憲法を改悪するための手続き法である「国民投票法案」の強行がねらわれています。
9条改悪と地続きの法案
この法案を準備してきた自民、公明、民主は「憲法には改定の条文があるのに、そのための手続き法がないのはおかしい」などといいます。しかし、国民から「憲法を変えて」という声が上がらなかったから、手続きを定める必要もなかったのです。
一方で安倍晋三首相は、自分の任期中に憲法を変えると公言しています。いま国民投票法をつくるということは「単なる手続き」を決めるどころか、あきらかに憲法改悪と一体、地続きのものなのです。
しかもこの法案には、その内容にも重大な問題点があります。
一つは「最低投票率」の規定がないこと。どんなに投票率が低くても「有効投票総数の過半数」の賛成で改憲が成立してしまうのです。仮に投票率が4割だとするとその半分の2割、つまり有権者5人に1人程度の賛成で決まる仕組みです。
イギリスやデンマークなどでは、憲法改定に主権者である国民の多数の意志を反映させるため、「総投票数の過半数で、かつ、全投票権者の40%以上の賛成が必要」という「40%ルール」があります。国の土台であり骨組みである憲法の内容を、ひとにぎりの人の賛成だけで変えてしまうことなど許されないというのが、世界の常識なのです。
有料CM自由の一方で
また、この法案ではテレビや新聞などの有料広告は投票日の2週間前まで自由におこなえます。これだと、たとえば財界が億単位の資金を使ってテレビCMを買い占め、タレントを使って「憲法かえよう」などとキャンペーンすることも可能です。
一方で、公務員や教員が国民投票運動にかかわるのを禁じています。カネがあるものは自由に発言できるのに、500万人をこえる公務員や教員の言論は封じる。およそ民主主義を基礎に置く国では考えられないものです。
この法案は、国民の声を正確に反映させることより、とにかく改憲を通しやすくすることを最優先にしてつくられているのです。
戦争のけじめもつけずに
安倍首相は「戦後レジームからの脱却」などと平気で口にしますが、前の戦争のけじめは、あらゆるところでついていません。原爆症の認定訴訟では、被爆者の訴えが司法を動かして国の責任を断罪しています。東京大空襲の被害者の訴訟も始まりました。中国残留孤児に対する「棄民政策」や、シベリア抑留者への補償も未解決ですし、従軍慰安婦問題ではアジアだけでなく、アメリカからも非難の声が上がっています。
侵略戦争の誤りを認め、謝罪することさえできないような人々が、憲法9条を変え、ふたたび日本を「戦争ができる国」にしようとすることを、断じて許すわけにはいきません。
国民投票法案ストップ、主権者の権利を守れの輪を広げましょう。
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