「北方四島」支援事業である「ムネオハウス」(国後島「友好の家」)の入札参加資格をめぐる疑惑で、外務省は十二日の参院予算委員会で、“根室管内のBランク業者が一社のみ”となる入札参加資格検討結果を鈴木宗男衆院議員に「説明に行った」と認めました。日本共産党の小池晃議員の追及に答えたもの。十一日の証人喚問で、日本共産党の佐々木憲昭議員の尋問にたいし、鈴木氏は「個別具体的な企業の話はしていない」と証言しており、偽証の疑いが強まりました。 外務省の調査報告書(四日)によれば、鈴木氏は九九年五月二十七日、「ムネオハウス」の入札参加資格について説明に来た外務省側に「根室管内のBランク以上の業者は何社か」と質問しています。小池氏は、その後外務省が回答したかどうかをただしました。 外務省の斎藤泰雄欧州局長は、鈴木氏の意見を取り入れた入札参加資格案の「検討結果を説明に行ったと理解している」と答弁しました。 この「検討結果」は、支援委員会事務局がまとめた五月二十七日付の文書にも、「根室管内Bランク…1社のみ(渡辺建設工業)」と明記されています。 小池氏は「外務省側が『渡辺建設工業一社しかない』と鈴木氏に説明したということは、鈴木氏の証言は明らかに偽証だ」とのべ、鈴木氏の参院での再喚問を求めました。 はしけ入札資格ねじ曲げ 地元企業念頭の「文書存在」と外務省 日本共産党の小池晃議員は十二日の参院予算委員会で、「北方四島」支援事業の自航式はしけ発注に関し、自民党の鈴木宗男衆院議員が自分の後援会幹部の業者に受注させるよう入札参加資格をねじ曲げていたのではないかと追及しました。 このはしけについて外務省の調査結果では「鈴木議員の関与は確認されなかった」と結論づけていたものです。北海道開発局(当時)の入札参加資格によると、船舶製造の基準でAランクの業者が受注できる価格は千五百万円以上、Bランクは三百万円以上千五百万円未満となっています(表)。 国後(くなしり)島の自航式はしけ「希望丸」(一九九八年供与)は一億三百九十五万円、色丹(しこたん)島の「友好丸」(二〇〇一年供与)は一億八千九百万円で、どちらもAランクの業者しか受注できない価格です。 ところが、両方とも落札したのはBランクの「根室造船」。同社社長は鈴木氏の後援会幹部で、九六年から九九年までに二百四十万円を献金しています。小池氏は「なぜ本来資格のないBランクの業者が受注できたのか」と質問。外務省の斎藤泰雄欧州局長は「希望丸」の入札参加資格について「AまたはBに格付けされたもの」と答弁しました。 そのいきさつについて斎藤局長は、支援委員会の「競争参加資格結果報告書」に、「地元企業も競争に参加させるべきとの政策判断にもとづき、当初の審査基準を緩和した経緯があります」という記述があること、審査基準を一部緩和した際「根室造船が念頭にあったことをうかがわせる手書きの書き込みのある文書が存在している」ことを明らかにしました。小池議員は「はしけだって真っ黒だ」と追及。再調査を求めました。 “各省汚染、政府は全調査を” 参院予算委で小池議員 コンゴ駐日大使IDカード介入 「北方領土」返還不要発言 コンゴ人秘書への奨学金支給 「霞が関全体が“ムネオウイルス”に汚染されている」――。日本共産党の小池晃議員は十二日の参院予算委員会で、自民党の鈴木宗男衆院議員をめぐる疑惑について小泉純一郎首相の認識をただし、洗いざらい調査するよう迫りました。 重大な国際問題 一つは、ヌグウェイ駐日コンゴ臨時代理大使へIDカード(外交官身分証明票)を発給しないよう、鈴木氏が外務省に圧力をかけていた問題です。「重大な国際問題だ」とただす小池氏に対し、小泉首相は「おかしいと思っている」と一言のべただけ。小池氏は「(臨時代理大使の任命には受け入れ国の同意は必要ないという)国際社会のルールを議員の介入でゆがめた。日本政府の対応は誤りだったとコンゴ政府に伝え、謝罪すべきだ」と迫りました。 川口順子外相は「おかしい対応があったことは遺憾。コンゴ政府に経緯を説明して、理解をあおぐべきだ」とのべました。 “国益を損なう” 次に、日ロ領土問題をめぐり、鈴木氏の「島が返還されても国として何の利益にもならない」「領土返還要求を打ち切って、四島との経済交流を進めて行くべき」との発言が外務省の内部文書で明らかになった問題です。 小池氏は「私たちは『四島返還』の立場ではないが、鈴木氏の立場・主張は、日本の国益を損なう、見過ごすことのできない大問題だ」と指摘しました。 小泉首相は「驚くべきとんでもない話」「事実なら重大な発言だ」と繰り返しました。 小池氏は、鈴木氏がこれまで政府・与党を代表してロシア首脳と会談したことを指摘し、「鈴木議員が何を語ってきたのか、総理の責任で徹底的に調査し、明らかにすべきだ」と追及。小泉首相は「鈴木議員の発言に政府は影響されない」とのべるにとどまりました。 奨学金1083万円に さらに、鈴木氏の私設秘書であるムルアカ氏が、旧科学技術庁から二年間(九九年三月から〇一年三月)で一千八十三万円の奨学金を受けていた問題です。 ムルアカ氏は当時、すでに鈴木氏の秘書として有名でした。小池氏は「内閣官房副長官の私設秘書に奨学金が出されていた。こんなことが許されるのか」と指摘。「どんなに優秀な研究者でも、ムルアカ氏が鈴木氏の秘書であることは周知の事実。鈴木氏の私設秘書の給与を国が税金で出していたということにもなる重大な問題だ」と迫りました。小泉首相は、「研究者として受給資格があるならば問題ない」との答弁を繰り返しました。 小池氏は、文部科学省に対して鈴木氏からどのような働きかけがあったのかを調査し、報告すべきだと求めました。 論戦ハイライト ムネオ疑惑 小池議員の追及 ねじまげられた入札基準 日本共産党の小池晃議員が十二日の参院予算委員会で行った、「北方四島」支援事業の自航式はしけと、「ムネオハウス」の入札介入疑惑についての論戦のハイライトを紹介します。 希望丸・友好丸 Aランクの仕事をBランクに 「根室造船うかがわせる書き込みあった」外務省局長 小池議員 支援事業で建造されたはしけ・希望丸の入札問題です。国土交通省にうかがいますが、北海道開発局で船舶の製造の場合Aランク、Bランクの企業が受注できる価格はいくらになっていますか。 林延泰北海道局長 Aランクの場合の発注標準の金額は千五百万円以上、Bランクは三百万以上、千五百万未満です。 小池 当時、Aランクの企業は北海道で何社ありましたか。 林 船舶関連ということで拾い上げましたら、三十三でした。 小池 根室造船は入っていますか。 林 入っていません。 小池 根室造船はどのランクですか。 林 Bランクです。 小池 Bランクというのは三百万円以上、千五百万円未満の船しか受注できない会社です。ところが、その根室造船が一億円以上のはしけ・希望丸を受注している。なんでそんなことができたんだろうか。外務省にお聞きしたい。希望丸の入札参加資格はどのランクと示したのですか。 斎藤泰雄欧州局長 AまたはBに格付けされたものです。 小池 大変おかしいと思うんですね。参加資格ランクAだったらわかるんですよ。一億円の船つくるんですから。ところが、Aだけじゃなくて、今度の入札参加資格はBランクも参加できた。一億円以上かかるような船を千五百万円未満の受注しかできない企業も参加できるよう設定して、結論としてはBランクの根室造船が受注したんです。友好丸もまったく同じなんですね。友好丸は一億八千万円。これは、入札参加資格のねじまげですよ。なんで、AまたはBとしたのですか。 斎藤 報告書(四日)のなかで希望丸について、当初の審査基準を一部緩和したことを示唆する文書があると記載されています。調べたところ、支援委員会事務局の文書として、競争参加資格審査結果報告書というものがありまして、そのなかに、「なお、審査の過程において地元企業も競争に参加させるべきとの政策判断にもとづき、当初の審査基準を一部緩和した経緯があります」という記述があることが分かりました。それから、審査基準を一部緩和いたしました際に、根室造船が念頭にあったことをうかがわせる手書きの書き込みのある文書が存在しています。 小池 重大な事実ですよ。根室造船にやらせるために、入札参加資格をねじまげたんですよ。いまの文書ただちに提出していただきたい。決定過程において、根室造船になんとか仕事をまわしたい。そのためには、Aランクという資格ではだめだ。だから、無理やりBランクということに広げたわけです。この政策決定過程の変化は鈴木宗男氏の働きかけがあったからだ、と思わざるをえないんですが、どうですか。 斎藤 文書はありました。その趣旨を確認できなかったということです。 小池 この問題は徹底的に解明する必要がある。「はしけ」だって真っ黒だというふうに思う。総理、どうですか。 小泉首相 疑問があれば、その解明に外務省が努力すべきだと思います。 小池 再調査すべきだと思いますが、外務大臣どうですか。 川口順子外相 結果として報告書に経緯として鈴木議員の関与については明らかではない、というふうに書かせていただいたわけです。 小池 こういう姿勢では真相の解明はできないということを申し上げたいと思います。 ムネオハウス 参加資格の点数下げ 首相「どうも変」 財務相「政治的に動いている感じ」 小池 ムネオハウスの問題で、外務省の報告書によれば、九九年五月二十七日に鈴木宗男氏がこう言ったという記載があります。「根室管内にBランク以上(の企業)は何社か」。その後もちろん説明に行ったと思いますが、事実関係を教えていただきたい。 斉藤 検討結果を説明に行ったと理解しています。 小池 ムネオハウスの入札資格の決定について、報告書はこう言っています。当初案においては総合評定が1200点以上であることとされていたのに、入札公告では入札参加資格は同900点以上とされている。最初は1200点以上だったのが、なぜか900点以上になっている。なぜこういう変更を行ったのでしょうか。 斉藤 その経緯について明らかにするものは見つかりませんでした。 小池 なぜ900点に下げたのか、重大な疑惑があるんです。 外務省の報告書を見ると、経営事項審査における総合評点の点数は、九九年当時、渡辺建設工業は916点、犬飼工務店は906点。これで900点という意味が分かるんですよ。はしけは根室造船に落とすためにBまで広げた。今度は渡辺建設工業に落とすために900点以下に下げたということじゃないですか。 斉藤 推測の域を出ないと思います。 小池 財務大臣、いま「そういうこっちゃ」というふうにおっしゃいましたが、どうですか。(笑い) 塩川財務相 そこに非常に政治的に動いているなという感じですね。(笑い) 小池 渡辺建設工業の発注できる工事の金額は一億円以上二億五千万円未満ですね。 林北海道局長 そういうことで結構です。 小池 ムネオハウスは四億円以上。とても渡辺建設工業が受注できる仕事じゃない。これも入札基準が同じようにゆがめられたわけです。 900点まで下げたのも、鈴木議員が関与したと見るのが当然の見方だと思うんですが、総理、どうですか。 小泉首相 私も確認はできませんが、お話を伺っているとどうも変だなという気がするんですが。(笑い) 小池 ぜひ再調査すべきだと思う。 川口外相 強制権のない調査とご理解いただきたい。 小池 鈴木宗男議員は、証人喚問の中で「個別具体的な企業の話はしていない」と言っているんです。しかし、先ほどの外務省の答弁で、こういうことを説明したのは一社しかないんだと、根室管内には。そしてそれは渡辺建設工業だと説明したということにほかならない。その点でいえば、鈴木宗男さんの昨日の証言は、明らかに偽証だと思います。当委員会においても、鈴木宗男衆院議員を証人喚問するということを求めたいと思います。
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