「赤旗」3月5日付け
日本共産党の小池晃副委員長は4日の参院予算委員会で、海外での武力行使に道を開く集団的自衛権の行使容認、立憲主義の否定になる解釈改憲の問題点を指摘。最低賃金の引き上げに向けた具体策を示し、政府の認識をただしました。
(写真)参院予算委員会で質問する小池晃 議員(右端)=4日 |
小池 攻撃受けず武力行使か
首相 そういう定義だ
なぜ日本は「集団的自衛権」を行使できないのか―。小池氏の問いに、小松一郎内閣法制局長官は「他国に加えられた武力攻撃を武力を行使して阻止することを内容とするもので、憲法上許容されない」と述べました。
このため、アフガニスタン戦争(2001年)やイラク戦争(03年)に自衛隊を派遣するための特別措置法では”武力行使をしない、戦闘地域には行かない”という縛りをかけざるをえなかったのです。(表)
小池 集団的自衛権を行使できるようにするということは、日本が武力攻撃を受けていない時にも、武力行使を可能にすることか。
安倍晋三首相 言葉の定義ということについては、そういう定義だ。
小池氏の追及に、首相は”可能になる”ことを認めました。
アフガン戦争時のテロ特措法の審議にあたって、当時の小泉純一郎首相でさえ「NATO(北大西洋条約機構)諸国はアメリカと一緒に武力行使をすることを辞さないと言っている。明らかに日本と違う。日本は武力行使もしないし戦闘行為にも参加しない」(01年10月、参院予算委)と明言していました。
小池氏は、自民党の石破茂幹事長が近著のなかで、「集団的自衛権の行使が可能になっていたならば、あの戦い(アフガン戦争)に自衛隊が参加した可能性はゼロではない」と記している事実を突きつけました。
小池 行使が可能になるということは、実際にわが国に武力攻撃が加えられていなくても、武力行使をする可能性があるということだな。
首相 憲法9条の制約のなかにおいて、わが国の自衛権はあるということは最高裁の判例としてある。そのなかにおける集団的自衛権について、可能となるものがあるかの議論がされている。
小池 結局、海外で武力行使、戦闘に加わる可能性があることを否定できない。
小池氏は「今までの自民党政権は、武力行使はしない、その可能性はないと言ってきた。首相は”可能性を含めて検討する”と言った。日本に対する攻撃がなくても海外で武力行使する可能性がある。そういう新しい道に日本が進もうというのが、まさに集団的自衛権の行使だ」と批判しました。
そのうえで小池氏は、集団的自衛権の行使が日本にどのような事態をもたらすのか、アフガン戦争の国別犠牲者数(表参照)を示し、こう警鐘を鳴らしました。
小池 日本に対する武力攻撃も発生していない時に、自衛隊員を武力攻撃に参加させて、その生命を危険にさらし、自衛隊員が外国人の命を奪うことになる。この重大問題を憲法解釈の変更で進めることは断じて許されない。
小池 「見解の対立」ないというのか
首相 見解はさまざまある
安倍内閣の狙う集団的自衛権の行使容認の憲法解釈変更について小池氏は、「政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではない」と断じた04年の閣議決定を引きながら、首相の見解をただしました。
同決定では「政府において、憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねない」とまで述べています。
小池 集団的自衛権の行使を可能にするなどという憲法の根幹にかかわる解釈の変更など認める余地はまったくない。
首相 (解釈改憲は)全体において簡単なことではないが、まったく(解釈改憲の)可能性がないかといえば、そんなことはない。
閣議決定の趣旨さえ無視して答弁する首相。小池氏は、小泉首相(当時)でさえ、解釈改憲は「誰もが受け入れる状況の変化の中で」なければならず、「見解が対立する問題があれば、便宜的な解釈の変更によるものではなく、正面から憲法改正の議論をすることにより解決を図ろうとするのが筋だ」(2004年2月27日)と答弁していることを紹介しました。
「戦後日本の保守政治は、保守なりの節度を持ってこの問題に臨んできた」と強調した小池氏は、阪田雅裕元内閣法制局長官をはじめ与党議員や改憲の立場に立つ学者も立場の違いを超えて安倍首相の解釈改憲に反対の声を上げ(表)、米紙ニューヨーク・タイムズも首相が「最高責任者は私だ」と解釈改憲に前のめりになっていることを「立憲主義の誤った見方」と批判している事実を突きつけました。
小池 今の状況を「見解の対立がない」状況だとでもいうのか。
首相 見解はさまざまある。
乱暴な解釈改憲への批判を認めざるを得ない首相。小池氏は、戦後政治の根幹を変え、「海外で戦争できる国」につくり変える解釈改憲に反対を表明し、「法の支配を粉々に破壊し、憲法の規範性をなきものにする安倍政権の暴走を食い止め、日本の民主主義の根幹を守るために立場の違いを超えて力をあわせることを訴える」と表明しました。
集団的自衛権 日本が攻撃されていないにもかかわらず、密接な関係を持つ他国が攻撃された場合に日本が参戦する権利のことです。日本の「防衛」とは無関係。歴代政府は集団的自衛権について権利は持つものの、「憲法上許されない」との立場を示してきました。
最賃上げ 景気回復のカギ
小池 時給1000円以上を目指せ
首相 気持ちは分かる
小池 「気持ち」だけではダメ。具体的行動を
小池氏は、景気回復のカギをにぎる最低賃金の問題を取り上げました。
フルタイムで働く一般労働者のなかで時給1000円に満たない人は若年・高齢者・女性に多い実態をあげた小池氏。「最低賃金の抜本的引き上げは消費・内需を拡大する最も効果的な景気対策。企業にとってもプラスになる」と主張しました。
さらに、1959年に最低賃金制を導入したのが安倍首相の祖父の岸信介首相(当時)であったことを示し、同首相が最低賃金制によって「中小零細企業の劣悪な労働条件が改善され、能率も上がり、事業も安定し、過当な競争もなくなる」「中小企業対策としても効果がある」と答弁したことを紹介しました。
最低賃金をめぐっては、アメリカやドイツなど欧米諸国で軒並み時給1000円以上に引き上げることを経済政策の柱にすえています。この世界の動きを示した小池氏は、日本も最低賃金の全国一律時給1000円以上を目指すべきだと要求しました。
首相 引き上げるためには中小企業の支払い能力がないといけない。
小池 支払い能力などというから最低賃金が引き上がらない。経済発展の原動力に位置づけるべきだ。もちろん、中小企業に対する直接支援が必要不可欠だ。
小池氏は、従業員100人未満の企業に対し時給900円に上げる場合の支援額は約4000億円、1000円に引き上げる場合、9000億円程度になるとの試算を示し、財源には雇用保険の5兆円の積立金なども活用できることを提起。復興特別法人税の前倒し廃止が1兆円規模にのぼることにもふれながら、政府に実行を迫りました。
小池 直接支援を行えば確実に賃金上昇につながる。好循環というなら低賃金を解消する施策に足を踏み出すべきだ。アメリカのオバマ大統領は「さあ、アメリカに賃上げを」と訴えた。日本も見習ったらどうか。
首相 気持ちは分かる。
「『気持ちだけ分かる』ではダメ」と述べた小池氏。「日本を賃上げ社会にするための具体的な行動が求められている。それができるのは首相だ」と決断を促しました。