Dr.小池の日本を治す!
「国民が主人公」つらぬいて新しい政治つくる

 驚き、あきれました。首相が交代し、その直後に参議院選挙が戦われるというのに、予算委員会での一問一答の論戦もなし。

 選挙の前に、国会での論戦で、国民の皆さんに判断材料を提供するのは、政権与党の最低限の責任です。菅政権のボロが出る前に、さっさと選挙に逃げ込むのでは、「小沢隠し」「争点隠し」と言われても仕方がありません。

 国民には国政の中心問題と、選挙の争点を知る権利があります。日本共産党は、選挙公示後も、テレビなどで何度も党首討論を行い、国民の前で堂々と選挙の争点を明らかにして、審判を仰ごうと呼びかけています。

「消費税10%」が最大争点に

 一方で、国会閉会後に重大な発言が飛び出しました。菅直人首相が「マニフェスト」(政権公約)発表の場で、消費税の増税について「当面の税率は、自民党が提案する10%を参考にする」とし、「政府税調で2010年度内に、あるべき税率を含む消費税の改革案をまとめていきたい」「超党派での法案提出が難しい場合は、民主党が中心となって改革案を取りまとめたい」とまで踏み込んだのです。民主党の玄葉光一郎政調会長は、出演したフジテレビ系「新報道2001」で、私の指摘に対して「首相の発言は党の公約だ」と明言しました。

 消費税増税が今回の参議院選挙の最大の争点に浮上してきたのです。

 第一生命経済研究所の試算では、消費税を10%にすれば、平均的な4人家族の負担増は年間16万5000円にもなり、消費を冷え込ませ、国内総生産(GDP)も引き下げてしまいます。

 しかも、低所得層ほど負担は大きく、消費税が10%になれば、年収250万円以下の世帯では消費税支払額が年収に占める割合が8.1%になるのに対して、年収1500万円以上の世帯では4.2%。消費税は「公平な税金」どころか、低所得者ほど負担の重い、最悪の不公平税制です。

大企業減税の「穴埋め」に消費税増税

 今回の議論の特徴は、「法人税の減税」が先行していることです。民主も自民も法人税減税を「マニフェスト」に明記しました。経済産業省は「25%への減税」を主張しています。そうすれば9兆円もの大減税になってしまいます。これは消費税に換算すると4%分に相当。つまり5%の消費税増税を行っても8割は法人税減税の穴埋めに消えてしまいます。

 民主党は「消費税増税は社会保障のため」と必死に弁明していますが、法人税減税とセットならば、そもそも社会保障の財源にはまわりません。だいたい、「社会保障のため」と言いながら、後期高齢者医療制度の廃止は先送り。野党時代には「受診抑制をもたらす」と主張していた医療費の窓口負担の引き下げも「必要な医療は抑制されていない」と背を向ける始末。これでは「社会保障に使います」と言われても、素直にはうなずけません。

 今までの自民党政府も、いつも「社会保障財源に」と言ってきました。消費税を導入するときも、税率を5%に引き上げるときもそうでした。しかし、社会保障はどんどん切り捨てられ、結局、消費税が導入されて22年間で、消費税の税収の累計総額224兆円は、同時期の法人3税の減収208兆円の「穴埋め」になってしまったのです。

 今回は「法人税減税、消費税増税」をセットで提案してきたのですから、こんな露骨なやり方をなおさら認めるわけにはいきません。

"火元"は財界の要求

 この「セット提案」の"火元"は、4月に日本経団連が発表した「成長戦略2010」です。ここで日本経団連は消費税率を速やかに10%に引き上げ、10年代半ばまでには「10%台後半ないしそれ以上」への引き上げを求め、返す刀で法人税率の引き下げを求めています。

 大企業にしてみれば、消費税は販売価格に転嫁できますから、1円も負担せずに済む税金です。消費税の増税を法人税減税の財源にまわせば、大企業は"丸もうけ"。あまりに虫のよすぎる要求です。

 財界は、「日本の法人税は高い」キャンペーンを展開しています。しかし、ここには2つの大きなごまかしがあります。

 1つは、「法人税の実効税率は40%で高すぎる」といいますが、研究開発減税、外国税額控除などの大企業優遇税制による減税分を意図的にのぞいていることです。日本のトップ企業が実際に負担している法人税負担率は、平均30%程度にすぎません。

 世界に名だたる多国籍企業のなかには法人税負担率が10%台から20%台となっている企業も少なくありません。ちなみに、現在の日本経団連会長企業である「住友化学」の、過去7年間の税引き前純利益に対する法人3税負担率は、私たちの試算では、わずか16.6%でした。

 もう1つは、日本では社会保険料の企業負担が欧州などに比べて低いことです。税と社会保険料をあわせると、財務省が発表した数字でも、日本の大企業の負担はフランスの7割程度となっています。

 税も社会保障負担も「負担能力に応じて負担する」応能負担が大原則です。負担能力のある大企業や大資産家が負担を軽減され、そのツケを所得が減り続けている労働者、国民に押し付ける。こんな逆立ちした政治はありません。

 日本共産党は、「脚本:日本経団連。主演:民主党、自民党。共演:公明党、その他『新党』」による「増税大連立」に断固反対します。

米国にも財界にもモノ言える政党を

 国民の声が政治を動かした「政権交代」から1年もたたずに、どうしてこんなことになってしまうのでしょうか。

 普天間問題では、鳩山由紀夫前首相が「国外、最低でも県外」という公約を投げ捨て、沖縄の民意を踏みにじって、「県内移設」の日米合意を発表しました。菅新首相はこれを見直すどころか、日米合意を"迷わず実行する"と表明しています。

 暮らしの問題でも、菅首相の所信表明演説からは、民主党のスローガンだった「国民の生活が第一」という言葉すら消え、とうとう「法人税減税と消費税増税」という「財界が第一」の政策にかじを切りました。

 こうした「変節」の根本にあるのは、沖縄県民、日本国民より米国を優先し、財界・大企業にこたえるためには国民の生活も省みないという、自民党と同根の民主党の政治姿勢です。

 いま、日本の政党で、米国にも、財界にも、きちんとモノが言える政党は、日本共産党だけです。今度の参議院選挙は、自公政権の退場、迷走と裏切りの鳩山政権の退陣という、国民の世論が動かした政治を、さらに前にすすめることができるかどうか、日本の進路にとって大きな意味を持つ大切な選挙です。

 私たちは、どんな時も「国民が主人公」をつらぬく日本共産党を伸ばして、今度こそ日本の政治を変えようと訴えていきます。

(参議院議員 小池晃)
(フジサンケイビジネスアイ 2010年6月14日掲載、図はこちら)

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