―「医療の格差」が問題になってきました。
窓口に料金表
公的医療保険がきく医療と、保険がきかない自由診療を組み合わせる「混合診療」は引き続き重大です。保険証一枚あれば、誰でもどんな病気でも診てもらえるという、日本の国民皆保険制度を壊す中身だからです。
二〇〇一年、財務省の主計局がとんでもない提案をしました。混合診療の例として、「医師の指名」「通常よりも高度な医療機器の利用」「手厚い介護体制の提供」「終末期医療の提供」などをあげたのです。
料金表を窓口に置いて医者の指名料をとる、別料金を払った人だけ痛み止めを使える…。所得の格差が治療の格差、命の格差につながり、医療の土台を根本から壊すようなことが、政府のなかで検討されているのです。
しかし、日本共産党以外の各党は、衆院の議論でまともに取り上げません。参院でもさらに力を入れたい論点です。
今回の法案には盛り込まれませんでしたが、かぜなどの軽い病気は自己負担とする「保険免責制度」の問題もあります。先日、谷垣禎一財務相が導入の検討を明言したように、政府は執念をもっています。引き続きたたかいが重要です。
健診もゆがめ
健康診断のあり方を大きく変える問題もあります。
現在は、老人保健制度にもとづき、市町村が住民の健診に責任をもっています。今度は、この制度をなくし、健保組合など各保険者に健診を義務づけることにしました。
健診を積極的にやること自体は必要ですが、市町村の責任をなくすことは、公衆衛生の観点からみて問題です。
また、健診の実施率や“効果”に応じて、七十五歳以上の後期高齢者制度に出す負担金の額に格差をつけよう、健診率の低いところはペナルティーとして減額しようとしています。まったくの筋違いの話で、「江戸の敵を長崎でうつどころか、上海でうつようなもの」という指摘もあります。
ゆくゆくは、健診を受けなければ、病気になったのは“自己責任”といわれ、保険でみないということにもつながりかねません。健診制度をゆがめるやり方です。
連続改悪に道
―ますます運動を広げることが大切ですね。
衆院での、自民党と公明党による強行採決をマスコミが報道した直後、私のところにも問い合わせが相次ぐなど、国民の新たな関心が高まっています。国会での座り込みや要請行動も連日行われていて、その規模も大きくなっています。私たちとこれまで直接つながりのなかった人たちや団体からも法案への批判の声が出るなど、国民の怒りの広がりを実感しています。
今回の法案の中身は、一時的な負担増にとどまりません。療養病床の削減にしても、後期高齢者医療制度の問題にしても、将来の連続的な改悪につながるものです。
これに反対するたたかいがどうなるかによって、二十一世紀の日本の医療を左右するような重大な問題だとあらためて決意しています。参院での質疑を通じて問題点を徹底して追及し、なんとしても廃案に追い込みたいと思っています。
(おわり)
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