日本共産党を代表して、障害者自立支援法案に対する反対討論を行います。
本法案は、精神を含む三障害の福祉制度の一元化や在宅サービスに係る費用の義務的経費化などの前進面もありますが、財政削減ありきの政府方針の下で、障害者と家族に負担の増大を押し付け、障害者の生活と権利を後退させる重大な問題点があり、断じて認めるわけにはまいりません。
反対する第一の理由は、障害福祉サービスに応益負担を導入し、障害者と家族に大幅な負担増を押し付けることです。
コミュニケーションも移動も地域での生活も、御飯食べることもトイレへ行くことも、利益ではなく権利です。応益負担の導入というのは、サービスを多く必要とする重度障害者ほど重い負担を強いることにほかなりません。大臣は、限りなく応能負担に近いと言いますが、上限付きの応益負担と応能負担とは根本的に違うのです。そして、それは障害者の社会参加と自立の支援に逆行するものであります。
複雑な減免制度を設け、きめ細かい配慮をしたと言いますが、施設入所者の場合、手元に残るのは一か月二万五千円だけ。グループホーム入居者や自宅から通所施設に通う場合は、手元に生活費が残る保証はなく、多くの場合は赤字になります。わずかな工賃を大幅に上回る利用料負担を押し付けることのどこが自立支援なのでしょうか。明らかな憲法二十五条違反であります。
反対する第二の理由は、精神通院公費、更生医療、育成医療という公費負担医療制度にも応益負担を導入し、大きな負担増を求めることです。
これは、障害者と家族に経済的な打撃を与えるだけでなく、障害者の自立にも逆行します。障害者を医療機関から遠ざけ、必要な医療を受けることを妨げ、健康状態の悪化を招くことになり、命も脅かす改悪です。それぞれ特性を持っている公費負担医療制度を一緒くたに定率負担にしてしまうことは余りにも乱暴であり、断じて認められません。
また、担当局長は、サービスは金で買うものだと答弁しました。買えない人を国が責任を持って支えることこそ社会保障です。多くの障害者を買えない経済状態に置きながら、金で買えなどという態度は二重に許されるものではありません。
反対する第三の理由は、法案の根幹にかかわる重要事項が政省令事項にゆだねられており、サービス低下のおそれがあることです。
昨日、二百十三項目に及ぶ政省令、告示事項が示されましたが、本年五月に提示されたものとほとんど変わっておらず、障害程度区分、サービスの報酬額の基準、重度障害者へのサービス基準を始め、重要な内容が依然として示されていません。具体的な基準案が明らかにならなければ、これまで受けてきたサービスを引き続き受けることができる保証などありません。大事な部分を行政に白紙委任するような形で法案を通過させることは立法府の自殺行為だと言わねばなりません。
反対する第四の理由は、障害程度区分の判定について、モデル事業の一次判定がほとんど実態を反映しておらず、二次判定での変更率が五割を超えているにもかかわらず、まともな検証もしないまま早急な実施に移そうとしていることであります。
大臣は、繰り返し、必要なサービスは提供されると言いますが、障害程度区分の認定が適切になされなければサービスを受ける入口で門前払いとなってしまうわけで、制度の根幹にかかわる重大な欠陥であると言わざるを得ません。
加えて、障害者に年間総額七百億円もの負担増とサービス低下、切捨てをもたらす法案への懸念が障害者、家族、関係団体から沸き起こり、慎重審議を求める世論と運動が広がっています。
通常国会に提出された法案は、衆参両院の審議の中で次々に問題点が明らかになる中で審議未了、廃案となりました。政府は、廃案となった法案を抜本的に見直し、真に障害者の自立を支援する法案として再提出すべきであったにもかかわらず、施行時期を三か月遅らせただけで、問題点が全く解消されないままの法案を特別国会に再提出しました。しかも、通常国会で、衆議院では二か月にわたり三十八時間の委員会審議と七時間の参考人質疑、今回、当委員会での審議は今日までで十八時間、地方公聴会、参考人質疑も、合わせて五時間にすぎません。公聴会や参考人質疑では、与党会派推薦の公述人や参考人の方からも様々な懸念が表明されています。指摘された懸念を解消するため更に徹底審議し、真に障害者の自立を前進させる抜本的改善を図ることこそ国会の責務ではないでしょうか。
障害者の真の自立支援、全面参加と平等のためには、本法案を撤回し、障害者福祉施策の抜本的な再検討を図るべきであることを最後に申し上げ、反対討論といたします。