海外紙も批判する庶民大増税計画
小泉内閣の大負担増計画は、04年10〜12月期のGDP(国内総生産)が3期連続マイナス成長(2月16日、内閣府発表)となるなかで、ますますその誤りがはっきりしてきました。
海外紙はいっせいに「景気後退」と報じ、英紙フィナンシャルタイムズは社説で、「次の景気回復を窒息させるような」増税を考えることは「原則的に誤っている」と批判しました。家計の所得が減り続けているときの庶民増税、負担増。海外から見ても異様なのでしょう。
役員報酬は2兆円もアップ
谷垣財務大臣は国会答弁で、「社会保障は身の丈に合わせなければいけない。歳入が足りないんだから、社会保障を切るか増税かだ」と言っています。
しかし身の丈に足りないのが社会保障です。国民の要求から見ても、ヨーロッパに比べても、水準は低い。身の丈に合わせて切るべきなのは、大型公共事業のムダ遣いや、大企業・大金持ち減税です。
数字をみると97年から03年まで大企業の経常利益は6兆円増えています。しかしこの間、法人税は1兆円しか増えていない。残りはどこにいっているか。役員報酬が2兆円も増えているんです。
日経新聞に「主要100社の役員報酬」というのが出ましたが、平均3200万円。トップは日産で、平均2億3500万円。武田薬品は1億4900万円です。
同時期にやっている金持ち減税をこういう人に当てはめると、日産ですと一人あたりの減税額が、2960万円になります。リストラでボロ儲けして、その大部分を役員報酬に回す。そういう人たちに対して大減税している。これはどう考えたっておかしい。こういうところこそ、真剣に見直していく必要があります。
今回の介護保険法の改悪案の大きな問題点は4つあると思います。(1)「新予防給付」の名の下に軽度の人のサービスを受けにくくさせる問題。(2)居住費、食費を原則全額徴収とし、施設入所者に負担を押しつける問題。(3)介護保険が始まったときからの特別対策「負担軽減措置」の終了。(4)予防のために地域支援事業を始めるとして、いままで公費でしていた事業を介護保険に取り込む問題。
どれも大きな負担増になります。
敬老パスこそ予防に最適
厚労省「より良い介護保険に育てる会」メンバーの岡本祐三さん(国際高齢者医療研究所長)はこういいます。
「介護保険制度創設の目標のひとつは、家族介護のニーズを社会的責任の世界へ解放すること、社会的介護サービスの利用を奨励することであったはず」。介護保険がようやく定着してきた時期に「利用を抑制するような政策的スローガンはいただけない」と。まさにその通りです。
予防が大事だというのなら、どういうサービスが新たに必要なのかという角度から考えるべきです。
おもしろいのは、東北大学教授の辻一郎さんが厚労省主催の市町村の介護保険担当者向けの講演で、「介護予防についてもう少し幅広く考える」べきだとして、「バリアフリーの環境整備、高齢者に対する公共交通料金の助成」などを例にあげ、「敬老パス」なんか一番いいというのです。「閉じこもりの予防に大きな貢献をしている。バスに乗っていると最高のバランストレーニングになる。建物を建てて機械を使ってバランストレーニングをするよりも楽しい」と。まったく賛成です。
無実の人の保釈金と同じ
急浮上してきた障害者自立支援法案も大きな怒りをよんでいます。障害者の声も聞かず、いきなり大変な負担増を押しつける(左図)。そもそも、「応益負担」というけれども、障害者がサービスを受けるのは「益」なのでしょうか。
社会保障審議会の部会で、東大の福島智助教授が、「障害者に定率負担を求めるのは、無実の罪で収監された刑務所からの保釈金に等しい」と言った。非常に衝撃的な言葉でした。障害者がおかれている状態は、無実の人が刑務所に入れられているようなものだ、社会参加のために必要な費用を払えというのは無実の人に保釈金を払えというのと同じだと、その不当性を告発しているのです。
さらに、育成医療、更生医療が定率になると、市町村がやっている障害者の医療費助成制度も財政的に大きな打撃を受けます。実際、島根県ではすでにこの法律を先取りして、障害者の医療費助成制度を大改悪するという方針を出しました。乳幼児医療費の無料化制度にも影響を与えかねない非常に大きな問題です。
もう一つ、精神障害者の外来通院医療を、いまの5%から1割に引き上げ、ゆくゆくは3割にするという方向が出されています。いままで政府は外来医療推進、入院から地域へと言ってきた。それなのに、地域での生活を支える一番大事な柱である医療費の負担を増やすというのは逆行です。ストレスが強い社会で、経済的負担なしで気軽に医療が受けられる制度をなくすことは大問題です。
障害者自立支援法は、障害者だけではなく、福祉制度・医療制度全般にも深刻な影響を与える内容になっていますので、ぜひ注意を呼びかけたいと思います。
|