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163特別国会 参議院厚生労働委員会

  • 「自立支援」法案/社会復帰阻むもの/精神通院公費制度廃止を批判/小池議員質問(関連記事

2005年10月13日(木)


小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 今日ここにお持ちしましたのは、この自立支援法に反対する皆さんから寄せられたファクス、手紙。大臣、ちょっと見てください。もう本当に、すべてではない、一部ですけれども、持ってまいりましたけれども、それぞれの議員の部屋に、同じようだと思いますけれども、こういうのが寄せられてきています。これはもう全部点字のものなんですね。

 やはり、一つ一つの要望書の中に、特徴としてはやっぱり一人一人の皆さんの思いが本当に具体的、克明に語られている。それは本当に、普通のこういう法案審議ではないような、やっぱりこの法案が通ったらこんなふうに自分の暮らしがゆがめられてしまうんだと、生きていけないんだという叫びが寄せられているんですよ。

 今日も国会の周りには本当に座込みの人たちが多数詰め掛けておられる。こういう中で、本当に短期間でこういう重大な法案を通していいのかという怒りが今渦巻いている中での法案審議ですので、しっかりそういった人たちに対して責任を持って答えていただきたいということを冒頭申し上げたいというふうに思います。

 そこで、精神保健福祉法三十二条の問題であります。

 通院公費負担制度が廃止されると現在五%の本人負担というのが一割負担になってくる、家族に所得税三十万円以上の収入があれば三割負担になる、こういう仕組みでありますが、大臣、ちょっと大きな話でお聞きをしたいんですが、精神障害者の社会復帰や地域生活を支えるために作られた三十二条であるし、大きな役割を果たしてきた。これを廃止するということは、正に入院から地域へというこの大きな政策方向に逆行することになるんじゃないかと、この根本問題に答えていただきたい。

国務大臣(尾辻秀久君)

 御指摘のこの精神保健福祉法第三十二条は、精神障害者の通院医療費の公費負担に関する規定でありまして、昭和四十年の改正において創設されたものでございます。

 これは、昭和三十九年七月の精神衛生審議会の答申も踏まえまして、当時の精神医学の発達により、精神障害の程度によって必ずしも入院医療を要せず、通院による医療を施すことが効果的となった事情にかんがみまして、精神障害者につき通院に要する費用を公費負担とすることにしたわけでございます。この昭和四十年の制度創設以来、この精神保健福祉法第三十二条は精神障害の適切な医療の普及を推進する役割を担ってきたと考えております。

 したがいまして、その趣旨について今回の見直しにおいても変わりはないものでございます。今、廃止するというお話がございましたけれども、今回の見直しにおいてもその趣旨は変わりがないということを申し上げたいと存じます。

小池晃君

 しかし、実態はどうか。私、精神科のデイケア利用されている方にお話聞きました。デイケアに定期的に通うことが社会復帰の第一歩になっているんだと、ところがこの日数減らすしかないというお話をお聞きしているんです。

 ある二十代の女性で、家族と同居されて、年金が三級、まあ月五万円弱ですね、こういう方ですが、今、二十日前後デイケアに通っていると。精神科以外の通院も含めて一か月の医療費が約一万円、携帯電話一万円、家に食費として五千円入れると。残りの約二万円で暮らしていらっしゃると、一週間五千円だと。洋服代、化粧品代、食費、交際費、雑費、もうぎりぎりだと。洋服は千円以下のものを探して買っていると。急な出費、例えば風邪引いて病院に行くとなると、友達に会うこととか携帯電話控える、そんな努力されているし、もしもここで通院公費制度なくなれば、デイケアの回数減らすしかないんじゃないかとこの方はおっしゃっている。生きる支えがなくなってしまうというふうに聞きました。

 ある精神科病院の試算では、デイケア十五日利用の標準的なケースで、診察、薬代合わせて現在五%負担で六千九百八十円、これが一割負担で一万三千九百六十円、もし三割負担なら四万一千八百八十円、上限もちろんありますが、そういう仕組みになって、年金に占める割合も、今一〇%台が一割負担で二一%、三割負担だと六三%ということになってしまう。

 改めて、三十二条の趣旨変えていないと大臣はおっしゃるんですが、デイケアの回数減らす、通院中断するということになれば、これは症状悪化することは必至であります。そうすれば、正に社会復帰を目的にしたその本来の目的に反することになる。その趣旨を生かすと言うけれども、結局実態としては、やはり精神障害者の社会復帰、地域生活、これをもう本当に阻害することになるんじゃないかと思いますが、その点いかがですか。

国務大臣(尾辻秀久君)

 再三申し上げてきたことでありますけれども、そういうことにならないように御負担を所得に応じて軽くしなきゃならないということで、これまでも御説明申し上げてきましたようなそれぞれの軽減措置を講じてきたところでございます。

 したがいまして、私どもはそういうことにならないように軽減措置をとったところでございます。

小池晃君

 軽減措置とったとおっしゃるんだけれども、例えば、重度かつ継続というカテゴリーを設けてその負担の軽減を図っているということもおっしゃっております。

 ちょっと参考人に聞きたいんですが、統合失調症、狭義の躁うつ病、難治性てんかん、三疾患に限定したこの根拠、これを教えてください。

政府参考人(中谷比呂樹君)

 この三疾患でございますけれども、この重度、継続といいますのは、長期間にわたりまして継続的にかつ相当額の医療費が掛かるという疾患でございまして、それにつきまして、今、議員がおっしゃいました三疾患を中心に現在検討会において論議をしていただいているところでございます。

小池晃君

 だから、その三疾患にした根拠を示してくれって言っているんです。

政府参考人(中谷比呂樹君)

 これらにつきましては、入院期間あるいは掛かりました医療費など、資料に基づいた検討が現在検討委員会で行われているところでございます。

小池晃君

 今の検討のことを聞いているんじゃないんですよ。三疾患示したわけでしょう。

 私、資料でお配りして、皆さんのところにあると思うんですが、何でこの三疾患に限定したのかという根拠として、厚労省が私のところ届けてきた資料がこれです。

 要するに、レセプトを抜粋して医療費総額の四分の一占める高額なレセプトを抽出すると統合失調症が七〇%だと、アルコール依存症が八%、躁うつ病が五%、アルツハイマーが五%。これしか根拠持ってこないんです。これじゃ三疾患に限定する根拠にならないじゃないですか。

政府参考人(中谷比呂樹君)

 この資料につきましては、御協力をいただける都道府県から得られましたレセプト、このうちで医療費総額の四分の一を占める百四十六件でございますが、その百四十六件の原因疾患、これを見てみますと、ここにお示ししたとおりの数字になったわけでございます。

 一方で、やはり継続的に医療をするということであれば外来数も多いだろうということから、患者調査によりまして、外来患者数ということを見てみますと、統合失調症系の疾患が二三・七%、それから躁うつ病系の疾患が三〇・五%、それからあと神経症系の疾患が二二%、てんかんが一一・二%、こういうことがございました。

 今、先生がお示しいただきました資料、これは厚生省のそもそも検討の当初に考えた資料でございますが、百四十六のケースのうちの五%といいますと十例も満たないということでございますので、総合的に考えまして、やはり通院されておること、これが患者調査に出てまいりますので、それと総合的に考えまして、社会保障制度審議会の障害者部会に統合失調症、狭義のうつ病、それから重度のてんかんと、この三疾患を昨年の十二月に御提示を申し上げたところでございます。

小池晃君

 今の説明、全く科学的に成り立っていない議論ですよ。なぜこの三疾患が高額な医療費が掛かるのか、全くそういう説明になっていないんですよ。

 一方で、その二枚目めくっていただいて、先日の検討会に日精協、日本精神科病院協会が出した分析では、要するに疾患カテゴリーで特定できるエビデンスはないんだと、疾患カテゴリーによる範囲設定は公費負担医療における不公平を生み出すことになるというふうに言っている。実際にその診療に当たっている団体からこういう意見も出ている。

 この結果、この日精協のこういう見解についてはどういう考え方をお持ちなんですか、厚労省としては。

政府参考人(中谷比呂樹君)

 現在、このような御見解も含めまして検討会で御協議いただいて、御相談をいただいておるところでありますけれども、私たちといたしましては、やはり資料に基づいた御論議をしていただきたいということから、日精協が出されました資料につきましても、平均入院期間ですとか医療費ですとか、そういうものも入っておりますので、更に御意見を深めていただきたい、御協議をいただきたいというふうに考えております。

小池晃君

 資料に基づかないでたらめな提案しているんですよ。今ごろ資料に基づいて検討するのは遅過ぎるんですよ。それをあいまいにしたまま法案だけ通すなんてこと許されるんですか。

 大臣、これ、三疾患に限定することは合理性ないと、不公平性を生む危険もあると、ここまで言われているんですよ。ところが、こうした患者の負担を増やすということを、言わば厚労省が当初示した提案に対する重大な異論が出ているにもかかわらず、それを無視して見切り発車しようとしている。こんなこと許されるんですか。こういう重大な問題をまず解決することこそ先決じゃないですか。

 私は、この問題についてのはっきりした結論を出すまで、この精神公費通院制度の廃止ということは延期すべきだというふうに考えますが、大臣、いかがですか。大臣に答えていただきたい。大臣、いいよ、もう、大臣答えてください。

国務大臣(尾辻秀久君)

 これはもうこれまで何回も申し上げてきたことでありますけれども、今度の障害者自立支援法を作るに当たりまして、無理のない御負担でお願いをしたいということを考えてきました。

 そこで、医療費は特に、その他の福祉のサービスにつきましては、完全に所得に応じてというところでの上限額を引いてきましたけれども、医療は、一定の収入がおありであっても、やはり定期的に医療費が掛かるというのは家計に大きな影響が出ます。そこで、所得税額で三十万円未満の方であっても重度かつ継続ということであれば一万円までの上限をする、それ以上どんな大きな所得がおありの方であっても、これはまあ経過措置と言ってはおりますけれども、負担上限額を二万円にして御負担いただこうということを仕組みとして作ったわけでございます。そうなりますと、今議論していただいております重度かつ継続とは何ぞやという話になるわけでございます。

 私も専門家でございませんので、多分そういう御主張を先生もしておられるのかなと思ったりもいたしますけれども、症状で判断するというのがいいと思っておりました。当初そう思っておりました。そこで、専門家の皆さんにお集まりをいただいて御議論いただきましたら、どうもそういうことでもない。それ大変難しい判断だ、作業だということで、疾病で決めようということにこの専門家の皆さん方の御意見が集約されてまいりました。今お話しいただきました団体の皆さんも当然この専門家のメンバーでございますから、私が承知いたしておりますところでは、当初はそういう御意見であったようにお伺いもいたしております。ただ、最近また御意見が変わってきたというようなことのようでございます。

 申し上げておりますのは、専門家の皆さんの、一つの団体の御意見もぶれたりいたしますし、またそれぞれの皆さんの御意見がいろいろありますので、とにかくまず皆さんの総意がきっちり固まったところからやっていかざるを得ませんので、それじゃまずその専門家の会議の皆さんがおっしゃる今の三疾病、これはまず間違いないだろうというところで今三疾病ということを言っておりますけれども、今後ともこの専門家の会議の皆さんの御議論はいただきますし、そしてまた、皆さんの御意見がこれに加えるべきだということであれば当然加えていくわけでございますので、この作業を進めさせていただきたいと思っておるところでございます。

小池晃君

 順序があべこべなんですよ。今の大臣おっしゃった話は、法案作るときに既にやらなきゃいけない話なんです。そこをしっかり固めた上で出してこないからこういうことになるわけで、これ、私ここが、本当に拙速なやり方がここに象徴的に表われていると。こういう大事な問題、だって、これに当たるかどうかで一体どれだけの負担になるか、全く変わってくるわけですからね。

 こういうことがもうあいまいになったまま法案だけ決めて見切り発車するというのは、本当に余りにも当事者に対しても無責任なやり方だというふうに思うんです。

 しかも、もう一つ問題にしたいのは障害程度区分判定モデル事業の問題です。

 これ、もう何度も問題になっていますが、二次判定で大幅に修正されている。そもそも、この一次判定のソフトで大幅な修正をせざるを得なくなっているということは、高齢者介護の要介護認定の仕組みを、そのロジックを障害程度区分の中に持ち込むこと自体に無理があるということを示すものじゃないですか。参考人、お答えいただきたい。

政府参考人(中村秀一君)

 この認定につきましては、前年度にその七十九項目の妥当性について調査いたしまして、検討いたしまして、この七十九項目では難しいだろうということで、二十七項目も加えましてその七十九項目を修正しようということで実施いたしておりますので、スタート、出発点がそもそも七十九項目の一次判定を直すという前提の作業をしようということで、まず一次判定を七十九項目でやってみて、それで二十七項目と主治医意見書と特記事項でどれだけ二次判定で直るかということを行った上で、二十七項目で、どれだけその二次判定の結果と二十七項目の追加の結果でロジックとして一次判定の判定ロジックを組み替えることができるかということをやるために実施しているわけでございます。

 そういった意味で、小池委員おっしゃるとおり、その七十九項目では駄目だというところからスタートしているわけでございます。

小池晃君

 駄目だというところからスタートしたと、二十七項目加えたと、今回の結果踏まえてロジック組み直すと、それは分かりました。

 ということは、今回のモデル事業の結果踏まえてロジック組み直して、実際の認定に使用する前にはもちろんもう一回実際のモデル事業を行うわけですね。そこをお聞きします。

政府参考人(中村秀一君)

 今、そういったことでロジックの組替えを行っておりますので、そういうことにつきましては有識者の方とも御相談しながらその検証と、新ロジックの検証ということをやってみたいと思っております。

小池晃君

 それはモデル事業をもう一回やるということですね。もう一回、その実際に新しく作ったロジックによって実際の障害者の障害程度区分の認定やるということですね。

政府参考人(中村秀一君)

 検証の方法等も含めまして専門家の方と御相談してまいりたいと思います。

小池晃君

 やるとは言わないんですね。これは、私、役所の方に聞いたら、やる予定ないというふうにおっしゃっていた。

 これ、本当にひどい話で、車に例えたら最初の走行試験で欠陥車だともうはっきりしているんですよ。ここは直しますというふうに言っているんだけれども、四月から実際にもう始まるわけですから、実際それがどういうふうに直されるか試しもせずに公道を走らせるということなんです。こんなこと、大臣、いいんですか。今回のモデル事業でほとんど半分修正しなくちゃいけないような実態なんですよ。新たに二十七項目ので、そのロジックで組み直すわけですよ。それを実際に試しもしないで四月からの認定に使うというんですよ。こんなことが許されるんですか。介護保険のときだっていろいろあったけれども、一回組み直したら、もう一回、小規模だったけれどもモデル事業やったりしているんです。しかも、今回のモデル事業というのは対象者わずか千八百人ですよ。これから認定しようとしている障害判定の対象者というのは三十六万人だというふうに聞いていますから、わずか〇・五%のサンプルでやっているんです。

 こういう形で、実際に大問題であることが明らかになっている。直すとおっしゃるのであれば、私は、しっかりもう来年の四月からこれやろうとしているなんてとんでもない話で、十分に実際にもう一回その判定ソフトを使って試行事業を行って、果たしてその新しいロジックというのが、高齢者介護ではなくて障害者の程度区分の判定にも妥当性を持つものなのかどうか、合理性を持つものなのかどうか、それを検証してから実際行うというのが筋じゃないかと思いますが、いかがですか。

 私、これ重大問題で、大臣は必要なサービス打ち切らないとおっしゃっているんです。しかし、この障害程度区分というのは、ここ、入口ですから、ここで門前払いされたら必要なサービス受けられなくなっちゃうわけでしょう。これ、制度の根幹にかかわる問題ですよ。こういうことで、こんないい加減なやり方でいいんでしょうか。私、大臣にはっきりその点、お答えいただきたいというふうに思います。

国務大臣(尾辻秀久君)

 まあちょっと、今の例にお出しになったことと直接的に同じということではありませんけれども、やはり介護保険の場合でも一次判定、二次判定、必ず違います。それはもう違うのが当然であります。同じである方が私はおかしいと思っております。

 今度の場合は、今先生が言っておられるのは、ロジックを変えたことによる変更だから、これはまあ、ただ、介護保険の一次判定、二次判定が違うということとは違うんだというふうにおっしゃるんでしょうけれども、いずれにしても、ロジックを変えようと変えまいと、やはり判定を変えるとどうしてもその判定結果が変わるというのはごく自然なことだというふうに思っております。

 ただ、今度のことは、今先生もお触れになっておりますように、新たに項目加えておりますから、その項目加えたことによることがどうなんだというのは、しっかりまた検討しなきゃならないわけでございますが、私は、今先生がおっしゃったように、違うからということで、まあ今後のことに心配がありというふうには実は思っておりません。

小池晃君

 いや、認識、それ改めていただかないと、五〇%二次判定で変更しているんですよ、ちょっとやそっとじゃないんですよ。二次判定があるからいいんだというのは余りにも乱暴な議論で、一次判定で一定の合理性、妥当性ある結果出なければ、それは二次判定で正確な判定なんかできませんし、しかも二次判定の地域の市町村審査会に知的障害者、精神障害者、身体障害者の実態分かる人が果たして配置されるのか、そんな保証全然ないんですよ。そういう中で、一次判定のソフト、今からもう本当に作り直すような段階なのに来年の四月からこれを動かし始めると、こんなことが許されるのかと私はお聞きしているんです。

 大臣、率直に言ってどう思います。余りにも乱暴じゃないですか、こういうやり方は。どうですか、大臣。大臣、答えてください。

政府参考人(中村秀一君)

 先ほど変更率五〇%というお話が出ておりますが、さっき申し上げましたように、それは七十九項目の変更率でございますので、それを踏まえて、それを直すためにやっているわけで、委員も分かっておられるようでございますが、そういうことでございます。

 また、介護保険の今の変更率も、一次判定と二次判定と、二、三割の変更率があるわけでございますから、大臣から御答弁申し上げましたとおり、変更率があるということが一次判定のその妥当性、それだけで論じていただくのもいかがなものかと思いますので、私ども、新一次判定を作るということは、作るということは正にいろんな意味で検証作業をするわけでございますので、その検証作業をした上でお出しをしたいということを御答弁しているわけでございます。

小池晃君

 私も、変更率が少しでもあったら駄目だなんて言っていないですよ。五〇%と二〇%、三〇%、全然違うんですよ。五〇%は変更しなきゃいけないというのは、もう一次判定やらなくてもいいぐらい、関係ないんです。だから、それは分かっていますよ。だから、七十九項目だからそうなるんでしょう。

 しかし、これから二十七項目加えて新しいコンピューターのソフト作るというんじゃ全く新しいロジックが、作るような作業になるわけですよ。ところが、四月からやるというんです。余りにも乱暴じゃないかと。それだけの作業をするのであれば、作り上げたもの、全くその今の七十九項目とは違うコンピューターのソフトになるんでしょう。それをまず試してみて、本当にそれが高齢者介護でなくて精神障害者、知的障害者も含めて程度区分が判定できるソフトになるのかどうか検証しなければ、私は余りに無責任ではないかと言っているんです。こういう問題を置き去りにして、法案だけ決めて四月からスタートすると。こんなことが許されるのかと聞いているんです。大臣、答えていただきたい。

国務大臣(尾辻秀久君)

 局長からもお答えしておりますように、項目加えたらどうなるかということを検討したわけでございますから、その加える前と加えない後ということでいろいろまた変化が生じるというのは当然だというふうに思うわけでございます。

 そして、介護保険の私どもは経験もありますから、この要介護認定とは項目も今申し上げているように変わってくるわけでありますが、基本的にやはりこうした認定作業ということについては既に経験もあるわけでありまして、その経験に照らし合わしてやれるというところもありますし、今からの作業で十分間に合うというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、検証しますということを申し上げておりますし、有識者の皆さんにも御相談するということも申し上げておるわけでございますから、おっしゃるように、乱暴なことをするということではないと思っております。

小池晃君

 高齢者介護の経験でやられたら困るんですよ。全然違うんですよ。本当に、私、こんな短期間でコンピューターソフト作り直すところから始めて実際動かす、実際の認定やるわけですから、四月から。これは余りにも乱暴だと。こういうことをまず徹底的に議論し、検証することこそ、私は障害者の皆さんに対して責任を果たすことになるということを申し上げたいと思うんです。

 さらに、財政が厳しいから制度を維持するために患者の負担を増やさなきゃいけないというふうに大臣、繰り返し述べていますが、今回の患者負担増によって国の財政に出る影響というのは年間二十九億円だと。精神通院公費の問題での影響は二十九億円だと聞いております。

 保険局長に聞きたいんですが、うつ病の治療薬として広く使われているパキシルという薬があります。これ、二〇〇〇年に薬価収載されましたが、これ、薬価算定時の薬価と現在の価格、二十ミリグラムで説明していただきたいのと、あと、開発国イギリスですが、イギリス、フランスでは薬価幾らなのか、お示しいただけますか。

政府参考人(水田邦雄君)

 お尋ねの抗うつ剤でありますパキシルでございます。平成十二年十一月に薬価収載されたものでございまして、薬価算定の基準となりました二十ミリ錠で見ますと、収載時の薬価は二百八十八・八円となってございます。その後、市場実勢価格に基づく薬価改定が行われまして、収載時より約一〇%引き下げられておりまして、現在の薬価は二百五十八・五円となってございます。

 このパキシル、収載時の外国価格でございますけれども、イギリスは九十八・四円、フランスは九十四・九円でございますが、ちなみにアメリカで申しますと二百四十七・九円、ドイツでは二百三十四・五円と、このようになってございます。

小池晃君

 アメリカというのは自由価格の国ですから余り参考にならないと思うんですが、ドイツも参照薬価制度の影響なんかもあるかもしれませんが、これ、開発国はイギリスなんですね。輸入している薬なんです。日本で造っているわけじゃないんです。それが、イギリス、フランスでは九十円台が日本では二百六十円、二倍以上なんですね。

 このパキシルの売上高というのは、二〇〇四年度で四百二十億円であります。これ、もしも半分にしたとしたら二百十億円の医療費の節約ということになる。今回の公費負担制度で国が負担を減らすのは二十九億円です。医療に対する国庫負担の比率で見れば、これ、国の負担分だけでも、もしこの薬価半分にするだけでも三十億円超える節減になる可能性があるというふうに私は思うんですね。もちろん、これだけで財源を生み出せとは申しません。しかし、大臣、やっぱりこれだけ厳しい声が上がっている中で、財源の問題を言うのであれば、こういうところにもしっかりメスを入れると。このパキシルというのは、実は類似薬から算定した薬価というのはもっと低かったんです。実はメーカーは百五十円ぐらいの薬価を提示したんです。ところが、アメリカ高いものだから、外国薬との平均方式というやり方になって上がっちゃっているんですね。こういうでたらめな仕組みになっているんです。

 私、こういったところ、しっかりメスを入れる余地まだまだあるんじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。

国務大臣(尾辻秀久君)

 私はそのとおりだと思っております。そして、今度の医療改革、医療制度改革の中でそうしたところもしっかりとメスを入れなきゃいけないというふうに思っております。

小池晃君

 入っていないんですよ。実態としてはイギリス、フランスの二倍以上の薬価が放置されているんですよ。メス入っていないじゃないですか。

 あるいは更生医療や育成医療にかかわる問題として言えば、心臓ペースメーカーの問題がありますが、この心臓ペースメーカーのイギリス、フランスと我が国の価格差は今どうなっていますか。

政府参考人(水田邦雄君)

 欧米諸国におきますペースメーカーの販売価格についてでございますけれども、実はこれを網羅的に把握した調査は存在しておりません。したがいまして、お求めの比較というものをきちんとして行うことは困難でございます。

小池晃君

 でも、以前示している数字があるでしょう。それをお示しいただきたいと思います。

政府参考人(水田邦雄君)

 平成八年に日本貿易振興会、ジェトロでございますけれども、これが現地における限られた医療機関からの聞き取り調査をやっております。それを基にいたしました販売価格の推定値というものを出してございますけれども、それによりますと、アメリカでは六十万から七十万、イギリス、ドイツはその半分程度、フランスでは四十万から五十万となってございます。その当時の我が国の保険償還価格は百六十万から百七十万でございましたけれども、これにつきましては、内外価格差、いろいろ言われております。厚生労働省といたしましてもその是正に取り組んでいるところでございまして、現在の価格は百十六万から百四十八万と、このようになってございます。

小池晃君

 でも、下がったといっても二倍、三倍なんですね。そこは同じ意見だとおっしゃるのであれば、私は、こういう患者さんから本当に悲鳴のような声が上がっているときに財源の問題を言うのであれば、やっぱりこういったところにこそ切り込んで、こういう患者に負担を押し付けるようなやり方やめるという決断をすべきじゃないですか。大臣、いかがですか。大臣。

国務大臣(尾辻秀久君)

 ペースメーカーのこともよく話題になります。これは余り軽々に言ってはいけないんでありましょうけれども、私が聞いたころに、最初に聞いたころは、ペースメーカーの国内価格はアメリカの七倍だというふうに聞いたころがございました。それからすると今大分その差は縮まったようでございますが、しかし、やっぱり相当な、今お答え申し上げた数字で言っても大分差がある。この辺、私どもが何かをしなきゃならない。今先生が言っておられるようなことで進めていかなきゃならない課題の一つだというのはもう十分認識をいたしております。

 したがいまして、先ほども申し上げましたように、来年私どもは医療制度の大きな改革をしようと思っておりますから、そうした中でこうした問題にも取り組んでいきたいというふうに考えておるところでございます。

小池晃君

 自立支援法の前にやらなきゃいけないこと一杯あるんじゃないですか。もっともっとメスを入れなきゃいけない部分、もっともっと改めなきゃいけない部分、たくさんたくさんあるんじゃないですか。そういうことをしっかりやらずに障害者にだけ負担を押し付けるようなやり方がやはり一番の怒りの私は原因になっているんだと思うんですよ。

 ちょっと続けて、いろいろと重大な問題、まだ残されている問題たくさんあるので、ちょっとお聞きをしたいんですが、補装具についてですが、これは償還払いで大変な負担になるということが昨日の参考人質疑でも問題になっています。こんな償還払いという多額の負担をかぶせるというやり方をそのままにしていていいんでしょうか。ちょっと参考人の方どうお考えか、お聞かせいただきたい。

政府参考人(中村秀一君)

 今度の自立支援法では、給付の中身といたしまして、介護給付、訓練等給付、自立支援医療などと、地域生活支援事業と並びまして、補装具ということで補装具の給付をするという仕組みになっております。

 補装具の支給の仕組みは、市町村が本人に代わって、今、全額負担で後で償還するのではなくて、市町村が本人に代わって払う仕組みを導入しようとしますと、事業者をあらかじめ指定しなきゃならないというようなことがあって、利用者の選択の幅が限定されると。そういうことで、今回の法案では事業者の指定制を取らず、原則お求めいただいた補装具について償還払いとするという仕組みを取ったところでございます。

 しかし、今委員からお話ありましたように、利用者の方が補装具を購入する際に一時的な御負担が過剰なものとならないよう配慮することも必要であるということを認識いたしておりますので、利用者の方が全額用意しなくてもよいような仕組みが工夫できないか、検討させていただきたいと思います。

小池晃君

 これは当然検討しなければいけないというふうに思います。

 あわせて、更生医療のことについてお伺いしたいんですが、育成医療については激変緩和措置が設けられたと。私は、激変緩和措置といっても、これでも激変だというふうに思っておりますが、少なくとも十八歳未満については設けられた。しかし、十八歳以上の更生医療については設けられていない。

 実例で言うと、三百万円の医療費が掛かった場合、現在は所得税課税世帯最低ランクで二千三百円が、改定されれば公費負担の対象から外れて、窓口ではいきなり全額支払わなきゃいけない、九十万円。八十万円高額療養費の分が戻ってきますけれども、最終的な負担は十一万円、五十倍を超えるわけです。

 大臣、これ育成医療については激変緩和という判断をしたというふうにおっしゃるんですが、更生医療についても私は当然同様の措置を講ずるべきではないかというふうに考えるんですが、これいかがですか。

国務大臣(尾辻秀久君)

 障害者自立支援法案におきましては、障害に係る公費負担医療制度について、申し上げておりますように、自立支援医療として再編をいたしました。そして、必要な医療の確保をしつつ、費用をこれはもう皆さんで助け合うという仕組みにするということで、また所得に応じた御負担もお願いしたいということを申し上げておるわけでございます。

 そこで、育成医療についてはもう今お話がございましたので、あえてもう触れません。

 今回の見直しによりまして、大人の方を対象といたします更生医療について今お話しでございますから、そのことで申し上げますと、更生医療を利用される方の中で、今まで以上の御負担をお願いせざるを得ない方もいらっしゃるのはもう事実でございます。ただ、申し上げておりますように、低所得の方でありますとか、先ほど話題にしていただきました、継続的に相当額の医療費負担が発生する方については、月当たりより低い負担上限額を設定をいたしておるところでございまして、私どもはそうした配慮をいたしたところでございます。

小池晃君

 それでは不十分だと思うんですね。

 先ほど議論の中で、育成医療の激変緩和措置に要する国費は二億円だというお話がありました。本当に国の予算全体から見ればわずかな努力でできる話で、更生医療だってその数倍の規模でできるはずなんですね。

 私、これ高額療養費制度というのは償還払いですから、いきなり窓口で九十万円というような費用が徴収される。これは余りにも過酷じゃないだろうか。しかも、育成医療よりも更生医療の方が平均で見れば医療費掛かっている例も多い。医療費軽減の必要性、より高いんですから、私、せめて償還払いだけでもなくすというようなことも含めてこれ検討しなければいけない課題だと思うんですが、そこはどうなんですか。

国務大臣(尾辻秀久君)

 先ほど補装具のお話をなさいましたけれども、同じようなことが言えるというふうに思います。したがって、私どもの大きな意味での課題だというふうにはとらえておりますけれども、今のことでまずお答えいたしますことは、医療費の貸付制度などもございますから、そうしたものを御利用いただいて対応していただければというふうに思います。

小池晃君

 貸付制度でやれというのはちょっと余りにひどいですよ。それじゃ対応になってないですよ。今まで二千円ぐらいで済んでいたんですよ、公費負担制度であれば。それがいきなり九十万円取られるということになるという物すごい過酷な負担増になるわけですから。

 私は、激変緩和できない、せめて、その窓口でのやっぱり療養費払い、償還払いにしないというのは、先ほど補装具ではそういう措置も考える発言あったと思うんですが、その程度のことは、その程度のことはやるべきじゃないですか、せめてもの罪滅ぼしとして。

政府参考人(中谷比呂樹君)

 今いろいろ御指摘がございまして、これからよく検討してみたいと、このように思っております。

小池晃君

 本当にこの法案ですね、いろんな問題点、私はまだまだあると思うんです。本当に審議時間、これでは足りないというふうに思うんですが。

 ちょっと、最後になるかと思うんですが、議論させていただきたいのは、義務的経費になるから安定するんだという議論があります。義務的経費にすることは私たちも前進だと思っています。しかし、国の基準を超えれば市町村の負担になることは変わりないんです。やはり障害程度区分ごとにどれだけの補助基準になるのか。例えば、ホームヘルプについて今の基準に比べてどの程度の補助基準になっていくのか。やっぱりこれが示されなければ、幾ら義務的経費になるといっても、当事者の皆さん全然安心できないと。先ほど、下がることは多分ないでしょう。多分ないでしょうじゃ駄目なんですよ。どういうことになるのか。下がらないんなら下がらないんで絶対ないと。

 例えば今の水準でも駄目だと思うんです。支援費制度を導入するときには、これ大体一・五倍、措置時代の平均一・五倍するようなそういう手だてを取っているわけですし、私はやはり、そういうことは明らかにせずに、例えばホームヘルプについて障害程度によってどの程度の補助基準にするのか、あるいは重度障害者の包括支援の場合どの程度の補助基準にするのか、こういうことを示すというのは私、最低限の法案審議の条件ではないかと思いますが、いかがですか。

政府参考人(中村秀一君)

 今度の見直しによりまして、今委員から御指摘のありました重度障害者等包括支援始め重度訪問介護等、その重度者に対する給付も創設することといたしましたし、それから事業につきましても日中と居住と分けるというような新しい新事業体系も創設させていただいております。

 具体的にどういうサービス基準になるか、またその補助、したがって国庫負担の基準がどうなるか。まずそれについては十八年度の予算編成を踏まえる必要がございますし、その後、審議会あるいはその当事者の方々の御意見なども聞きながら来春をめどに決めてまいりたいというふうに考えておりますが、再三申し上げておりますように、実態調査の結果も分かってまいりまして、重度の方の分布等も分かってまいりました。今の国のホームヘルプの基準、二十二万円、月百二十五時間という基準の妥当性というようなことも考える時期に来ておりますので、現在の給付の実態、サービス利用の実態、これからあるべき方向、それから重度者に対する給付を創設したと、そういうことを踏まえまして検討してまいりたいと思います。

 再三申し上げておりますように、現在サービス利用されている方々の水準が大きく変化生じないように配慮すると、適切な水準になるように検討するということはお約束申し上げているとおりでございます。

小池晃君

 それじゃお約束にならないんですって。大きく変化することはないというふうに言われても、大きくというのがどういうものなのか、ぐっと下がって、いや大きくない、小さいというふうに説明するのかもしれないと。これでは本当に当事者の皆さん安心できない。昨日の参考人質疑でも、日本ALS協会の橋本操会長は、重度障害者の包括支援を行われるといっても、国庫補助基準の単価示されずに法案だけ決まることが、そこが不安なんですというふうにおっしゃっていた。

 大臣、やはりこれ本当に皆さん不安がっている。法案の枠組みだけ決めて春に決めますよというのは、順番逆だと思うんですよ。まずどれだけのサービスが提供されるのかということをやっぱりイメージできるようなものを示して初めて、じゃ、その自立支援法で賛成なのか反対なのかという議論になるのであって、枠組みだけ決めておいて後から付いてこいと、これは本当に、全部まあ私に任せてくださいというふうにおっしゃるだけで、これでは当事者の皆さんは安心することできないというふうに思います。

 私は、大臣、障害者の皆さんが本当に安心できるように説明する責任があると思いますが、いかがですか。

国務大臣(尾辻秀久君)

 ですから、今私どもは、サービスの質を下げるといったようなことはしませんということをまずお約束をいたしております。それからまた、そうした中で今後のことをやっていきますということは言っておるわけでございまして、その中の国庫負担基準などの今お話もございましたけれども、これについても今基準として示しております二十二万が妥当なのかどうかといったようなことも私どもの内部では検討を既に始めておるところでございます。

 いずれにしましても、これは来年度予算に絡むものでありますから、予算がしっかり決まるまで私どもが明確に言えるというものでもないということは御理解いただきたいと存じます。

小池晃君

 実態調査に基づいて基準額決めるといっても、現状はそのサービス利用できない自治体も多数あるわけで、今の単純に標準的な利用料を基準にするということになると、御懸念いろいろ出ているように、下がる自治体出てくる危険性もある。

 私は、やっぱりこういう問題、どの程度のサービス提供されるのかということについて、やっぱりしっかり示した上で国会審議やるという、順番が逆だということを申し上げたいし、いろいろとやっているんだとおっしゃるけれども、例えば政省令事項二百十三ある、もうちょっと時間なので質問にはしませんが、政省令事項二百十三の中身一切示されていません。しかも、昨日二百十三項目ということで資料が提示されましたが、これは五月の衆議院の厚生労働委員会に出たものと、世帯の範囲についてと育成医療の経過措置除けば、ほとんど一字一句変わってないものが厚生労働省から提出されました。五か月前と同じ資料を出してきているんですよ。余りにも無責任じゃないですか。

 こういうやり方で国会の審議を正に軽視しているやり方については、私厳しく抗議したいと思いますし、障害者の生活を本当に左右する重大な政省令の中身が一切示されない、補助基準も示されない、そういう中で法案の枠組みだけ通してくれというのは、余りにも虫が良過ぎる無責任なやり方だというふうに思いますが、大臣いかがですか。

国務大臣(尾辻秀久君)

 政省令の数というのはどの法律もそれなりの数を持っておりまして、この障害者自立支援法における政省令の数がほかの法律との比較において大きいものでもないというふうに思っております。それはやはり、法律で骨格を決めて、あと政省令で実際の作業をどうやってやっていくかというようなことを決めざるを得ないところがございますので、今度の法律もそういう意味ではほかの法律と同じような体系にしてあるということでございます。

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