後期医療廃止法案 質疑
与党言い分も制度も破たん
存続は際限ない負担増
十九日の衆院厚生労働委員会で、野党四党が提出した後期高齢者医療制度廃止法案の質疑が行われました。与党側は「廃止は無責任」などと根拠が崩れた主張の繰り返しだけ。日本共産党の小池晃政策委員長の答弁などで、その道理のなさが鮮明になりました。
上がる保険料
「75%の人が保険料を軽減されている。こういう人が(制度の廃止で)老人保健制度に戻ったら保険料が上がるのを放置するのは問題だ」(自民党の木原誠二議員)
与党は、新制度で多くの人の保険料が下がったかのように描き出し、それを制度継続の根拠にしています。
これが虚構であることを暴いたのが、廃止法案の発議者である小池氏の答弁でした。
小池氏は、“75%の世帯が新制度で保険料負担が減った”という政府の調査は、都合のいい十二パターンのモデルを使った机上の計算であり、「制度改悪で全員が負担増になる被用者の扶養家族約二百万人も除外している」と問題点を指摘しました。
さらに、制度は二年ごとに後期高齢者の人口が増えるにつれて保険料が自動的に上がっていく仕組みであり、「この制度の延命こそ、負担が下がるどころか際限のない負担増になる」と述べました。
廃止したら“「下がった人」は保険料が上がる”という与党の言い分について、小池氏は「廃止法案が成立し、来年四月に制度の廃止に伴って結果として負担が増える人の対応については、本法案成立を受けた政府の法制措置の中で当然手当てされるべきものだ」と制度の廃止で不利益が出ない措置をとる立場を明確にしました。
自民党の冨岡勉議員が、制度の導入時に、システム開発経費で国が三百十億円、地方自治体が五百六十億円を負担したことを挙げ、「廃止すれば、数百億円にのぼる無駄遣いが起こる」と制度廃止を問題視しました。
小池氏は「矛盾だらけの制度を導入しなければ、準備経費も必要なかった」と指摘。制度の施行後も多大な経費をかけた宣伝や負担軽減策などで予算を使い続けているのが実態だとし、「制度を継続することこそ無駄遣いを拡大する。廃止こそ国民の願いに応え、無駄遣いをとめることになる」と述べました。
改革の第一歩
公明党の枡屋敬悟議員は「後期高齢者医療制度を廃止して、元の老人保健制度に戻すのはとんでもない」「市町村の国民健康保険財政が悪化する」と廃止を批判しました。
小池氏は「老人保健制度の問題点は当然改革が必要だ」と述べたうえで、「老健制度は、高齢者を医療保険制度から強制的に脱退させるのとは根本的に異なる。制度に加入させたまま窓口負担を軽減してきた制度だ」と強調。「穴の開いた船から港にいったん戻れということだ」と訴えました。
小池氏は、国保財政が危機に陥っている最大の原因は、一九八四年の国保法改悪以来、国庫負担を減らしてきたことにあると指摘。国庫負担増による国保の立て直しが必要だとして、「後期高齢者医療制度の廃止はその第一歩となる改革だ」と主張しました。
制度存続を主張する一方で、与党議員からは後期高齢者医療制度への疑問の声が相次ぎました。
「私も何で七十五歳で(線引きするのか)という思いは確かにある。思いは(野党と)大体一緒だ」(自民党の冨岡議員)
「今乗っている船が整備不良の部分があるのは認めざるを得ない」(自民党の高鳥修一議員)
舛添要一厚労相すら「うば捨て山行きのバス」と認めざるを得ない後期高齢者医療制度。廃止しかないことがますます明りょうになりました。
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