「赤旗」6月6日付
田村憲久厚労相は5日の参院厚生労働委員会で、医療・介護総合法案に盛り込まれた介護保険サービスの利用料引き上げ(1割から2割へ)の論拠について、"負担増の対象者は年60万円の余裕がある"という核心的部分を「撤回する」と表明しました。日本共産党の小池晃議員の追及を受け、論拠が完全に崩壊したものです。
小池氏は「2割負担の論拠を撤回するということは、社会保障審議会での議論も国会での議論もすべて振り出しに戻る。データのねつ造だといわれても仕方ない重大な問題だ。法案は撤回するのが筋だ」と強調しました。
厚労省は、夫婦で年金収入359万円のモデル世帯は"支出より所得が60万円多いから負担できる"と説明していました。しかし3日の質問で小池氏がデータのごまかしだと追及。厚労相は「今日のところは許していただきたい」としか答えられませんでした。
この日の委員会で、原勝則老健局長は新たな資料を示し、消費支出を減らして「やりくりしていただければ」60万円の余裕が生まれるので負担できると釈明しました。
小池氏は「これまでの説明と全く違う。『やりくりすれば』などとはどこでもいっていない。最初の説明が間違っていたということだ」と批判しました。審議が中断し、与野党の理事が田村氏らを囲んで協議した後、田村氏は「60万円余裕があるような見え方になってしまったが、この60万円は撤回する」と答弁しました。
小池氏はさらに、厚労省が新資料で"平均的な年金受給世帯の消費水準までやりくりすれば60万円残る"としたのも、過少な消費水準のデータを使ったごまかしだと追及しました。厚労省側は答弁できず、再び審議がストップ。後日、再答弁することになり、ウソにウソを重ねる姿が浮かび上がりました。
解説
介護保険 2割負担改悪案の説明撤回
「余裕なし」明確に
介護保険の利用料を2割に引き上げても「負担に耐え得る」と説明してきた厚生労働省が5日、日本共産党の小池晃参院議員の追及に対し、これまでの説明の誤りを認めて撤回しました。社会保障審議会や国会で繰り返し説明してきた2割負担の論拠が完全に崩れ去れる重大事態です。
厚労省は、負担増の対象となる年金収入359万円の高齢夫婦について、可処分所得(収入から税・保険料を控除)から消費支出を引くと年に「約60万円が手元に残る」から「負担に耐え得る」(2013年9月25日、社会保障審議会介護保険部会)と説明してきました。
このモデル世帯(年金280万円の夫と国民年金79万円の妻)の可処分所得は年307万円。これから「収入250万~349万円の階層の平均消費支出247万円」を引くと60万円が残るから負担増に耐えられるとしていたのです。
ところが小池氏の追及で、「消費支出247万円」の階層の平均可処分所得は197万円にすぎず、負担増モデル世帯の可処分所得(307万円)より110万円も低いことが判明しました。110万円も可処分所得が低ければ消費支出が少なくなるのは当然です。60万円が残る根拠にはなりません。
同省は5日の委員会で、「やりくりしていただければ」60万円が残るという詭弁(きべん)しか示せませんでした。これは、可処分所得が110万円も低い層に合わせて生活水準を落とすよう迫るもので、"2割負担の余裕がある"という主張とは完全に食い違っています。
法案の論拠が破綻した以上、このまま法案を通すなど許されず、廃案にする以外にありません。
(杉本恒如)
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