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日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008] 日本共産党参議院議員・医師 小池晃 アーカイブ[〜2008]

169通常国会 厚生労働委員会 介護保険法改正案参考人質疑

2008年5月13日(火)

小池晃君

 日本共産党の小池晃です。

 参考人の皆さん、ありがとうございました。最初に清沢参考人にお聞きしたいんですけれども、今ちょっといろいろ議論があった営利企業という問題で、この法案はコムスンの一連の事件をきっかけにして作られたもので、規制そのものの中身については我々も賛成ではあるんですけれども、ただ、その背景にやっぱり介護保険制度というのが介護という仕事を市場化の中にゆだねていったと。もちろん、営利企業が悪でNPOが善だというようなそういう単純なことを申し上げるつもりはないんですけれども、やっぱり大きな流れの中で市場化、営利企業化という中でこういう事件もやっぱり生まれてきているというふうに私は思っているんですが、その点についての御認識をお聞かせください。

参考人(清沢聖子君)

 私もこれが企業に導入されるというところから大変な危機感を持っておりまして、そういう八年前の状況から考えますと、予感が当たったなというところがあります。

 それと、このコムスンと、その営利企業への展開、開放ということで考えますと、もし、やはりこの法案でも事後規制の問題なんですよね。そうではなくて、やはり企業で開放するとしても事前規制でやるべきだったと思いますし、更にもう一点申し上げますと、やはり何といいましょうか、企業に開放するとしても、この企業だからこそ営利追求で、採算が取れなければ事業がなくなるというのは当然なので、少なくとも事業を廃止したときにでも利用者の介護、生活が保障できるように、それが担保できるような、自治体だとかあるいは少なくとも社会福祉協議会等で整備を労働者の保障も含めて事前にすべきだったし、今後もこういうことがなきにしもあらずと。現存として、企業が東京都で言えば八割が訪問介護事業所、成り立っていますので、今後の心配も含めて、少なくとも基盤のところは地方自治体や社会福祉協議会等でやっていくということも強く感じているところです。

 無論、そもそも最初のお話であります企業への、とりわけソーシャルワークの部分をケアマネジャーという者がやっていますが、そこにまでゆだねたというところは大変な失敗であったというふうに感じています。

小池晃君

 ありがとうございました。

 松下参考人にもちょっとその点をお伺いしたいんですけれども、拝見すると、そのNPO法人などが一緒になっていろんなフォーラムを開いたりされておりますので、やっぱり今のその全体としての、個々の企業云々はともかくとして営利化、市場主義化のような動きが介護をやっぱりゆがめているような面があるんじゃないかと思うんですが、御認識をお聞かせください。

参考人(松下やえ子君)

 一番最初に、二〇〇〇年の介護保険スタート当初の問題点のところにも一つ挙げさせていただいたんですけれども、私はその当時社会福祉協議会のヘルパーとして、実は常勤のホームヘルパーが八千代市の場合には二十八名でサービスを提供してまいりましたが、実際に介護保険が始まりますと二十八人分の給料はとても介護保険では賄えないということで、実は出向であったり、あるいは早期退職であったりというような形で人員を減らしてスタートという対応を取りました。各地でやはり行政の常勤ホームヘルパーだとか社会福祉協議会の常勤ホームヘルパー、何かこうとても悪いもののような見方をされてスタートをしたように記憶をしております。

 ですけれども、先ほどのお話のように、やはり地域性があって、都市部ではなくて地方にあっては非常にそのサービスの提供する事業所が不足するというようなことがあったときに、自治体直営の事業所であるとか、あるいは社会福祉協議会が最後のとりでとして利用者さんの安心の生活を守るという意味での対応が是非必要ではないかというふうに考えております。

小池晃君

 ありがとうございました。

 続いて清沢参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほどお話聞いていて、介護に携わっている労働者というのは、特に対人援助の仕事を選択するというのは結婚や子育てにも夢を持っている人が多いというのはちょっと、ああなるほどなというふうに思ったんですが、そういう中で、実態として非常に若い労働者たちが労働基準法も最低賃金法も労働安全衛生法も守られていないような、労働法制あってなきがごとき状況に置かれている。その辺の状況をちょっと実態をもう少しお聞かせ願えませんか。

参考人(清沢聖子君)

 二、三十代の方というふうに絞ってお話をしますと、やっぱり特養ホーム等の施設職員の方が東京の場合は特に多うございまして、というふうになりますと、いわゆる長時間、夜勤が大体夕方の五時とか五時前後から始まりますけれども、勤務帯としては大体九時で終わりますが、そのままお昼ぐらいまでということが多い。その残業代が払われない。

 それだけではなくて、少なくとも二時間は仮眠を取らなければなりませんが、人員配置の問題でその仮眠を取るということが大概難しい。さらには、仮眠を取る場所がきちっとした個室でまくらと布団がきちっとあって、そこできちっと二時間休めるということではなくて、私たちの組合で対処した事例でも、お年寄りが入浴をする脱衣所ですね、そこに簡易なベッドを、パイプベッドを置いてちょっとした毛布だけ敷いてそこで寝なさいということなので、目の前で夜勤中にお年寄りが鳴らすナースコールが繰り返し繰り返し鳴っているわけであって、ちっとも寝ることができないんですね。

 そういうようなところから、今二、三十代の介護労働者の中で、はやっていると言うとちょっと語弊がありますが、増加しているのがうつ病及び精神疾患で、私たちの組合での相談の半数以上はこれに対する対応ということになっています。若い人だからこそ一生懸命に、うつ病になっても、どうやって現場にこのままいるのか、あるいは休んだ後も戻っていくのかと、そればかり気にしていて、組合の役員として、まず休みなさい、きちっと休んで長く働けるように組合として応援するからということでやるのが今非常に多い労働相談になっています。大変厳しいです。

小池晃君

 ありがとうございました。

 そういう中でどうやって労働条件確保していくかという具体的な手だての問題なんですけれども、人材確保指針は十四年ぶりに改定されたんです。中身には、国家公務員の福祉職俸給表も参考にすることというふうに言っているわけですが、それを絵にかいたもちにしないで具体的にしっかり担保する手だてが必要ではないかというふうに思うんですが、その点についてのお考えをお聞かせください。

参考人(清沢聖子君)

 産業別賃金の創設をしていただけないかなというのを考えています。

 私たちの組合で昨年十一月に定期大会がありましたときにこの方針を出しました。その当時はまだ指針が出て直後ということがありまして、それと、私たち自治体関係の組合だということで、東京二十三区の福祉職基準、分かりやすく言いますと、公立保育園の正規保育士さん等が該当しますが、この辺のところで考えていかないかと、参考にしていかないかという方針を挙げています。

 指針のところで是非お願いしたいのは、今、介護保険制度という福祉制度の中で賃金が規定されているというのではなくて、労働法制として賃金を確立していくというところで産業別賃金という在り方がいいのではないかと考えています。

小池晃君

 ありがとうございました。

 この賃金というか財源の問題、岩村参考人、田中参考人にもちょっとお伺いしたいんですけれども、岩村参考人の先ほどのお話の中で、やはり介護報酬ということもあるんだけれども、人件費の問題、間接部門はコストが掛かるという問題もあるというお話もあったんですね。田中参考人も、本当に生きがいを持ってやりがいを持ってやれるような、社会的な評価も高めてやりがいのある仕事にと。

 そういうことを考えた場合に、介護報酬の引上げというのも本当に大事だと思うんですけれども、やっぱりそれは利用料に跳ね返る部分もあるわけで、やっぱり一定、人事管理的な部分、雇用管理的な部分などについて、介護保険の保険料の財源とはやはり別個の財源保障のようなことも検討していかなければいけないのではないかというふうに私ども考えているんですが、御見解をお聞かせ願えませんか。

参考人(岩村正彦君)

 おっしゃるように、介護報酬に跳ね返らせない形で別途介護に従事する方々の処遇の改善のために何か財源を充てるということは、政策としては考え得るだろうというふうに思います。ただ、その場合難しいのは、一つは、賃金とかそういったものに国が何らかの一定の基準を設定して介入するということが本当に適切なのかどうかということだろうという気がいたします。

 やはり、賃金その他のものというのは、それぞれの地域の労働市場の状況であるとかということにもよるでしょうし、またその労働者の処遇との関係で、例えば一定の設備の設置を義務付けるというような形でのやり方をしますと、それは今度は事業者にとっては負担になる可能性もあり、事業者自体の参入ないし事業継続というものを困難にするとか、そういうような副作用も持つというように思います。

 ですので、先ほど申し上げたように、政策としては考え得ると思いますが、ただ、どういう形でそれを具体的に行うのか。特に、当初考えている政策意図とは違う形での副作用が生じないような、そういう制度設計というものがきちっと考えられるのかどうかということをかなり慎重に検討する必要があるだろうというふうに思っております。

 ちょっと、非常に漠としたお答えで申し訳ございませんけれども、私としてはそういう見方をしております。

参考人(田中雅子君)

 介護従事者の人件費につきまして、別個の財源保障を考えてはどうかということでございましたけれども、これは日本介護福祉士会ということではなくて私ということでよろしいかと思いますが、そのように御理解いただきたいんですが、もちろん幹部の皆様との話合いの中で出てきたことは、やはり介護報酬の一定割合を人件費として設定して、その分は確実に、要するに働いた者に賃金として返るという仕組みをつくってもらえないのかなという夢物語の話はしております、私たちの中でも。

 その根拠といたしまして、介護保険制度というのは、そもそも介護サービスについては税金が半分投入されているということです。また、要介護や要支援などの要介護度の段階設定によるニーズの把握や、あるいはそれに伴う適切なサービスの提供を行うためのケアマネジメントなど、単なる、一般的に言われる商業ベースの一般的なサービスと異なっているという、特殊なサービスと申しましょうか、そういった性格を持ったものであります。そこに、一定のサービスの水準というものが求められる公共的な、ないしは社会的なサービスとしての特性があるんではないかと思います。

 したがって、そのようなサービスについてはある意味公的に保障されたものとして私、確保する必要があるというふうに考えておりますし、介護報酬につきましても一定の割合を設定するなどして、また専門の資格を持った者に対しては一定の報酬水準というものを可能にしていただくということも考えられます。

 いずれにいたしましても、今盛んに言われますことは、人件費がイコール利用者の負担に掛かるということが議論されているんですけれども、もっともっと研究し、具体的にちょっと知恵を絞っていただきたいというのが私どもの切なる願いでございまして、やはり今のところ難しいとか利用料を上げたら大変とか言うんですが、ただ、世の中に良質なサービスがただでいいわけがないと、私はかねてからこの仕事をしながら思っているわけですね。

 長い間の介護の仕事をしながら思ったのは、いいものも悪いものも同じ、支払わされるのが、これが世の中なのかなと。これは私論でございますが、私はかねてから、努力して利用者の満足を得るようなサービスした者と、あるいは一方ではそうでない者が同じものしか払われないというのがこれでいいのかどうかというのは、現場にいる者としての私自身の実感です。

小池晃君

 ありがとうございました。

 それから、サービス提供責任者の業務の問題を松下参考人も強調されていたんですが、技術の向上の上でも本来の業務を果たすという上でも本当に大事だなと。

 具体的に、サービス提供者の業務に対する評価の仕方として何かイメージお持ちでしたら、清沢参考人にもお聞きしたいんですが、そういう制度についてどんなことを考えていらっしゃるか、御見解をお聞かせください。

参考人(松下やえ子君)

 ケアマネジャーさんの作ります居宅サービス計画書に基づいて、訪問介護事業所では、サービス提供責任者が訪問介護計画書をまず作るというのが一番の業務であります。それからさらには、利用者さんとの調整や、あるいはヘルパーさんのローテーションを組む、それからケアマネジャーさんあるいは他職種の方との調整を行う、そして実際にサービスを提供するホームヘルパー、訪問介護員の技術的な指導も含めて業務としてあるわけですけれども、なかなかその中で、重要なことは分かっているんだけれども、非常に業務が煩雑でそして分かりにくい、それから時間が掛かる。

 でも、今の現状では、ケアに出る、サービスを提供するヘルパーさんが少ないという、こういうことも絡み合って、実はその本来業務はほとんどが五時以降に行われているという現状があります。そして、それではそのことに対して残業手当が支払われるのかというと、現状はとても厳しいものがあります。全額を払っているという事業所はほとんど少ない状況にあります。そういう中で、でもこの基準に位置付けられた四百五十時間に一人、あるいはヘルパーさんが十人いたら一人のサービス提供責任者を置くということは、適正なサービスを提供する上では非常にこの立場というのは重要であるというふうに考えております。

 そして、業務量について見ますと、ケアマネジャーさんの業務量以上のものが運営基準の中で規定され、要求されていながら、実は介護報酬の設定がないという、そこのところに私ども千葉県訪問介護フォーラムのメンバーとしては非常に疑問を持って、昨年は取組をいたしました。

参考人(清沢聖子君)

 先ほどの松下参考人がおっしゃったことと同じで、独自の報酬を設置していただきたいということを考えています。四百五十時間サービスに一人、それと、繰り返しになりますが、十人のヘルパーさんに一人という設定に加えて、このサービス提供責任者の配置は介護福祉士でと、国家資格者でと、保持者でということになっていまして、そういう、そこまでの人員配置を法で決めているにもかかわらずそもそもの制度の発足時からなかったということは、大変な保険法としての不備ではないかということも考えています。

小池晃君

 ありがとうございました。じゃ、終わります。

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