|
9条 何が明らかに
|
|
スタジオに集まった六十人の市民の声、一万四千百七十通に及んだファクス・電話、評論家の加藤周一さんと防衛庁・外務省OBの森本敏氏の発言、そして政党代表の討論で構成されたスペシャル番組。冒頭、九条改正について賛否が拮抗(きっこう)する世論調査を受けて、各党が討論しました。
自民党の与謝野馨・新憲法制定推進本部事務総長は「自衛隊の存在を憲法上認めるべきだ。もう一つは国際貢献をどこかで書かなければならない」と主張。民主党の仙谷由人・政調会長も、自衛隊の存在、国連との関係を規定するよう主張し、「憲法の空洞化をやめさせるため」と合理化しました。公明党の太田昭宏・憲法調査会座長は「タブーを設けず、自衛隊の存在や国際貢献のあり方を検討していく」とのべました。
これにたいし、小池氏は、「(九条は)戦後六十年の出発点であり、アジアで二千万人、日本で三百十万人の犠牲の上にたったかけがえのない国際公約だ。これを捨てていいのか」と提起。紛争の平和的解決を求めたイラク戦争反対の運動などを例にあげ、「世界の現実政治が憲法九条に近づきつつある時代に、この大切な宝を捨て去るほど、愚かな時代への逆行はない」とのべました。
社民党の土井たか子憲法部会長も「いよいよ九条を生かす時代になってきた」と主張しました。
しかし議論は「九条を変えるとすれば歯止めはなにか」という方向に傾き、与謝野氏は「(九条の)一項は残すが、二項は改正」との立場を表明。小池氏は次のように反論しました。
「軍事力を持たないという二項があったからこそ、大きな歯止めになってきた。軍隊でないという建前上、海外で武力行使はできない。二項が外れれば、海外で武力行使できるようになる」「歯止めなき海外での戦争という道に突き進んでいくことになる」
番組での評論家・加藤周一さんの発言 第一次大戦、第二次大戦以降、世界の主な潮流は戦争を非合法化、禁止する傾向なんです。日本の憲法は、一歩先へ踏み出したのであって、古くなったのではなく、いやがるのに無理におしつけられたというのでもない。日本人が平和を望んだあの機会に、天下の潮流にのって、世界の一歩先に進んだ。ですから日本人の誇りになりうるわけです。
|
世論調査、スタジオの意見をうけながら、政党討論では武力行使を伴う活動にも参加できるかが議論の中心に。
与謝野氏は「確立された国際組織から要請された場合、日本はやるべきことをやると、憲法上はっきりさせておく必要がある」と主張。仙谷氏も「国連憲章三九条から五一条(軍事の制裁措置あるいは自衛権の行使)までを受け入れるとはっきりさせておかなければならない」とのべ、国連の活動ならば武力行使も含め参加すべきだとの立場を示しました。
これにたいし、土井氏は「国際貢献は文民で、民生(分野)で」と主張。小池氏は「国際貢献だといって政府がやってきたのは、全部米軍支援だ」と指摘し、「憲法九条をいかした国際貢献こそすべきで、実際、日本の外交はそういう成果もあげている」とのべました。
小池氏が例にあげたのは、年間五十万人もの死者を出している小型武器(けん銃、小銃など)軍縮の国際会議で日本が議長国となり声明をとりまとめる役割を果たしたこと。当時、軍縮大使だった猪口邦子氏も九条は「世界で特別の評価を獲得するに至っている」とのべています。小池氏が「二十一世紀、日本が国際社会で信頼されていくためには、憲法九条を中心にすえた平和的アプローチを徹底してやっていくことこそ、一番の道だ」と力説すると、うなずく参加者の姿が目立ちました。
また、太田氏が「自衛隊も国際貢献のワン・オブ・ゼムである」とのべたのにたいし、小池氏は「(イラクでは)自衛隊がいったことによってNGOが活動できなくなった」と批判しました。
加藤さんの発言 事実の問題として、伝染病や地震・津波などで死ぬ人は、戦争・テロで死ぬ人の何十倍です。マラリアにかかった人をどう助けるか(など)、国際貢献の大部分は軍隊・武力とまったく関係ない。“自衛隊によらなくても”ではなく、自衛隊と関係ない。国際貢献と聞くとすぐに自衛隊に何ができるかと考える反応はちょっとうさんくさい。
|
集団的自衛権にかんして、与謝野氏が「日本の安全に密接に関連した事柄にかんしては協力すべきだ」と主張、太田氏は「政府見解を踏襲する方が政治的に賢明だ」と発言。仙谷氏はあいまいな発言に終始しました。
小池氏は「集団的自衛権とは、日本が攻撃されていないときに、アメリカが起こした戦争に日本が参加して武力行使できる権利。こんなことは絶対に許されない」と指摘。日本経団連の改憲提言で「わが国として同盟国への支援活動が否定されていることにな」るとして集団的自衛権の明記を求めていることなどを紹介しました。
また、アメリカが決めたことだからと思考停止する現状を批判。「かつては戦争、いまは従属、こういうゆがんだ関係から対等平等の日米関係を」と主張しました。
加藤さんの発言 九条と日米安保には矛盾がある。矛盾を解決するためには、どちらかをいじらなければならない。私は九条を守って日米安保の方を変えた方がいいと思う。日米関係は軍事面だけでなく、政治、文化、技術と複雑で多面的だ。安保条約を非軍事化して日米友好条約とかにしたらいい。スウェーデンやスイスなど、非軍事つまり外交や伝統の力で安全になった国がずっと多い。
討論のしめくくりは、憲法九条をめぐる議論にどう向き合うか。
小池氏は、「憲法改正に賛成という方も平和が必要だ、戦争がいやだという方が大勢だった。(改憲の)中身がはっきりして、そういう改正ではないことが明らかになってくれば、九条改悪反対という人が必ず多数になる」とのべ、意見の違いをこえ、力をあわせて憲法改悪を阻止する決意を表明。
土井氏も「九条を世界の規範に」とのべました。
各党は「四月までに第一次試案を出し、十一月十五日までに党として草案を出して世に問う」(与謝野氏)「なし崩しのやり方は限界だ。さりながら、実力組織を担保しないと統治がうまくいかない」(仙谷氏)「全面的改正は、時間がいくらあっても足りない。補強し加えるという方向で合意を形成するのが大事だ」(太田氏)などの態度を表明しました。
加藤さんの発言 日本の安全は東北アジアの平和と密接に関係する。東北アジアの安全を築くのに、日本外交は失敗した。独仏関係と日中関係は違う。それでも、東北アジアと日本との関係を平和的に発展させるために、九条はたいへん役に立つ。それを除けばマイナスに働く。
リンクはご自由にどうぞ。各ページに掲載の画像及び記事の無断転載を禁じます。 © 2001-2010 Japanese
Communist Party, Akira Koike, all rights reserved. |