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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]
「いつでも元気 2007.7 No.189」より

特集1 小池晃参議院議員にインタビュー/広がる“憲法守れ”の声/参議院選挙で政治に丸ごと審判を/平和とくらし、医療も大きな争点に

 七月五日公示、七月二二日投票の参議院選挙。憲法を自分の任期中に変えると豪語し、選挙の争点にもするという安倍首相。戦後の歴代首相で初めてのことです。小池晃参議院議員に話を聞きました。 (多田重正記者)

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小池晃さん(撮影・五味明憲)

 ―国民投票法が強行されました。いよいよ、憲法を守る正念場ですね。

 小池 憲法を守るたたかいがほんとうに大きく広がっていますね。全国をまわっても、みなさん、実に生きいきとがんばってるんです。九条の会は全国で六〇〇〇を超え、マスコミが世論調査をするたびに憲法改定に反対する人が増えています。九条の会などの運動が、世論を動かしているといえるでしょう。

 安倍首相が改憲の意図をむき出しにしたことで、危険性が見えやすくなったことも世論の変化の背景にあると思います。小泉前首相は「戦争はしない。自衛軍を持てると憲法に書くだけ」といっていましたが、安倍首相は憲法改定の目的が「米国と肩を並べて武力行使する」ことだということを隠そうとしませんから。

 しかもそれはイラク戦争など、日本の安全とは関係ない侵略戦争です。そこに自衛隊が参加する。「九条があるから海外で武力行使できない。だから憲法を変える」というねらいが見えやすくなっているのではないでしょうか。

改憲派の本性が見えてきて

 小池 さらに、改憲派の人たちの本性がはっきりしてきた。過去におこなった侵略戦争や植民地支配を正当化するばかりか、戦前のような日本にしようとしています。「こんな人たちが憲法九条を変えたら日本はどうなるのか」との危機感が広がっているわけです。

 教育基本法を変え、戦争できる国にするために国が国民の心の中にまで踏み込み、支配する。愛国心や道徳を押しつけ、評価の対象にまでしようとしています。

 文部科学省は「新教育システム開発プログラム」にアニメDVD『誇り』(日本青年会議所制作)を使った教育事業を採用しました。日本の侵略戦争を「自国を守る戦争」「アジア解放の戦争」だったと教えるDVDです。すでに二月から六月にかけ、全国の学校など九三カ所でこの教育事業が実施・予定されています。

 また、離婚後に生まれた子どもを再婚相手の子どもと認めて戸籍に入れる問題でも、自民党から「貞操義務の否定だ」という意見が出る。どこかおかしいのではという疑問が広がっていると思います。

改憲こそアメリカの押しつけ

 ―現行憲法は「アメリカの押しつけだ」という意見もありますが。

 小池 日本の侵略戦争が正しい戦争だったと思っている人に多い意見ですね。つまり、自分たちの気に入らない憲法だから「押しつけ」だと感じるのでしょう。憲法の制定過程では、生存権を定めた憲法二五条はGHQ(連合国総司令部)の素案になく、日本の主張で盛りこまれたのです。いまの憲法は一方的な押しつけではないのです。

 「押しつけ」というなら、改憲こそアメリカの押しつけなんです。憲法制定直後からアメリカは九条を変えろといってきた。憲法を変える動きが強まっているのも、きっかけは九条が「日米同盟の障壁」だといったアメリカの「アーミテージレポート」(00年)などで、これこそ「押しつけ改憲論」ですよ。

―外国では憲法を何度も変えているという人もいます。

 小池 外国には生活上のこまかいことまで書いてある憲法があります。スイスの憲法は何十回も変えていますが、税率まで書かれているからなんです。日本の憲法は国の骨格だけを決めているのですから、性格がまったく違います。

 私は、日本国憲法は当時の世界の民主主義の到達点が反映された非常に素晴らしい憲法だと思います。しかも制定当時と比べても、よりいっそう憲法九条の理想が、現実のものとなりつつあるのではないでしょうか。イラク戦争にも多くの国が反対しましたね。「六〇年経って古くなった」という人もいますが、古いどころか六〇年間憲法に掲げた政治は実現していないのです。いまこそ花開かせるときではないでしょうか。

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戦略がない日本の外交

 ―日本政府は戦争をしたくて仕方ないように見えます。

 小池 昨年七月に北朝鮮がミサイルの実験をしたら、いまの首相の安倍さんは「敵基地の攻撃能力を持たなければならない」といいましたね。すぐに軍事的対応に走りたがる。こんな人たちに歯止めをかけていたのが憲法九条です。この歯止めをなくしたら恐ろしいことになる。

 私は去年パキスタンで最大与党・ムスリム連盟の幹事長に会いました。彼が日本に来て安倍首相のブレーンといわれる岡崎久彦氏と懇談したとき、岡崎氏は「一緒にアメリカと組んで中国をやっつけよう」といったそうです。「日本の首相のブレーンはその程度ですか」と大論争になったそうですよ。

 日本の外交には戦略がない。その理由は、アメリカのいうことを繰り返しているだけで、何か起きると軍事優先の対応しか思いつかず、侵略戦争に対する反省という世界共通の土台すら踏まえていないからです。日本は本来、アジアや世界で大きな役割を果たす力を持っていると思いますが、本当にもったいないですね。

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庶民切り捨て許さず、魅力ある国づくりを

庶民から奪い、大企業・大金持ちに

 ―くらしの問題でも改憲を先取りしていますね。

 小池 以前は自民党でも手をつけてはいけない部分があった。社会保障を削ってきたけれど国民皆保険制度や基礎年金の額は守る。障害者からは多くの負担を求めない。生活保護も削らない。最低限のところは守ってきたと思うのです。ところが小泉さんが首相になってから、どんどん平気で切り刻んだ。一方で、大金持ちや大企業には減税していきました。

 私は大企業ばかり優遇する庶民いじめの政治を「逆立ち政治」といってきたけど、いまはもっとひどい。庶民からお金を奪い取って大金持ちや大企業に回しているといってもいいぐらいです。何かといえば「国際競争力」を持ち出して、大企業の負担を軽くする。

 ―政府は税金が高いと企業が外国に出て行ってしまうといいますね。

 小池 大企業は、フランスやアメリカなど日本より税の重い国にも進出し、税金を払っています。国内でもふつうに払えばいいんだよね。イチローや松井は税金が安いからアメリカに行ったの?(笑) 違うでしょう? 大リーグに夢や生きがいを求めて行っているわけです。働く人びとにとって大事なのは、将来に夢をもって働ける魅力的な社会かどうかということですね。庶民のくらしを痛めつけておいて、外国と対等に渡りあえる産業も十分育つわけがない。

人を原料や部品のように扱って

 小池 最近、蒲田(東京・大田区)のインターネットカフェに行ってがく然としました。夜の八時にほぼ満杯で、若い人に混じって中高年もいる。若い女性もいました。足をのばして寝ることもできないイスの上で寝泊まりしているのです。

 こういう「ネットカフェ難民」と呼ばれる人が増えたのは「若者のやる気がないからだ」という人がいるけど、違います。やる気はあるけれど、まとまったお金がないので、アパートにも入れない。そうすると、住所がないからまともな仕事に就けず、低賃金の日雇いの仕事になる。まさに悪循環です。

 しかしこうした不安定雇用が広がった方が都合のよい企業がある。蒲田のインターネットカフェやマンガ喫茶の周りには日雇い派遣の会社があり、そこに登録している若者も多い。朝起きてマイクロバスに乗せられ、倉庫に行って働く。これが一つの産業になりつつあります。

 ネットカフェ難民は、企業にしてみれば使い勝手がよい。需要に応じて「今日は来なくていい」「明日は来てほしい」と、原材料や部品のように扱える。これは極端な事例ではなく、日本が「国際競争力」を口実に人をモノのように扱い、効率だけを求めてきた結果だと思います。

国民に対しあまりに無責任

 ―社会保障についても近年「自己責任」ばかりが強調されますね。

 小池 そうですね。国民健康保険でも「保険料を払わない人を払っている人と同じように扱うわけにはいかない」と国保の資格証明書を発行する。自己責任と同時に、平等・公平だといいながら、切り捨てを合理化していくのです。

 国保の保険料は高すぎて、払いたくても支払い能力を超えています。年間所得二八〇万円の四人家族で四五万円の保険料という自治体もある。これでは払えるはずがない。国保料が高くなったのは八〇年代以降、国庫支出が削られた結果です。国庫負担を削っておいて、加入者にだけ「責任を果たせ」とは無責任です。

 来年度から後期高齢者医療制度も始まります。七五歳以上の高齢者で、被扶養者(家族)の人からも月々六二〇〇円といわれる保険料を取る。さらに同じ医療行為なのに七五歳以上の高齢者には低い点数しかつけないなど、医療に新たな差別を持ち込むことも政府は検討しています。

 一方で、「消えた年金」が大問題になっています。かけ金を払ったのに記録が見つからず支払われないというとんでもない事態です。しかも五〇〇〇万件以上もです。これは二〇年前から予測されていたことであり、国民に対してあまりにも無責任です。国は責任をはたし、徹底調査すべきです。

 また、現職閣僚の自殺という異常事態となった政治とカネの問題も深刻です。真相を明らかにしなくてはなりません。

たたかえば社会は動く

 ―これだけは訴えたいということは?

 小池 いま日本中いたるところで、いのちとくらしを守るたたかいが起こっていますよね。昨年、徳島県の光洋シーリングテクノでは偽装請負の若者が立ち上がって労働組合をつくり、直接雇用を勝ち取りました。あきらめないでたたかえば社会は動くと訴えたいですね。

 たたかいには署名や集会などもありますが、選挙は政治に丸ごと審判を下せる絶好のチャンスです。憲法や暮らし、社会保障を守る政党の議員が一人でも増えれば非常に大きな力を発揮します。力を集中して政治を変えようという意気込みで私も臨みたい。みなさんもそういう目で選挙を見て、投票にもいっていただきたいと思います。

いまの国会にいいたいこと
(『元気』アンケートより抜粋)

  • 子どもたちの未来のために、平和な国づくりをしてほしい。日本国憲法の意味をもう一度考えてください(京都・30歳女性)

  • 少ない年金からお金をしぼり取るやり方は、高齢者を死に至らせます。どこが美しい国なのでしょうか。格差の解消に力を入れてください (北海道・63歳女性)

  • 少子化対策というと、保育園とか児童手当とか目先のことばかり。雇用が不安定じゃ子どもも生めない(東京・46歳女性)

  • 戦争体験者として、「憲法改正」には絶対反対です。「現在の日本があるのは靖国の英霊のおかげ」といいますが、それは違います。戦火の焼け跡を片づけ、復興に汗したのはいまの老人たちです (茨城・70歳女性)

  • 十分な審議をやるべきだ。とくに反対の意見を聞き、わかりやすい説明をして、国民が理解できるようにしてほしい(富山・73歳男性)

  • もう少し国民の現状を知り、国民の立場に立って政治をする覚悟ができてから議員に立候補してほしい (岡山・38歳女性) 

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