類型にないからこれはいいんだということでこれ導入していけば、私は、男女格差が拡大することを、これ予想されることではないかというふうに思っておりますし、現実にこういう格差拡大する措置として行われようとしている企業も、団体もございます。厚生労働省は、そうした相談があった場合には、できるだけそういうことが生じないような措置を行うように指導しているというふうにも私聞いているわけであります。

 大臣、この三つの中に、これ募集、採用時だけではなくて、昇進における全国転勤要件も間接差別の三つの中の一つとして省令に取り入れてスタートさせる、これを判断すべきじゃないだろうか。まあすべてとは言わない、これ、せめてこのくらいやったらどうなんだという話ですが、大臣、これは決断できませんか。

国務大臣(川崎二郎君)

 今局長の方から、一般的に言うと、昇進時に転勤要件を課すことについては、当該要件を課すことについての合理的理由があるときにまで望ましくないと言えるものではないという御答弁をさしていただきました。

 そういった意味で、昇進時の全国転勤要件については間接差別の対象にすべきとの意見もこれまで、小池委員からはこれで二回目、聞かしていただいておりますけれども、これまでなく、また、厚生労働省としても問題となるべき事案をこれまで把握してこなかったことから、改正法成立後に定める厚生労働省令において規定することは現在予定いたしておりません。

 なお、今後の厚生労働省令の見直しに当たり、検討の対象から初めから除外されるというものではないと考えております。

小池晃君

 これはせめて私はこのくらいはやるべきだというふうに思いますので、審議会で是非検討して、できるだけ早くこうしたものも取り入れるということは、せめてそのぐらいは検討すべきだというふうに思っております。

 続いて、雇用管理区分の問題ですが、性差別をめぐる裁判として住友電工の裁判があります。昨日の参考人質疑では原告にもおいでいただいたわけです。これは、大企業における採用時の雇用管理区分による男女差別が争われたわけで、雇用管理区分の考え方を明記した指針の妥当性についても争点になりました。

 これ、振り返ると、当時の大阪婦人少年室長は、結果として高卒男子と相当な格差が生じていたと、このことは認定しながら、その格差は、高卒男子は幹部候補要員として、高卒女子は定型的、補助的業務に従事する社員として採用されたと。この雇用管理区分ごとに処遇、研修などが行われたために生じた格差である、だから均等法上も指針上も違法な行為には該当しないとして調停を行わなかったわけであります。つまり、当時の大阪婦人少年室長は、指針で雇用管理区分の考え方が明記されたから、言わば均等法上の権限行使しなかったということになるんだと思います。

 この訴訟は、もう御存じのように、様々な経緯はありましたが、原告の請求をほぼ認める形で、国、住友電工と訴訟上の和解が行われた。この和解の中で、厚生労働大臣、約束しているわけですね。雇用管理区分が異なる場合であっても、それが実質的に性別による雇用管理になっていないかについても十分注意を払い、調停の積極的かつ適正な実施に努めるものとすると約束してきた。ところが、大臣は、先日の本会議答弁でも、雇用管理区分について改める必要がないという立場に依然として立っておられる。住友電工事件で門前払いの根拠として使われた雇用管理区分の考えを明記した指針は今も当時も変わっていない。これでいいのかということが問題だと私は思うんです。

 私は、住友電工裁判の和解で、大臣、当時の大臣が約束したように、実質的に性別による雇用管理になっていないかについても十分に注意を払うと。というのであれば、これは、均等法の指針から雇用管理区分、これは削除すべきではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 性差別の有無の判断に当たっては、比較の対象を定めることが必要であり、差別を受けたとされる者と同様の条件にある別の性の者を比較の対象とすることにしております。その際、我が国の企業においては長期的な視点から人事制度が設計、運用されており、職種や資格等による区分ごとに人材育成や処遇等の仕組みを設定するという雇用管理が広く行われることにかんがみ、雇用管理区分ごとに比較することとしております。したがって、雇用管理区分の考え方を廃止することは適当ではないというふうに考えております。

 この住友電気工業事件に係る和解につきましても、現行指針の解釈を確認的に指摘しているものであり、厚生労働省に対して特段な新たな措置を求めているものではないという私どもは解釈をいたしております。

小池晃君

 いや、それはおかしいんじゃないですか。これは問題となって、これは十分注意を払うということを約束しているわけですね。局長、このままでいいって言うんですか。これ、指針から削除できないと、もうこのままだと、そういうふうにおっしゃるんですか。

政府参考人(北井久美子君)

 雇用管理区分という考え方を、そのものを廃止することは適当でないというふうに考えております。しかし、雇用管理区分が同一か否かということについては、雇用管理区分の単なる名称といった形式だけでなくて、労働者の職務の内容や処遇などの企業の雇用管理の実態に即して見なければいけないというふうに考えております。したがって、実態を見た上で、同一の雇用管理区分とされた場合は均等法上の性差別として取り扱うことになるわけでございます。

 指針について雇用管理区分の解釈を出しておりますけれども、差別か否かの判断が、単に形式のみならず、企業の実態に即して行われるものであることをもっと、もう少し分かりやすく示すように規定ぶりを見直したいというふうに考えております。

小池晃君

 分かりやすく書き直すというお話ありましたが、実質的な性的差別は駄目だと、そうなっていないかについても十分注意を払うというふうに約束しながら、指針に雇用管理区分は均等法上違法でないということを書き込んでしまうと、雇用管理区分という形式さえ整えば、これ合理性、合法性の推定が働くということになってしまうんじゃないでしょうか。だからこそ、この削除が必要だというふうに申し上げているわけであります。

 もう一度聞きたいんですが、政府が言うように、これは削除できないと、雇用管理区分を指針に書き込める、こういうふうになれば、合理性、合法性の推定は避けられないということになってしまうんじゃないですか。

政府参考人(北井久美子君)

 繰り返しの御答弁になるかもしれませんけれども、雇用管理区分が同一かどうかということについては、やはり単に名称で分けましたということだけを信用するのではなくて、本当にその職務内容や処遇などについて、同一区分に属さない労働者との間に客観的、合理的な違いが存在しているかどうかについて判断をしていくことが必要でございますから、そうしたことで、企業の雇用管理の実態を見て、即して行うということをしっかり周知をしていきたいというふうに思っております。

小池晃君

 同じお答えなんですが、それではやはり問題は解決しないと思うんですね。雇用管理区分ということが明記されている限り、指針に、実際にはそうならないというふうに思うんです。

 引き続き、ちょっと具体例で取り上げたいと思うんですが、男女差別の実態の実例ですが、名古屋銀行にお勤めの、もう実名を挙げて結構だというふうに本人がおっしゃっているんで紹介しますが、坂喜代子さんという方の場合です。名古屋銀行に二十七年間パートで働いてこられた方なんです。名古屋銀行というのは平均勤続が十七年ということですから非常に長いんです。就職当時の時給は五百円だった。それが二十七年間働いて今八百七十円。二十七年間で三百七十円しか上がっていないんですね。

 銀行のパートというのはこれは経験者が非常に多くて、補助的業務というよりは、正に即戦力の基幹労働者だと。行員が退職した後、全部パートとか派遣で埋めているというんですよ。実際のお仕事をお聞きを直接しましたけれども、ATMの管理スケジュールとか金融庁の通達を配付するといった正に男性の係長と同等の仕事をやっていて、名古屋銀行そのものが団体交渉の席上で正社員とパートの仕事上の区別はないと言っているんですね。

 ところが、賃金の区別はどうか。この方は、正社員で自分と全く同じ学歴で同じ年齢の男性の月収、私も見せていただきました給与明細、その方は五十六万六千八十四円です。片やこの方は労働時間が一日一時間十五分だけしか短くない。給与は八万三千五百二十円。片や正社員の方はボーナス、賞与は八十九万六千四百円。これに対して賞与は一万八千円なんです。この名古屋銀行は、高年齢者の雇用法で、シニアスタッフ、六十歳定年のシニアスタッフ、これを始めましたが、この方でも月収十八万円。自分は半分以下だというふうにおっしゃっています。

 そして、この名古屋銀行ではパートと呼ばれる人の中に男性は一人もいない。全員女性だということであります。まあ銀行ですから、銀行のパートというのはほとんどそういう実態であります。

 福利厚生面でも圧倒的な差があって、忌引もない、ミニ休暇制度もない、労災時の二〇%プラス制度もないと。

 そこに新たにこんな制度を導入しようとしているんですね。一昨年から、パート職員に呼び掛けて、フルタイムパート制度というのをつくりますと。フルタイムパート制度という、私、本当に矛盾した話ではないかと思うんですが、このフルタイムパート制度というのを導入されました。時給は千円だと、年間労働時間千七百五十時間、年収二百万円であります。このフルタイムパートになると勤務時間は正社員と比べてわずか十五分短いだけ、正社員が八時四十五分から始まるのがフルタイムパートは九時から始まる、そこしか違わない、残業もあるんです。九時から五時まで働いて、正社員の年収の三分の一から四分の一、退職金もない。雇用の継続更新を意識しながら、いつ打ち切られるかということを意識しながら働かなくてはならない、こういう実態なんですね。

 これ、実例御紹介しましたが、局長にお聞きしますけれども、このフルタイムパート募集要項というのは、これは明らかに女性だけを対象としたものです。これは明らかに法律違反だと思いますが、いかがですか。

政府参考人(北井久美子君)

 いわゆるフルタイムパートについて女性のみを募集、採用の対象とするということであれば、これは均等法第五条に違反するものでございます。

小池晃君

 私は労基法四条にも違反するんじゃないかというふうに思うんですが。

 これは非常に重大な問題なんで調査していただきたいと思いますが、いかがですか。

政府参考人(北井久美子君)

 個別の案件でございますが、少し調べさせていただきたいと思います。

小池晃君

 少しじゃなくて、しっかり調べていただきたいと思います。

 この名古屋銀行だけの問題じゃなくて、この名古屋銀行がこのフルタイムパート制度って導入したらば、結構広がってきているんです、百五銀行、千葉興銀。金融の職場に年収二百万円程度のフルタイムパート制度というのが広がってきているというふうにお聞きしています。

 私、大臣にお聞きしたいんですが、おとといの質疑でも大臣は、パート労働の女性が一日それこそ八時間、正社員と変わらない勤務しているのに余りにも賃金に格差があるじゃないですかというようなところは、私どもしっかりやらなきゃいけないというふうに答弁されました。正に私が紹介した事例というのは、正に大臣が何とかしなきゃいけないという事例ではないかと思うんですが、こういう実態が広がってきているということについてどのように受け止めていらっしゃいますか。

国務大臣(川崎二郎君)

 パートで働く人たちの中で、いわゆる短時間で労働されておる方々が八十数%でしょうか、一方で、今御指摘いただいたように、もう正規の職員と変わらない形で働いているという人が十数%。特に、この正規の職員と変わらない形で働いていながら大きな差が付いているという問題については、先ほどから御答弁させていただいておりますとおり、私ども、大きな課題であるという認識の下でいろんな勉強をさせていただいております。

 考え方がまとまれば、国会でいろいろ私どもの方針をお示ししたいと思いますし、場合によっては御審議いただかなければならないだろうと。また、そう長い時間を掛けられる問題ではないという認識をいたしているところでございます。

小池晃君

 私は、こういう差別というのは、現場では一般論ではなくて正に具体的な事案としてこういう形で起こっているというふうに思いますし、一般論だけではなくて、やっぱりこうした具体的な差別というのが本当になくなるというために法律はどうあるべきかということが今問われているんだろうというふうに思うんです。

 岡谷鋼機のことは先ほど円委員からも御紹介ありましたけれども、例えばちょっと紹介すると、ここも裁判あったわけですが、これ元々の裁判で問われたのは男女差別、本人の意思確認なく女性を一般職、男性を総合職、こういう雇用管理区分を使った差別問題でした。ここで何が起こっているかというと、今年四月からは、事務職は契約社員のみの採用となったと、原則三年契約、延長最大二回、六年であります。現在、事務職は全員女性なんです。

 大臣、この間接差別というのは、正に手を替え品を替え、もう時代の変遷とともに法と指針の網をかいくぐり、もうどんどんどんどん広がってきているというのが実態ではないか。新たな若年定年制まで持ち込まれてきていると。

 いずれにしても、雇用管理区分というこういう仕組みを利用した人事が非常に複雑になって、新たな男女間の賃金格差がいろんな形で生み出されていると。パートの問題もその一つだというふうに思うんです。私は、この際やはり、こういったものを生み出しているやはり土壌として雇用管理区分という仕組みが、企業側は最大限活用しているんです。これ是非、これ削除すると。これはやはり維持を改めるという方向に打ち出す必要があるのではないかと思いますが、大臣、いかがですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 このことについては繰り返し御答弁させていただいております。

 現時点で雇用管理区分を廃止することは適当でないと考えております。なお、雇用管理区分が同一か否かについては雇用管理区分の名称といった形式のみならず、労働者の職務内容や処遇等の企業の雇用管理の実態に即して行うものでございます。したがって、実態を見た上で、同一の雇用管理区分とされた場合は均等法上の性差別として取り扱うものと考えております。また、指針については、差別であるか否かの判断が単に形式のみならず企業の実態に即して行われるものであることを、ある旨を分かりやすく示す、規定ぶりを見直すことを予定いたしております。

 いずれにせよ、一つは、例えばフルタイムパートを女性についてのみということは、もう先ほどお答え申し上げたように、これは男女雇用機会均等法第五条に違反すると。また、賃金についての差別ということなら労働基準法第四条について規定されております。委員の方からも労働基準法第四条じゃないかという御指摘もありましたように、そうした側面からしっかり我々もチェックを、チェックする機関でございますから、チェックしていかなきゃならぬという思いはいたしております。

 雇用管理区分については、再三のお尋ねでございますけれども、我々としてはこうした見解でございますので、御理解をお願い申し上げます。

小池晃君

 しかし、そうした制度がやっぱり現状として今こういう事態を生み出していることは、これは事実なわけですから、やはり私はこれを改める必要がある。均等法の指針から雇用管理区分を削除する。それから、均等法では間接差別を限定列挙ではなくて指針で例示するということを改めて求めたいというふうに思います。

 引き続き、ポジティブアクションの義務化の問題をお聞きしたいんですが、今取り上げました住友電工事件の和解では、これもあるんですね、実質的な男女の均等確保を実現し、女性の能力を最大限に生かすためには、制度上の男女均等が確保されるだけでなく、事実上生じている男女労働者間の格差を解消するための企業の積極的取組が不可欠であるというふうに和解でこれは述べているわけであります。

 ポジティブアクションの積極的推進を国が約束しているんです。しかし、本改正案では努力義務でさえないわけです。なぜこれを義務化しないのか。

国務大臣(川崎二郎君)

 これは先ほどの御審議にも出ましたけれども、諸外国の例を見ますと二通りだろうと、義務化をしているところ、それからやはり各会社の努力ということでやっているところ。その中で私ども、外部から強制されて形式だけ整えたとしても実効性のある改善が本当に見込まれるのかと、こんな議論もいたしまして、今回の改正法案においては義務化をせず、事業主の自主性による枠組みを維持しております。その上で、ポジティブアクションの取組状況を事業主が自主的に公表することを国が援助することとしており、これによりポジティブアクションを一層推進することができると考えております。

 今現在でなかなか、企業全体がこれについてしっかりやるという風土が残念ながら生まれていない、その中で一挙に強制に持っていけという御議論があることも承知しておりますけれども、私どもはまずその努力をさせていただきたいと、このように思っております。

小池晃君

 いや、そういう風土がないというときに自主性に任せるというのは私は矛盾していると思うんですよ。これは女性雇用管理基本調査、〇三年度調査、六割の企業は、ポジティブアクションを分からない、予定はないというふうに答えているわけであります。正にその周知や位置付けが十分伝わっていないのに、これは事業主の自主性に任せたって、局長ね、これうまくいくんですか。何でこれで、こんな状況なのに、全く風土もないというような事態の中で、どうしてこれで進むのか。正に全企業が取り組むべき課題であるということを明確にするために義務化が必要なんじゃないですか。

政府参考人(北井久美子君)

 義務的な手法を取るか奨励的手法を取るか、いろいろ検討はしてきたわけでございますが、今回の改正法案におきましては義務化ということにはならずに、事業主の自主性による枠組みということを維持したわけでございます。

 労働政策審議会の議論におきましても、ポジティブアクションの推進策に当たりましては、やはり使用者側の委員からは義務化について大変強い反対意見もございました。なかなか現状におきましては義務付けというところには今回は行かなかったということでございます。

小池晃君

 今の答弁でもうはっきり出ちゃっているんですけれど、自主的な取組が大事だと言いながら、結局、労政審で経営方が反対したからできなかったというだけの話じゃないですか。これが実態なんですよ。こういうことでは私、広げろったって広がんないと、これ義務化しなければ本当に法の意味がなくなるというふうにさえ思います。これは修正が必要だと思います。

 さらに、婚姻、妊娠、出産に関する不利益取扱いの問題ですが、本改正は、婚姻、妊娠、出産に伴う不利益取扱いを禁止をし、さらに妊娠し出産後一年を経過しない解雇を無効とし、立証責任の転換を図りました。このことは評価できると思います。

 実態としてどうかということなんですが、婚姻、妊娠、出産を理由とした解雇という、まあ首切るという、それはそういう例ももちろんあるんでしょうが、実際には職場の圧力で、家庭に入ったらどうですかとか、あるいは育児に専念した方がいいんじゃないですかと、こういう形が実態の中心だろうと。退職勧奨、退職強要といいますか、いろんな形での働き掛けが実態としては行われるんだろう、そして退職に追い込まれるということが現実に起こることだというふうに私は思うんです。

 この場合、解雇の禁止ということにとどまらず、やっぱり実質的にとらえて、退職勧奨、退職強要なども含んで実質的なものにしていく必要があるというふうに思うんですが、局長いかがですか。

政府参考人(北井久美子君)

 現行法におきましても、形式的には解雇でない場合でも、今お話のありましたような、事業主の有形無形の圧力によって労働者がやむを得ず応ずることとなって、労働者の真意に基づくものでない事実上の解雇と認められるような場合につきましては均等法違反となると解釈をしております。

 また、今般の改正によって禁止される妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いには退職の勧奨も含まれるとすることを予定しておりますので、これに違反しましても是正指導を行うことになるわけでございます。

小池晃君

 その解雇の無効が入ったことは評価できるんですが、退職の勧奨を受けていったん辞めてしまったらもう取り返し付かなくなるわけですね。

 これ、法案成立後の周知徹底の中で、こういう働き掛けというので辞めちゃ駄目なんだということをやっぱり改めて女性労働者に徹底して広げていく努力が必要ではないかと思うんですが、その点はいかがですか。

政府参考人(北井久美子君)

 私どもの雇用均等室における毎日の相談におきましても、やはり辞めさせられそうだ、あるいは辞めさせられてしまったという相談が多いわけでございまして、本当にその都度現場の職員は、辞めてしまうまでに相談してほしかったというような思いで仕事をするケースが多いわけでございます。したがいまして、私どもも妊娠、出産、婚姻というようなことによって辞めることを余儀なくされるというようなことはなくしていかなきゃいけないと思っております。

 そういう意味で、今度の改正法案の中にもこうしたことに関する規定の強化をさせていただいているわけでございまして、改正法案が成立しました場合には速やかに、御指摘のような点も含めて、労使団体の協力あるいは自治体の協力も得ながらいろんな手段で周知を図っていきたいというふうに考えております。

小池晃君

 続いて、坑内労働の解禁問題について聞きます。

 母性保護や女性の健康問題から危惧の声が上がっております。

 これ解禁の対象は特定の女性ということになるという説明を受けておりますが、どういう限定になるのか分かりやすく説明してください。

政府参考人(北井久美子君)

 今般の改正によりまして坑内労働の規制緩和の対象となりますのは管理監督業務を行う女性技術者でございまして、具体的にはトンネル建設の工事現場などにおきまして監督や施工管理に携わる土木技術者などでございます。

 他方、引き続き坑内労働の規制の対象となりますのは妊産婦といわゆる作業員の業務でございまして、具体的には妊娠中の労働者それから出産後一年以内で坑内業務に従事しない旨を使用者に申し出られた労働者、それから坑内で掘削、運搬や坑内施設の設置の作業に従事する女性労働者、すなわち現場の作業員の方ということでございます。

小池晃君

 解禁後、健康等への影響評価というのはきちんとなされるんでしょうか。どのように健康への影響が出ているか検証しようと考えておられるのかお聞きします。

政府参考人(北井久美子君)

 今般の改正によりまして、今御説明を申し上げましたとおり、女性技術者の管理監督業務について坑内労働の規制を緩和することとしておりますけれども、改正の影響につきましては、調査を実施するなどして女性の健康への影響を検証していくこととしたいと考えております。

小池晃君

 坑内に入れば実際にはどんな働き方しているかなかなかチェックしにくいということもお聞きをします。また、たとえ肉体労働でなくても、長時間の坑内労働というのはじん肺などの健康被害も懸念されるというふうに思っております。私どもは、この点については異論を持っております。しかし、対象を広げるというのであれば、これはきちっと正確な影響評価をしていただきたいということは申し上げておきたいと思います。

 さらに、行政の在り方についてお聞きをしたいんですが、新日本婦人の会が均等法改正に向けて集約した「私と家族の働き方黒書」というのがあります。ここには女性のいろんな実態、告発が寄せられているんですが、私、見ていてこういう訴えがありました。

 事務職の女性が総合職に転換する制度がある。しかし、総合職に転換したら二十七歳の男性水準になる仕組みになっていた。五十歳女性ではかえって賃金が下がったため均等室に訴えに行ったんだと。しかし、就業規則までは踏み込めないと、こういうふうに言われたと。こういう例、一杯あると思うんですね。職場の男女差別に関する取組というのはなかなか現場では解決しないということが言われております。

 そこで、均等室に持ち込まれた相談件数と是正指導数、二〇〇二年から二〇〇四年まででどれくらいあったか示していただきたい。

政府参考人(北井久美子君)

 雇用均等室が扱いました均等法に関する相談件数は、平成十四年度一万八千百八十二件、平成十五年度一万八千二百六十六件、平成十六年度一万九千六百六十八件でございます。

 そして、均等法二十五条に基づく助言、指導、勧告の件数でございますが、三年間分申し上げますと、平成十四年度、助言五千四百四十八件、指導四千二百五十四件、勧告三件、平成十五年度は助言五千六百二十四件、指導四千四百六十一件、勧告ゼロ、平成十六年度は助言五千百二十二件、指導四千二百七十二件、勧告一件ということでございます。

小池晃君

 相談件数に対して是正件数、助言も含めて三分の一以下、何でこんなに少ないんでしょうか。

政府参考人(北井久美子君)

 この相談の件数につきましては、相談者としては、まず女性労働者だけではなくて、事業主の方からの相談も含まれるわけでございます。そして、内容も、雇用管理についての具体的な相談や望ましい取扱い、あるいは法律の基礎知識といったようなことについても含まれるわけでございます。

 そして、そうした相談の中から法違反の疑われる事案について二十五条に基づく報告徴収以降の手続、行政指導の手続に移行することになるわけでございます。そうしたことから、こうした三分の一ぐらいの数字になっているわけでございます。

 なお、したがいまして、この指導件数は相談件数の一部ということでございます。

小池晃君

 相談しただけで解決しちゃう例が私そんなにたくさんあるとは思えないんですよ。これ実際は、相談したけれども、これ均等室の権限じゃないといって門前払いにされるようなケースが大変多いと、実態としてはそうだというふうにお聞きをしています。しかも、体制の問題が非常に大変でありまして、均等室というのは御存じのように都道府県に一つしかない。均等室に相談に行くこと自体が非常に大変になっている。

 ちょっとお聞きしたいんですが、妊娠、出産など母性健康管理に関する相談という役割を持っている女性労働者福祉専門官というのは何人いるんでしょうか。

政府参考人(北井久美子君)

 均等法を所掌しております担当指導官は二種類の職種がございますけれども、そのうち、今御指摘のありました母性健康管理を主として担当いたします地方女性労働者福祉専門官は全国で三十二人、それから均等指導官が五十九人、合わせて九十一人ということでございます。

小池晃君

 たった九十一人しかいないと。母性健康管理に関する相談というのは全体の二三%なのにこの実態なわけです。一名しかいない県も十五県あるというふうに聞いています。しかも、均等室の職員というのは、今の専門官も含めて全国で二百三十八人、一県当たり五人程度。これで均等法の周知徹底、相談、指導できるんでしょうか。

政府参考人(北井久美子君)

 私どもの均等行政は、今お話しのような非常に少人数でございますけれども、均等法あるいは育児・介護休業法、パートタイム労働法という非常に重要な法律を所掌して、現場の職員、一生懸命頑張っております。

 ただ、こうした問題に対処するには、この人数だけでやることには当然限りがあることでございますので、労使団体あるいは地方自治体等の御協力を得ながら、非常に効果の大きい効率的な仕事をしていく必要があると考えております。

 しかし、この少人数の中で、現場では相談をお受けするということだけではなくて、計画的に事業所訪問にも出掛けてまいりまして、法違反を疑われるような事案も見付けてきて是正指導をしているということでございます。

小池晃君

 頑張っておられるということは、私も現場の方のお話聞いて、それはそうだなというふうに思っているんですが、しかし大臣、今回この法案が出されて行政の対象範囲は広がるはずなのに、私、予算を伴わない法案だということ自体が非常にこれは重大だというふうに思うんですね、そもそもこれおかしいんじゃないかなと。ますます業務量増えるけれども予算は付いてこないというんじゃ、均等室の現場に幾ら頑張れと言ったってこれはできないですよ。

 私、大臣、この問題は、予算関連法案ではないわけですが、予算関連法案並みに、よほどの並々ならぬ決意を持ってこれは体制の強化を図るということがなければ、幾らこういう法案作っても何にもならないというふうに思うんですが、大臣、その点での決意というのはどうなんですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 いつも労働行政について御理解を賜っております。

 高齢者の問題、そして今御議論いただいております男女雇用均等の問題、また障害者雇用の問題、それぞれの切り口で極めて重要な役割を果たしていると思っております。一方で、国全体として行政改革という大きな課題を抱えていることも事実でございます。そういった中でどう効率的に仕事をやっていくか、しっかり局長を先頭にしながら私も現場を見ながらやってまいりたい。

 また、先ほどから御議論にありましたように、労働基準法違反という指摘もございました。そういう意味では、均等室だけではなく、いろいろな局、またいろいろな部署が関与いたしておりますので、厚生労働省の中の連携もしっかりやりながら進めてまいりたいと、このように思っております。

小池晃君

 連携は非常に私も大事だと思います。労基署は全国三百か所、ハローワークは六百か所あるわけですから、一方で均等室は各県一つしかないわけですから、ここをもっともっと有機的に局の壁を取り払って協力をしていくということは、これはすぐにでもできることだし、やっていかなければいけないというふうに思うんですが、しかし、その前段の基本的な認識として、小さな政府と言うけれども、私は正にこういう部分小さくしちゃいけないと思うんですよ。

 大臣、今全体の行政改革の要請があると言うけれども、この分野まで小さな政府ということでやらなければいけない、そういう分野であるという御認識を持っているとしたら大変私重大だと思うんですが、私はこういう部分は全体としてはやっぱり伸ばしていかなきゃいけないという基本的な認識を持っていただかないと困ると思うんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 今労働行政に課せられた課題、極めて大きなものがあると思っております。そういった意味では、労働基準監督署におきましてもハローワークにおきましても、また均等室におきましても、それぞれ国民から大きな期待をいただきながら、また委員会でも様々な励ましをいただきながらやらせていただいております。

 一方で、しかし行政財政改革というものが国の大きな課題であるということについては是非御理解を賜りたいと。したがって、今、他の部署としっかり連携しろというお励ましをいただきましたけれども、そうしたことも念頭に置きながら効率的な組織というものをつくり上げるように努力をしてまいりたいと考えております。

小池晃君

 こういう法律作りながらその体制を減らすようなことをしたらこれは全くもう逆行ですからね、そんなことは絶対にしてはいけないというふうに申し上げておきたいと思いますし、大臣が守らなければそこは進まないんですから、そういう自覚持ってやっていただきたいというふうに思います。

 実際の問題でいうと、やはり私どもは国と都道府県に独立した男女雇用平等委員会のようなものを設置をして、事業所への立入り権限、あるいは事業主への資料提出を求める権限を持たせていく、差別の是正措置を命ずることができるようにすべきだというふうに考えております。

 そういう仕組みがなければ、実態としては、事業主の評価聞くと、まじめな事業主ももちろんいると思うんですが、よく聞く話としては、均等室から言われれば分かりましたで済んじゃうと。しかし、基準監督署から言われると強制権を持っているからうかつに対応できない、こういう話あるんですよ。これが実態なんですから、やっぱりしっかり権限持たせる方向で強化をするということをやっていただきたいというふうに思います。

 最後に、この法の目的の問題について改めてお聞きをしたいんですが、前回も仕事と生活の調和を法の中に明記するべきだということを申し上げました。先ほども議論ありましたけれども、私は、この問題というのは非常に大事で、男女の雇用をめぐる様々な条件を均等、平等にしていく、その目的は一体何なのかということにかかわる問題だというふうに思っております。

 男女差別なくして均等にするといっても、ひどい条件で均等化すれば、これは男女ともに苦しみを背負っていかなければいけないことになるわけでありまして、これ、だからこそ、何のための均等なのか、何のためのその男女平等なのかということをしっかり法律に明記する、そういう特別な意味があると。これはなじむなじまない、切り口が違う違わないという問題ではなくて、私はこの法律が目指す働き方というのは一体何を目指すのかということを書くという問題だというふうに思っている。だからこそ、この問題を法律にしっかり書くということが必要ではないかと思うんですが、大臣、この点について改めてお聞きしたい。

国務大臣(川崎二郎君)

 ワーク・ライフ・バランス、仕事と生活の調和、これ何回も御答弁させていただいているとおり、重要な課題であると考えております。

 しかしながら、労働関係の法令全体で、育児・介護休業法、次世代育成支援法、それから、今日は何回となく引用させていただきました労働時間等設定改善法、労働基準法、様々な法律によりその実現が図られていくものと考えております。

 男女雇用機会均等法にワーク・ライフ・バランスをしっかり書けというお話をいただいておるんですけれども、これは基本的には性差別の禁止という大きな目的がございますので、これと同じ形で書くようにということについては、再三の御要請でございますけれども、必ずしもこの法律にはなじまないと、このように思っております。

小池晃君

 それは、性差別の禁止、男女のその均等ということは、何のためにそれを目指すのか、どういう働き方を実現するための法律なのかということで、私は切っても切り離せない関係にある問題ではないと、そういう問題として提起しているんですが、大臣、いかがですか。

国務大臣(川崎二郎君)

 ですから、イコールそれが仕事と生活の調和という一文字に表されるかと、一つのフレーズに表されるかということになると、必ずしもそうではないですねと。かつ、先ほどから申し上げているように、労働法制の中の様々な法律の中にそうしたものを準備させていただいておりますので、どうぞ全体の法令の中で御理解を賜りたいと。

小池晃君

 様々な法令の中に書き込むことは、それはそれで様々に書き込んでいただければ結構なことでありまして、私が申し上げているのは、やっぱりこの法律の中に書き込むことに、そこに意味があるんだと。それが正にこの法律で実行しようと、実現しようとしている、男女ともに働き方、どういう働き方をこの日本で実現するのか、その目的というのは、正に仕事と生活の調和という、そこを目指していく働き掛けをつくっていくんだということではないかと、だからこそ、法律の中にしっかりその目的規定を書き込むべきだということでございますが、最後までこの問題は平行線に終わった、まあ非常に残念であります。

 本法案に一定の前進面あることは非常に事実であると思いますが、まだまだ質疑をしなければいけない問題はあるというふうに思いますし、より良い法律にしていく努力が与野党ともに求められているというふうに思います。より実効ある法律とするために、引き続き努力をしなければいけないということを申し上げて、私の質問を終わります。

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