天下りを規制する「改革」をめぐって、永田町が大騒ぎです。
天下りは、日本の行政を大きくゆがめる「病原菌」となってきました。OBが天下りした企業に、役所が公共工事を配分する「官製談合」は後を絶ちません。旧防衛施設庁などは、受け入れた天下りOBの年収の合計を基準にして、各社に工事を配分。あまりに露骨でした。
血税に「たかり」の構造
業界側にとっては、天下りを多く受け入れるほど安定した受注と高い利益が見込めます。天下りするOBにとっては、「渡り鳥」のように天下り先を移っていくたびに、多額の退職金がもらえます。公共事業の見返りであれば、その出所は「税金」。まさに国民の血税への「たかり」の構造です。
天下りは、国民の命をも脅かしています。薬害エイズ事件では、汚染された血液製剤を販売していた「ミドリ十字」の社長が旧厚生省の薬務局長の天下りでした。最近では、異常行動などの副作用が問題となっている「タミフル」の販売会社に、厚労省の元課長が天下っていました。
医薬品行政が、天下りによってゆがめられているという疑惑は、国民の命にもかかわる重大問題です。天下りの根絶は待ったなしです。
再就職2年禁止も廃止
ところが、政府が打ち出した「改革」案には、「いったいどこが改革?」とあきれかえってしまいました。
政府は「官民人材交流センター」をつくって、そこで一元的に天下りをあっせんするといいます。これでは、今まで省庁ごとにおこなわれていた天下りのあっせんを、「天下りセンター」をつくって一本化するだけにすぎません。むしろ、今まで陰でこそこそやっていたあっせんを、新たな役所までつくって白昼堂々おこなえるようにするというのですから、「マネーロンダリング」ならぬ「天下りロンダリング」です。
しかも、天下り批判を受けてつくられた「退職後2年間は、密接な関係のあった企業への再就職禁止」という規制は廃止されます。つまり、今は禁止されている「厚労省の医薬局をやめて製薬会社に就職」「国土交通省を辞めてゼネコンに」が可能になる。これでは「天下り規制」どころか「天下り自由化」です。
ハローワークへどうぞ
自民党は「退職後まで面倒見ないと、役所にいい人材が来ない」といいますが、欲しいのは「いい人材」ではなくて「いいなりになる人材」。退職後の運命までガッチリ握っておいて、政治家のいうことを聞く官僚にしておきたいという魂胆は見え透いています。
「天下り自由化」など、とんでもない逆行です。必要なのは「天下りの禁止」。今ある規制をもっと強化して、民間会社だけでなく特殊法人なども含めて全面禁止する。エリート官僚は、いくら同期が出世しても定年まで働いていただき、辞めたい人は「ハローワークへどうぞ」。これでいいのです。
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