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内部留保、活用の議論を

 日本共産党の志位和夫委員長が党首会談で求めた「内部留保の還元」に対して、鳩山由紀夫首相が「検討したい」と答えたことが、話題になりました。

 私たちは「日本共産党の来年度予算組み替え提案」にもとづいて、「大企業の内部留保と利益を社会に還元させ、雇用と中小企業の経営の安定をはかる」ように申し入れました。これに対して、鳩山首相が「内部留保に適正な課税をすることも検討したい」と応じたというのが、ことの顛末(てんまつ)です。

 かなり大きく報道されましたから、ご記憶の方も多いでしょう。いろんな反響も寄せられました。「利益と内部留保の両方に課税するのは二重課税ではないか」「内部留保に課税したら競争力が失われる。共産党は大企業を敵視しているのか」「内部留保は現金で存在するわけではなく、設備投資に充てられているから取り崩せない」などなど。

 そこで、この機会に、共産党の考え方をご説明したいと思います。

◆課税に言及したのは首相

 第1に、「内部留保に課税」というのは、共産党の方からの提案ではなく、鳩山首相が言い出したことだったということです。私たちは、労働者派遣法改正や最低賃金制度の改善、下請け取引の適正化などによって、大企業に雇用と中小企業への社会的責任を果たさせるルールを確立することを求めたのです。そのことによって、結果として内部留保が社会に還元されるようにしようというのであって、課税によって「無理やり内部留保を吐き出させる」ということは考えていません。

 第2に、共産党は大企業を敵視しているわけでもなければ、大企業が利益をためこんでいることに対する「やっかみ」から、内部留保を問題にしているわけでもないということです。

 英紙「フィナンシャル・タイムズ」(1月13日)は、「なぜ日本経済が世界規模のショックにこれほどまでに脆弱(ぜいじゃく)だったのか」と問いかけ、「企業が過剰な内部留保」を蓄積したことが、日本経済の"基本的な構造問題"の一つだと指摘しています。そして、内需主導の成長のために、「企業貯蓄の大規模な削減」が重要だとしています。

 共産党が内部留保の活用を主張するのはなぜかというと、企業内に過剰に蓄積されたままでは内需主導の経済発展につながらず、それが日本経済を弱くし、大企業自身の将来にとってもマイナスだと考えるからにほかなりません。

 鳩山首相が「内部留保への課税」という場合、どのような増税をイメージしたか定かではありませんが、かつてのような「留保分重課、配当分軽課」の方式ならば、株主への配当が増えるだけに終わる可能性もあります。これでは、過剰な蓄積が企業から大資産家へ移るだけで、日本経済の循環に生かされることにはなりません。まして、株主の4分の1は外国人ですから、内部留保は海外に流出してしまうことになってしまいます。

◆雇用と中小安定に寄与

 第3に、内部留保のかなりの部分が設備投資などの現物資産に充てられているのは事実です。しかし、この10年間の統計データを見ても、大企業の内部留保の中核部分である利益剰余金が倍近くに増える一方で、有形固定資産や棚卸資産はむしろ減少しており、設備投資などに固定化されていない過剰な内部留保があることは明らかです。

 大企業の資産で増えているのは有価証券。この中には、海外子会社の株式など簡単に手放せないものもあるでしょうが、売買目的の有価証券や、トヨタ自動車のように国債を大量に保有している例などもあり、換金できる部分は少なくないはずです。

 共産党は、別に「内部留保を全部取り崩せ」などと極端なことをいっているわけではありません。巨額の蓄積のごく一部を活用するだけでも、雇用や中小企業の経営安定のために、かなりの改善が可能になると考えているのです。

 どうやって内部留保を活用するかでは、考え方の違いがありますが、民主党政権も「過剰な内部留保には問題がある」とは認めました。その共通認識を前提として、建設的な議論を進めていきたいと思っています。

(フジサンケイビジネスアイ 2010年3月22日掲載)

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