「いつでも元気 2012.1 No.243」より |
『元気』読者のみなさま。「今年こそよい年になりますように!」という願いをこめた、二〇一二年最初の「奮戦記」をおくります。
期待の風は、いまや逆風の嵐に
二〇〇九年の政権交代から三年目に入りました。ふり返ると、「政治がかわる」という期待の風の「最大瞬間風速」は、政権交代直後でした。その後、風は弱まり、鳩山政権末期にはそよ風に。菅政権になって逆風が吹き始め、三代目の野田政権にいたっては逆風の嵐です。
この嵐を吹き飛ばそうと、一一月二〇日には「ドクターズ・デモンストレーション」と銘打った大行動がおこなわれ、私も参加しました。医師による大規模なデモ行進は、国民皆保険制度の実現を求めた一九六一年以来、五〇年ぶりのことだそうです。
そもそも日本は、先進国で最も少ない医療費と医師数のもとで、世界に誇る水準の医療を実現してきました。しかし、医療従事者の過酷な長時間・過密労働は、もはや限界。医療崩壊打開のためには、医療費や医師数の大幅引き上げが必要です。
診療報酬大幅引き上げは当然
民主党は野党時代、自民党政権による診療報酬引き下げ、医療費窓口負担増、後期高齢者医療制度などを批判、「総医療費を対GDP(国内総生産)比で、OECD(経済協力開発機構)加盟国平均まで引き上げる」と公約して二〇〇九年の総選挙にのぞみました。これに多くの国民が期待。民主党の「医療再生」という訴えが、政権交代の原動力のひとつになりました。
ところが政権交代後、国民の期待はことごとく裏切られています。日本の総医療費は対GDP比八・五%、OECD加盟三四カ国中二四位。OECD平均の九・五%にするには約六兆円増やす必要があります。しかし二〇一〇年度診療報酬改定は、一〇年ぶりのプラス改定でしたが、わずか〇・一九%増、医療費にして六〇〇億円の増額でした。このペースだと公約実現まで一〇〇年かかり、そのときにOECD平均は、はるかかなたに上昇していることでしょう。
二〇一二年度の診療報酬改定はどうなるのか。民主党の公約に照らしても、大幅引き上げは当然です。しかし一一月末の「政策仕分け」では「引き上げ反対」に。前回改定時に財務副大臣だった野田首相は「三%引き下げ」を強硬に主張した「前歴」もあり、油断なりません。
医療・介護政策の抜本的転換を
民主党政権が「税と社会保障の一体改革」で打ち出した社会保障改革案は、自民党政権のものとソックリ。医療費の窓口定率負担に定額負担を加え、七〇?七四歳の窓口負担を二倍にするなど、自民党すら手を付けなかった負担増まで打ち出しています。
民主党政権は、財政再建の観点から社会保障の見直しをおこなおうとしています。これでは「小泉構造改革」で、社会保障費を毎年二二〇〇億円削減するために制度改悪を連続させ、「医療崩壊」を招いたことと、同じ過ちを繰り返すことになります。
「構造改革」路線の復活を許してはなりません。社会保障を財政の「重荷」としてとらえるのは時代遅れです。くらしをささえ、内需拡大で日本経済再生をすすめる原動力としての医療・介護政策へと抜本的転換を! ごいっしょに声をあげていきましょう。