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「いつでも元気 2006.12 No.182」より |
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高校の必修科目の履修不足が大問題になっています。競争教育のゆがみが、はっきり現れたといえます。
安倍内閣の目玉は「教育再生」。イギリスのサッチャー改革がモデルで、安倍氏は「誇りを回復させたサッチャーの教育改革」と、ほめちぎっています。しかしその実態は…。
さらし者にする制度はダメ
サッチャー首相が88年におこなった教育改革は、全国統一学力テストをして結果を公表し、親に学校選択権を与え、学校への予算は入学生徒数に応じて割り振る、というものでした。その結果、競争と選別が激化。成績が悪かった学校の中には、テスト科目以外の授業はしないというところまで現れたそうです。
全国トップの成績を収めた小学校の校長も、この制度を「学力テストで学校を不必要に競争させ、結果を公表して序列化するシステムだ」とし、「確実に敗者をつくる不公正な教育体制」「教育はもっと幅の広いもので、経済の市場原理の適用はなじまないし、間違い」と非難しています(『エコノミスト』9月26日)。
全英校長会も今春の総会で「成績の悪い学校をさらし者にする制度はもう、たくさん」と、テスト成績の公表廃止を全会一致で決議しました。
「いじめ自殺」7年間ゼロ?!
日本は、この間違いを20年遅れで導入しようとしているのです。
国連の「子どもの権利委員会」は、98年、04年と続けて「日本の教育制度の過度に競争的な性格が、児童の心身の健全な発達に悪影響をもたらし、児童の可能性の最大限な発達を妨げている」と指摘しています。
世界は日本の教育の問題点を、ゆきすぎた競争教育にあると見ています。それなのに、安倍政権のめざす方向はまるで逆行です。日本の子どもたちを、これ以上、教育行政の犠牲にするわけにいきません。
いま学校現場では、いじめやそれを苦にした自殺も大問題になっています。ところが、文部科学省の発表では「いじめによる自殺」の件数が過去7年間にわたってゼロ。
03年の中央教育審議会答申は、「教育にできるだけ数値目標を持ち込む」として、具体例として「いじめ、校内暴力を『5年間で半減』」などをあげました。こうした目標の押しつけが、学校や教育委員会によるいじめの「実態隠し」の背景にあるのではないかといわれています。
「いじめ隠し」は最悪の対応
いじめ自殺などの悲しい事態をなくすには、事実を包み隠さず明らかにして、学校や地域住民が心を一つに、解決にとりくむことが何より大切です。数値目標の押しつけや「いじめ隠し」は最悪の対応です。
それなのに政府は、教育基本法を改悪して、「いじめ半減」などを含んだ「教育振興基本計画」を決定し、教育現場に強要しようとしています。どこから見ても教育現場をいっそう混乱させるだけなのが「教育再生」であり、「教育基本法改悪」です。
子どもたちが希望を持てるよう、おとなが、がんばらねばなりません。
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