○小池晃君 日本共産党の小池晃です。
今日資料でお配りをしておりますけれども、「生活保護法の改悪に反対する研究者の共同声明」というのが出されております。これは社会保障関係の研究者千百十八名が名を連ねているんですね。中には政府の審議会に参加しておられるような研究者もおられます。
この声明の最後にはこう書かれています。「生活困窮者は少数であり、常に声を上げにくい当事者である。しかし、セーフティーネットは、現に生活に困窮している人々を救うためだけの制度ではない。それは自由な社会のなかで生きる人々が、様々なリスクを抱えつつも、幸福な暮らしを安心して追求していくことができるための必須の条件である。セーフティーネットを切り縮めることは、自由で民主的な社会の基盤を掘り崩すものといわざるを得ない。これは生活困窮者だけの問題ではなく総ての人々の生存権に対する深刻な攻撃である。」と、こういうふうに書いてあります。
大臣に、まず、一千名以上という多数の研究者が自らの名前を明らかにして声を上げたことをどう受け止めていらっしゃいますか。
○国務大臣(田村憲久君) 今いただきましたこの研究者の方々の声明、私もこれは承知をいたしております。水際作戦でありますとか扶養の親族の問題でありますとか、さらにはジェネリックの問題でありますとか、いろんなことを御指摘をいただいておるということでございます。
それはそれで受け止めておりますけれども、一方で、六十年以上この生活保護制度、見直しが行われてこなかったわけでございまして、そのような意味からいたしまして、やはり今般、その生活保護受給者の方々に対して、一つは就労を含めた自立支援でありますとか、それからまた不正というような形で受給を受けておられる方々の対策、さらには医療扶助の問題というものに関して見直しをさせていただくべく、今般、国会に提出をさせていただいたということでございますので、御理解をいただきたいというふうに思います。
○小池晃君 私は、やはりこれだけの声が上がるというのは、かつてこういうのを私は見たことないですね。やっぱりこれは国会は受け止める必要があるというふうに思っておりますし、是非この法案については、これだけ危惧の念が上がっている中で徹底的な審議をするということをまず求めたいと、これは政府だけでなく委員会に対しても求めたいということをまず申し上げたいと思います。
その上で、扶養義務者への調査の問題をちょっと今日は取り上げたい。
この改正法の二十八条、二十九条は扶養義務者への調査強化を規定をしております。行政の裁量で扶養義務者に報告を求めて、官庁、銀行あるいは職場にまで調査できるようにすると。しかし、家族に頼れと言って窓口で言わば追い返すというのは、これは現行制度の下でも水際作戦の常套手段になっているわけですね。
例えば、今年二月、さいたま地裁から判決が下りて確定をしました埼玉の三郷市の事例、どうでしょうか。これは二〇〇四年に、埼玉県三郷市に住む夫婦と子供二人の世帯が、夫が白血病になって、介護に追われている妻も精神を病んで、派遣労働者である長男の月十万円の月収しか収入がなくなるという中で生活保護を申請をしたわけです。妻は福祉事務所を十数回訪れて生活困窮を訴えたけれども、行政の側は身内に援助を求めなさいと、それしない限り受給できないかのような説明に終始をしたと。ようやく申請を認めて保護を開始したけれども、それも三か月で打ち切ったという経過です。
これは母親が提訴をして、今年二月にさいたま地裁は原告側の訴えをほぼ全面的に認めています。本来、原告らに支払われるべきであった生活保護費相当額と賠償金の支払を命じる判決を下したわけですね。この判決文の中では、身内に援助を求めなさいと、求めないと生活保護が受けられないかのように述べた三郷市職員の発言は申請者を誤信させ、申請権を侵害する行為であると断じております。
大臣、今回のこの二十八条、二十九条の法改定というのは、まさにこうした誤信を一層広げて、申請権の侵害を拡大するということになるんじゃないですか。
○国務大臣(田村憲久君) 申請権自体は、実際問題その申請の意思があればそれを受けなければならないわけでございまして、その後審査が始まるわけでありますから、今回、今般の法改正が実態上、申請権を侵害しているというものには当たらないというふうに考えております。
○小池晃君 現実に扶養義務者に対する調査というのが窓口で追い返す手段に使われているときに、それを更に強化するようなことをやったらますますそういう事態広がるではないかと言っているわけですよ。
局長に聞きますが、審議の中で扶養義務者調査する事案は限定するというふうに答弁が行われていますけれども、法文上はその限定するということを担保する規定はどこかにありますか。
○政府参考人(岡田太造君) 今回の扶養義務者に対する報告徴収、調査の規定でございますが、これは、生活保護を受給されている方を十分扶養できると思われる扶養義務者に対して何らの対応を行わないまま被保護者に保護費用を支給することは国民の生活保護制度に対する信頼が失われることになりかねないと、このため、扶養可能と思われる扶養義務者にはその責任を果たしていただきたいということを考えているところでございまして、社会保障審議会の特別部会の指摘を含めまして、扶養義務者に対して報告を要求する、できることを、できる規定を……
○小池晃君 質問に答えてください。
○政府参考人(岡田太造君) あっ、済みません、はい。
具体的には、法律の第二十八条第二項の厚生省令でその対象を限定する旨の明記を行うという予定にしているところでございます。
○小池晃君 法文上ないわけですよね、限定するという根拠は。結局、その厚生省令でやるという話なわけですが。
今までも私言っているように、保護要件でないのに、保護要件でないわけでしょう、保護要件でないわけですよね、扶養義務者は。それなのに、それを不当に求める事案が後を絶たなかったわけです。それをさらに法定化すれば、ますますそういう傾向が強まるんではないかと言っているわけです。
今日配っている資料ですね、これは長野市で、最近、生活保護申請者に送られた扶養届書なんですよ。この方はタクシーの運転手だったんですが、脳梗塞で就労できなくなって保護申請をしたわけですね。この扶養届け書を見ますと、世帯の状況について、勤務先、月収の記入だけじゃありません。これ、お姉さんのところに送られたわけです、この書類が。そのお姉さんの家族の全員の勤務先、月収の記入だけではなくて、資産の状況、負債の状況、欄外には記入上の注意として、「収入、負債の状況については、源泉徴収票、給与明細書、ローン返済予定表の写しなど、その状況が明らかになる書類を添付して下さい」と、こういうふうに書かれているわけですね。
こういう同じような文書が、今、私ども確認しただけでも神奈川の厚木、岡山の倉敷市、千葉の柏市、東京の江東区などで同じようなこういう書類が送られているわけです。
今日配っている資料、もう一枚実はありまして、それはお配りしてないんですが、そこには、長野市福祉事務所長の名前で、保護に当たっては、民法に定める扶養義務者の扶養(援助)を優先的に受けることが前提となっていますと、こう書かれているわけですよ。
これ、局長、前提というのは、これは全くおかしなことになっているんじゃないですか。これは間違いではないですか。こういったことやられていいんでしょうか。
○政府参考人(岡田太造君) 生活保護法第四条第二項では、扶養は保護に優先するというもののことが規定されておりますが、御指摘のとおり、生活保護を受けるための前提であるとか要件ということで整理されているものではございません。
御指摘の件につきましては、可及的速やかに事実関係を確認するとともに、必要に応じて指導などの対応を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
○小池晃君 現場ではこういうことが行われているわけですよ。申請者のお姉さんは、これ送り付けられて、これを見て、これはとても書けないと、自分は。で、弟さんに保護申請やめるようにというふうにお話をして、御本人も申請を諦めているというわけですね。
大臣、現場ではこういうことがやられているわけです。それを──配ってないですから、それは。(発言する者あり)その一枚目の紙はね。でも、渡しましたよ。連絡室には持っていって、大臣に渡してくれって言ったんですけど。あっ、それそれ。それは違うでしょう。とにかく渡してありますから。ちゃんと渡して。前提と書いてあるわけです。そういうことが現場では、大臣、やられているわけで、大臣、ちょっと、聞いてくださいよ、そういうことになれば、これは、先ほどから言っているように、申請者を誤信させ、申請権侵害することになるじゃないですか。これが実態だと。
そういうときに法律を変えて更に調査権限を強めたら、一体どういうことになるんですかと、こう言っているわけですよ。扶養は保護の要件ではないというふうに厚労省は答弁しているけど、これ、前提だと言っている。答弁と現場の実態全然違うじゃないですか。こういう事態の中で法改正をしたらば、ますますひどくなりませんかと言っているんです。
○国務大臣(田村憲久君) 既にもうこういう、これ事実関係確認しますけれども、おっしゃるとおり前提ではないわけでありまして、既にもうこのような形で保護行政が進められているとすれば、それは我々としてもきちんと指導していかなきゃならぬというふうに思います。
ただ、今回、このような形で、六十年以上たって生活保護制度を大幅に見直すわけでありますから、これをいい機会に、このようなことが行われないように、しっかりと我々としては各窓口の方に指導をしてまいりたいというふうに思っております。
○小池晃君 いや、いい機会じゃないと思いますよ。逆だと思いますよ。これは、まさにこういうことを規定する法改定先取りするような動きが現場では起こり始めていると、私、そういうことだと思いますよ。
で、結局、こういうことをやられると、親族に対して身内に保護申請した人がいると知らされるわけじゃないわけです。親族の家計状況、プライバシーも全部調査されると。こういうことが配られたら、ますます家族の中の紛争、あつれき、深刻化する。何よりも、今日紹介した長野のケースのように、こういう書類を送られたら、もうやめてくれと、で、申請者は保護申請を取り下げると、こういう事態が起こるじゃないですか。
私は、今回の二十八条、二十九条の扶養義務者の調査強化というのは、こういう形で実際現場では起こっていることが更に広がっていく中で、ますます受給権を脅かすことになるのは間違いないというふうに思っておりますし、これはやはりその調査権限の強化という法改定、撤回すべきじゃないですか。
○国務大臣(田村憲久君) 結果、扶養ができるということであるならばそれは扶養していただくということでございますので、それはそれで生活保護者、申請者自体が扶養の中において生活をいただけるということでございますから、それ自体を否定するものではないわけでございまして、決して相矛盾する話ではないというふうに思っておりますけれども。
○小池晃君 扶養できるんだったら扶養するんですよ。誰だって自分の家族、自分の親支えたい、自分の子供支えたいと思うわけですよ。それができない実態がある中で生活保護を申請するというのは、本当に追い込まれて、とにかくもうそれしかないということで申請するわけです。そのときにこういう文書が、限定するなんて言っているけれども、実際はこういうの、もう何の前提もなく送り付けているんですよ、現場の福祉事務所は。こういうことでいいんですか。
そういう中で法律変えれば、ますます自治体の側は、ああもっともっと強化していいんだというふうにメッセージとして受け止めることは間違いないじゃないですか。これを機会に良くなる、そんなばかな話はないですよ。ますますひどい事態が起こりますよ。
だから、私はやっぱりこういう扶養義務者への調査権限を強めるということは、まさに申請者の人権を侵害することになるということを重ねて申し上げたいというふうに思います。
さらに、本案は二十四条を改定すると。保護申請に当たって申請書の書類を提出を義務付けているわけですが、これは先ほどからあるように、今までと変わらないんだ、変わらないんだとおっしゃいますが、保護申請は口頭でも今まで認められてきた。それを法律上書面提出を義務付けたわけですから、局長、これは明らかに保護申請のハードルを高めることになるんじゃないですか。いかがですか。
○政府参考人(岡田太造君) 今般の第二十四条の改正で、申請時に必要な書類を添付して書面を提出する旨を法律上規定いたしましたが、これは法制的な観点から規定したものであり、申請事項や申請時の様式も含め、現行の取扱いを変えるものではございません。
この点につきましては、よりその趣旨が明確になるように、さきの通常国会におきまして衆議院で修正いただきましたところでありまして、政府としてはこの修正を真摯に受け止めた上で反映をさせた上で再提出をさせていただいているところでございます。
それから、法制的には先ほどの二十八条第二項でもございますが、厚生省令で具体的にどういう場合に留意すべき事項、この二十四条では口頭申請の問題であるとか、そういうものについて具体的に省令で決めることにしておりますし、先ほどの二十八条二項につきましても、その条文の適用が及ぶ範囲を具体的に省令で定めることにしておりますので、法律と省令で法律的にはその位置付けがそういうふうに限定されるということをむしろ明確にしたいというふうに思っております。その上で、そうしたものを地方自治体に対して適切な周知を図っていくということを十分留意してやっていきたいと思います。
この二十四条につきましても、従来から保護の相談に当たりましては、申請権を侵害することがないなど適切な窓口対応に努めるように通知しておりますし、全国大会でも数次にわたりましてその周知を行っているところでございますので、今回の改正におきましても、法律的にきちっとした省令でそういう位置付けを行った上で全体を整理した上で関係自治体に周知の徹底を図っていきたいというふうに考えているところでございます。
○小池晃君 変わらないんだったら法律変える必要ないんですよ。何で変えるんですかという話になるわけですよ。運用を変えないというんだったら。しかも、従来からやっていますからって、その従来が問題なわけですよ。適切にやっていないわけですよ。
例えば、これ私、直接この事案に接した人とお話聞きましたが、札幌の、二〇一二年一月に札幌市白石区のアパートで四十歳代の姉妹が亡くなっているという事案がありました。これは最低気温は札幌ですからマイナス十度を下回るという日もあるわけですね。そういう中で、料金滞納でガスも電気も止められて、上着を重ね着した状態でお姉さんが病死されていて、妹さんは知的障害があって一人で家から出ちゃいけないと言われていたと。それを忠実に守ったんじゃないかというんですね。妹さんも亡くなっていたというわけです。残された妹さんの携帯電話には一一一一一と打った跡があったと。一一〇番か一一九番かね、どんな思いで打ち込んだのか。
重大なのは、このお姉さんは生前三度も福祉事務所を訪れている。ところが、保護申請の書類渡されていないわけです。両親を亡くして頼れる人もいなかったそうです。お姉さんは、アパレル店とかホテルの皿洗い、必死に働いていたけれども妹の介護をしなければいけないということでなかなか思うように仕事ができないという中で、自らも体調不良になって、家賃の滞納なんかが積み重なっていったと。
二〇一〇年の六月に、お姉さんは白石区の福祉事務所に相談しています。行政は、記録が残っていまして、懸命なる求職活動が保護の要件だと言って説明を終了したと書いてある。二〇一一年四月に二度目に訪れたときも、非常用のパンを一週間分渡しただけで帰しています。二〇一一年六月の最後の相談で、行政側は何と書いているかというと、姉が必死の求職活動をしているが、妹の介護のこともあって職が決まらないと、生命保険も解約し活用可能な資産もないこと、妹の障害年金だけでは暮らせず手持ち金もほとんどないこと、これ全て把握しているんです。再び懸命なる求職活動を説いて帰しているわけです。そして、お二人が御遺体で発見された後で、その葬儀費用として初めて生活保護が支給されたんですね。こういうことが起こっているわけですよ。
これまではちゃんとやっているからと、これまでの実態がこうなんです。これまでも口頭申請を認めているなんて言うけれども、口頭で幾ら深刻な実態を訴えても申請書すら渡さないという事柄が各地で起こっているわけですよ。ですから、そういう中で法文まで変えてしまったらば、ますますこのような事態が拡大するのではないかと。大臣、そういう懸念は私、当然生まれると思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(田村憲久君) 先ほど来申し上げておりますけれども、不正受給はこれは何としても防いでいかなきゃなりませんし、一方で、本来受ける資格のある方が受けられないということも防いでいかなきゃなりません。
今までもこうだから、こんなの今度法律変えたらもっとひどくなるじゃないかとおっしゃられましたが、法律を変える中において、今全国中の窓口の職員の方々が注目されていますよね。どういうふうに変わるんだろうと。これ、ある意味、この生活保護行政がどのような形になるのかと、今、大変な各窓口の方々は意識を持っておられるんですよ。そのときに、このような、国会でいろんな議論をさせていただいて、これが本来あるべき姿ですよということを質疑の中でやっているわけですよね。これを基に厚生労働省として各窓口にこれから徹底をしていくわけでございます。
でありますから、先ほど私がいい機会と言ったのは、制度が変わる中において、今まで誤った認識を持っておられた方がおられるかも分かりません。それは、いるかいないかは、これは私は直接確かめていませんけれども、そういう方々も含めてですよ、今回、こういうふうな元々の考えがあって、それをこのような形で更に各自治体に徹底するんだなということが伝われば、そのこと自体は本来のあるべき姿に私は意識が徹底されるといういい機会であるんであろうと思いますので、是非ともそこのところを御理解をいただきながら、この制度改正というものを皆様方も御賛成をいただければ有り難いというふうに思います。
○小池晃君 誤った認識を助長するのではないかと。誤った認識だとおっしゃったけれども、まさにこういう条文、二十四条を、これを変えれば、現場では誤った認識は更に拡大するんではないかと、こう申し上げているんですよ。
何で、じゃ、これは、通常国会で修正案の提案者が、その二十四条の一、二項の削除を、本来削除すべきだと思うんです、誤解をなくすというのであれば、ところが、二十四条一、二項の削除ではなくてただし書修正に何でしたのかと、こう聞かれて、修正案の提案者はこう言っているんです。「今回の修正においては、既に閣法が提出されていることを踏まえ、閣法に対する必要最小限の手直しとして、ただし書きを加えるという形で対応をさせていただきました。」と。
通常国会で廃案となって、もう一回閣法として出し直すことになったんですから、ならば、なぜただし書ではなくて、二十四条一、二項の削除としなかったんですか。それをやることが最も誤解を生まずに適切な生活保護行政を実現する道につながるんじゃないですか。なぜそうしなかったのか。
○国務大臣(田村憲久君) 先ほど来答弁をしておりますとおり、法律に調査のことが書いてあると。これとのバランスの意味で、これは書いてあるという話でありますが、これも含めて、修正をいただいた文言も今般この中に盛り込まさせていただいております。
これがあることによって、逆に、これは一体何なんだと、何なんだと。いや、これはあるけれども、今までどおり、申請意思があれば、それは添付書類や書面提出、そんなものを前提として、その申請を重視しなきゃいけないんですよというふうに徹底するんですよ。
ですから、かえって、今まで誤ったことをもしやっている方々がおられたとすれば、窓口で、そうだったのかと御理解をいただける話だと私は思います。
○小池晃君 いや、もう理解できません。
これは、こういう実態が、それがごくまれに起こっているわけじゃないんですよ。実態としてはそういったことがいろんな自治体で広がっているという中で、誤解があるからということでわざわざただし書入れたんだったら、最も誤解を取り除く方向は、二十四条の一、二を削除すると、これが一番すっきりするじゃないかということですよ。
私は、やはりこの法改正については重大な問題があるというふうに思いますし、二十四条については、ただし書ではなくて削除するということしかないというふうに思っております。
続いて、生活困窮者自立支援法案についてお聞きしたいんですが、この生活困窮者に対して自立支援相談事業、就労準備支援事業などを実施して、保護受給に至る前に支援するというふうに言っているわけですが、これは、貧困者の支援団体、研究者などからは水際作戦の新たなツールになるんではないかという懸念の声も出されています。
そこでお聞きしますが、局長、これらの事業、今私が紹介したような様々な事業は、生活保護法四条一項のその他あらゆるもの、同二項のその他の法律の扶助に含まれますか。
○政府参考人(岡田太造君) 生活困窮者自立支援法におきます生活困窮者は、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者であり、生活保護の受給者、要保護者は含まれてないというものでございます。
このため、新制度の各事業は、他法他施策を定めました規定におきます他の法律による扶助には含まれないものというふうに考えているところでございます。
○小池晃君 これらの事業の適用を受けることは、保護の要件とはならないということですね。
○政府参考人(岡田太造君) 新制度ができましても、保護が必要な人には確実に保護を実施するという生活保護制度の基本は、その考え方を変えるというものではございません。生活保護の要件を満たしている方については、この制度に基づく支給を受けているかどうかにかかわらず、保護を申請し受給することが可能であるということで考えています。
○小池晃君 本法案の自立支援の仕組みというのは、二〇〇二年に施行されたホームレス支援特別措置法の枠組みに似ているわけであります。このホームレス支援特別措置法の枠組みができて十年以上たちますが、一体何が起こっているか。
これ、例えば東京のホームレス支援事業では、宿泊施設の居住環境が余りに悪いということで、途中で退所する方が後を絶ちません。自立支援事業で自立ができるというのも看板倒れで、就業できたとしても多くは短期、非正規だと。住居が確保できずに結局ホームレスに戻ってしまうという方がほとんどという実態が言われております。
しかも、重大なことは、この支援事業の利用を事実上生活保護の前提とする運用がなされているんですね、現場では。このホームレス支援特別措置法ができたときに、例えば衆議院の厚生労働委員会の附帯決議では、これによって不当に生活保護が不適用とされることがないように適切に運用するという附帯決議も付いているんですが、こういう懸念、当初からあったわけですよ。
ところが、東京では住まいを失ったホームレスの方に対して、このホームレス自立支援事業を利用することが強制されて、これを利用しないで保護申請しても他法他施策を利用していないといって保護を却下されるという運用が行われています。二〇〇八年に、東京都新宿区内でホームレス状態にあった当時五十代の男性が、生活保護受給を求めたに対して、福祉事務所がホームレス自立支援法の活用が優先であるということで申請を却下するということが起こって、これは行政訴訟、起こしました、新宿七夕訴訟。これに対して東京地裁は、ホームレス自立支援施策は生活保護法で言う他法他施策には当たらないという判定をして、自立支援施策の活用の有無が保護を拒否する要件には当たらないという判決を下しています。
大臣、新しいこの支援事業でも自治体では既にこういったことが起こっている中で、保護開始の要件とするような運用が始まってしまうんじゃないですか。この点についてどうお答えになりますか。
○国務大臣(田村憲久君) その点も、そうではないということを徹底をしてまいりたいと思います。
重ねて申し上げれば、自立支援事業の方で、例えば自立支援相談事業でアウトリーチした場合に、そこで対象者と相談をいろいろとする中において、いや、あなたは生活保護の方に行くべきでありますよということも、逆に、これは適切な行政サービスにつなげるということもあるわけでございますから、水際作戦のような形で使われることがないよう、そこは徹底をしてまいりたいと思います。
○小池晃君 ところが、既にこれ先取りする形でモデル事業をやっています。全国で六十八自治体がやっているというふうにお聞きをしました。そのうちの一つ、今年九月からなら福祉・就労支援センターを開設した奈良市では、奈良市の仲川市長がこう言っているんです。この事業によって安易に生活保護を受給する方を水際で止めると。記者会見でそう言っているんですよ。まさに水際作戦に使うと、市長がこう言っているんですね。モデル事業を始めた自治体の中に既にこういう認識でいるところが出ているわけですね。
これ、水際で止めると言うけれども、これは水際じゃないですよ、保護が必要な人を沖合で追い返すようなことになるわけですよ。こういうやり方が、全ての自治体でこの事業が広がっていけば、モデル事業の中で既にこれを水際で食い止めるために使うと言っているような中で、こういう制度の悪用、不適切な運用、こういったことが広がる、そういう危険性は広がっているんじゃないですか、いかがですか。
○国務大臣(田村憲久君) どういう趣旨でおっしゃられているのか、ちょっと私、正確には分からないものでありますから、それに対してのコメントは避けますけれども。
もちろん、生活保護に入られる前の方々をその前で自立を促して、生活保護に入る手前でそのまま自立に向かって立っていただくという形は、それはそれでいいわけでありますが、本来生活保護を受けなければならない方をこちらの方でという話はそれは本来の趣旨から外れておりますから、そのようなことがないようにということで徹底をしてまいるということであります。
○小池晃君 今日の議論を通じても、水際作戦、水際で追い返す行為は違法だと、自治体指導するというふうにおっしゃるんだけど、現実にはそういった事態が本当に広がっているわけですね。この場で起こらない、大丈夫なんですと幾ら答弁しても、現場はそういう、とにかくできるだけ門前払いするという動きになっているときに、この改定案が新たなチャンスだというふうになっていく危険性は極めて重大だと。
だから、社会保障の研究者もこれだけ声を上げているわけです。地方紙の社説を見ても、山陽新聞は安全網を弱体化させるな、北海道新聞は人権侵害のおそれがある、宮崎日日新聞は制度崩壊の危険をはらむ、こういう社説が地方紙ではあふれているわけですね。
私は、この法案というのは、申請書類の義務付け、親族への調査、自立支援事業の押し付け、これによって保護申請のハードルを高めてしまって、餓死やあるいは孤立死、こういう悲惨な事態を拡大するものだというふうに言わざるを得ないと思いますし、これは撤回を求めて、質問を終わりたいというふうに思います。
以上です。
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