2007参議院選挙政策
12の重点政策
2007年6月15日 日本共産党中央委員会
(1)
参議院選挙がまぢかに迫りました。この間、政権は小泉内閣から安倍内閣へと変わりましたが、国民のくらしや福祉、雇用はますます深刻な事態におちいり、平和と民主主義をめぐっておどろくほどの暴走がくりひろげられてきました。
日本共産党は、安倍・自公政治によるくらしと平和をこわす暴走に正面からたちはだかり、ストップすることを選挙戦で訴えてたたかいます。
「貧困と格差」が社会のすみずみを覆い、ふつうに働いていてもまともな生活を維持することさえ困難な人びとが増大しています。定率減税の廃止や住民税増税、医療・介護保険制度のあいつぐ改悪、さらには、政府によるでたらめな年金運営によって「消えた年金」が大問題になるなど、多くの国民が将来の生活に不安を感じる状況が生まれています。その一方で、大企業・財界と一部の大金持ちは、バブル経済の時さえ上回る史上空前の利益を前にして、働く国民の苦境を尻目に、「いざなぎ景気をこえる最長の好景気」を謳歌しています。日本経団連はその上なお、「消費税を増税してでも、企業減税のいっそうの実行を」と迫っています。安倍・自公政権にこのまま政治をまかせていたら、これまで私たちが、みずからの汗と努力で築いてきたつましいくらしさえ、根こそぎ失われかねません。
平和・民主主義をめぐる暴走も目にあまります。安倍首相は、「在任中の憲法改定」をかかげ、この参院選でも改憲を争点にすると公言しています。そのための改憲手続き法は、通常国会ですでに強行されました。自民党などは2010年にも国会で憲法改定の発議をおこなうプログラムをもっています。安倍内閣は、憲法そのものを変える前にも、日本の防衛とは無関係に武力行使ができるよう、政府の憲法解釈を変えようとしています。こうした動きの裏には、地球規模で先制攻撃戦略をおしすすめ、日本も武力行使の道にひきずりこもうとするアメリカの強い要求があります。安倍首相自身、米国との「血の同盟」を主張し、改憲の目的が「アメリカと肩を並べて武力を行使する」ことにあるといっています。
事態をいっそう危険で深刻なものにしているのは、国民生活を顧みず、改憲につきすすむ勢力の中心に、日本の過去の侵略戦争を「正しい戦争だった」という歴史観に立ち、戦前・戦中の侵略国家・軍国主義日本を「美しい国」だったと考える集団―「靖国」派が居座っていることです。安倍首相が、「従軍慰安婦」問題で「強制性はなかった」などとのべ、靖国神社への公式参拝と実際には同じ意味をもつ「真榊」奉納を実行したのはその典型的な現われでした。
一方で、この間、自衛隊の情報保全隊が、政府・自衛隊に都合の悪い国民の動向と運動を日常的に監視しているという、基本的人権を否定する憲法違反のおそろしい活動をしていることが明らかになりました。
侵略戦争をまったく反省しない勢力が、ふたたび海外で戦争できる憲法を手に入れ、国民の監視活動を当然視する軍事組織が、憲法上、あらためて軍隊として公然と認知され、国民の上に君臨する―こんな日本は、「美しい」どころか、日本国民と世界の人びとにとって、「恐ろしい国」―軍国主義日本の復活以外のなにものでもありません。
安倍政権のこうした国民無視と暴走を一体になってすすめているのが、連立政権の一翼をになっている公明党の存在です。公明党が1999年に自民党と連立政権を組んでから8年が経過しました。この間、国民の新たな負担増総額は13兆円にものぼりました。4人家族では、実に40万円もの負担です。このなかには、公明党が先頭に立っておしすすめ、いま列島をゆるがす大問題になっている定率減税廃止などによる大増税も含まれます。マスメディアが指摘するように、まさに「増税戦犯」です。
また、教育基本法改悪や改憲手続き法=国民投票法の強行も、公明党自身が“成果”と自賛しているように、公明党の存在を抜きには語ることができないものです。なかでも、防衛庁の省昇格と教育基本法改悪は、公明党がみずからの「実績」として誇示するための「児童手当の拡充」と取引して成立させたものでした。当時のある全国紙は、「余りに筋違いの取引だ」とする社説までかかげる党利党略ぶりでした。
ところが、公明党は、あたかもみずからが「福祉の党」「平和の党」であるかのように主張し、こうした悪政を「善政」であるかのように描き出して国民に押しつけたのです。自民党の暴走にブレーキをかけるふりをしながら、アクセルを踏む―ここに公明党の反国民的な「存在意義」があります。
しかも、公明党は、この間、創価学会との「政教一体」の関係をむきだしにしてきました。創価学会は、1970年、言論出版妨害事件をひきおこし、池田大作会長(当時)がみずから「猛省」するとともに、公明党との「政教分離」を公約したはずでした。ところが、この3〜4月にたたかわれたいっせい地方選挙の結果について、創価学会は公明党公認候補が全員当選したことを「創価完勝」と呼ぶだけでなく、いまでは、公明党の議員にたいして「議員になれたのは誰のおかげだ」などと“恫喝”までしています。
侵略戦争に無反省な「靖国」派と、「政教一体」で悪政をおしすすめる公明党・創価学会は、悪政推進の“最悪のコンビ”といわなければなりません。
(2)
こんどの参院選のもう1つの焦点は、こういう安倍・自公政権にたいして、どの党が正面から立ち向かうことができるかが問われることです。いまマスメディアなどでは、「二大政党」論がしきりに強調され、「自民か、民主か」の対決が、選挙の最大の“見所”であるかのようにいわれています。
いま民主党は、しきりに自民党との「対決」を演出していますが、この間、同党がおしすすめてきた路線は、自民党政治とほとんど変わるところのないものでした。経済問題では、「構造改革」路線をすすめ、労働法制の規制緩和や介護保険法改悪、母子家庭への児童扶養手当の削減、大企業減税などを主張してきました。軍事問題や憲法問題でも、防衛省昇格や海外派兵の本来任務化に賛成し、成立した改憲手続き法は事実上、民主党案そのものでした。日米軍事同盟の維持・強化では自民党とほとんど同じ立場にたち、改憲路線でも自民党と足並みをそろえてきました。「集団的自衛権行使」の問題でも、海外での武力行使を認めることでは自民党と変わりありません。さらに、少なくない「靖国」派が民主党内にも存在し、「従軍慰安婦の存在の否定」「侵略戦争の美化・肯定」という点では、自民党とまったく同根の流れを抱えています。
民主党が、自民党とほとんど同じ立場に立脚していることは、日本経団連との関係でも明りょうです。民主党は、党の政策立案にあたって日本経団連と懇談し、みずからの政策を評価してもらい、それに応じて献金を受けとるシステムにしっかり組み込まれています。こういう党では、国民の要求がみえず、与党と悪政を競いあうのも当然です。
(3)
私たちは、安倍・自公政権の国民無視の悪政、平和・民主主義破壊の暴走を食い止めるためには、「たしかな野党」である日本共産党の議席を伸ばすことが、いちばん確実な道だということを訴えます。
安倍・自公政権の反国民的暴走をストップする議席……日本共産党の議席は、安倍・自公政権の反国民的暴走をストップさせるための、もっともたしかな議席です。「貧困と格差の広がり」の根源にあるのは異常な大企業中心主義です。この根本にメスを入れないかぎり、国民の生活不安は解消されません。
憲法を変えて海外での戦争への参加=武力行使につきすすむ動きの根本には、日米軍事同盟絶対のアメリカいいなりの政治のゆがみがあります。この動きを、侵略戦争と植民地支配を正当化しようという「靖国」派がすすめようといういま、戦前・戦後を通じて、いっかんして平和・民主主義、国民主権の旗をかかげつづけてきた日本共産党の議席こそ、こうした暴走にストップをかけるもっともたしかな力です。
自公、民主の共同での間違った政治に反対をつらぬく議席……日本共産党の議席は、自公、民主が共同ですすめる間違った政治に反対をつらぬく議席です。
昨年、防衛庁が省に昇格されるとともに、自衛隊の海外任務が本来任務に格上げされました。これは、いずれも自公とともに民主党が賛成に回って強行されたものです。ことしの通常国会では、改憲手続き法=国民投票法が成立しましたが、これは途中までは与党と民主党が共同で推進した法律で、できあがった内容は「ほぼ民主党案にそった法案」(前原前代表)でした。労働法制の規制緩和や介護保険改悪でも、与党とともに推進してきたのが民主党でした。自民と民主がきそいあってすすめる悪政反対をつらぬくためにも、日本共産党の議席はもっともたしかなよりどころとなります。
草の根と連携し、国民の要求で国政を動かす議席……日本共産党は現在、衆参ともに9議席ですが、国民の草の根の力と連携して国政をダイナミックに動かしてきました。この間、不払いとなっていた852億円にものぼる「サービス残業」代を支払わせたのは、職場の運動と共同してくり返し国会で追及し、厚生労働省に「サービス残業根絶」の通達を出させることができたからです。「偽装請負」に苦しむ労働者の声をふまえ、それを国会で追及したことによって、直接雇用を広げる成果もかちとることができました。
政治の不正・腐敗をただし、議会制民主主義を守る議席……日本共産党の議席は、政治の不正・腐敗をただし、議会制民主主義を守るたしかな議席です。「政治とカネ」にかかわる永田町と国民との溝の深さが問われています。そういう政界にあって、日本共産党は「清潔な政治姿勢」をつらぬいてきました。昨年から今年にかけて、政治家のカネをめぐる疑惑を次つぎと明らかにしてきたのは日本共産党です。日本共産党は、政治腐敗の温床となっている企業・団体献金の禁止を堂々と主張しています。また、国民の税金を分け取りする憲法違反の政党助成金の受領をきっぱり拒否し、その廃止を強く主張しています。
世界の諸国民と日本国民の平和の願いをつなぐ……日本共産党の議席は、世界の諸国民と日本国民の平和の願いをつなぐ議席です。日本共産党は1999年以来、野党の立場から独自の自主自立の外交をすすめ、とりわけアジア諸国の政府との交流と対話を重視してきました。日本共産党は党綱領で、「日本が過去におこなった侵略戦争と植民地支配の反省をふまえ、アジア諸国との友好・交流を重視する」、「社会制度の異なる諸国の平和共存および異なる価値観をもった諸文明間の対話と共存の関係の確立に力をつくす」と決めています。日本共産党の「野党外交」は、アジアやイスラムの諸国などから大きな共感と支持が寄せられています。
「たしかな野党」の議席を増やしてこそ、本物の民主的政権への道が開ける……日本共産党は、いつまでも野党の立場に甘んじるつもりはありません。いま「たしかな野党」としてがんばる日本共産党の議席を増やしてこそ、国民本位の民主的な政権への道が開けます。日本共産党は、わが国が直面する政治・経済・社会・外交のゆがみを大もとから正すための根本的な改革案=「日本改革の提案」をもっています。
(1)大企業・財界優遇の政治をあらため、税金の使い方、集め方を国民のくらし第1にきりかえるとともに、国民のくらしと権利をまもるルールを確立する。
(2)日米安保条約=日米軍事同盟をなくして、世界でもきわだった「アメリカいいなり」政治を断ち切り、世界とアジアの友好・平和に貢献する日本にする。
(3)憲法の全条項を厳格にまもり、とりわけ平和・人権・民主主義の条項を完全実施し、それを政治と社会の基本にすえる。
このように、日本共産党は、自民党政治を大もとから切り換える展望と方針をもっている政党です。だからこそ、自民党政治とも、「自民党型の政治」の継承ともきっぱり対決して、国民の利益をまもるためにがんばり続けることができます。
日本共産党は今年で結党85周年を迎えます。どんな迫害にも屈せずに「反戦平和」「主権在民」の旗をかかげて奮闘してきました。清潔な政治姿勢をまもり続けてきました。どんな外国による圧力もはねのけて、「自主独立」をつらぬいてきました。
「国民の苦難あるところ日本共産党あり」 ―これが、私たちの立党の原点です。
日本共産党の前進こそ、いまの悪政にストップをかけることができるたしかな力であり、自民党政治に代わる新たな国民本位の政治を実現する力です。日本共産党の前進に、みなさんの大きなお力をお貸し下さい。
【1】「消えた年金」問題を、1人残らず、急いで、国の責任で解決させます
5千万件をこえる年金記録が宙に浮き、そのために受け取る年金額が減らされたり、受給権が消滅してしまう。保険料はきちんと払ったのに、その分の年金が受け取れない。これでは国が詐欺をしていることに等しく、国民の不安と怒りが広がるのも当然です。
しかも、厚生労働省は早くから年金記録が「宙に浮く」事態を予測していました。とくに、1997年の「基礎年金番号」制度の導入に向けた作業をした過程で、膨大な年金記録が誰のものかわからなくなっていることを具体的に把握していました。それなのに、国民に知らせず、抜本的な対策をとらず10年も放置してきたことが、事態をいっそう深刻にしてしまいました。安倍内閣も、今年2月に5000万件をこえる「宙に浮いた年金記録」があることを公式に発表しながら、本格的な取り組みを先送りしてきました。こうした事態を引き起こした責任は、歴代政権、歴代厚生労働大臣が共同で負うべきです。歴代政権の国政運営能力、管理能力の基本が問われています。
この問題は国民にはいっさい責任はなく、政府と国の責任で解決されるべきです。解決にあたっては、“被害者を一人も残さない”“一日も早く”という立場で、あらゆる手段をつくすべきです。政府に、問題の全容を国民の前に明らかにするとともに、とくに、以下の点を緊急の対策として要求します。
<国が責任を持った5つの緊急対策を要求します>
(1)年金保険料の納付記録を、ただちにすべての受給者、加入者に送る
「自分の納付した保険料がきちんと記録されているか」という不安が大きく広がり、社会保険事務所に問い合わせが殺到し、まともに対応できない状況です。“不安な人は問い合わせて来い”というやり方ではなく、すべての受給者、加入者に納付記録を送付し、国民の不安に応えるべきです。これは、いま保有している情報を送ればいいことであり、ただちにできることです。
(2)「宙に浮いた」年金記録の調査を限定せず、可能性のあるすべての人に情報を知らせる
安倍首相は、基礎年金番号に統合できていない保険料納付記録、いわゆる「宙に浮いた」記録について「1年以内にすべての基礎年金番号と突き合せる」といいます。その場合に、すべての納付記録を、できるかぎりすみやかに、保険料を納めた国民のもとにもどし、納めた保険料に見合う年金が支払われるようにしなければなりません。
そのためには、(1)記録の突き合わせの際に、「氏名、性別、生年月日の3条件の完全一致」したものに限定せず、部分的一致も含めて、可能性のある記録をすべて見つけ出し、持ち主の基礎年金番号に統合する作業を行うこと、(2)本人のものと思われる記録が見つかった人に記録を見せずに「思い起こしてもらう」努力を強いるのではなく、記録の情報を具体的に示すこと、(3)新たに明らかになった1430万件などコンピューターに入力されていない情報も調査対象に加えることをただちに行うべきです。
(3)物証がなくても、申し立てや証言などを尊重して支給する
被害にあった本人が保険料を納めたことを証明しないと補償されないという、もっぱら国民にだけ立証責任を負わせるやり方は許されません。本人の申し立てや証言といった、何らかの手がかりを尊重して、国が解決のために責任をもち、最善の努力をすべきです。例えば、国民年金の場合は本人の説明に合理性があり、それを否定する反証がない、厚生年金の場合は、同じ事業所で働いていた同僚の証言などがあるという場合なども支給対象にすべきです。
(4)コンピューターの誤った記録を、すべての手書き記録とつきあわせて修正する
以上の作業と同時並行で、社会保険庁や市区町村が保管するすべての厚生年金、国民年金の手書きの納付記録(紙台帳・マイクロフィルム)と、社会保険庁のコンピューターの納付記録を徹底的につきあわせて、誤った納付記録を正しいものに修正します。
(5)社会保険庁解体は国の責任のがれ―年金保険料の流用をやめる、天下り禁止など抜本改革こそ必要
政府は、解決のまともな方針も、メドも示さないまま、直接責任を負っている社保庁を分割民営化し、解体してしまおうとしています。あたらしい「日本年金機構」の役員には、国会で答弁する義務もありません。これは国が責任を持って問題解決に当たることを不可能にする最悪の責任逃れです。参院厚生労働委員会での参考人質疑でも被害者のみなさんは「こんな状態での解体は責任逃れとしかいいようがない」と述べています。
年金保険料を年金給付以外への流用をやめる、天下りの禁止など、社保庁の抜本的な改革は必要です。同時に、数十年という単位で、国民から保険料をあずかり、運用するという公的年金の仕事を、安定・確実に遂行しようとするなら、国の責任を根幹に位置づけることがどうしても必要です。国の責任を「分割民営化」して、投げ捨ててしまうようなやり方はとるべきではありません。
この問題でも、政治の姿勢が問われています。政府は、「宙に浮いた年金記録」を放置していた間に何をしたでしょうか。保険料を引き上げ、年金額を減らすという年金改悪を「100年安心」といって強行しました。「年金財源」のためといって、定率減税の廃止、高齢者への課税強化という増税まで押しつけてきました。しかも、問題発覚後は、責任のある歴代厚生労働大臣が「自分は知らなかった」などと、お互いに責任をなすりあう見苦しい姿に終始しています。こんな姿勢では、国の責任で問題を解決することはできません。いま大切なことは、国民の立場にたって、問題の1日も早い解決のために、知恵と力をつくすことではないでしょうか。
「消えた年金」問題を抜本的に解決するとともに、国民が信頼できる年金制度にしていくために日本共産党は奮闘します。
貧困と格差をただす三つの転換を
【2】税・財政の転換―「庶民に増税、大企業・大金持ちに減税」という「逆立ち」税制をただし、血税のムダづかいをなくします
■庶民大増税に反対し、大企業・大金持ちばかりに減税という不公正をなくします
6月になって、住民税が大幅に上がる通知が送られてきたり、月給から天引きされる住民税が増額されています。ほとんどの人がこれまでの2倍になり、高齢者では昨年の3〜4倍にもなる人もいます。自治体によっては国保料や保育料の負担増にもつながります。自公政権が決定した定率減税廃止による1.7兆円の大増税が国民に襲いかかっています。
その一方で安倍内閣は、減価償却制度の見直しと証券優遇税制の延長によって新たに1.7兆円の大減税を実行しました。庶民への増税分が、丸々、大企業や大資産家の減税に注ぎ込まれようとしているのです。
庶民には増税、大企業と大金持ちには減税という「逆立ち税制」を続けてきたことが、貧困と格差をいっそうひどくしています。いまこそ、この流れを転換すべきです。
住民税の大増税の中止を求めます……6月から増える住民税の規模は、97年の消費税率引き上げ以来の10年ぶりの大規模なものです。政府や政権与党は、「税源移譲の影響にすぎず、増税ではない」といってごまかそうとしています。しかし、税源移譲とは国から地方に同じ税金が移るだけで、1.7兆円も税額が増える事実は消すことはできません。定率減税の廃止という大増税を自分で決めておいて、「増税ではない」などと言い訳すること自体が、国民を愚弄するものです。すでに実施された増税分については、「戻し税」方式で国民に返すことを求めます。その財源は、大企業や大資産家への減税を中止すれば十分です。
最悪の不公平税制=消費税の増税にきっぱり反対します……政府は、参院選挙後には「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現すべく取り組む」(安倍首相の施政方針演説)と宣言しています。日本経団連は、法人実効税率を40%から30%に引き下げることを要求していますが、御手洗会長は、消費税増税をこの減税の財源にすると説明しています。定率減税廃止による庶民増税分だけでなく、消費税を増税してまで、財界・大企業にもっと回せという身勝手きわまりない要求です。「福祉財源のため」というのも、増税のための口実にすぎません。消費税導入から今年で19年、この間、社会保障はどんどん改悪されました。消費税収は累計で188兆円にもなりますが、この間に企業の税金(法人3税)は159兆円も減少したのが実際の姿です。
消費税は低所得者ほど負担が重い税制です。サラリーマン4人世帯で試算すると、年収300万円以下の世帯では年収の4.2%もの負担になりますが、年収1500万円以上の世帯では1.4%の負担にすぎません。消費税増税は、貧困と格差をいっそう広げる最悪の不公平税制であり、きっぱり反対をつらぬきます。
■税金のムダ遣いにメスをいれ、大企業・大資産家に応分の負担をもとめ、庶民増税なしにくらしの財源を確保します
庶民に増税を押しつけて集めた税金を、自公政府は、大型公共事業や軍事費などに惜しみなくつぎ込み、巨額のムダ遣いをつづけています。
ムダな大型公共事業を中止し、「新旧の利権」にメスを入れます……公共事業費の総額が減っているとはいっても、大型公共事業の予算は大幅に増えています。船の来る見通しも立たないスーパー中枢港湾に、04年度以降の合計で2261億円もの事業費がつぎこまれています。三大都市圏環状道路の整備には07年度だけでも1859億円、大都市拠点空港整備には同じく886億円がつぎ込まれます。「都市再生」などと称して大手不動産会社などへの巨額の支援もおこなわれています。「国際競争力の強化」のためという新しい装いをこらしていますが、財界・大企業の「新しい利権」のための不要不急な事業にほかなりません。
「旧来型の利権」も温存されています。国・地方分を合わせて6兆円近いガソリン税や自動車重量税、軽油引取税などは依然として、もっぱら道路をつくりつづけるための道路特定財源のままです。電源開発促進税(約3500億円)も、危険な原発推進のために流し込まれます。群馬県の八ツ場ダム(総事業費4600億円)や岐阜県の徳山ダム(3353億円)など、目的不明のダム建設計画にもストップがかかっていません。
―大型公共事業のムダを削ります。
―道路整備や電源開発などの特定財源を一般財源化します。
―公共事業は、福祉・教育・防災・環境など、くらしに密着した分野中心に転換します。
ふくれあがる軍事予算を大幅に圧縮します……戦力の保持を禁じた憲法を持つ日本が、アメリカに次いで軍事予算の大きい5つの国の1つとなっています。その膨大な軍事予算の多くが、もっぱらアメリカと日本の軍需大企業を太らせるために使われています。
ソ連との戦争を想定したのにソ連解体後も買い続けている「90式戦車」(総額3000億円)、米軍と一体となって世界中に軍事介入するための「イージス艦」(1隻1200〜1400億円、08年に6隻目)など、これまでも軍事予算の莫大なムダ使いがまかり通ってきました。今また、米軍のグアム移転や国内での基地再編のために、日本側負担だけで3兆円もの経費が投入されようとしています。さらに、アメリカの先制攻撃戦略の一翼をになう「ミサイル防衛」のために最初の数年分だけで1兆円もの予算がつぎ込まれようとしています。
これらの背景には,日米の軍需大企業およびそれと結んだ政治家の圧力があります。これらの圧力を排除し、無法なムダ遣いをやめさせれば、相当な規模の軍縮と財源の確保が可能となります。
自衛隊のイラク派兵・インド洋派遣費用は、開始以来1668億円にのぼりますが、安倍内閣はさらに継続しようとしています。在日米軍の居座りの根拠ともなっている「思いやり予算」は2370億円(沖縄の基地たらい回しの「SACO経費」を含む)にのぼり、500万の中小企業を支える中小企業対策費1625億円よりも5割も多く、失業対策費2214億円を上回るありさまです。軍事費を大幅に削減することは、日本と世界の平和にとってもきわめて重要になっています。
―米軍への「思いやり予算」を廃止します。
―イージス艦、ヘリ空母、90式戦車、海外派兵経費など、軍事費を大幅に削減します。
―米軍再編のための3兆円もの負担を中止します。
大企業・大資産家に応分の負担を求めます……史上空前の利益をあげている大企業が応分の税負担をすることは、企業の社会的責任からいって当然です。ところが日本の大企業は、累次の税率引き下げに加えて、研究開発減税や連結納税制度など、各種の優遇税制によって税負担が軽減されています。
法人企業の経常利益(06年度)はバブル期の1.5倍以上にも増えていますが、法人税(地方税を含む)はバブル期の実績を1割以上も下回ったままです。バブル期の税制と比較した減税額は、大企業全体で5兆円、トヨタ1社だけでも3000億円にもなる計算です。財界は「企業の税負担を増やすと国際競争力が低下する」といいますが、社会保険料を含めた日本の企業の負担は、フランス、スウェーデンの6割、イタリアの7割にすぎません。負担能力は十分にあります。「国際競争力」を口実にした「税逃れ」はやめるべきです。
所得税・住民税の最高税率は10年前の65%から50%に下げられました。株のもうけの税金は、わずか10%とアメリカの半分以下に軽減され、これだけでも減税額は1兆円にものぼり、ひとにぎりの大資産家が巨額の減税の恩恵を受けています。
大企業の法人税率は、かつては42%という時期もありましたが、現在、法人税30%、法人事業税7.2%にまで引き下げられています。これを10年前の水準(法人税37.5%、法人事業税12%)に戻すだけでも、4兆円の財源が生まれます。大企業や大資産家がほんらい払うべき税金を払えば、財源を確保して、高すぎる国保料や介護保険料・利用料などで苦しむ国民の苦難を解決することができます。
―大企業の税率を10年前の水準に戻します。これだけでも4兆円の財源が生まれます。
―この間引き下げられてきた所得税の最高税率を引き上げ、株のもうけへの課税を適正に引き上げるとともに、総合課税化をはかり、税の累進構造を高めます。
国民の暮らしをまもりながら、財政再建を進めます……自公政権はこんなことを続けながら、「財政が大変だ」とか、「財政を健全化するためだ」などといって、社会保障や教育をきりすて、もっぱら庶民に負担増を押しつけています。
大型公共事業や軍事費などのムダ遣いをやめ、史上最高の利益をあげている大企業に応分の負担を求めること―税金の使い方、集め方をあらためることは急務です。そうすれば、庶民増税の中止や社会保障拡充の財源を生み出したうえで、毎年の国債発行を着実に削減できます。国民の暮らしの安定を確保しつつ、さらに改革に取り組み、早い時期に国・地方の債務残高を対GDP比で減少させることも可能です。
【3】社会保障の転換―いのちの切り捨てをやめさせ、生存権をまもり、くらしを支えるために拡充します
自公政権のもとで、年金、医療、介護、障害者など社会保障のあらゆる分野で、保険料や利用料、窓口支払などの負担は増え、給付は削減されてきました。本来、国民のくらしを支えるべき社会保障が、逆に、国民のくらしを圧迫しています。
しかも、失業や倒産、病気などで生活が苦しくなり、保険料や利用料の負担に耐えきれなくなった人たちが、情け容赦なく切り捨てられています。“医療難民”“介護難民”“ネットカフェ難民”…。日本社会のあちこちで、多くの人たちが社会保障制度から切り捨てられ、行政から突き放され、メディアが“難民”と呼ぶような状態に追い込まれています。
生活が苦しくて国保料を滞納した人からの保険証の取り上げが35万世帯にのぼり、必要な医療も受けられない状態に追い込まれています。病院からの高齢者の追い出しも激しさを増し、療養病床が38万床から15万床に激減されます。介護保険法改悪で、介護ベッドや車イスの「貸しはがし」やヘルパー派遣の削減、施設入所費の負担増で退所を余儀なくされるなど、「介護とりあげ」が広がっています。生活保護では、ワラにもすがる思いで窓口にきた人を申請させずに追い返す違法な「水際作戦」が当たり前のように行われ、自殺者や餓死者まで出す事態になっています。
弱者が生きていけないような社会、人間としての尊厳も奪われ、まともに生きていく最低限の条件も奪われる人々をたくさん生み出す政治を、これ以上はびこらせておくわけにはゆきません。
日本共産党は、貧困と格差を打開するためにも、憲法25条が保障する生存権をまもる社会保障制度の拡充にむけて、国民の苦難を解決するために全力をつくすという「立党の原点」を堅持してがんばりぬきます。
■ストップ貧困、いのちを守る―「緊急福祉1兆円プラン」の実現に全力をあげます
(1)国の責任で国保料を1人1万円引き下げ、健康保険証のとりあげを中止させます
一人当たりの国保料(税)はこの20年で、3万9000円から7万9000円へと2倍に跳ね上がりました。所得200万円台で30万円、40万円の国保料が課されるなど、国民の所得が減っているもとで、高すぎる国保料が貧困をますますひどくしています。貧困と格差のもっとも深刻なあらわれである国保の問題を解決するため、国の責任で1人1万円の国保料(税)値下げをおこない、保険証のとりあげをやめさせます。
(2)介護保険の保険料・利用料の減免を拡充し、人間らしい生活を支える介護サービスの水準を守ります
高齢者の介護保険料は昨年4月に平均24%も値上げされ、利用料の負担も増え、介護が必要と認定されてもサービスを利用できない人は約2割にものぼります。介護保険への国庫負担を5%引き上げ、保険料・利用料の減免制度を新たに国の制度として確立します。5%引き上げは、3000億円程度の財源ですむものであり、全国市長会、全国町村会が繰り返し要求するなど“地方の声”になっています。
制度改悪などによる「介護とりあげ」により、社会的な支援を必要としながら見放され、困難をかかえて暮らす高齢者が増えています。特養ホームの順番待ちは全国で38万人をこえ、そのうえ療養病床の大削減計画がすすめば“介護難民”が急増してしまいます。
「介護とりあげ」を中止させ、高齢者の人間らしい生活を支えるのに必要なサービス水準を守ります。特養ホームの増設、療養病床削減の中止など、基盤整備に全力をあげます。
(3)子どもの医療費無料化を国の制度として確立します
小学校就学前の子どもの医療費を所得制限なしで無料化する国の制度を確立します。その共通の制度の上に、全国に広がった自治体独自の助成制度をさらに前進させます。
(4)障害者自立支援法による「応益負担」を撤回し、障害者の生活と権利を守ります
施行2年目の障害者自立支援法は、障害者・児やその家族に重い負担をおしつけ、施設・事業所の経営を困難にし、福祉労働者の離職や労働条件の悪化をすすめています。政府・与党は、障害者や関係者の大きな運動の前に「手直し」をせまられましたが、期限付きの部分的な予算措置にすぎません。「原則一割」の障害者福祉サービスの利用料や医療費の「応益」負担を撤回させるために全力をつくします。
(5)生活保護の切り下げ、母子家庭への児童扶養手当削減など弱者切り捨てをやめさせます
窓口で生活保護の受給希望者に申請書さえ渡さない違法な「水際作戦」をやめさせます。廃止された老齢加算、削減中の母子加算の復活を求めます。母子家庭への児童扶養手当の大幅削減の中止を求めます。安倍内閣が来年度にもねらっている生活扶助基準の引き下げなど、生活保護制度の大改悪に反対します。
これらの緊急要求を実現するための予算規模はおよそ1兆円です。大企業・大金持ちには、この10年間に法人税減税や所得税最高税率の引き下げで5〜6兆円も減税する、グアムでの米軍基地建設をはじめ、「米軍再編」に国民が払った血税を3兆円も注ぎ込もうとするなど、政治のこの姿勢を少し変えるだけで実現できます。
■年金、医療、介護の充実をめざします
無年金者、低年金者をなくす最低保障年金制度に踏み出します……いま、日々の生活を到底まかなえない低年金者、無年金者は増加の一途をたどり、公的年金制度に対する信頼が大きくゆらいでいます。その大もとには、保険料を25年以上おさめなければ1円も年金が支給されないという異常にきびしい受給条件、そして、高い保険料を40年間おさめつづけても月6万6千円にすぎない劣悪な国民年金の給付水準があります。
年金受給のための条件は、諸外国なみの「10年以上」へとただちに引き下げるべきです。また、無年金者・低年金者をなくし、年金制度への信頼を回復するためにも、全額国庫負担による最低保障年金制度の創設にふみだすことを求めます。日本共産党は、当面、すべての国民に月5万円の最低額を保障し、その上に、支払った保険料に応じた一定額を上乗せする年金制度の開始を提案します。
「医療の格差拡大」をつくらず、安心してかかれる医療をめざします……地方でも都市でも医師不足は重大な社会問題です。最大の原因は、「医者が増えると医療費が膨張する」といって医師の養成数を減らし続けてきた自民党政府の失政です。この間、政府・与党も「医師確保」を言い出しましたが、「医師数抑制」という根本方針には手を触れないなど、解決にはほど遠いものです。先進国で最低レベルになっている医師数の抜本増、勤務医の労働条件の改善、産科・小児科確保にたいする公的支援、診療報酬の改革をすすめます。
昨年、自公政権が強行した医療改悪により、来年4月から、75歳以上のすべての高齢者が「後期高齢者医療制度」に加入させられます。保険料は、介護保険料のように「年金天引き」で徴収し、高齢者に「粗悪医療」や「病院追い出し」をせまるのが政府のねらいです。高齢者に過酷な保険料取り立てと差別医療を押しつけることに反対し、制度の全面見直しを求めてたたかいます。
政府・与党は、保険のきかない全額自己負担の医療を大幅に拡大する「混合診療」解禁、「株式会社の医療経営」解禁など、“医療の市場化”を推進しています。この本格的な実施は最新の医療や手厚い治療を受けられるのはお金のある人だけという「治療の格差」「命の格差」をつくりだします。いのちと健康をまもる医療にまで“営利優先・弱肉強食”を持ち込む改悪に反対し、「保険証一枚」でだれでも、どんな病気でも安心してかかれる医療制度をまもり、広げます。
昨年、政府はパーキンソン病と潰瘍性大腸炎の患者9万人を医療費助成制度から切り捨てようとしましたが、大きな世論と運動を受けて断念しました。助成制度の後退を許さず、対象拡大をすすめます。難病対策予算を大幅に増額し、すべての難病患者、長期慢性疾患者、小児慢性疾患児の医療費助成制度を抜本的に拡充させます。
コムスン問題の教訓を、利用者の立場にたった介護サービスにしていくために生かします……コムスンの不正が国民の怒りと不安を呼んでいます。この事件で、新たな“介護難民”が生まれたり、真剣に介護に取り組んできた労働者が雇用不安に陥らないようにしなければなりません。自治体自身が介護サービスを提供することを含め、国が自治体を支援し、公的責任をはたすべきです。同時に、介護給付費抑制政策のもとで、必要な介護サービスまでも「不正給付」の脅しで「取り上げる」こともやめるべきです。
コムスンのような違法・脱法行為を繰り返してきた「金儲け最優先」の事業者を業界最大手にしてしまった国の責任は重大です。政府は、介護にも「市場原理」を持ち込み、「悪い事業者は市場が淘汰する」から誰でも参入させて「事後チェック」すれば良いとしてきました。今回のコムスン事件は、介護をはじめ社会保障を「市場原理」優先ですすめようとした「構造改革」路線の破たんを示しています。ところが政府や財界は、さらに特養ホームにも営利目的の企業を参入させる規制緩和さえしようとしています。「市場原理」と「規制緩和」一辺倒のやり方をあらため、利用者の立場にたった介護保険にしていくことこそ、今回の事件から学ぶべき最大の教訓です。
【4】雇用政策の転換 ―使い捨ての働かせ方をやめさせ、人間らしく働けるルールをつくります
一生懸命働いてもとても生計を維持できない低賃金で、先行きの生活設計もままならない不安定な非正規雇用が増え続け、全労働者の3人に1人、若者や女性では2人に1人にまでなっています。その一方で、異常な長時間労働が、働く人たちの命と健康を脅かし、家庭も地域社会も壊しています。これは自然現象ではありません。財界・大企業の目先の利益追求と、政府が行ってきた労働法制の規制緩和による“雇用破壊”がもたらしたものです。とりわけ未来をになう若者を使い捨てにするような働かせ方を野放しにしている政治の責任は重大です。
日本共産党は、貧困と格差を是正し、国民のくらしの不安を解消するためにも、人間らしく働けるルールを確立するために力をつくします。
■人間を「使い捨て」「モノあつかい」する働かせ方をやめさせ、非正規で働く人たちの雇用と権利を守り、正社員化をすすめる雇用政策に転換させます
直接雇用しなければならない労働者を請負会社に雇用させて自社の社員同様に働かせる違法な偽装請負を根絶します。日本共産党は国会で何度も追及し、政府に2度にわたって是正の通達をださせました。行政指導にとどまらず、労働者派遣法などを改正し、受け入れ企業の責任で直接雇用に切り替えるようにします。
派遣労働者の地位向上と正社員への登用をすすめます。政府も、派遣は一時的、臨時的な場合に限定し、正社員の代替にはしないとしています。一年以上経過したら派遣先企業が正社員として雇用する申し出を行うように義務づけます。
均等待遇を法制化し、パートや派遣、契約社員などへの不当な差別や格差をなくします。政府が「格差是正」といって成立させたパート労働法「改正」は、均等待遇の対象になるのは「パート労働者の1%もいるかどうか」というまったくのザル法です。「同一労働同一賃金」の原則、不当な差別や格差の禁止、均等待遇を法律に明記すべきです。有給休暇や雇用保険などの権利を制限するなどの違法行為もただちに是正させます。
短期・反復という使い捨ての雇用契約をやめさせます。多くの非正規雇用では、恒常的な業務に就いていながら、雇用契約だけは半年などという短期間の雇用を繰り返しています。裁判所の判例でも厚労省の見解でも、短期の雇用契約を繰り返せば期間の定めのない雇用契約とみなすことになっており、これを法制化します。
■最低賃金の引き上げ、ワーキングプアをつくらない政治に転換します
日本の最低賃金は、時給673円、月額約11万5000円(平均)という、とても生計費をまかなえない低さで、労働者の平均給与の32%と世界でも最低クラスです。憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活」ができる水準に最低賃金を引き上げるのは国の責任です。時給1000円以上を目標に抜本的に引き上げます。どこで働きどんな職業に就いていても適用される全国一律の制度にします。
“ネットカフェ難民”から脱出するための家賃補助、職業訓練の機会を抜本的に増やし、貯えがない若者でも職業訓練を受けられるように、訓練期間中の生活資金の援助を行うなど、ワーキングプアから脱け出したいという切実な願いに応えて政治の責任を果たします。
■「サービス残業」を根絶し、異常な長時間労働を是正します
残業代横取り、長時間労働野放しの「ホワイトカラーエグゼンプション」の導入に断固反対します。違法な「サービス残業」根絶にさらに力を尽くします。日本共産党は、国会で280回以上の質問で追及し、政府に是正の通達を出させるなど、政党として「サービス残業」根絶にもっとも果敢に取り組み、この5年間で852億円の未払い残業代を支払わせました。違法行為を繰り返す、隠蔽工作をするなどの悪質な企業を公表するとともに、不払い残業代を2倍にするなどのペナルティーを強化します。
政府が大臣告示で示している「残業時間は年間360時間以内」をただちに法制化すべきです。また、ヨーロッパで法制化している連続休息時間を日本でも導入し、最低11時間確保することを求めます(深夜12時まで働いたら翌日の出勤は11時以降)。
■長時間労働を野放しにし、非正規をさらに増やすために労働者の権利を奪う安倍内閣の「労働ビッグバン」計画を許しません
安倍内閣は、労働法制のいっそうの規制緩和を「労働ビッグバン」などといってすすめようとしています。労働者派遣や「偽装請負」の合法化をはかる請負法制の規制緩和、不当な解雇もわずかな金を支払えば「合法」にしてしまう解雇の金銭解決なども、政府の経済財政諮問会議や規制改革会議で検討しています。
財界の身勝手な要求を丸のみし、非正規雇用のいっそうの増大と長時間労働の激化をもたらす、安倍内閣がねらう「労働ビッグバン」を許しません。
憲法改悪に反対し、平和な日本をめざす
【5】日本を海外で戦争する国につくりかえる憲法改悪に反対します
安倍首相は「憲法改正を必ず政治日程にのせていく」とのべ、2010年には国会で改憲の発議をめざすと公約しています。自民党などがおしすすめる改憲は、日本が世界に誇る憲法9条を変えることに照準を合わせたものです。自民党が2005年に発表した「新憲法草案」では、9条2項を撤廃して「自衛軍を保持する」と明記するとともに、「自衛軍」は「国際社会の平和と安全を確保するため」に活動できるとしています。
アメリカにつきしたがってイラク戦争のような武力行使に参加することは許しません……政府・自民党などがしゃにむに改憲につきすすむ背景には、アメリカからの強い要求があります。一国覇権主義にもとづく先制攻撃戦略に固執するアメリカは、日本を足場に湾岸戦争やアフガニスタン攻撃、イラクへの侵略戦争をおしすすめてきました。アメリカは、こうした武力攻撃の際に、日本から出撃するだけでなく、自衛隊をそれにひきずりこみ、戦場でともに武力行使するよう迫りつづけてきました。米政府の関係者は、“武力行使ができないなら、憲法そのものを変えてしまえ”と平然と主張してきました。米国との「血の同盟」を主張する安倍首相は、改憲の目的について“アメリカと肩を並べて武力を行使するところにある”とはっきりのべています。
こうした改憲が強行されれば、国連憲章や国際法を踏みにじって開始されたイラク戦争のようなアメリカの先制攻撃戦争に、日本の軍隊が武力行使をもって参戦する道が開かれます。それは、主要国のなかで唯一、軍隊によってただの1人も他国の人びとを殺し、殺されることのなかった日本の戦後史を根底からくつがえすことになります。
重大なのは、安倍内閣が、明文改憲の前にも憲法解釈の変更によって武力の行使に道を開こうとしていることです。安倍内閣はこの5月、集団的自衛権をめぐる政府の憲法解釈を変えることを目的に「有識者懇談会」を設置しました。集団的自衛権の行使とは、「日本防衛」とはまったく無関係に、他国のために武力を行使するというものです。これは、「憲法9条に照らして許されない」と、政府がくり返し言明してきたことでした。
この背景にも、集団的自衛権についての憲法の解釈を変えることを求めてきたアメリカの要求があります。安倍内閣はアメリカにつきしたがって、明文改憲と解釈改憲の両面から現行憲法の平和主義を葬り去り、あわよくば明文改憲の前にも武力行使できる道に足を踏み出そうとしているのです。
改憲勢力の中心は侵略戦争美化の「靖国」派です……さらに重大なのは、憲法改定派の中心に、日本の過去の侵略戦争と植民地支配を「正しかった」とする勢力が座っていることです。安倍首相みずから、「日本の戦争は正義の戦争だった」などとする歴史観をもち、その立場から活動してきました。このような立場と主張は、靖国神社の軍事博物館「遊就館」に代表される、きわめて特異な歴史観=“靖国史観”に沿ったものです。こうした「靖国」派の議員連盟―「日本会議国会議員懇談会」、「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」、「神道政治連盟国会議員懇談会」など―に加わる閣僚は、安倍内閣の18人中15人にものぼります。つい最近も、「強制連行はなかった」とする「従軍慰安婦」問題での安倍首相の発言が、アジアのみならず欧米諸国からも大変な批判を浴びました。
日本の植民地支配と侵略戦争をまともに反省できない勢力が、ふたたび海外で武力を行使できる憲法を手に入れる―日本の国民はもちろん、アジア諸国にとってこれほど恐ろしいことはありません。
「靖国」派のような勢力が改憲勢力の中心に座り、米軍とともに海外での軍事行動に乗りだすことをねらっていることには、アジア諸国はもちろん、米国の知識人や知日派といわれる人たちのなかからも、深刻な懸念と不安の声が上げられています。今年2月、アーミテージ元国務副長官らとともに報告書『米日同盟―2020年に向けアジアを正しく方向づける』をまとめたジョセフ・ナイ元国防次官補は、「靖国問題とは、日本がアジア諸国、特に中国および韓国と和解するために、歴史に折り合いをつけなければならないという、より大きな懸案事項の象徴」だ、「日本は靖国問題によって、自らを傷つけている」(『週刊東洋経済』5月26日号)とのべています。安倍首相が頼りにしてきた、日米同盟強化を主張する人びとのあいだからもこういう指摘があがっていることは、「靖国」派が大きな矛盾に直面していることを示しています。
「靖国」派は人権や民主主義の抑圧をねらっています……改憲を主導する「靖国」派のねらいは、憲法9条を変えて日本を「アメリカと肩を並べて海外で戦争をする国」につくりかえるとともに、日本の国家体制そのものを戦前・戦中の国家体制に逆戻りさせ、戦後つちかわれてきた基本的人権や民主主義を否定することにあります。そのことは、安倍内閣の政治的組織的よりどころであり、「靖国」派の総本山である「日本会議」の改憲案に明確に示されています。そこでは、「防衛軍の保持」とともに、天皇の元首化と天皇中心の国柄(国体)、「国家非常事態条項」、「国民の『国防の責務』」を盛り込み、「国または公共の安全」を理由とした「人権の制約原理」を新設するとしています。これらの新憲法を制定することは、「大日本帝国憲法および日本国憲法の歴史的意義」をふまえる意義をもつとも強調しています。
この間、日本共産党は、自衛隊の情報保全隊が、平和・民主主義・生活向上を求める国民の世論や動向、個人の言動を日常的・系統的に調査・監視していることを明らかにしました。戦前の「憲兵政治」をほうふつとさせるこうした活動は、重大なプライバシーの侵害であり、集会・結社の自由や表現の自由、思想・良心の自由を侵害する許しがたい憲法違反の行為です。
―日本共産党は、「世界の宝」ともいうべき憲法9条を守るため、思想信条、党派の違いを超えた共同を発展させるために奮闘します。
―「集団的自衛権は憲法上行使できない」としてきたこれまでの政府の憲法解釈を変える動きに反対します。
―自公政権による侵略戦争美化を許さず、首相の靖国神社への参拝や真榊奉納などは、今後、きっぱり中止することを要求します。
―政府・与党が、「従軍慰安婦」問題でおわびを表明した河野官房長官談話(93年)や、日本の植民地支配と侵略への反省を明らかにした終戦50周年の村山首相談話(95年)を厳格にひきつぎ、その立場で行動することを求めます。
―防衛省・自衛隊による憲法違反の情報収集や国民監視活動の全容を明らかにし、ただちに中止することを求めます。
―日本共産党は、基本的人権や民主主義、男女平等など現行憲法のすべての条項を守るため、全力をあげてたたかいぬきます。
【6】日米軍事同盟の再編強化に反対し、アメリカいいなりから脱け出す日本外交の転換を求めます
■アメリカの先制攻撃戦略に日本を組み込む「米軍再編」に反対します
憲法を改悪し、日本を「アメリカとともに海外で戦争をする国」にしようとする動きの根本に、アメリカの先制攻撃の戦争に日本を参加させようという「日米同盟」の危険な変質があります。
日米両国政府は、日米安保条約の枠組みさえこえた「地球規模の日米同盟」への侵略的な大変質をすすめ、「米軍再編」の名で米軍基地の強化、米軍と自衛隊の一体化を推進しようとしています。「米軍再編」の狙いは、アメリカがおこなう地球規模の先制攻撃戦略に日本を組み込むところにあります。
「日本防衛」とは無縁の海外遠征―“殴り込み”部隊の司令部機能や機動性が陸・海・空・海兵隊の4軍そろって強化され、出撃・補給拠点として恒久化されようとしています。沖縄・名護市への米軍新基地の建設、山口・岩国基地への空母艦載機の移駐、神奈川・座間基地への米陸軍第1軍団司令部機能の移転、横須賀基地への原子力空母の配備、全国の自衛隊基地への米軍機の訓練移転などです。
しかも、政府は、米軍がグアムに移転するための費用をはじめ、アメリカ政府いいなりに約3兆円も負担しようとしています。外国の領土にある外国の軍事基地の増強のために、国民の税金をつぎ込むなどというのは、歴史的にも世界でも類のないものです。
自公政権は、新たに導入した再編交付金によって、カネの力で、基地を抱える地方自治体と住民を分断、懐柔、屈服させて、基地強化を押し付けようとしています。そのうえ、沖縄への米軍新基地建設のために、自衛隊の6000トンの大型軍艦まで差し向け、基地強化反対の声を威圧するなどという暴挙までやって、日米合意を強行しようとしています。「日米同盟の変革と再編」の名でおこなわれている、地球規模での海外派兵態勢づくりの際限ない拡大、在日米軍基地強化・恒久化のくわだてを許しません。
―日本共産党は、「米軍再編」の名による基地強化・永久化に反対します。基地のない日本をめざして、国民とともにたたかいます。
―日米安保の侵略的変質に反対します。「日米安保条約をなくし独立・平和の日本を」という声が国民多数の意見になるよう力をつくします。
■イラクからのすみやかな撤兵を求め、国連憲章の精神にそった平和の国際秩序を確立するために努力します
アメリカがイラクへの侵略戦争を開始して4年が過ぎました。先制攻撃と引き続く軍事占領がもたらした今日の泥沼状態は、どんな超大国でも軍事の力だけで世界を支配することはできないことを証明し、無法な暴力への歴史の審判がくだされつつあります。国際的にも、国連憲章に基づく平和の国際秩序をめざす波が大きくなっています。
ところが自公政権は、アメリカに追随して米軍の増派を支持したばかりか、イラク特措法を2年延長して、自衛隊派兵を継続することをきめました。イタリア、イギリスなど、イラク派兵諸国も相次いで軍の撤退・削減をすすめ、米議会でも来年3月までに撤退を完了させる法案が可決されるなか、日本政府の世界でも異常な“ブッシュ政権いいなり”を示すものといわざるをえません。アメリカいいなりに自衛隊を海外に派兵する「海外派兵国家」の道を続ければ、世界とアジアで孤立するばかりです。
国際社会は、国連憲章にもとづいて、国際紛争を平和的・外交的解決を求めるという方向に動いています。21世紀の世界は、軍事ではなく外交こそが重要な意味をもつ時代となっています。
こうした世界の現状にてらしても、アメリカに追従して軍事同盟強化に熱中し、恒久平和主義という理想を先駆的に体現した日本国憲法9条を捨て去ることが、いかに世界の流れに逆行するかは明らかです。「国際紛争の平和的解決」「武力の行使・威嚇の禁止」という国連憲章の「平和のルール」にそった国際秩序を築き上げることは、国際政治と国際世論が直面する重要課題です。
―自衛隊のイラクからのすみやかな撤兵を強く要求します。あらゆる海外派兵に反対します。
―「アメリカいいなり」の政治から脱け出し、日本国民の利益に立った自主・平和の外交に転換することを求めます。
―国連憲章にもとづく「平和のルール」を厳守して、飢餓、貧困、人権侵害などを克服した平和で公正な国際社会を実現するために力をつくします。
―人類の死活にかかわる核戦争の防止と核兵器の廃絶のために実効ある措置を要求します。「非核3原則」を厳格に守らせます。
―北朝鮮問題は、6ヵ国協議、日朝平壌宣言などの枠組みを生かし、核、拉致、過去の清算問題などを平和的、外交的に解決するために力をつくします。
くらし、教育・子育て、環境、女性の地位向上のために
【7】国による地方切り捨てを許さず、中小企業と地域経済を応援します
いま地方の疲弊、荒廃が深刻になっています。その背景には、自民党・公明党がすすめてきた「強い者を応援する」、弱肉強食・規制緩和万能の経済政策があります。しかも、政府が、上から市町村合併を押しつけ、「三位一体の改革」の名で地方財政を破壊してきました。この結果、地域に人が住めなくなる崩壊現象も広がっています。
自民党や公明党は、選挙を前にして、「ふるさと納税」や「地方再生総合プログラム」などを言い出し、地方を重視するかのようなことも言いだしました。しかし、地方の格差を是正する地方交付税を2.9兆円(2004年度)も削減しておいて、「ふるさと納税」などと、地方を疲弊させた自らの政治責任に頬かむりすることは許されません。
日本共産党は、地方切り捨て政策に立ち向かい、中小企業と地域経済を下支えする政治に切り替えます。
地域社会の崩壊に歯止めをかけます……「構造改革」路線のもとで、地域に人が住めなくなる崩壊現象が広がっています。全国224の公立・公的病院で廃止・休止が計画され、郵便局の集配業務の廃止が、全国1048局を対象にすすめられ、公共交通では、都市でも農村でも、住民のかけがえのない足である公営バスの廃止が大問題になっています。大型店の野放図な出店や撤退により、町の中心部でも郊外でも、地元商店街が衰退し、地域コミュニティーの破壊がすすんでいます。いまこそ、効率一辺倒で地域を切りすてる「構造改革」路線を切り替えなければなりません。
―公共施設や公共交通の廃止を中止し、再生をはかり、住民が安心して住み続けられる地域社会をつくります。
―地域経済の振興と農林漁業の建て直しに真剣に取り組みます。地域の活性化を願う保守の人たちとも共同して、全国でまちづくりの運動に取り組みます。
中小企業の営業への直接支援をすすめます……中小企業の倒産が7ヵ月連続して増加し、地域経済の疲弊に拍車をかけています。大企業は史上最高の利益をあげ続けていますが、そのウラには下請け企業にたいする激烈なコスト削減要求があります。中小企業の経営を困難にしている背景には、このような大企業の横暴を野放しにし、中小企業予算を削減して「弱肉強食」の経済政策をすすめてきた自民党政治があります。地域の再生をはかるには、地域経済の担い手である中小企業への直接的な支援をおこなうこと、大企業の横暴を規制することが不可欠です。
―中小企業予算を大幅に増やし、一般歳出の2%、1兆円程度への増額をめざします。
―中小企業と金融機関の「架け橋」となっている信用保証制度の改悪を中止し、保証協会の基金の増額等によって保証機能を強化します。政府系金融機関の民営化・統廃合をやめ、低利・長期・固定の政策金融を大幅に拡充します。
―仕入単価の買いたたきなど大企業の下請いじめ、横暴を規制します。
―ムダな大型公共事業を生活密着型の公共事業に転換し、分離・分割発注による中小企業への受注確保をすすめます。
―大型店の出・退店や営業時間などに関するルールをつくり、まちづくり・商店街支援に関する国の認定制度を自治体の認定・支援策にあらためます。
自治体の財政基盤を強化・充実させます……「三位一体の改革」などの名で行われた、教育や福祉関係の補助負担金の削減、地方交付税の削減が地方自治体の財政に大きな打撃を与えています。地方の疲弊と格差に歯止めをかけるには、地方交付税など地方財源の切り捨て政策を転換することが、どうしても必要です。
―地方交付税の削減と制度改悪に反対し、地方財源の充実をもとめます。
―地方交付税の財源保障・調整機能の強化と住民福祉を保障する総額の確保をもとめます。
―福祉や教育などの国の補助負担金の削減と責任の放棄に反対します。
【8】農産物輸入の全面自由化をやめさせ、食料自給率の向上に取り組みます
オーストラリアの小麦やコメの不作、バイオ燃料との原料の競合などによって、穀物や飼料などの価格が高騰しています。長期的にも食料不足が懸念されています。ところが農産物輸出国に圧倒的に有利なWTO(世界貿易機関)体制のもとで、日本の農業は生産額が2割も減り、輸入の拡大によって自給率が6%も下がり40%になるなど、縮小を続けています。
今重要なのは、食料が国民の健康と安全を支える基盤であることを見すえ、世界でも最低水準である日本の自給率を、計画的に引き上げていくために、輸入野放しと農業切り捨ての政治を転換することです。
食料主権を守り、価格・所得保障を実施します……安倍政権が交渉を開始した日豪EPA(経済連携協定)では、農産物貿易を自由化すれば、農水省の試算で被害は8千億円にのぼります。自由化への対応として、「競争力強化」の名で政府の支援対象を大型経営だけに狭める「横断的経営安定対策」では、大多数の生産者が政策対象から締め出さてしまいます。
―農産物輸入の完全自由化に反対し、「食料主権」を保障する貿易ルールの確立をめざします。
―「品目横断的経営対策」をやめ、やりたい人、つづけたい人を規模の大小にかかわらず支援します。
―価格保障を柱にして、条件不利地などへの直接支払いによる所得補償と組み合わせて実施します。
BSEの全頭検査を維持します……牛肉輸入では牛海綿状脳症(BSE)対策として、全頭検査、危険部位である脊髄など神経組織の完全な除去、トレーサビリティ(生産・流通の経歴が追跡できる仕組み)が不可欠です。政府が求めた条件でさえ違反を繰り返す米国産牛肉は、輸入すべきではありません。
―全頭検査のうち、生後20カ月以下の牛を対象とする検査への国の補助を来年7月以降も延長すべきです。
―牛肉加工食品の原産地表示を義務付け、消費者の選択権を保障させます。
【9】京都議定書の約束を達成し、さらに低エネルギー・低炭素社会への転換を進めます
安倍内閣は、二酸化炭素の「世界全体の排出量を現状に比して2050年までに半減する」方針を閣議決定し、独ハイリゲンダム・サミットでも、「2050年」に「半減」という長期の目標にかかわる言葉が盛られました。しかし、いま日本は、直近の目標である京都議定書での約束(2012年までに90年比6%削減)を達成する見込みがたたず、二酸化炭素排出は逆に8%も増えています。
京都議定書で公約した「6%削減」の達成に、あらゆる手をつくします……京都議定書の目標達成には、排出量の8割を占める企業・公共部門での削減がカギです。ところが、政府は財界の要求に屈し、日本経団連の「自主」行動計画まかせにしています。また家庭でも、電気製品台数の増加や自動車の大型化、単身化による世帯増の影響で、二酸化炭素の排出が増加しています。
―経済界と政府の間で削減協定を締結し、達成責任を公的に裏うちします。
―小規模水力、風力、太陽光・熱、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの開発・活用を抜本的に進めます。
―現行のエネルギー課税を見直し、二酸化炭素の排出量を考慮した環境税の導入をすすめます。
―商品や施設の省エネ促進とともに、二酸化炭素の排出を増やす長時間営業・労働や、都市再生の名による大規模な高層マンション・建物の建設、郊外店の増加などに歯止めをかけ、生活スタイルや経済活動の改善を図ります。
中長期の目標を明らかにして、低エネルギー・低炭素社会への転換をすすめます……科学者やEU、NGOは、気候変動を破局的な危険のレベルに達するまえに抑えるためには、工業化以前に比べて2度未満に気温の上昇を抑えることが必要だと考えています。それには、増え続けている二酸化炭素の排出量を2050年までに50%以下(1990年比)に削減する取り組みが求められ、とくに先進国は60%〜80%という大幅な削減をしなければなりません。
―日本も2020年までに30%、50年には70%削減することを目標に掲げ、それにむけて経済システムや生活スタイルなどを改革して、低エネルギー・低炭素社会へ転換すべきです。
原子力発電所の新増設をやめ、原発から段階的に撤退する……政府と電力会社は、温暖化対策を原発の新増設にたよろうとしています。しかし、原発は、技術的に未確立であり、耐震性を含めた安全性の問題、事故隠し・データねつ造が示す管理能力の欠如、放射性廃棄物の処理など、環境にとって大きな危険をかかえています。原発から計画的・段階的に撤退すべきです。
【10】改悪教育基本法にもとづく教育への国家介入に反対し、子どもの成長を中心にすえた教育を実現します。安心して子育てできる条件を整えます
(1)国が介入する競争・ふるいわけの教育に反対し、憲法に立脚した教育をすすめます
学力問題やいじめの問題、貧困と格差の広がりがもたらす教育現場への影響―子どもと教育をめぐる困難の打開が痛切にもとめられています。
ところが安倍内閣は、こういう深刻な問題にはまともに目を配らず、改悪された教育基本法にそって、教育への国家介入を強めることに力をそそいでいます。4月には、学校の序列化につながる「全国いっせいテスト」の実施を強行しました。こんどの国会では、義務教育の目標に“愛国心”などをもちこみ、教員への統制を強化し、自治体の教育委員会にたいする文科大臣の「指示」「是正」の権限を盛り込むことなどを内容とする「教育3法」の成立を押し切ろうとしています。
さらに自公政権は、「徳育」という新しい教科を設け、検定教科書によって特定の価値観を子どもたちに押しつけようとしています。これは思想・良心の自由に反する重大な問題です。しかも、安倍首相が押しつけようとしている価値観は、「戦後レジーム(体制)からの脱却」という首相の主張にそった、戦前的な価値観です。安倍首相が「教育再生の参考にする」といい、文科省が予算をつけた委託事業では、「日本の戦争はアジア解放のためだった」という、靖国神社の主張とまったく同じ戦争観を中学生におしえこむアニメ(DVD)までつくられています。
その一方で安倍内閣は、教育予算を引き上げ、教育条件を整備することに背をむけています。しかし自公政権の下で日本の教育予算の水準は、先進国(OECD=経済協力開発機構=加盟)30カ国中最下位、平均の7割以下しかなく、教育条件も劣悪なものです。そのうえ安倍内閣は、「教員1万人削減計画」など教育条件をさらに切り下げようとしています。
日本共産党は、日本の教育が抱える深刻な問題を解決するために、保護者、教職員をはじめ、国民のみなさんと力をあわせます。
―憲法の平和・人権・民主主義の原理に立脚した教育をすすめ、教育内容、方法への国の不当な介入に反対します。思想・良心・内心の自由を侵す“愛国心”の押しつけ、「君が代・日の丸」の強制をやめさせます。侵略戦争・植民地支配を美化・肯定する教育にきびしく反対します。
―教育をゆがめる全国いっせい学力テストの継続・実施に反対します。子どもたちを競争に追い立て、ふるいわけする教育の是正に取り組みます。
―いじめ問題の根本にある、競争教育や管理一辺倒の教育をただし、人間を大切にする教育の実現をめざします。教員にいじめを見ないように仕向ける「いじめを5年で半減」などの数値目標化を是正します。
―日常の授業など学校生活の全体を子どもの人権、個人の尊厳を尊重しあうものにして、子どもたちが健全で豊かな市民道徳を身につけられるようにします。
―少人数学級を実施し、すべての子どもがわかるまで丁寧に教えられるようにします。
―貧困と格差から子どもと教育を守ります。就学援助への国庫負担金制度を復活し、抜本的に増額します。高校、大学、専門学校などの授業料負担の軽減措置の大幅拡大、無償の奨学金制度の創設で、授業料が高くて進学をあきらめる青年をださないようにします。
―教職員・保護者・子ども・住民が学校運営に参加できるようにし、風通しのよい、みんなでつくる学校をめざします。教員の「多忙化」を解決します。
(2)安心して子育てできる社会にするために、くらしの安定と経済的保障を充実させます
子育てへの不安と負担が大きく広がっています。若い世代で増大する不安定で低賃金の非正規雇用や長時間労働が、子育てへの大きな障害になっています。増税・社会保障切り捨てのなかで、出産費用、子どもの医療費、保育料、教育費など、経済的負担も増えつづけています。「仕事と育児の両立」「子育てへの負担の軽減」―誰もが言いますが、現実には、これと正反対の政治がすすめられています。子育てへの不安と負担を軽減するために、政治の姿勢を転換させていきます。
男性も女性も仕事と子育てを両立できる働き方にしていきます……長時間労働の是正、正規雇用の拡充とパート・派遣社員への均等待遇の確立、最低賃金の引き上げ、子育て中の夜間・休日勤務、単身赴任の制限などをすすめます。
女性が結婚、出産後も安心して働き続けられるように、男女賃金格差の是正、妊娠・出産による解雇や不利益な取り扱いをなくします。育児休業を男女ともに取得しやすいように、所得保障6割への増額、派遣・パート労働者への拡大、中小企業への支援、「パパクォータ制度」の導入などをすすめます。
子育てへの負担を軽減します……児童手当を、小学六年生まで月額一万円に倍増するとともに、支給対象の18歳までの引き上げをめざします。子どもの医療費無料化を国の制度にするとともに、出産費用の軽減、不妊治療の保険適用をすすめます。保育料・幼稚園教育費を軽減します。
政府が、保育所への「待機児童を3年でゼロにする」と公約して5年経ちますが、待機児童はゼロどころか3万9千人です。公的保育の切り捨てをやめ、「保育所整備計画」をつくって保育所の拡充・整備をすすめます。学童保育を量質ともに整備します。
出産直後からの子育ての不安や児童虐待、子どもの障害などの問題にこたえるため、小児病院、児童相談所、保健所、子育て支援センターなどの相談・支援体制を拡充します。
【11】「男女平等」からの逆行許さず、社会のすみずみに「両性の平等」を実現します
改憲策動の中心にいる「靖国」派勢力は、憲法24条にもとづく両性の平等、女性差別の撤廃を社会の目標にすることそのものを敵視し、激しい攻撃を加えています。今年2月に「美しい日本をつくる会」を発足させ、「個人の人格を破綻させ家庭を壊す男女共同参画社会基本法を廃棄しなければ、遠からずわが国は亡国の危機に直面する」と「基本法」廃棄の署名運動をよびかけ、4月には、女性差別撤廃条約が「いかに家族を破壊し、子供達を不幸にしているのか」、条約の批准に問題があるとする「家族の絆を守る会」を設立させています。
憲法が施行されて60年、世界は女性差別の撤廃が大きな流れです。女性の活躍の場は確実にひろがり、力を発揮しているにもかかわらず、国際的に改善が指摘されている民法や賃金格差など、女性の人権と地位向上の遅れは放置できない課題です。
戦前の価値観・家族観を日本社会に押し付け、浸透を図る、歴史逆行の危険な動きを許さず、男女の平等な社会を実現するために力をつくします。性的マイノリティー者の人権を守ります。
女性差別撤廃条約に反する民法を見直し、改正をすすめます……民法には夫婦同姓制度、再婚禁止期間、婚姻最低年齢など女性差別的な条項が残されています。国連など国際機関から社会全体の根本問題として繰り返し批判、勧告されています。こうした明治時代の民法を引き継ぐ規定は、十年余前の法制審議会で改正が答申されているにもかかわらず、「靖国」派の反対で実現していません。選択的夫婦別姓制度、再婚禁止期間短縮などをすすめます。離婚後300日以内に出生した子は前夫の子と推定するという規定と現実との矛盾から子が無戸籍になっている問題の解決を急ぎます。
女性差別撤廃条約の批准国にふさわしい実施の責任をもとめ、男女共同参画社会基本法や計画、男女雇用機会均等法などの充実をはかります。パートの均等待遇を求めたILOパートタイム労働条約、権利侵害を国連に通報できる制度を定めた女性差別撤廃条約選択議定書など未批准の条約を批准します。
また、改正男女雇用機会均等法を活用し、結果として差別になる間接差別の禁止を企業に徹底し、間接差別禁止の範囲の拡大、強力な救済機関や罰則の設置など抜本改正をはかります。妊娠・出産等で退職せざるをえなかった女性の職業訓練への助成拡充、正規雇用での再就職を促進します。
不正・腐敗を一掃し、清潔な政治をきずく
【12】“政治とカネ”“政官財の癒着”を徹底的に追及し、利権や特権にメスをいれ、企業・団体献金の禁止と政党助成金の廃止を求めます
不正・腐敗を一掃し、清潔な政治をめざします……安倍内閣が発足してから9カ月。“政治とカネ”をめぐって、あいも変わらずうんざりさせられる事態が続いています。「政府・与党には、一般庶民の金銭感覚は通用しないのか」といいたくなるような不祥事が続発し、それへの対応もいいかげんなものばかりです。
昨年末には、事務所費つけかえの事実が発覚して行革担当閣僚が辞任しました。今年に入ってからは、家賃ゼロの国会議員会館を政治資金管理団体事務所に登録しながら、多額の事務所費を計上したうえ、電気代も水道代も国費で負担されているのに異常な額の水光熱費を計上している事態が暴露されました。松岡利勝農林水産相は、多くの疑惑にまみれながら、真相を語ることなく自殺しました。しかし、それで問題が解決したわけではありません。なによりも、重大な疑惑に問われてきた同氏を閣僚に任用し、疑惑が発覚したあとは罷免もせずに擁護し続けた安倍首相の責任が問われています。
一方、民主党の代表も政治資金管理団体が巨額の不動産を取得していたことが発覚するなど、ここでも政治資金のあり方があらためて問われました。
「政治とカネ」の腐った関係の大もとにあるのが、自民党をはじめとする政党の異常な金銭感覚と安易な収入です。その主要な温床となっているのが、企業・団体献金であり、政党助成金です。
企業・団体献金を全面禁止します……企業・団体献金は、財界・大企業がその利益や権益を確保するための手段―ワイロとなっています。日本経団連は、(1)財界としての「優先政策事項」を毎年発表し、(2)それを基準に政党の政策と活動を評価し、(3)政党への寄付総額の目標を決め、多額の献金をしています。これは、政治献金が「政治買収資金」そのものであることを如実に物語っています。だから、財界関係者でさえ「自分たちの政策を実現するところに献金しますというのでは、政策をカネで買っているのかと言われかねない」(北城恪太郎・経済同友会代表幹事=当時、「朝日」2月2日付)とのべています。
企業・団体献金は、まさに献金相手=財界のための政治と政策を遂行させる“政界の麻薬”そのものです。「政治とカネ」の腐れ縁を断ち、国民のためのきれいな政治をとりもどすためには、ひも付きのカネで政治がゆがめられる構造をつくりだしている企業・団体献金を、ただちに禁止する必要があります。
政党助成金制度を廃止します……もう1つの“政界の麻薬”となっているのが、政党助成金です。本来、政党の活動資金は、主権者である国民1人ひとりからの寄付によってまかなわれるべきものです。そうしてこそ、はじめて政治を遂行する目線も国民に向けられることになります。ところが、政党助成金は、議員数と得票数に応じて、国民1人あたり250円、総額300億円以上のお金を、労せずして分け取りできる仕組みです。どんなに反国民的な政策をおしすすめても、それとは無関係に政党への一定の収入が確保される。このシステムによって、政党が国民から離れて堕落し、国民生活に冷酷・無関心な政治がさらに平気でおこなわれるという悪循環になっているのです。それは同時に、国民からすれば支持もしていない政党に税金として「寄付」を強制されるという、思想・良心の自由を侵害する憲法違反の制度ともなっています。
永田町を汚染するこの2つの“麻薬”―企業・団体献金と政党助成金を根絶してこそ、「政治とカネ」の悪しき関係を根本から絶ち切り、政治を本来の姿にとりもどすことができます。日本共産党は、企業・団体献金はもちろん、政党助成金を受けとらないただ1つの党として、この仕事にとりくむことができます。
与党が「改革」と称していまおこなおうとしている政治資金規正法の「改正」は、領収書添付義務の対象は5万円以上、しかも政治資金管理団体だけで、その他の政治団体は対象外というものです。こんな「改正」では、「規正」どころか、法律の名で、逆に脱法行為を奨励するような内容にしかなりません。
肝心なことは、現に明るみに出ている疑惑の真相を徹底的に解明し、責任を追及することであり、こんな“制度いじり”で「一件落着」させることは許されません。
官製談合、高級官僚の天下りを禁止します……国民の税金でおこなわれる公共工事の林道整備事業をめぐって、農水省の監督下にある緑資源機構本部による官製談合事件が発覚しました。中央官庁にかかわる官製談合事件は、この2年足らずの間に、日本道路公団発注の鋼鉄製橋梁工事をめぐる談合(05年7月)、防衛施設庁の建設工事談合(06年1月)、国土交通省の水門談合(07年3月)と続発しています。
今回の談合の直接の動機も、「官僚の天下り先」の確保にあったとされます。天下りを本格的に規制することなしに、同様の談合事件を防ぐことはできません。
ところが、政府・与党が強行しようとしている「改革」は、事実上、天下りを野放し・合法化できる「人材バンク」を設置し、国として高級官僚の天下りを保障しようというものです。これでは、一部の高級官僚の特権をさらに庇護するだけでなく、談合事件をいっそう深刻にすることにもなりかねません。また、談合事件の課徴金が10%と、欧米に比べて異常に低く抑えられているのも、事件が止まらない一因となっています。この背景にも、日本経団連などによる自民党などへの多額の政治献金があります。
日本共産党は、天下り制限の対象を特殊法人の役職員まで拡大し、営利企業はもちろん、特殊法人などへの天下りも期限を定めず禁止することを求めます。談合が表面化した際の課徴金についても、少なくとも18%とするよう強く求めます。
―企業・団体献金をただちに全面禁止することを求めます。
―日本共産党は、今後も憲法違反の政党助成金を受け取りません。政党助成金制度の廃止を強く要求します。
―高級官僚による特権的な天下りを“合法化”する「新人材バンク」制度の導入に反対します。天下りを全面的に禁止するよう求めます。
―官製談合を防止するため、独占禁止法を改正するとともに、課徴金の引き上げなど談合企業にきびしい制裁ができるようにします。
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