労働者派遣法を派遣労働者保護法へと抜本改正します
日本共産党の立法提案
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日本共産党国会議員団が十日に発表した「労働者派遣法を派遣労働者保護法へと抜本改正します――日本共産党の立法提案」は、次の通りです。
一九八六年に労働者派遣法が施行され、たび重なる規制緩和がくりかえされてきた結果、派遣労働者は三百二十一万人へと急増しています。なかでもその圧倒的多数を占める登録型の派遣労働者は、不安定な雇用形態のもとで低賃金と無権利状態を強いられています。わけても、人間をまるでモノのように使い捨てにする日雇い派遣やスポット派遣が増え、最低限の生活さえ保障されない「ネットカフェ難民」とよばれるような貧困が広がっています。
今日の貧困の根底にあるこうした労働の破壊と非正規雇用の拡大を根本的に見直すことは、日本社会が直面する重要課題です。とりわけ、派遣労働者の権利をまもり、非人間的な労働実態を改善することは、緊急課題となっています。
日本共産党は昨年十二月十七日、労働者派遣法の改正要求を発表し、同法を「派遣労働者保護法」に抜本的に改め、派遣労働者の雇用と収入を安定させることを目的に、正社員化と、均等待遇をはかることを提起しました。また、日本共産党国会議員団は、日雇い派遣の深刻な労働実態を告発するとともに、キヤノンなどの大企業の違法派遣を追及し、労働者派遣法の抜本改正を求めてきました。
違法派遣の是正を求める労働者の勇気ある告発と労働組合のたたかいと、こうした日本共産党の活動が結びつき、行政を動かして違法派遣をおこなっていた工場への立ち入り調査をおこなわせ、さらにはキヤノンやいすゞなどの大企業が製造現場から派遣労働を解消する方針をあいついで発表するという重要な変化をつくりだしてきました。世論と運動が高まるなか、政府も対応を迫られ、福田首相は三月、正規雇用の割合を増やすための具体策を早急にとりまとめることを明言しました。
いま、派遣労働をめぐって、規制緩和から規制強化の方向に踏み出す潮目の変化が生まれつつあります。声をあげれば職場と政治を変えることができる状況が生まれています。この新しい流れをさらに大きくし、労働者派遣法の抜本改正と正社員化をめざす運動のうねりをつくりだすことが求められます。
日本共産党は、違法派遣を根絶し、労働者が将来に希望をもって、人間らしく生き働くことのできるルールをつくるために、昨年十二月に発表した改正要求を立法化した労働者派遣法の改正法案(骨子)をつくりました。この改正法案を各党、関係団体に提起し、共同して、労働者派遣法の改正に向けたとりくみをはかることをよびかけるものです。
日本共産党の労働者派遣法改正法案(骨子)
1 派遣労働者保護法に抜本改正します
(1)題名を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」に改めます。
(2)法律の目的に、労働者派遣は、臨時的・一時的業務についておこなわれるものであり、常用代替としておこなわれてはならないものである旨を規定します。
2 労働者派遣は、常用型派遣を基本とし、登録型派遣を例外としてきびしく規制します。日雇い派遣を禁止します
(1)労働者派遣事業をおこなってはならない業務に、物の製造の業務を追加します。
(2)登録型派遣をおこなうことができる業務は、専門的業務(ソフトウェア開発、機械設計、通訳・翻訳など)に限定します。一九九九年以前の状態にもどします。
(3)上記(1)(2)の措置によって、登録型による日雇い・スポット派遣を事実上禁止し、常用型派遣に限定します。
3 常用代替を目的とした労働者派遣を禁止します
(1)過去一年間に、常用労働者を解雇・削減した事業所が同一業務に派遣労働者を受け入れることを禁止します。違反に対して、罰則を設けます。
(2)派遣労働者を新たに導入したり、増やすときは、派遣先事業場の過半数労働組合、それが存在しない場合は過半数労働者の代表との事前協議を義務づけるとともに、各都道府県にある厚生労働省の労働局に届け出ることを派遣先に義務づけます。
(3)派遣先に対して、派遣労働者の比率と受け入れ期間、さらには臨時的・一時的業務かどうかについて、各都道府県にある厚生労働省の労働局に届け出ることを義務づけ、公表するものとします。
4 派遣受け入れ期間の上限を1年とします
労働者派遣を受け入れることができる期間の上限を一年とします。
5 派遣期間をこえた場合や違法行為があった場合、派遣先が直接雇用したものとみなします
(1)以下の場合において、派遣先は、派遣労働者とのあいだで、当該派遣労働者が希望するときは、期間の定めのない雇用契約を締結したものとみなします。
- 派遣先が一年をこえる期間継続して派遣労働者を受け入れた場合
- 派遣先が事前面接や履歴書の閲覧などをおこない、労働者を特定した場合(採用行為に相当する)
- 派遣先が系列子会社の派遣会社に常用労働者を移籍させ、そこから派遣労働者を受け入れた場合(系列派遣)
- 派遣元が雇用する派遣労働者のうち、二分の一以上の者を同一の派遣先に派遣した場合(「もっぱら派遣」)
(2)偽装請負や多重派遣、無許可・無届け派遣、社会・労働保険未加入派遣などの場合、派遣先は、派遣労働者に直接雇用を申し込まなければならないものとします。違法状態が一年をこえて継続している場合、(1)の規定を適用します。
6 紹介予定派遣を廃止します
紹介予定派遣(派遣した労働者を派遣先に職業紹介できる制度。紹介予定派遣という名目をつければ、派遣法で禁止されている事前面接などの特定行為が可能になるので、脱法行為が横行する危険性のある制度)は、廃止します。
7 均等待遇を実現し、派遣労働者の権利をまもります
(1)派遣労働者の賃金は、派遣先労働者の賃金水準を勘案しなければならないものとします。派遣先は、その賃金水準をあらかじめ派遣元に通知しなければならないものとします。
(2)派遣先は、食堂や診療所などの施設の利用について、差別のない便宜の供与など必要な措置を講じなければならないものとします。
(3)派遣元は、派遣労働者が有給休暇を取得することができるようにしなければならないものとします。
(4)派遣先は、派遣労働者がセクシュアルハラスメントとパワーハラスメントなどを告発し、是正を求めたことを理由に不利益にとりあつかうことのないように、必要な措置を講じなければならないものとします。違反に対して、罰則を設けます。
(5)派遣元・派遣先での組合活動を保障する措置を講じます。派遣先は、派遣労働者を組織する労働組合との団体交渉に応じなければならないものとします。
8 労働契約の中途解除を制限します
(1)派遣労働者の責めに帰すべき理由以外の理由で労働者派遣契約が中途解除された場合、派遣元は、派遣労働者との労働契約を解除してはならないものとします。
(2)派遣労働者の責めに帰すべき理由以外の理由で労働者派遣契約が中途解除され、派遣労働者を休業させる場合、派遣元は、派遣労働者に六割以上の賃金を支払わなければならないものとします。派遣先に責任があって労働者派遣契約が中途解除された場合、派遣元は、派遣労働者に十割の賃金を支払わなければならないものとします。
9 個人情報を保護します
派遣元・派遣先が個人情報を他に漏らすことを禁止し、違反に対して罰則を設けます。
10 ピンはねを規制し、賃金を確保します
マージン率(派遣料金から派遣労働者の賃金を差し引いた額)の上限を政令で定め、労働者の賃金を確保しなければならないものとし、違反に対して、罰則を設けます。派遣元は、派遣労働者に派遣料金を通知しなければならないものとします。
11 労働者派遣法の改正とは別に、労働基準法を改正します
大企業の製造現場では、派遣労働者を期間工として直接雇用しはじめていますが、雇用期間を最長二年十一カ月に制限することが常態化しています。これは、労働基準法が有期雇用契約の上限を三年にしていることと密接に関連しています。三年以内であれば、いつでも自由に雇い止め(事実上の解雇)ができるためです。こうした脱法行為を防止するために、労働基準法を改正し、期間の定めのある契約を制限します。
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