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食料自給率の向上を真剣にめざし、安心して農業にはげめる農政への転換を
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(1)価格保障・所得補償など、農業経営をまもり、自給率向上に必要な制度を抜本的に充実する。 (2)農業に従事する人の高齢化が急速に進行しているいま、現在農業に従事している農家はもとより、農業の担い手を増やし定着させるための対策を抜本的に強化する。 (3)日本農業の自然的・社会的条件や多面的機能を考慮し、各国の「食料主権」を尊重する貿易ルールを確立し、関税・輸入規制措置など必要な国境措置を維持・強化する。 (4)農業者と消費者の共同を広げて、「食の安全」と地域農業の再生をめざす。 |
日本共産党は、こうした方向を踏まえて、わが国に緊急にもとめられる新しい農政について以下の提言をおこない、その実現のために全力をあげます。
わが国農業の再生にとっていまもっとも必要なのは、農業経営を安定して持続できる条件を保障するための制度を整備・充実することです。
生産者米価が底なしの低落を続け、他の農畜産物も生産者価格が下落する一方で、燃料費や資材費、エサ代などの高騰がつづき、経営は悪化の一途をたどるばかりです。この状況を抜本的に改善してこそ、担い手の確保や耕作放棄地の解消、地域農業の振興に展望が開けます。
その打開策の中心は、生産コストをカバーする農産物の価格保障制度です。農業生産は、自然の制約を大きく受け、零細経営がほとんどのため、農産物価格を公的・政策的に支えなければ再生産が確保できません。農産物の販売価格を一定の水準で維持する価格保障は、販売量が増えるにつれて収入増に結びつく政策であり、農家の生産意欲を高めるうえで決定的です。かつてイギリスが、手厚い価格保障をテコにして食料自給率を回復・向上させたように、自給率が極端に低い今日の日本でこそ、充実した価格保障制度を確立すべきです。
また、こうした価格保障制度とあわせて、それを補う適切な所得補償も必要です。所得補償は、農産物の生産量や販売量とはかかわりなく、一定の基準で農家の所得を直接補償(直接支払い)する仕組みであり、国土と環境の保全など農業のはたす多面的な役割の維持、中山間地域など生産コストがかさむ条件不利地での営農の保障、食の安全や環境に配慮した有機農業の育成などにとって必要な制度です。
日本共産党は、価格保障制度を基本に、所得補償制度を適切に組み合わせて、農業経営を安定的に持続させる条件をつくります。
米は日本人の主食です。食料自給率が全体として低下するなかで、米は自給を維持している点でも、農業経営の主力となっている点でも、文字どおり日本農業を支える柱です。米の生産を維持するための価格保障制度として、農家の販売価格が平均的な生産費を下回った場合、その差額を公的におぎなう「不足払い制度」を実施します。06年産の生産者米価(米価格センターの全銘柄平均落札価格)は1俵(60キログラム)1万4826円で、生産費の平均1万6824円を約2000円も下回りました。この米価で得られた農家の1時間あたりの労働報酬はわずか256円と、その劣悪ぶりが指摘されている最低賃金の全国平均額(683円)さえ大きく下回っています。07年産ではさらに下落しているのが、現状です。
(1)少なくとも1万7000円以上の生産者価格を実現する
過去3年間の平均生産費(04〜06年では1俵平均1万7000円)を基準とし、その年の米価が基準額を下回った場合、差額を「不足払い」する制度を創設します。これによって07年産米については少なくとも1万7000円以上を保障します。この制度は、政府による全量買い入れ、米流通の全面的な規制など、かつての食管制度(94年度に廃止)のもとでおこなわれていた方式にもどるのではなく、民間流通が定着している現状を踏まえ、産地や品質を考慮しながら生産コストを保障する仕組みです。価格保障制度としての「不足払い」は、農業大国のアメリカでも、WTO(世界貿易機関)にあわせて90年代半ばにいったん廃止したものを、価格暴落が続くもとで02年に復活させています。このことは、「市場原理一辺倒」では農業はまもれないことをはっきりとしめしています。
米の「不足払い」とあわせて、水田のもつ国土・環境保全の役割を評価し、中山間地域にくわえて平地にも直接支払いを拡大し、当面10アールあたり1万円程度の所得補償を実施します。これを価格に換算すると、1俵あたり約1000円が上積みされることになり、07年産米の場合、「不足払い」分とあわせて1俵約1万8000円の米生産による収入を確保します。
(2)米の需給や流通の安定に政府が責任を果たす
需給計画にゆとりをもたせ、備蓄制度を改善する……米の需給や価格の安定に政府が責任をもつべきです。2年続けて作況指数が90という不作が続いても国内産米の不足がおきないよう、備蓄米は最低150万トンを確保し、不足時以外の売り渡しを中止して、3年以上経過したものに限って食用以外に振り向ける「棚上げ方式」を導入します。それに見合って、生産計画は需要見込みより50万トン程度のゆとりをもたせます。
米の買いたたきを規制し、計画的な流通に助成措置を講ずる……大手流通企業による買いたたきや、米価下落と消費者の“米離れ”の原因となる産地・品種・品質の偽装表示など、無秩序な流通を規制するルールを確立します。年間を通じて計画的に出荷・販売する業者・団体にたいして、金利・倉庫料など必要な助成をおこないます。
米の生産調整は、転作作物への手厚い支援と並行して実施する……米の需給調整にあたっては、ピーク時(1962年)にくらべて52%(2005年)にまで低下した米の需要拡大に力を入れることを優先します。生産調整をおこなう場合は、未達成者・地域への補助金カットといった強権的なやり方をやめ、転作作物の条件を思い切って有利にし、農家が自主的・自発的に選択できるようにします。
水田稲作が適しているわが国の条件を生かして、茎や葉も丸ごと家畜用エサにできる発酵飼料稲や飼料米の実用化に力をそそぎます。当面、耕作放棄地や休耕田などでの生産を広げ、単位面積あたりで食用米なみの所得を補償します。
(3)ミニマムアクセス米の義務的輸入を中止する
わが国はいま年間77万トンもの米を輸入しています。これはわが国の年間消費量の8・4%に相当します。この輸入米(ミニマムアクセス米)が膨大な在庫となって国内産米を圧迫し、米価下落の大きな要因となっています。政府は、輸入があたかもWTO農業協定上の「義務」であるかのようにいいますが、本来、輸入は義務ではなく、“輸入したい人にはその機会を提供せよ”というものにすぎません(99年11月の政府答弁)。義務的輸入は中止します。
国際的に需給がひっ迫するもとで、自給率の極端に低い麦・大豆・飼料作物などの増産が急務となっています。とりわけ、水田を利用したこれらの作物の定着と増産は、米の需給安定と水田の多面的な利用をすすめるうえでも重要です。
麦と大豆にも価格保障として、生産費と販売価格との差額を補てんする交付金制度を復活し、充実させます。加えて、水田からの転作の定着を図るため、10アールあたり5万円の奨励金を、所得補償として支給します。
畜産や果樹・野菜・甘味資源作物などを対象とした価格安定対策や助成制度を改善・拡充するとともに、野放しの輸入を規制するルールづくりをすすめます。飼料高騰によって畜産経営が破綻(はたん)することを回避するため、現在の飼料供給安定基金への国の支援を強めるとともに、新たに特別の基金を創設して飼料価格の安定をはかります。
〈価格保障・所得補償費を農業予算の柱に位置づける〉
以上の(1)〜(3)の対策に必要な予算は、現在の流通量や生産費、価格などを踏まえると9000億円です。08年度の国の農業関係予算案のうち価格・所得対策予算は5400億円であり、4000億円程度を追加すれば実施は可能です。08年の農業関係予算には、価格・所得対策予算を上回って、農業土木事業費が6700億円ふくまれています。不要不急な土木事業の大胆な削減・見直しをおこない、農家経営の安定に必要な価格保障・所得補償費を農業予算の主役にすえるべきです。小泉「構造改革」によって削減された農業予算全体も日本経済の基幹的分野にふさわしい水準にもどして、必要な予算を確保します。これらの施策を実行しながら、自給率50%台の早期達成をめざします。
食料自給率を引き上げるためには、耕作放棄地を広げないように農地を保全するとともに、地域農業の担い手を確保・拡大することが欠かせない課題となります。耕作放棄地をそのままにしておけば、地域の農地全体に、水管理や病害・害虫・雑草などの問題で大きな悪影響をおよぼします。これまで農業を担ってきた多くの高齢者が「現役引退」を目前にするなかで、今後、だれが農地を管理し、だれが食料生産と農村を担うかという問題は、たんに農家だけではなく、日本社会全体が真剣にむきあうべき課題です。
(1)多様な家族経営を維持・発展させる……わが国の農業を実際に担っているのは、専業や複合経営、兼業など、大小の違いはあってもさまざまな形態の家族経営です。また、農家の共同による生産組織、集落営農なども多様にくりひろげられています。とりわけ、水管理やあぜ草刈り、農道や用水路の管理などは、経営規模の大小を問わず広範な農家の共同によって担われています。
今後の農業の担い手も家族経営が主役であり、担い手対策の中心に、多様な家族経営を維持することを柱にすえます。規模の大小で農家を選別する「水田・畑作経営所得安定対策」(「品目横断対策」)をやめ、農業をつづけたい人すべてを応援します。価格保障など営農条件の改善による後継者の確保をすすめ、農家として存続できるよう支援します。高齢化や小規模な家族経営の困難をおぎなう機械の共同利用や農作業の受委託、集落営農などの取り組みを応援し、農家の維持に努めます。
(2)地域農業で重要な役割をはたしている大規模農家や生産組織を支援する……離農者の農地や農作業を引き受けてがんばっている大規模農家、集落組織のために農地利用の再編が迫られている地域も少なくありません。こうした大規模経営や生産組織などが地域農業を支えている現実の役割を重視して、支援を強めることは当然です。規模拡大に見合う大型機械などの導入・買い換えのさいの投資コストをおさえるために、機械・施設の購入・更新などへの助成、低利融資、負債の利息軽減、土地改良負担の軽減措置などを実施します。
生産組織に対する支援は、地域の自主性を尊重しながら、複雑な資金管理や実務が負担にならないように、行政や農協などによる支援を強めます。
(3)新規就農者の参入・定着を支援する……新規就農者に月15万円を3年間支給する「就農者支援制度」を確立します。職場定年後の就農者にたいする支援制度をつくります。
(4)株式会社への農地取得の解禁に反対する……株式会社による農地の所有や利用を自由化すれば、「不採算」を理由に耕作を放棄したり、より利潤の見込める用途のために農地を転用することなどによって、地域農業が危機に直面する懸念が強まります。また、「みずから耕すものに農地取得の権利を認める」という現在の農地制度の大原則をもそこない、周辺の家族経営との間で地域農業の共同管理などに支障がおきるおそれもあります。株式会社への農地取得の解禁に反対します。
世界ではいま、食料を市場まかせにすることによる害悪が明らかになり、各国の「食料主権」を保障する貿易ルールの確立をもとめる流れが広がっています。「食料主権」とは、各国が、輸出のためでなく自国民のための食料生産を最優先し、実効ある輸入規制や価格保障などの食料・農業政策を自主的に決定する権利のことです。国連人権委員会が04年に採択した勧告は、「各国政府に対し、食料に対する権利を尊重し、保護し、履行するよう勧告する。世界貿易機関(WTO)のアンバランスと不公平に対し、緊急の対処が必要である。いまや『食料主権』のビジョンが提起しているような、農業と貿易に関する新たなオルタナティブ・モデル(代替モデル)を検討すべきときである」と明確にのべています。この勧告には日本も賛成しました。各国の「食料主権」を尊重する立場に立って、WTO農業協定を根本から見直すべきです。
世界各国では、農業をめぐる自然的・社会的条件や、農業のはたしている多面的機能の国ごとの違いを踏まえて、生産条件の格差から生まれる不利を補正するため、関税や輸入規制など必要な国境措置がとられています。実際に農産物輸入の平均関税率をみてみると、農産物輸出国であるEU(20%)やアルゼンチン(33%)、ブラジル(35%)、メキシコ(43%)は、日本(12%)よりもはるかに高く設定しています。関税など国境措置を維持・強化することは当然です。
たとえば、オーストラリアの1経営単位あたりの平均経営面積が3385ヘクタールなのにたいし、日本の農家の平均経営面積は1・8ヘクタールです。平地の少ない国土で家族で営々と農耕を営んできた歴史をもつ日本農業の特徴を考えれば、国境措置などのさまざまな規制措置なしに、条件を異にする外国と「競争」することにはもともと無理があります。
いま、需要増や気候変動による生産の不安定化、投機などによる高騰で、インド・ベトナム・ウクライナ・アルゼンチン・ロシア・中国などの穀物輸出国は、国内むけの供給を優先して輸出の規制・抑制に踏み出しています。日本が必要な国境措置を撤廃し、国内生産の縮小を放置したままにしておけば、日本の経済・社会が重大な危機に直面することは目に見えています。
日本が位置する東アジアでは、人口の増加と経済成長、市場開放などで自給率を低下させる国が多く、WTO体制のもとで、アメリカの多国籍農業関連企業の支配力が強まり、食料輸入を大幅に増やしています。東アジア各国の農業の共存を目標に、この地域内での食料不足への共同した対応が今後の課題となります。水田稲作を中心にした家族経営と農村経済の安定、国土・環境保全、食料自給率の向上などで協力を強めていくことが重要です。中小農家にたいする生産技術や農業基盤整備への援助や、災害・気候変動に対処する食料の共同備蓄、鳥インフルエンザや有害物質にたいする衛生管理や食品安全の共同のルールの確立と援助、自然エネルギーの利用拡大による農村の生活向上など、力をあわせるべき課題はたくさんあります。こうした共同を積極的にすすめます。
わが国が諸外国と結ぶFTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)は、農業については双方の国の農業生産が互いに利益になるような内容がめざされるべきです。それぞれの協定ごとにその内容を検討し、わが国の農業と食料をはじめ国民の利益に重大な打撃をあたえるものとなった場合には反対します。
最近の中国製ギョーザ中毒事件をはじめ、昨年来の、食品の産地・品質の偽装、添加物の表示違反、賞味期限の改ざんなど、食の安全・安心を大きくゆるがす事態が頻発しています。輸入食品からの残留農薬の検出、消費者には見えないままでの遺伝子組み換え食品の横行、BSE牛肉の不安など、「食の安全」をめぐる問題が山積しています。これらの問題は、根本的には日本の食料自給率を抜本的に高めることによって解決をはかるべき問題です。同時に、食に関する信頼を高め、安全・安心の生産・流通の拡大など、農業者と消費者の共同を広げて、「食の安全」と地域農業の再生をめざします。
(1)輸入食品の検査体制を強化し、原産国表示の徹底をはかる……膨大な輸入食品のうち、港や空港で検査されるのは10%にすぎません。輸入食品の水際での検査率を50%以上に引き上げるとともに、厳格な検疫・検査を実施し、その結果が明らかになるまで市場に出回らないようにします。原産国表示を徹底します。遺伝子組み換え食品の承認検査を厳密にし、遺伝・慢性毒性、環境への影響に関する厳格な調査・検証・表示を義務づけます。
(2)農産物・加工品の監視体制を強化し、製造年月日表示を復活する……くず米の混合品を「精米」と表示したり、外国産米入りや産地の違う米を産地偽装するなど、“もうかりさえすればなんでもあり”の事態を一掃するために監視体制を強め、違反者にたいする罰則を強化します。また、食品に関する表示制度を一本化し、製造年月日表示を復活させます。
卸売市場の公正な運営をはかるとともに、広がっている相対取引をふくめて、大手スーパーと産地、中小小売りが対等な立場で交渉できる協議会を設置するなど、公正な流通ルールの実現をめざします。
(3)BSE対策の全頭検査を維持する……アメリカのBSE対策のずさんさはなんら改善されていません。アメリカの圧力に屈することなく、わが国独自の対策を従来どおりつらぬきます。米国産牛肉の輸入は、アメリカ側の安全体制が確立されないならば中止すべきです。自治体のおこなう「全頭検査」への国の補助金を08年度以降も継続します。
鳥インフルエンザをはじめとする各種感染症の監視体制を強め、発生の影響を最小限にとどめるよう機敏に対処します。殺処分や移動制限で打撃を受ける農家・業者への補償を万全にすすめます。感染爆発が起こったさいの医薬品等の備蓄、ワクチン緊急生産体制の強化などの備えを抜本的に強化します。
(4)地産地消や食の安全を重視した地域づくりをすすめる……「食の安全都市宣言」「地産地消宣言」などをかかげる自治体が生まれています。直売所や産直がにぎわい、都会の消費者との交流もさかんです。学校給食に地場農産物を供給する取り組みも広がり、高齢者や女性、兼業農家などが元気に参加する例も生まれています。こうした地域の自主的な取り組みを自治体や国が積極的に支援します。
地元の特産物や資源を生かした農産加工や販売も、農産物の需要を拡大し地域の雇用を増やすうえで重要です。地元産の小麦や米粉を活用したパンや加工品の学校給食での普及・拡大などを支援し、国産麦や大豆の需要拡大などに取り組みます。農産加工への自治体の支援策について国も援助するようにします。
「効率化」一辺倒で農薬や化学肥料に過度に依存した農業生産のあり方を見直し、有機農業など生態系と調和した環境保全型の農業、「地産地消」や「スローフード」への取り組み、食文化の継承・発展を支援します。
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