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医療改悪法案の問題点
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―いま法案審議はどんな段階ですか。
衆院の委員会で、自民、公明の与党は、強行採決という議会制民主主義のルールを壊す暴挙で法案を押し切りました。しかし、審議を通じて、日本の医療制度の根本を揺るがす法案の問題点が明らかになってきています。参院では、悪法を阻止する論戦に力を尽くしたいと思います。
患者、高齢者の負担増の規模が非常に大きいことが、いよいよはっきりしています。今年十月実施予定の高齢者の窓口負担の引き上げや、高額療養費の自己負担限度額の引き上げなどによる負担増は、今年度で千七百億円(平年度ベース)と推計されます。今回の改悪法案に盛り込まれた負担増がすべて実施される二〇〇八年度には約三千億円にもふくらみます。
これは国民に深刻な事態をもたらします。
たとえば長期入院の高齢者からの食費や居住費(ホテルコスト)の徴収問題です。介護保険施設でのホテルコスト導入によって、全国各地で退所者が続出していますが、医療分野でも同じ事態が心配されます。
高齢者が長期入院する療養病床を六年間で二十三万床も削減する計画は重大です。
しかも今年七月から、法案を先取りした動きが始まろうとしています。診療報酬の改定で、療養病床の入院患者の半分を「医療の必要性が低い」と決めつけ、そうした人に対する点数評価を大幅に下げました。厚労省の担当課長は「こんな低い点数だったら追い出される。まさにそういう点数にした」と公言しています。
厚労省が示した「医療の必要性」の基準自体がでたらめです。医療が必要かどうかは、個々の患者の事情に応じて、医師が判断する問題です。
ところが厚労省は、経管栄養をとっている患者を「発熱や嘔吐(おうと)があるかどうか」などという尺度だけで判断し、熱や嘔吐のない人は「入院の必要性なし」と機械的に決めつけて病院から追い出そうというのです。
食べることができないから管を鼻から入れている人までも、熱が出ないから「医療の必要性がない」という話が成り立つでしょうか。マスコミでも「介護難民」「医療難民」が出ると心配の声があがっています。
政府の発想は、“病院で終末期をすごすと金がかかるから家で死んでもらう”というものです。先ほどの厚労省の担当課長は、ある講演で終末期医療のあり方を問われて「家で死ねっていうこと」「病院に連れて来るなということ」とまでのべました。とんでもない話です。
―新たな論点も浮上しています。
〇八年から新設される七十五歳以上の後期高齢者医療制度の狙いも追及しなければいけないと思っています。
現在、保険料を払わなくていい被用者保険の扶養家族からも保険料をとる。衆院の質疑では日本共産党の高橋千鶴子議員が、保険料を払えない高齢者から保険証を取り上げる問題点も明らかにしました。
私がこの制度で重大だと思うことは、現役世代と高齢者との「世代間対立」をあおるしくみになっていることです。
後期高齢者医療制度のおもな財源は、(1)公費(2)現役世代からの「支援金」(3)高齢者自身の保険料―でまかなうとしています。
現在の老人医療制度も、現役世代から拠出金が出ていますが、一人ひとりの給与明細書などではその額はわかりません。
しかし、新しい制度は、現役世代が支払う保険料の内訳を示し、現役世代向けの「基本保険料」と高齢者向けの「特定保険料」の金額がそれぞれ明示されます。給与明細書をみれば、自分の保険料のうち、高齢者の保険料としていくらを支払っているか一目でわかってしまいます。こんなことをしたら、お年寄りはますます肩身が狭い思いをさせられるでしょう。
介護保険制度では、保険料が高いのはお年寄りがサービスを使いすぎるからだといって、給付を制限する方向にすすみました。後期高齢者医療制度でも同様に、給付を抑制する力が強くはたらいてくるでしょう。
法案では「後期高齢者の心身の特性等にふさわしい医療が提供できるよう、新たな診療報酬体系を構築する」といっています。七十五歳を過ぎたお年寄りを集めて、積極的な治療はやめて、医療給付費をできるだけ抑えようとしているわけです。これではまるで、「姥(うば)捨て山」だという声が上がっています。とても許すことはできません。
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