「(若者の失業率が高いのは)やる気のない面も能力のない面もある。まずやる気を出してもらわなきゃいかぬ」「正規社員が減って派遣社員が増えているのも、一つの時代の変化。一概に悪いとはいえない」…涼しい顔でこう答弁する小泉首相(3月9日参院予算委員会)。傍聴した青年が「はらわたが煮えくりかえった」といっていましたが、質問した私も同じ思いでした。
4百万人が非正規雇用に
最近の求人の実態は、求人全体のうち派遣が5%、請負が28%。総務省の調査では、この5年間に正規雇用が約4百万人減り、派遣やパートが約370万人増えています。約4百万人の雇用が、正規から非正規に置きかわっているわけです。
小泉首相は非正規雇用が増えたのを自然現象のようにいいますが、法改正をくり返し、大きな流れをつくったのは政府自身です。
3月から労働者派遣法がまた改悪され、ほとんどの業務で派遣ができるようになりました。必要なとき必要なだけの労働力を、安く買える。企業にとって都合のよい働かせ方がますます広がろうとしています。
「請負」百万人、ルールなし
急成長しているのが「請負」業界。規模は1万社、社員は百万人といわれます。「請負」というのは製造ラインなどに、一括して労働者を送り込むことです。たとえば富士ゼロックスの海老名営業所は生産ラインはすべて請負です。NEC、リコー、ソニー…日本の大手電機や自動車などの工場は、いまや多くが「業務請負」になっているのです。
委託会社は請負の労働者を指揮命令してはいけないことになっていますが、実態は残業を命じるなど違法行為が野放しになっています。問題は百万人もの人が働く請負業界に、責任をもつ大臣が誰もいない、監督官庁がどこもないということです。この状態をそのままに、労働者派遣を製造業にひろげる改悪をした。
4年間で8カ所を転々
請負や派遣の労働者の実態はどうなっているか。私が話を聞いた青年は、4年間で8カ所の職場を転々とさせられていました。青森で働いていたのを、明日から佐賀に行ってくれといわれる。労働条件も劣悪です。
派遣労働者の8割は登録しておいて、仕事が入ったときだけ派遣会社と雇用関係を結ぶ「登録型派遣」。仕事がないときはまったく収入がありません。派遣されると料金の約3割が派遣会社の取り分になります。
若い労働者をこのような不安定で過酷な条件で働かせて、ピンハネするようなやり方が日本の名だたる大企業でまかり通っているのです。
21世紀を担う若者を、細切れの、労働の切り売りのようなやり方で働かせる。職業能力を高めることもできない。社会保険にも入れない。過労死まででている。こんなことをしていたら、日本に明日はありません。
EU(欧州連合)では派遣に対する指令案が提案され、派遣先の労働者と同じ待遇でなければならないと明記されています。まともな働き方のできる社会に、切り替えましょう。
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